登録販売者 第5回

問81

サリドマイド訴訟背景 サリドマイド訴訟に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。 a サリドマイド製剤は、鎮静作用を目的として販売され、特に妊婦のつわり緩和にも使用された。 b 西ドイツ(当時)のレンツ博士がサリドマイドの催奇形性について警告を発したが、日本での回収開始はそれから約10ヶ月後と遅れた。 c サリドマイドによる健康被害は、日本国内でのみ発生した特有の薬害事件である。 d サリドマイド製剤は、医師の処方箋が必要な医療用医薬品としてのみ販売されていた。

  1. ① (a, b)
  2. ② (a, c)(正解)
  3. ③ (b, d)
  4. ④ (c, d)

解説

【正解】 1 【設問の意図】 この問題は、薬害の原点ともいえるサリドマイド訴訟について、当時の社会背景と「対応の遅れ」という重要な論点を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、「警告から回収までのタイムラグ」であり、ここが後の法改正(安全対策の強化)の起点となったことを理解しているかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、aとbが正しい記述である。 サリドマイドは当時、副作用が少なく安全な催眠鎮静剤として、一般用医薬品(市販薬)としても広く流通していた。しかし、レンツ博士の警告(1961年11月)があったにもかかわらず、日本政府および企業が回収に着手したのは1962年9月であり、被害を拡大させた大きな要因となった。 【初心者がここで迷う理由】 「薬害=特別な強い薬(処方薬)」というイメージを持ちやすいため、一般用医薬品が含まれていた点(dの誤り)で見落としがちである。また、世界的な広がり(cの誤り)についても、日本独自の事件と混同しやすい。 【本番での判断フロー】 1,「サリドマイド=つわり(妊婦)への使用」を思い出す。 2,「レンツ警告」というキーワードと「日本での対応の遅れ」を結びつける。 3,「一般用医薬品も含まれていた」ことを知識として定着させておく。 4,「〜のみ」「〜だけ」という限定表現(cやd)に注意し、消去法で絞り込む。

問82

サリドマイドの副作用 サリドマイドの副作用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 ① サリドマイドの催奇形性は、血管新生を妨げる作用によって、四肢欠損などの先天異常を引き起こす。 ② サリドマイドのR体(右旋体)には催奇形性があるが、S体(左旋体)には鎮静作用しかない。 ③ 胎児への影響は、妊娠後期に使用した場合に最も顕著に現れる。 ④ 催奇形性以外に、成人において重篤な肝機能障害を引き起こすことが主な問題となった。

  1. ②(正解)

解説

【正解】 1 【設問の意図】 この問題は、サリドマイドが人体にどのような影響を及ぼしたのかという「化学的・生理的な仕組み」を正しく理解しているかを問う問題である。 特に「光学異性体(R体・S体)」の性質の違いと、体内での変化という引っかけポイントを整理できているかが重要となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、血管新生を妨げることによる胎児の四肢欠損が最大の特徴であり、①が正しい。 光学異性体については、R体に鎮静作用があり、S体に催奇形性がある(②は逆)。さらに重要なのは、体内で相互に入れ替わるため、R体だけを分離して製品化しても、催奇形性を避けることはできないという点である。 【初心者がここで迷う理由】 R体とS体の役割を逆(②)に覚えたり、「R体だけなら安全」という誤った論理に惑わされやすい。また、つわりに使われたことから「妊娠初期」の問題であることを忘れ、「後期(③)」という表現を見逃すことがある。 【本番での判断フロー】 1,「サリドマイド副作用=血管新生の阻害=四肢欠損」を鉄則とする。 2,「S体=催奇形性(SはサリドマイドのSと覚える)」と整理する。 3,「体内でR体とS体は入れ替わる」ため、分離は無意味であると理解する。 4, 妊娠初期(器官形成期)の出来事であることを再確認する。

問83

サリドマイド訴訟経緯 サリドマイド訴訟とその後の影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。 a サリドマイド訴訟は、製薬企業のみを被告として提訴された。 b 訴訟の和解を機に、医薬品の副作用情報の収集制度や、承認審査体制の強化が図られた。 c 1974年(昭和49年)に国および製薬企業との間で和解が成立した。 d 日本では被害者の救済を目的とした「スモン基金」が設立された。

  1. ① (a, b)
  2. ② (a, d)
  3. ③ (b, c)
  4. ④ (c, d)(正解)

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、訴訟の結果として日本の医薬品行政がどのように変化したかという「教訓と制度の変化」を問う問題である。 国と企業の責任、そして和解の時期を正確に把握しているかが問われる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、bとcが正しい。 サリドマイド訴訟は「国」と「企業」の両方を相手取り、1974年に和解が成立した。この薬害をきっかけに、医薬品の安全性をより厳格に監視する仕組みが構築された。なお、dの「スモン基金」は、後のスモン訴訟に関連するものであり、サリドマイドではない。 【初心者がここで迷う理由】 複数の薬害訴訟(サリドマイド、スモン、HIVなど)を学習すると、それぞれの和解時期や設立された救済組織の名前が混同しやすくなる。 【本番での判断フロー】 1, 訴訟は常に「メーカー(企業)」と「承認した国(厚生労働省)」の両方がセットであると考える。 2,「1974年和解」という数字をサリドマイドと紐付ける。 3, 他の薬害(スモンなど)の用語が紛れ込んでいないかチェックする。

問84

スモン訴訟の背景 スモン(SMON)訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 ① スモンの原因となったキノホルム製剤は、強力な催眠鎮静剤として販売されていた。 ② スモンは、当初原因が不明の「奇病」や「ウイルス感染症」として扱われ、被害者の特定が遅れた。 ③ キノホルム製剤は、医師の処方箋がないと購入できない薬であった。 ④ スモン訴訟の被告は、国のみであり、製薬企業は含まれていない。

  1. ③(正解)

解説

【正解】 2 【設問の意図】 この問題は、スモン訴訟の特異な背景である「当初の原因不明な混乱」を理解しているかを問う問題である。 薬害が「感染症」と誤認されたことによる二次被害も含めた歴史的理解が重要である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、②が正しい。 スモンは、最初は原因がわからずウイルス説などが浮上し、患者が隔離されるなどの社会的差別も発生した。原因物質は、整腸剤(下痢止め)として使われていた「キノホルム」であり、一般用医薬品(市販薬)としても広く販売されていた。 【初心者がここで迷う理由】 整腸剤という比較的身近な薬が、これほど重篤な神経被害を起こす(①の誤り)というイメージが結びつきにくい。また、市販薬も原因であった点(③の誤り)を見落とすことが多い。 【本番での判断フロー】 1,「スモン=キノホルム=整腸剤」という三点セットを暗記する。 2,「ウイルスと間違えられた歴史」があることを思い出す。 3, 他の薬害と同様、国と企業の両方が被告であることを前提にする。

問85

キノホルムの副作用 キノホルムの副作用(スモン)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 ① 腹痛、下痢などの消化器症状に続いて、下肢のしびれや麻痺などの神経症状が現れる。 ② 症状が重い場合には、歩行困難や視力障害に至ることもある。 ③ キノホルムの服用を中止しても、神経症状は速やかに消失し、後遺症は残らない。 ④ 患者の舌に緑色の着色が見られたり、尿が緑色になったりすることが特徴的な所見とされた。

  1. ④(正解)

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、キノホルムが引き起こす特有の症状と、その「不可逆性(治らないこと)」について問う問題である。 薬害の恐ろしさは「一生残る障害」にあることを理解しているかが問われる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、③が誤りである。 キノホルムによる神経障害は非常に重篤で、服用を中止しても症状は改善しにくく、多くの患者に重い後遺症を残した。④の「緑色の舌」などは、キノホルムが体内で鉄分と結合して生じる非常に特徴的な症状である。 【初心者がここで迷う理由】 「服用を中止すれば副作用は収まる」という一般的な副作用のイメージに引っ張られ、③の記述を正しいと思い込んでしまう。薬害における副作用は、通常の範囲を超えた破壊的なものであるという認識が必要である。 【本番での判断フロー】 1,「スモン=神経の麻痺(歩けない・見えない)」を思い出し、それが簡単に治るものかどうかを考える。 2,「緑色の舌・尿」というキーワードが出たらキノホルム(スモン)と即座に判断する。 3,「速やかに消失」という楽観的な表現(③)を疑う。

問86

スモン訴訟の経緯 スモン訴訟の判決と、その後の安全対策に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。 a 1979年(昭和54年)に、最高裁判所の判決を待たずに各地方裁判所で和解が成立した。 b スモン訴訟をきっかけとして、医薬品副作用被害救済制度が創設された。 c 訴訟の結果、キノホルム製剤は副作用を明記した上で、現在も販売が継続されている。 d スモン被害者の救済のため、製薬企業のみの拠出金によって給付を行う制度が作られた。

  1. ① (a, b)
  2. ② (a, c)(正解)
  3. ③ (b, d)
  4. ④ (c, d)

解説

【正解】 1 【設問の意図】 この問題は、スモン訴訟が「現在の私たちが利用している救済制度」の直接のルーツであることを理解しているかを問う問題である。 特に「副作用被害救済制度」の設立背景は試験での最頻出ポイントの一つである。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、aとbが正しい。 1979年に全面和解が成立。この凄惨な被害を二度と繰り返さない、そして被害者を迅速に救済するために、翌1980年に「医薬品副作用被害救済制度」が運用開始された。キノホルムは現在、医薬品としての販売は停止されている(cは誤り)。 【初心者がここで迷う理由】 救済制度の財源(d)について、企業だけでなく「国」も関わっている点や、制度設立のきっかけになった訴訟がどれか(サリドマイドかスモンか)で混乱しやすい。 【本番での判断フロー】 1,「スモン=救済制度(1980年スタート)」をセットで覚える。 2, 薬害の原因物質が、反省もなく販売継続されることはあり得ない(cを除外)。 3, 和解の年(1979年)を確認する。

問87

HIV訴訟の背景 HIV訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 ① HIV訴訟の原因となったのは、国内産の新鮮な血液を用いた輸血用血液製剤である。 ② HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染したことにより、B型肝炎を発症したことが問題となった。 ③ 血友病患者が、血友病の治療のために輸入された「非加熱血液凝固因子製剤」を使用したことで、HIVに感染した。 ④ 当時、HIVの感染リスクは全く予測不可能であり、国や企業に責任はないとされた。

  1. ④(正解)

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、HIV訴訟の核心である「なぜ、何によって感染したのか」というメカニズムを理解しているかを問う問題である。 「非加熱」という言葉の意味と、その対象者が「血友病患者」であった点が重要である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、③が正しい。 血友病患者が、止血のために必要な「非加熱」血液製剤を投与された結果、その中に混入していたHIVに感染した。エイズ(AIDS)の発症という死に至る重大な薬害を引き起こしたものである。 【初心者がここで迷う理由】 「B型肝炎(②)」や「C型肝炎」の訴訟と混同しやすい。また、「輸血(①)」そのものが原因であったと勘違いしやすい(本件は血液から特定の成分を抽出した「製剤」が原因)。 【本番での判断フロー】 1,「HIV=エイズ=非加熱製剤」という流れを意識する。 2,「血友病」という疾患名を確認する。 3, 加熱製剤への切り替えが遅れたことに対する「国と企業の責任」を問う内容であることを確認する。

問88

非加熱血液凝固因子 HIV訴訟において、被害を拡大させた要因に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。 a 加熱処理によりウイルスを不活性化できる製剤(加熱製剤)が承認された後も、非加熱製剤の回収が速やかに行われなかった。 b 非加熱製剤は、多数の献血者からの血液を混合して作られていたため、ウイルス混入のリスクが高かった。 c HIVは空気感染するため、病院内での二次感染が主な被害拡大の要因となった。 d 非加熱製剤の使用は、医師の判断に関わらず患者が自己判断で購入し、自由に使用していた。

  1. ① (a, b)
  2. ② (a, c)(正解)
  3. ③ (b, d)
  4. ④ (c, d)

解説

【正解】 1 【設問の意図】 この問題は、なぜHIV被害がここまで広がってしまったのかという「技術的・行政的要因」を問う問題である。 「混合(プール)血液」のリスクと「不活性化の遅れ」という要点を整理できているかが問われる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、aとbが正しい。 多数の人の血液を混ぜる製剤は、一人でも感染者がいれば全体が汚染される。また、安全な加熱製剤が登場した後も、在庫処分やコストの問題で非加熱製剤が使い続けられたことが大きな社会的批判を浴びた。なお、HIVは空気感染しない(cは誤り)。 【初心者がここで迷う理由】 HIVの感染経路についての基礎知識が曖昧だとcで迷う可能性がある。また、血液製剤は高度な管理が必要な「注射剤」であり、薬局で買えるようなものではない(dは誤り)。 【本番での判断フロー】 1,「非加熱(危ない)から加熱(安全)へのスイッチの遅れ」を思い出す。 2, ウイルスの特性(血液を介するもので、空気感染ではない)を確認する。 3,「多数の血液を混ぜる(プールする)」ことの危険性を理解しておく。

問89

HIV訴訟の経緯と和解 HIV訴訟の結果と、その後の取り組みに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 ① 1996年(平成8年)に、東京地裁および大阪地裁で和解が成立した。 ② この訴訟を機に、生物由来製品による被害の救済制度や、安全対策が大幅に強化された。 ③ 和解に伴い、製薬企業と国に対し、将来にわたる薬害防止の誓いが立てられた。 ④ この訴訟をきっかけとして、薬局における一般用医薬品の販売が一時全面的に禁止された。

解説

【正解】 4 【設問の意図】 この問題は、HIV訴訟がもたらした「社会的な約束」と「法制度への影響」を問う問題である。 この訴訟が、厚生労働省の玄関にある「誓いの碑」の建立につながった背景を理解しているかが問われる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、④が明白な誤りである。 HIV訴訟の結果として、血液の安全性を守るための「血液新法」の制定や、生物由来製品への規制強化が行われた。一般用医薬品の販売禁止(④)といった極端な措置が取られた事実はない。 【初心者がここで迷う理由】 和解の年(1996年)などの数字に惑わされやすいが、④のような「常識的に考えてあり得ない選択肢」を冷静に見抜けるかがポイントである。 【本番での判断フロー】 1, 1996年(平成8年)和解という基本情報を確認する。 2, 薬害根絶の象徴である「誓いの碑」との関連を思い出す。 3, 法律上の大きな変化(生物由来製品の区分など)を連想する。

問90

CJD訴訟の背景 CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)訴訟に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。 a CJD訴訟の原因となったのは、脳外科手術で使用されたヒト乾燥硬膜である。 b CJDは、ウイルスや細菌ではなく「プリオン」というタンパク質が原因で発生する、進行性の認知症を呈する病気である。 c 被害者は、手術後に何十年もの潜伏期間を経て発症することがあり、追跡調査が困難であった。 d この訴訟は、医療機関の医師のみを被告として提訴されたものである。

  1. ① (a, b)
  2. ② (a, c)(正解)
  3. ③ (b, d)
  4. ④ (c, d)

解説

【正解】 1 【設問の意図】 この問題は、CJD訴訟の原因物質である「ヒト乾燥硬膜」と、その特殊な病因(プリオン)について理解しているかを問う問題である。 他の薬害(ウイルスが原因)との違いを明確にできているかがポイントとなる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、aとbが正しい。 脳を包む膜である「ヒト乾燥硬膜」を移植した際、それが汚染されていたことが原因である。病因の「プリオン」はタンパク質の一種であり、熱などに非常に強く、通常の滅菌では防げないという恐ろしさがある。被告は国とメーカーである(dは誤り)。 【初心者がここで迷う理由】 潜伏期間(c)は実際にあるが、正しい記述の組み合わせとしてaとbがより根幹的な事実であるため、選択に迷う可能性がある(cの追跡調査云々の後半部分は記述として不適切な場合がある)。また、原因を「ウイルス」と勘違いしやすい。 【本番での判断フロー】 1,「CJD=ヒト乾燥硬膜=プリオン」を直結させる。 2, 訴訟の相手は常に「国とメーカー」であることを忘れない。 3, 生物由来製品(ヒトの組織から作られたもの)による被害であることを理解する。

問91

ヒト乾燥硬膜と感染 クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 ① CJDは、ウイルスの一種が原因となって発生する、脳の組織が海綿(スポンジ)状になる進行性の疾患である。 ② 脳外科手術等で用いられたヒト乾燥硬膜を介してCJDに感染したことに対する損害賠償訴訟である。 ③ この訴訟の被告は、ヒト乾燥硬膜の輸入販売業者のみであり、国は含まれていない。 ④ CJDの病因物質は、加熱処理によって容易に不活性化される特性を持つ。

  1. ③(正解)

解説

【正解】 2 【設問の意図】 この問題は、CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)訴訟の「用語の丸暗記」ではなく、「なぜ高度な医療材料が深刻な薬害を引き起こしたのか」という背景を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、「原因物質の正体」と「感染経路」であり、ここを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、ヒト乾燥硬膜を介した感染被害に対する訴訟である②が正しい。 CJDは、タンパク質の一種である「プリオン」が病因物質とされており、ウイルスではない(①は誤り)。また、この訴訟は国および輸入販売業者、製造元を被告としている(③は誤り)。プリオンは通常の加熱処理では不活性化されにくい極めて難分解性の物質である(④は誤り)。 【初心者がここで迷う理由】 「感染症=ウイルスや細菌」という先入観があると、①を正しいと思い込みやすい。また、「薬害訴訟=製薬会社」というイメージが強いと、被告に国が含まれること(監視責任)を見落としがちである。 しかし、本問では「プリオンという特殊な物質」と「国による規制の遅れ」が重要である。この順序を飛ばしてしまうことが、迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1, まず、CJDの原因が「ウイルス」ではなく「プリオン」であることを思い出す。 2, 次に、被害が「脳外科手術でのヒト乾燥硬膜」という特定の医療材料によるものであることを確認する。 3, 被告には、メーカーだけでなく「国」も含まれるという薬害訴訟の共通点を確認する。 4, プリオンは「熱に強い」という特徴を思い出し、消去法で②を選ぶ。

問92

CJD訴訟の経緯と和解 CJD訴訟の和解と、その後の対策に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。 a CJD訴訟は、平成14(2002)年に国および被告企業との間で和解が成立した。 b 和解に際して、国はCJD患者の診断・治療法の研究開発や、将来の薬害防止に向けた体制整備を約束した。 c ヒト乾燥硬膜の原料となった遺体の管理が不十分であったことが、大規模な感染を招いた要因の一つとされている。 d 和解後、CJD被害者を支援するための制度として「小児慢性特定疾病指定」が新たに創設された。

  1. ① (a, b)
  2. ② (a, c)
  3. ③ (b, c)
  4. ④ (c, d)(正解)

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、和解の「日付の暗記」ではなく、「和解によって社会がどう変わったか、何が原因と特定されたか」という歴史的意義を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、「原因(遺体の管理不備)」と「国が約束した具体的対策」である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、原因を指摘したcと、研究開発等の約束をしたbが正しい(組み合わせとしては③が正答に近いが、テキストの記述に基づきb,cの整合性を問う)。 補足:和解は平成14年(aは記述通り)。dについては、CJDは小児特有の病気ではなく、和解に基づき実施されたのは「CJD患者の発生監視」や「専門医による相談体制」などである。 【初心者がここで迷う理由】 「平成14年」などの年号で迷うことが多いが、登録販売者試験では「何が改善されたか」という中身が重視される。 また、薬害の原因が「製造過程のミス」なのか「原料の汚染」なのかの区別が曖昧だと迷いやすい。 【本番での判断フロー】 1, 薬害の教訓として「原料(ヒト由来)の安全性確保」が重要視されるようになった背景を思い出す。 2, 和解の柱が「被害者救済」と「再発防止(研究・監視)」にあることを確認する。 3, 「小児」などの特定の対象に限定した支援制度ではないことを判断する。 4, 文脈として最も誠実な再発防止策を述べているものを選ぶ。

問93

薬事法改正への影響 HIV訴訟およびCJD訴訟を受けて、平成14(2002)年に行われた薬事法(現在の薬機法)改正の主な内容として、正しいものはどれか。 ① 一般用医薬品の販売において、登録販売者制度が新たに創設された。 ② 医薬品の副作用報告制度が、製薬企業のみに義務付けられた。 ③ 生物由来製品の安全対策を強化するため、その定義と規制が新たに設けられた。 ④ 薬害被害者の救済を目的として、副作用被害救済制度が初めて創設された。

  1. ④(正解)

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、法改正の「年号」ではなく、「なぜそのタイミングでその法律が必要だったのか」という因果関係を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、HIVやCJDが「生物(ヒト)由来の原料」から発生したという点である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、生物由来製品に関する規制強化(③)が、HIV・CJD訴訟の教訓による最大の改正点である。 登録販売者制度(①)は平成18年の改正、副作用報告制度は医療従事者にも義務付けられており(②は誤り)、被害救済制度(④)はSMON訴訟を受けた昭和54年の創設である。 【初心者がここで迷う理由】 多くの法改正が重なっているため、どの訴訟がどの改正に紐付いているかが混乱しやすい。 特に「生物由来」という言葉が何を指すのかピンとこないと、他の選択肢に目移りしてしまう。 【本番での判断フロー】 1, HIV(血液)やCJD(硬膜)はすべて「生物由来」の材料であることを結びつける。 2, それらによる悲惨な薬害を二度と起こさないための法整備が平成14年に行われたことを思い出す。 3, 「生物由来製品」というキーワードが含まれる選択肢を優先的に探す。 4, 他の選択肢(救済制度や登録販売者)の創設時期との矛盾を確認する。

問94

副作用救済制度の契機 昭和54(1979)年に「医薬品副作用被害救済制度」が創設される直接の契機となった薬害訴訟はどれか。 ① サリドマイド訴訟 ② スモン訴訟 ③ HIV訴訟 ④ CJD訴訟

  1. ③(正解)

解説

【正解】 2 【設問の意図】 この問題は、訴訟名の「名前の暗記」ではなく、「制度が生まれた社会的必要性」を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、スモン訴訟が「全国規模で多数の被害者を生み、早期救済が切望された」という事実である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、スモン(キノホルム製剤による被害)訴訟が直接の契機となった。 スモン訴訟は昭和40年代から50年代にかけて大きな社会問題となり、その和解を機に、迅速な救済を行うための公的な仕組みとして昭和54年に現在の救済制度の母体が作られた。 【初心者がここで迷う理由】 どの薬害も重大なため、「全部が契機になったのではないか」と迷ってしまう。 しかし、法整備の歴史には必ず「きっかけ(トリガー)」がある。 【本番での判断フロー】 1, 救済制度(昭和54年)と、各訴訟の発生時期を整理する。 2, サリドマイドはそれより早く、HIV・CJDはそれより後(平成)である。 3, 昭和50年代の薬害といえば「スモン」であることを結びつける。 4, 時代背景として、多数の被害者を救うための仕組みが求められた文脈を思い出す。

問95

血液新法の制定 HIV訴訟の和解を踏まえ、血液製剤の安全性の向上や国内自給の確保等を目指して制定された法律はどれか。 ① 薬事法(改正) ② 採血及び供血ああっせん業取締法(改正:通称「血液新法」) ③ 予防接種法 ④ 副作用被害救済基金法

  1. ③(正解)

解説

【正解】 2 【設問の意図】 この問題は、法律名の「暗記」ではなく、「血液という特殊な資源をどう管理すべきか」という教訓を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、輸入血液に頼ったことでHIV被害が拡大したという反省である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、安全供給と国内自給を掲げた「血液新法(②)」が正解である。 HIV訴訟では、海外からの非加熱血液製剤によって感染が広がったため、国内で安全な血液を確保し、かつ献血によって自給すること(国内自給の原則)が再発防止の柱となった。 【初心者がここで迷う理由】 「薬事法」も改正されているため、①と迷うことがある。 しかし、特に「血液」に特化した安全対策と供給体制を定めているのがこの法律の特徴である。 【本番での判断フロー】 1, HIV=血液の薬害であることを再確認する。 2, 再発防止策として「国内で自給する」「安全な献血を推進する」というキーワードを思い出す。 3, それらが盛り込まれたのは「血液」の名を冠する法律であることを判断する。 4, 略称である「血液新法」という言葉を手がかりに選択肢を絞る。

問96

生物由来製品の規制 生物由来製品(ヒトや動物の細胞・組織等に由来する原料を用いた製品)に関する規制として、誤っているものはどれか。 ① 製品の使用による感染症のリスクを完全にゼロにできないため、必要な情報を購入者に提供しなければならない。 ② 薬局や店舗販売業者は、生物由来製品を販売した際、購入者の氏名や住所等の記録を保存する義務がある。 ③ 生物由来製品は、製造から販売、使用に至るまでの追跡(トラッカビリティ)が重要視される。 ④ 一般用医薬品の中には、生物由来製品に指定されているものは現在のところ存在しない。

解説

【正解】 4 【設問の意図】 この問題は、規制の「文言の丸暗記」ではなく、「なぜ記録や追跡が必要なのか」という安全管理の実務を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、一般用医薬品にも生物由来の成分(プラセンタ等)が含まれ得るという事実である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、一般用医薬品にも生物由来製品に指定されているものは存在するため、④が誤り(正解)である。 生物由来製品は、リスクに応じて「生物由来製品」と「特定生物由来製品(よりリスクが高いもの)」に分けられる。医療用が主だが、一般用医薬品の中にも指定されているものがあるため、一律に「存在しない」と断じるのは誤りである。 【初心者がここで迷う理由】 「生物由来=高度な輸血用製剤」というイメージが強すぎると、ドラッグストアで売っている薬には関係ないと思い込んでしまう。 また、記録義務(②)についても、「全ての一般用医薬品」と勘違いして混乱することがある。 【本番での判断フロー】 1, 薬害の教訓から「生物由来=特別な管理(記録・追跡)が必要」という大前提を確認する。 2, 一般用医薬品でも、動物由来の成分が含まれるものがあれば規制の対象になり得ることを考える。 3, 「絶対に存在しない」「一切ない」という極端な表現(④)が含まれる選択肢に注意する。 4, 法律の目的が「万が一の際の追跡調査」であることを思い出し、記録義務があることを正当と判断する。

問97

薬害根絶への誓い 厚生労働省庁舎の正面玄関横に設置された「誓いの碑」に刻まれている内容は、主にどの出来事を教訓としたものか。 ① サリドマイド訴訟の和解 ② スモン訴訟の判決 ③ 薬害エイズ(HIV)訴訟の和解 ④ 薬害ヤコブ(CJD)訴訟の判決

  1. ④(正解)

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、碑の「場所の暗記」ではなく、「国が公式に謝罪し、不退転の決意を示した歴史的転換点」を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、平成11年8月24日に設置されたという日付と、HIV訴訟の意義である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、HIV訴訟の和解(平成8年)を踏まえ、当時の厚生大臣が設置した「薬害エイズ報告書」に基づき、不適切な行政によって薬害を引き起こした反省を込めたものである(③)。 毎年8月24日は「薬害根絶の日」とされ、この碑の前で誓いが新たになされている。 【初心者がここで迷う理由】 どの薬害も「根絶すべき」ものであるため、特定の訴訟に結びつけるのが難しいと感じる。 しかし、厚生労働省(当時の厚生省)が組織として最も深く反省を表明したのがHIV問題であった。 【本番での判断フロー】 1, 厚生労働省の前にある「誓いの碑」は、行政の不作為(やるべきことをやらなかった)を認めたHIV訴訟がきっかけであることを結びつける。 2, 「8月24日」という日付がキーワードになることもある。 3, 薬害根絶という強い言葉が、HIV訴訟の和解から生まれたものであることを確認する。 4, 消去法で、行政責任が最も強く問われた③を選ぶ。

問98

薬害からの教訓と役割 過去の薬害を教訓として、医薬品の販売に関わる専門家(薬剤師・登録販売者)が果たすべき役割として、正しいものの組み合わせはどれか。 a 医薬品は人体にとって異物であり、副作用のリスクを常に孕んでいることを認識して接客する。 b 添付文書に記載された情報は、製薬企業が作成したものであるため、販売者がその内容を疑う必要はない。 c 購入者からの副作用報告があった場合、速やかに国(PMDA)へ報告する体制を整えておく。 d 医薬品の有効性を最優先し、副作用のリスクについては購入者が質問してきた場合のみ説明すればよい。

  1. ① (a, b)
  2. ② (a, c)
  3. ③ (b, c)(正解)
  4. ④ (c, d)

解説

【正解】 2 【設問の意図】 この問題は、過去の事例を「自分事」として捉え、実務での責任感に昇華できているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、「受動的(聞かれたら答える)」ではなく「能動的(リスクを伝える)」な姿勢である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、リスク認識(a)と報告体制(c)が正しい専門家の姿勢である。 bについては、添付文書は最新の知見に基づいて常に更新されるべきものであり、販売者は常に最新情報をチェックし、必要に応じて注意喚起しなければならない。dは、情報提供の義務に反しており、リスクを隠す行為は薬害の拡大を招く恐れがある。 【初心者がここで迷う理由】 「企業の情報を信じる(b)」や「有効性を重視する(d)」といった考え方は、一見すると効率的に見えるため、つい選んでしまいがちである。 しかし、登録販売者の第一の使命は「安全の確保」であることを忘れてはならない。 【本番での判断フロー】 1, 「医薬品=リスク」という基本に立ち返っているaを正しいと判断する。 2, 「副作用報告」という法的な義務と社会的役割を示しているcを正しいと判断する。 3, 「企業の情報を鵜呑みにする(b)」や「リスク説明を後回しにする(d)」という消極的な姿勢を除外する。 4, 正しい姿勢の組み合わせ(a, c)を選択する。

問99

登録販売者の社会的責任 登録販売者が、薬害を未然に防ぐために持つべき「社会的責任」に関する記述のうち、誤っているものはどれか。 ① 医薬品の販売は、単なる商品の売買ではなく、購入者の健康と生命を守る公的な性格を持つ業務である。 ② 薬害の歴史を学ぶことは、過去の悲劇を繰り返さないための倫理観を養う上で不可欠である。 ③ 一般用医薬品は副作用のリスクが低いため、登録販売者が薬害の発生を心配する必要はほとんどない。 ④ 常に最新の安全性情報を収集し、それを購入者への適切なアドバイスに反映させる努力が求められる。

  1. ④(正解)

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、登録販売者の資格の「重み」を正しく理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、「一般用医薬品(OTC)なら安全だ」という過信が、重大な見落としを生むという教訓である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、③が誤り(正解)である。 一般用医薬品であっても、アスピリン喘息や偽アルドステロン症、アナフィラキシーなどの重篤な副作用は発生し得る。また、薬害の歴史(スモンなど)においても、当時は「安全だ」と思われていたものが後に被害を生んだ例がある。登録販売者は、どんな薬であっても薬害の可能性を念頭に置かなければならない。 【初心者がここで迷う理由】 「一般用医薬品はリスクが低いから、登録販売者がそこまで責任を感じる必要はないのではないか」という甘い考えに陥りやすい。 しかし、資格試験においてこの考え方は絶対に否定される。 【本番での判断フロー】 1, 資格の存在意義(国民の健康保持)を思い出す。 2, 薬害の歴史から「どんな薬にもリスクがある」という教訓を適用する。 3, 「心配する必要はほとんどない」という無責任な表現(③)を誤りと判断する。 4, 他の①、②、④が、専門家としての高い倫理観を述べていることを確認する。

問100

医薬品の安全対策強化 医薬品の安全対策を強化するための仕組みとして、正しいものの組み合わせはどれか。 a 医薬品による副作用が疑われる場合、医療関係者(薬剤師・登録販売者等)は国へ報告する義務がある。 b 厚生労働省が発行する「緊急安全性情報(イエローレター)」は、1か月以内に製薬企業から医療機関等へ配布される。 c 登録販売者は、購入者が副作用を疑う症状を訴えた際、速やかに専門医への受診を勧める必要がある。 d 薬害の再発防止のため、国は医薬品の承認前審査のみを徹底し、市販後の監視業務は民間に委ねている。

  1. ① (a, b)
  2. ② (a, c)
  3. ③ (b, c)(正解)
  4. ④ (c, d)

解説

【正解】 2 【設問の意図】 この問題は、安全対策の「制度の名前」だけでなく、「官民が協力してどう命を守るか」という運用の仕組みを理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、「報告義務」と「受診勧奨のスピード感」である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、報告義務(a)と受診勧奨(c)が正しい。 bについては、イエローレター(緊急安全性情報)は、緊急かつ重大な注意喚起であり、4週間(1か月)以内ではなく「15日以内」に配布される。dについては、市販後の監視(副作用情報の収集・評価)こそが国の重要な責務であり、民間任せにすることは過去の薬害の反省から許されない。 【初心者がここで迷う理由】 イエローレターの「15日」や「4週間」という数字の細部で迷うことがある。 また、行政と民間の役割分担が曖昧だと、dのような記述に惑わされやすい。 【本番での判断フロー】 1, 専門家の義務としての「副作用報告(a)」を確実に正しいと判断する。 2, 現場での迅速な対応としての「受診勧奨(c)」を正しいと判断する。 3, 行政が市販後監視を放棄すること(d)は、薬害の歴史上あり得ないことを確認する。 4, 消去法および確信を持って、組み合わせ(a, c)を選択する。