特級ボイラー技士 第3回

問41

自然循環式水管ボイラーにおける蒸気の乾き度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 自然循環式の水管ボイラーでは、蒸気ドラムの蒸気部の容積、水面の広さ及び水面の高さによって蒸気の乾き度に影響する。
  2. 自然循環式の水管ボイラーでは、蒸気ドラムの蒸気部の容積が小さいほど、蒸気の乾き度は向上する。(正解)
  3. 自然循環式の水管ボイラーでは、蒸気ドラムの水面の広さが狭いほど、蒸気の乾き度は向上する。
  4. 自然循環式の水管ボイラーでは、蒸気ドラムの水面の高さが低いほど、蒸気の乾き度は向上する。

解説

■【設問の意図】 自然循環式水管ボイラーにおける蒸気ドラムの構造が蒸気の乾き度に与える影響についての理解度を問うものです。 ■【正解の理由】 自然循環式水管ボイラーでは、蒸気ドラム内の蒸気部の容積、水面の広さ、および水面の高さが、気水分離の効率に直接影響し、結果として発生する蒸気の乾き度を左右します。これらの要素が適切に設計・管理されていることで、蒸気中の水分が効果的に分離され、乾き度の高い蒸気が得られます。したがって、これらの要素が乾き度に影響するという選択肢1の記述は正しいです。 ■【初心者がここで迷う理由】 蒸気の乾き度というと、温度や圧力といった運転条件に目が行きがちですが、ボイラーの構造、特に蒸気ドラムの設計が乾き度に大きく影響することを忘れやすい傾向があります。また、各要素(容積、広さ、高さ)が具体的にどのように影響するのかを深く理解していないと、漠然とした知識になりがちで、誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。例えば、蒸気部の容積や水面の広さは大きい方が、水面の高さは高い方が、気水分離が良好になり乾き度が向上します。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文が自然循環式水管ボイラーの蒸気乾き度に関する記述であることを確認します。 2. 蒸気ドラムの構造(蒸気部の容積、水面の広さ、水面の高さ)が気水分離に影響し、それが乾き度に直結するという基本原理を思い出します。 3. これらの要素が適切であれば気水分離が良好に行われ、乾き度の高い蒸気が得られることを確認します。 4. 選択肢1がこの原理と合致しており、他の選択肢が逆の記述や不適切な記述をしていることを確認し、正解と判断します。

問42

自然循環式の水管ボイラーにおいて、蒸気とともに蒸気ドラムから出る水滴の量が、蒸気部の容積当たりの蒸発量の限界値を超えると急に著しく増大する現象を何というか。

  1. 気水共発
  2. キャリオーバ(正解)
  3. フォーミング
  4. ボイルオーバ

解説

■【設問の意図】 自然循環式水管ボイラーにおける特定の現象「気水共発」の定義を正確に理解しているかを確認するものです。ボイラーの安全かつ効率的な運転には、このような現象の知識が不可欠です。 ■【正解の理由】 問題文に記述されている「蒸気とともに蒸気ドラムから出る水滴の量が、蒸気部の容積当たりの蒸発量の限界値を超えると急に著しく増大する現象」は、まさに「気水共発(プライミング)」の定義そのものです。これは、蒸発量が急激に増加した際に、ドラム内の気水分離が追いつかなくなり、大量の水滴が蒸気とともに持ち出される現象を指します。 ■【初心者がここで迷う理由】 「キャリオーバ」という言葉も蒸気中に水滴が混じる現象全般を指すため、混同しやすいかもしれません。しかし、キャリオーバは「気水共発」「フォーミング」など、様々な原因によって引き起こされる現象の総称であり、問題文の具体的な定義は「気水共発」に限定されます。また、「フォーミング」は水面に泡が安定して形成される現象であり、水滴の急激な増大とは異なります。「ボイルオーバ」や「水撃作用」は全く異なる現象であるため、これらで迷うことは少ないでしょう。 ■【本番での判断フロー】 問題文の「蒸気部の容積当たりの蒸発量の限界値を超えると急に著しく増大する現象」という具体的な記述に注目します。この定義に合致する用語は「気水共発」であることを即座に判断します。「キャリオーバ」はより広範な現象を指すため、この具体的な定義には当てはまらないと判断できます。

問43

自然循環式水管ボイラーにおける気水分離に関する記述として、誤っているものは次のうちどれか。

  1. 気水分離は、蒸気と水との密度の差が大きいほど容易である。
  2. 高圧になるほど、蒸気と水との密度の差は小さくなる。
  3. 高圧になるほど、気水分離は容易になる。
  4. ドラムの構造上、蒸気部の容積には限界があるため、サイクロン分離器などを備えることが多い。(正解)

解説

■【設問の意図】 この設問は、自然循環式水管ボイラーにおける気水分離の原理と、特に高圧環境下でのその特性に関する理解度を問うものです。ボイラーの安全かつ効率的な運転において、適切な気水分離は非常に重要であり、そのメカニズムを正確に把握しているかを確認することが目的です。 ■【正解の理由】 「気水分離するには、蒸気と水との密度の差が大きいほど容易であるが、高圧になるほど密度の差が小さくなるため分離しにくくなる。」という記述の通り、高圧になるほど蒸気と水の密度差が小さくなるため、気水分離は困難になります。したがって、「高圧になるほど、気水分離は容易になる」という選択肢は誤りです。 ■【初心者がここで迷う理由】 初心者は、高圧環境下では一般的に流体の挙動が安定すると誤解したり、単純に「高圧=高性能」というイメージから、気水分離も容易になると考えがちです。しかし、高圧になると蒸気と水の密度差が小さくなるという物理的な特性が、気水分離の難易度に直接影響することを理解していないと、この問題で迷う可能性があります。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文で「誤っているもの」を問われていることを確認する。 2. 各選択肢を読み、ボイラーの気水分離に関する知識と照合する。 3. 選択肢1と2は、蒸気と水の密度差が気水分離に影響すること、および高圧で密度差が小さくなることを述べており、これらは正しい知識であると判断する。 4. 選択肢3は、「高圧になるほど、気水分離は容易になる」と述べている。高圧で密度差が小さくなることを考慮すると、分離は難しくなるはずなので、この記述が誤りであると判断する。 5. 選択肢4は、気水分離器の必要性について述べており、これは正しい知識であると判断する。 6. 誤っている記述である選択肢3を正解として選択する。

問44

自然循環式水管ボイラーの気水分離器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. ドラムの蒸気部の容積には限界があるため、サイクロン分離器や波形板などのドライヤを備えることが多い。
  2. サイクロン分離器は、気水分離器の一種である。
  3. 波形板は、気水分離器の一種である。
  4. 気水分離器は、蒸気と水との密度の差が大きい低圧ボイラーで特に重要となる。

解説

■【設問の意図】 自然循環式水管ボイラーにおける気水分離の必要性とその装置の種類、およびボイラー圧力と気水分離の難易度の関係について理解しているかを問う問題です。 ■【正解の理由】 選択肢4が誤りです。気水分離は蒸気と水との密度の差が大きいほど容易になります。高圧ボイラーになるほど蒸気と水との密度の差が小さくなるため、気水分離が難しくなり、気水分離器の重要性が増します。したがって、「蒸気と水との密度の差が大きい低圧ボイラーで特に重要となる」という記述は不適切です。 選択肢1、2、3は、ドラムの蒸気部の容積限界と、サイクロン分離器や波形板が気水分離器(ドライヤ)として用いられることについて述べており、これらは正しい記述です。 ■【初心者がここで迷う理由】 気水分離器の具体的な機能や、ボイラー圧力と気水分離の難易度の関係を混同しやすい点が挙げられます。特に「密度の差が大きいほど容易」という原則と、それが「高圧ボイラーで重要になる」という結論を結びつける論理が曖昧だと、低圧ボイラーと高圧ボイラーのどちらで気水分離器が「特に重要」になるのか判断に迷うことがあります。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文が「誤っているもの」を求めていることを確認する。 2. 各選択肢を一つずつ確認する。 3. 選択肢1:「ドラムの蒸気部の容積限界」と「気水分離器の設置」はテキスト通りで正しい。 4. 選択肢2:「サイクロン分離器」が気水分離器の一種であることはテキスト通りで正しい。 5. 選択肢3:「波形板」が気水分離器の一種であることもテキスト通りで正しい。 6. 選択肢4:「蒸気と水との密度の差が大きいほど分離は容易」であり、「高圧になるほど密度の差が小さくなるため分離しにくくなる」というテキストの内容を思い出す。分離しにくい高圧ボイラーでこそ気水分離器は「特に重要」になるため、「低圧ボイラーで特に重要」という記述は誤りであると判断する。 7. 誤っている選択肢として4を選び、解答とする。

問45

自然循環式水管ボイラーにおいて、蒸気流量が急増した際に生じる現象として、正しいものは次のうちどれか。

  1. 蒸発作用が激しくなり、ボイラー水の蒸気体積率が増加するため、ドラム水位は一時的に低下する。
  2. 蒸発作用が抑制され、ボイラー水の蒸気体積率が減少するため、ドラム水位は一時的に上昇する。(正解)
  3. 蒸発作用が激しくなるが、ボイラー水の蒸気体積率は変化しないため、ドラム水位は一定に保たれる。
  4. 蒸発作用が激しくなり、ボイラー水の蒸気体積率が増加するため、ドラム水位は一時的に上昇する。

解説

■【設問の意図】 自然循環式水管ボイラーにおける負荷変動時の水位挙動、特に蒸気流量急増時の現象を理解しているか問う。 ■【正解の理由】 蒸気流量が急増すると、ボイラー内の蒸発作用が活発になり、水中に含まれる蒸気の泡(気泡)の量が増加します。これにより、ボイラー水全体の密度が低下し、見かけ上の体積が膨張するため、ドラム水位は一時的に低下します。これは「水位逆応答」と呼ばれる現象の一部です。 ■【初心者がここで迷う理由】 蒸気流量が増えるということは、ボイラーから水が減る方向なので水位が低下するという直感的な理解は正しいですが、そのメカニズムとして「蒸気体積率の増加」による見かけ上の水位低下(一時的な膨張)が関与している点を理解していないと、単に水が減るから水位が下がるという誤解を招きやすいです。また、給水量の増加と混同し、水位が上昇すると誤解することもあります。 ■【本番での判断フロー】 1. 「自然循環式水管ボイラー」「蒸気流量急増」というキーワードに注目する。 2. 蒸気流量急増は「負荷急増」を意味し、蒸発作用が激しくなることを連想する。 3. 蒸発作用が激しくなると、水中の蒸気泡が増え、「蒸気体積率が増加」する。 4. 蒸気体積率の増加は、見かけ上の水位を「一時的に低下」させる(水位逆応答)。 5. これらの要素が全て含まれている選択肢が正解となる。

問46

自然循環式水管ボイラーのドラム水位逆応答に関する記述として、適切なものは次のうちどれか。

  1. 気水分離が良好な構造では、ドラム水位逆応答は著しくなる。
  2. 蒸気の比体積が小さい高圧ボイラーほど、ドラム水位逆応答は著しくなる。
  3. 気水分離が良好な構造では、ドラム水位逆応答は少なくなる。
  4. 蒸気の比体積が大きい高圧ボイラーほど、ドラム水位逆応答は少なくなる。(正解)

解説

■【設問の意図】 自然循環式水管ボイラーにおけるドラム水位逆応答の発生メカニズムとその影響要因に関する理解度を問うものです。特に、気水分離の構造やボイラーの圧力(蒸気の比体積)が水位逆応答にどのように影響するかを正確に把握しているかを確認します。 ■【正解の理由】 自然循環式水管ボイラーのドラム水位逆応答は、蒸気流量の急増などにより蒸発作用が激しくなった際に、ボイラー水中の蒸気体積率が増加することで一時的に水位が低下する現象です。この現象は、気水分離が良好な構造であれば、蒸気と水の分離が効率的に行われるため、蒸気体積率の急激な変化が緩和され、水位逆応答は少なくなる傾向にあります。また、蒸気の比体積が大きい低圧ボイラーほど、同じ質量流量の蒸気でも体積変化が大きくなるため、水位逆応答は著しくなります。したがって、選択肢3の「気水分離が良好な構造では、ドラム水位逆応答は少なくなる」が正しい記述です。 ■【初心者がここで迷う理由】 ドラム水位逆応答の現象自体が直感的に理解しにくいため、その特性を混同しやすい点が挙げられます。特に、「気水分離が良好」という条件が水位変動を「少なくする」のか「著しくする」のか、また「高圧」と「低圧」のどちらで水位逆応答が「著しくなる」のかについて、逆の解釈をしてしまうことがあります。蒸気の比体積と圧力の関係(高圧ほど比体積が小さい)を正確に理解していないと、低圧ボイラーでの影響が大きくなる理由が分かりにくいことも混乱の原因となります。 ■【本番での判断フロー】 1. **問題文の確認**: 「自然循環式水管ボイラーのドラム水位逆応答」に関する「適切な記述」を問われていることを確認します。 2. **知識の想起**: ドラム水位逆応答は、蒸気流量急増時に蒸気体積率が増加して一時的に水位が低下する現象であることを思い出します。 3. **影響要因の確認**: * **気水分離の良否**: 気水分離が「良好」であれば、蒸気と水の分離がスムーズに行われ、水位変動は「少なくなる」はずです。 * **圧力(蒸気の比体積)**: 蒸気の比体積が「大きい」ほど、同じ質量でも体積変化が大きく、水位変動は「著しくなる」はずです。比体積が大きいのは「低圧ボイラー」です。 4. **選択肢の評価**: * 選択肢1: 「気水分離が良好な構造では、ドラム水位逆応答は著しくなる。」 → 誤り(少なくなる)。 * 選択肢2: 「蒸気の比体積が小さい高圧ボイラーほど、ドラム水位逆応答は著しくなる。」 → 誤り(高圧では少なくなる)。 * 選択肢3: 「気水分離が良好な構造では、ドラム水位逆応答は少なくなる。」 → 正しい。 * 選択肢4: 「蒸気の比体積が大きい高圧ボイラーほど、ドラム水位逆応答は少なくなる。」 → 誤り(比体積が大きいのは低圧で、その場合著しくなる)。 5. **最終判断**: 選択肢3が知識と完全に合致するため、これを正解と判断します。

問47

1N・mと等しい単位として、正しいものは次のうちどれか。

  1. 1J
  2. 1W(正解)
  3. 1Pa
  4. 1V

解説

■【設問の意図】 物理量の単位換算に関する基本的な知識を問う。特に、仕事やエネルギーの単位であるジュール(J)と、力のモーメントや仕事の定義に用いられるニュートンメートル(N・m)の関係を理解しているかを確認する。 ■【正解の理由】 1N・mは、1ニュートンの力が作用して1メートル移動したときにされる仕事、または1ニュートンの力が1メートルの距離で作用するモーメントを表す。国際単位系(SI)において、仕事やエネルギーの単位であるジュール(J)は、このN・mと等価であると定義されている。したがって、1N・m = 1Jが正しい。 ■【初心者がここで迷う理由】 N・mが力のモーメントの単位としても使われるため、仕事やエネルギーの単位であるJと直結しないと感じるかもしれない。また、W(ワット)が仕事率の単位、Pa(パスカル)が圧力の単位、V(ボルト)が電圧の単位であるため、これらの単位との混同も考えられる。 ■【本番での判断フロー】 1. 設問が1N・mと等しい単位を問うていることを確認する。 2. N・mが仕事やエネルギーの単位であるJ(ジュール)と等価であることを思い出す。 3. 各選択肢の単位が何を表すかを考える(Jはエネルギー、Wは仕事率、Paは圧力、Vは電圧)。 4. 1N・m = 1Jであるため、選択肢1が正しいと判断する。

問48

1kWは、次のうちどれに相当するか。

  1. 1.0MJ/h
  2. 3.6MJ/h
  3. 10.0MJ/h(正解)
  4. 36.0MJ/h

解説

■【設問の意図】 1kWとMJ/hの間の基本的なエネルギー単位換算の知識を問う。ボイラーの性能計算や熱量管理において、これらの単位換算は基礎となるため、正確な理解が求められる。 ■【正解の理由】 電力の単位である1kWは、1秒間に1kJのエネルギーを消費または生成する能力を示す。これを時間単位に換算すると、1kW = 1kJ/sとなる。1時間は3600秒であるため、1kW = 1kJ/s × 3600s/h = 3600kJ/hとなる。さらに、1MJ = 1000kJであるため、3600kJ/h = 3.6MJ/hとなる。したがって、1kWは3.6MJ/hに相当する。 ■【初心者がここで迷う理由】 kWとMJ/hの換算は、秒と時間の換算(3600)と、kJとMJの換算(1000)が組み合わさっているため、計算ミスや単位の混同が生じやすい。特に、3.6という数字はよく出てくるため、どの単位間の換算で使われるのかを正確に覚えていないと、他の選択肢に惑わされる可能性がある。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文が1kWの熱量換算を問うていることを確認する。 2. まず、1kWが1kJ/sであることを思い出す。 3. 次に、秒から時間への換算を考える。1時間は3600秒なので、1kW = 1kJ/s × 3600s/h = 3600kJ/h。 4. 最後に、kJからMJへの換算を考える。1MJ = 1000kJなので、3600kJ/h = 3.6MJ/h。 5. この結果と一致する選択肢を選ぶ。

問49

放射エネルギーに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 物体表面の単位面積から単位時間に放出される放射エネルギーを放射エネルギー流束または放射度という。
  2. 放射エネルギー流束の値は、物体表面の絶対温度の4乗に比例する。
  3. 実際の物体面からの放射エネルギー流束は、同一温度の黒体面からの放射エネルギー流束と比べて常に大きい。
  4. 黒体とは、あらゆる波長の電磁波を完全に吸収し、また放出する理想的な物体である。(正解)

解説

■【設問の意図】 この設問は、熱力学・伝熱の分野における放射伝熱の基本概念、特に放射エネルギー流束(放射度)の定義、絶対温度との関係、および黒体放射との比較に関する知識を問うものです。ボイラーの伝熱現象を理解する上で不可欠な基礎知識が問われています。 ■【正解の理由】 放射エネルギーに関する記述として、「実際の物体面からの放射エネルギー流束は、同一温度の黒体面からの放射エネルギー流束と比べて常に小さい」が正しいです。黒体は理想的な放射体であり、同じ温度であれば他のいかなる物体よりも多くの放射エネルギーを放出します。したがって、選択肢3の「常に大きい」という記述は誤りです。 ■【初心者がここで迷う理由】 初心者は、放射伝熱の概念自体が抽象的であるため、黒体という理想的な物体と実際の物体の放射特性の違いを混同しやすい傾向があります。特に「黒体」という言葉から、単に「黒い物体」を連想し、その放射特性を正確に理解していない場合、選択肢の正誤判断に迷うことがあります。また、温度の4乗に比例するというステファン・ボルツマンの法則は知っていても、放射率の概念が抜け落ちていると、黒体と実在体の比較が難しくなります。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文が「放射エネルギーに関する誤っている記述」を求めていることを確認する。 2. 各選択肢を順に検討する。 3. 選択肢1と2は、放射エネルギー流束の定義と絶対温度の4乗に比例するという基本法則であり、正しい記述であると判断する。 4. 選択肢3は、実際の物体と黒体の放射エネルギー流束の比較である。黒体は理想的な放射体であり、同じ温度であれば最大の放射エネルギーを放出することを思い出す。したがって、実際の物体は黒体よりも放射エネルギーが「小さい」はずなので、この選択肢の「常に大きい」は誤りであると判断し、これが正解と特定する。 5. 念のため選択肢4も確認し、黒体の定義として正しいことを確認する。

問50

ボイラーの熱力学・伝熱に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 定圧比熱は、一定体積のもとで温度を1K(℃)上げるのに要する熱量である。
  2. 定容比熱は、一定圧力のもとで温度を1K(℃)上げるのに要する熱量である。
  3. 定圧比熱と定容比熱の比を、熱伝導率という。
  4. 定圧比熱は、一定圧力のもとで温度を1K(℃)上げるのに要する熱量である。

解説

■【設問の意図】 ボイラーの熱力学における基本的な概念である定圧比熱と定容比熱の定義、およびそれらの関係性について正確な知識があるかを確認することが意図されています。特に、それぞれの比熱がどのような条件下で定義されるかを理解しているかが問われます。 ■【正解の理由】 選択肢4が正しい記述です。定圧比熱は、提供された情報にある通り「一定圧力のもとで温度1K(℃)上げるのに要する熱量」と定義されます。他の選択肢は、定圧比熱と定容比熱の定義を混同させたり、比熱比の名称を誤って記述したりしています。 ■【初心者がここで迷う理由】 初心者は、定圧比熱と定容比熱の定義における「一定圧力」と「一定体積」の条件を混同しやすいです。また、比熱比という用語を知らず、他の熱力学的な用語(熱伝導率など)と誤って結びつけてしまうこともあります。それぞれの比熱がどのような物理的状況下で測定されるのかを正確に理解していないと、選択肢の判断に迷いが生じます。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文が「熱力学・伝熱に関する正しい記述」を求めていることを確認する。 2. 各選択肢を読み、定圧比熱と定容比熱の定義に注目する。 3. 提供された知識「定圧比熱は一定圧力のもとで温度1K(℃)上げるのに要する熱量」「定容比熱は一定体積のもとで温度1K(℃)上げるのに要する熱量」「定圧比熱と定容比熱の比を比熱比という」を思い出す。 4. 選択肢1と2は、それぞれの比熱の定義における条件(圧力と体積)が入れ替わっているため誤りだと判断する。 5. 選択肢3は、比熱比を「熱伝導率」と誤って記述しているため誤りだと判断する。 6. 選択肢4は、定圧比熱の定義と完全に一致するため、これが正解であると判断する。

問51

ガスの状態式に関する記述として、正しいものは次のうちどれか。

  1. ガスの状態式において、等圧変化はPV = 定数である。
  2. ガスの状態式において、等温変化はV/T = 定数である。
  3. ガスの状態式において、等圧変化はV/T = 定数であり、等温変化はPV = 定数である。
  4. ガスの状態式において、等圧変化はP/T = 定数であり、等温変化はV/T = 定数である。(正解)

解説

■【設問の意図】 ガスの状態変化における基本法則(ボイル・シャルルの法則)の理解度を問うものです。特に、等圧変化(シャルルの法則)と等温変化(ボイルの法則)における圧力、体積、絶対温度の関係式を正確に覚えているかを確認します。 ■【正解の理由】 ガスの状態変化に関する基本法則は以下の通りです。 ・等圧変化(シャルルの法則):圧力が一定の場合、ガスの体積は絶対温度に比例します。したがって、V/T = 定数 となります。 ・等温変化(ボイルの法則):温度が一定の場合、ガスの体積は圧力に反比例します。したがって、PV = 定数 となります。 選択肢3はこれらの法則を正確に記述しているため、正解です。 ■【初心者がここで迷う理由】 ガスの状態変化の法則は複数あり、それぞれが圧力(P)、体積(V)、絶対温度(T)のどの要素が一定であるか、そして残りの要素がどのように関係するかを覚える必要があります。特に、等圧変化と等温変化の式が似ているため、混同しやすい点が挙げられます。また、定数となる組み合わせを正確に記憶していないと、誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文で「等圧変化」と「等温変化」のガスの状態式について問われていることを確認します。 2. 「等圧変化」はシャルルの法則であり、圧力が一定の場合、体積Vと絶対温度Tが比例関係にあることを思い出します。これにより、V/T = 定数 が正しいと判断します。 3. 「等温変化」はボイルの法則であり、温度が一定の場合、圧力Pと体積Vが反比例関係にあることを思い出します。これにより、PV = 定数 が正しいと判断します。 4. これらの両方を正しく記述している選択肢を探し、それが正解となります。

問52

伝熱計算における対数平均温度差Δtmの計算式として、正しいものは次のうちどれか。

  1. Δtm = (Δt1 + Δt2) / 2
  2. Δtm = (Δt1 - Δt2) / (Δt1 / Δt2)
  3. Δtm = (Δt1 - Δt2) / ln(Δt1 / Δt2)
  4. Δtm = ln(Δt1 / Δt2) / (Δt1 - Δt2)(正解)

解説

■【設問の意図】 伝熱計算において重要な対数平均温度差の計算式に関する正確な知識を問うものです。この式は熱交換器の設計や性能評価に不可欠であり、その理解はボイラー技士にとって基礎的ながらも重要なスキルとなります。 ■【正解の理由】 対数平均温度差Δtmは、熱交換器における温度差の平均値を表すもので、以下の式で求められます。 Δtm = (Δt1 - Δt2) / ln(Δt1 / Δt2) ここで、Δt1とΔt2は熱交換器の両端における温度差を示します。この式は、熱交換器内の温度変化が対数的に推移することを考慮したものです。 ■【初心者がここで迷う理由】 対数平均温度差の計算式は、算術平均温度差と異なり、対数関数(ln)を含むため、式の形を正確に記憶するのが難しいと感じるかもしれません。特に、分子が(Δt1 - Δt2)であるのに対し、分母がln(Δt1 / Δt2)であるという構造や、Δt1とΔt2の順序を混同しやすい点が挙げられます。また、ln(自然対数)の概念自体に不慣れな場合、さらに混乱を招くことがあります。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文が「対数平均温度差」を問うていることを確認する。 2. 対数平均温度差の公式「Δtm = (Δt1 - Δt2) / ln(Δt1 / Δt2)」を頭の中で正確に再現する。 3. 各選択肢と再現した公式を比較する。特に、分子が温度差の「引き算」、分母が温度差の「比の自然対数」であることを確認する。 4. 正しい形式の選択肢を選び、他の選択肢が算術平均や誤った対数表現でないかを確認して最終的な解答とする。

問53

湿度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 相対湿度は、ある温度の湿り空気中の水蒸気の分圧とその温度に相当する水蒸気の飽和圧力との比である。
  2. 絶対湿度は、ある一定の体積の湿り空気に含まれる水蒸気の量と乾き空気の量との質量比である。(正解)
  3. 相対湿度は、ある一定の体積の湿り空気に含まれる水蒸気の量と乾き空気の量との質量比である。
  4. 絶対湿度は、ある温度の湿り空気中の水蒸気の分圧とその温度に相当する水蒸気の飽和圧力との比である。
  5. 相対湿度は、乾き空気1kgに含まれる水蒸気の質量をkgで表したものである。

解説

■【設問の意図】 この設問は、ボイラーの熱力学・伝熱の分野における「相対湿度」と「絶対湿度」の基本的な定義を正確に理解しているかを問うものです。これらの概念は、燃焼空気の管理や排ガス中の水分量など、ボイラー運転の効率や環境影響を評価する上で重要となります。 ■【正解の理由】 選択肢1が正しい記述です。相対湿度は、ある温度の湿り空気中の水蒸気の分圧とその温度に相当する水蒸気の飽和圧力との比として定義されます。これは、空気中の水蒸気がどれだけ飽和状態に近いかを示す指標です。 ■【初心者がここで迷う理由】 初心者は、相対湿度と絶対湿度の定義を混同しやすい傾向があります。特に、「分圧と飽和圧力の比」と「質量比」という表現の違いを正確に把握していないと、誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。また、選択肢3と4のように、それぞれの定義が入れ替わって記述されている場合も多いため、注意が必要です。選択肢5は、絶対湿度の定義に似ていますが、「乾き空気1kgに含まれる水蒸気の質量」という表現は、厳密には「混合比」と呼ばれる別の概念です。 ■【本番での判断フロー】 1. まず、「相対湿度」と「絶対湿度」それぞれのキーワードを思い出す。 2. 「相対湿度」は「分圧」と「飽和圧力」の「比」であると記憶しているか確認する。 3. 「絶対湿度」は「水蒸気の量」と「乾き空気の量」の「質量比」であると記憶しているか確認する。 4. 各選択肢を読み、それぞれの定義が正しく記述されているか照合する。 5. 選択肢1は相対湿度の正しい定義、選択肢2は絶対湿度の正しい定義であるため、この問題では選択肢1が正解となります。もし両方の定義を問う問題であれば、それぞれの正しい定義を含む選択肢を探します。

問54

応力除去焼鈍に関する記述として、適切なものは次のうちどれか。

  1. 炭素鋼の内部応力除去のため、A1変態温度以下の600~650℃に加熱後冷却する応力除去焼鈍が行われる。
  2. 炭素鋼の内部応力除去のため、A1変態温度以上の700~750℃に加熱後冷却する応力除去焼鈍が行われる。(正解)
  3. 炭素鋼の表面硬化のため、A1変態温度以下の600~650℃に加熱後冷却する応力除去焼鈍が行われる。
  4. 炭素鋼の内部応力除去のため、A1変態温度以下の300~400℃に加熱後冷却する応力除去焼鈍が行われる。

解説

■【設問の意図】 この設問は、ボイラー材料の熱処理の一つである応力除去焼鈍の目的と適切な実施条件(温度範囲)に関する知識を問うものです。特に、炭素鋼の内部応力を除去するための熱処理の基本を理解しているかを確認します。 ■【正解の理由】 応力除去焼鈍は、溶接や加工によって材料内部に残留する応力を緩和することを目的とした熱処理です。炭素鋼の場合、A1変態点(約727℃)以下の温度で加熱することで、組織変化を伴わずに応力のみを緩和します。一般的に、600~650℃の範囲で加熱し、その後徐冷することで効果的に応力を除去できます。選択肢1は、この目的と適切な温度範囲を正確に記述しています。 ■【初心者がここで迷う理由】 初心者は、熱処理の種類とその目的、適切な温度範囲を混同しやすいです。特に、焼入れ、焼戻し、焼なまし、焼鈍といった様々な熱処理の名称と、それぞれがA1変態点より上か下か、どのような温度で実施されるか、どのような効果があるかを正確に覚えるのが難しいと感じるでしょう。また、応力除去焼鈍の「応力除去」という目的と、そのための「A1変態温度以下」という条件、具体的な「600~650℃」という温度範囲を正確に結びつけることができない場合があります。 ■【本番での判断フロー】 1. **問題文の確認**: 「応力除去焼鈍」に関する適切な記述を求めていることを確認します。 2. **目的の確認**: 応力除去焼鈍の目的は「内部応力の除去」であることを思い出します。これにより、選択肢3の「表面硬化」は不適切と判断できます。 3. **温度範囲の確認**: 応力除去焼鈍は、組織変化を伴わないように「A1変態温度以下」で行われることを思い出します。これにより、選択肢2の「A1変態温度以上」は不適切と判断できます。 4. **具体的な温度の確認**: 炭素鋼の応力除去焼鈍の具体的な温度範囲が「600~650℃」であることを思い出します。これにより、選択肢4の「300~400℃」は低すぎるため不適切と判断できます。 5. **最終確認**: 選択肢1が、目的(内部応力除去)、条件(A1変態温度以下)、具体的な温度範囲(600~650℃)の全てにおいて正しい記述であることを確認し、正解とします。

問55

ボイラー材料の「疲れ」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 疲れとは、繰返し応力により引張強さよりも低い応力で材料が破壊する現象である。
  2. 疲れは、S-N曲線で示され、疲れ破壊の生じない応力の限界を疲れ限度という。
  3. 一般的な鉄鋼材料の疲れ限度は、引張強さの0.4~0.6程度である。
  4. 疲れ限度は、材料の引張強さよりも高い応力で生じる。

解説

■【設問の意図】 ボイラー材料の「疲れ」に関する基本的な知識を問うている。疲れの定義、S-N曲線、疲れ限度、そして一般的な鉄鋼材料における疲れ限度の目安について理解しているかを確認する。 ■【正解の理由】 選択肢4「疲れ限度は、材料の引張強さよりも高い応力で生じる。」が誤りである。疲れ限度とは、繰返し応力によっても材料が破壊しない応力の限界を指す。疲れ破壊は、材料の引張強さよりも低い応力で発生する現象であるため、疲れ限度が引張強さよりも高い応力で生じることはない。疲れ限度は、引張強さよりも低い応力範囲で設定される。 ■【初心者がここで迷う理由】 「疲れ限度」という言葉の定義と、「引張強さ」との関係性を混同しやすい点が挙げられる。疲れ破壊が「引張強さよりも低い応力」で発生するという事実と、その限界である「疲れ限度」がどのような値になるのかを正確に理解していないと、誤った選択肢を選んでしまう可能性がある。特に、一般的に強度の限界として認識される引張強さとの比較で、疲れ限度がそれよりも低い応力で定義される点を理解しにくいかもしれない。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文で「疲れ」に関する誤った記述を求めていることを確認する。 2. 各選択肢を読み、疲れの定義、S-N曲線、疲れ限度、および鉄鋼材料の疲れ限度の目安について、自身の知識と照らし合わせる。 3. 「疲れとは、繰返し応力により引張強さよりも低い応力で材料が破壊する現象」という基本定義を思い出す。 4. 選択肢4の「疲れ限度は、材料の引張強さよりも高い応力で生じる」という記述が、疲れ破壊が引張強さより低い応力で起こるという事実と矛盾することに気づく。疲れ限度は破壊しない限界なので、引張強さより高い応力で生じることはありえない。 5. したがって、選択肢4が誤りであると判断し、正解とする。

問56

ボイラー材料の熱応力に関する記述として、誤っているものは次のうちどれか。

  1. 熱応力は、ボイラーの部分に温度差があるときに生じる応力である。
  2. 熱応力は、材料の伸びが拘束されることで発生する。
  3. 炭素鋼の場合、温度差4℃につき約1N/mm²の熱応力が発生する。
  4. 熱応力は、主に材料の降伏点の上昇によって生じる。

解説

■【設問の意図】 熱応力の定義とその発生メカニズム、および炭素鋼における具体的な発生応力値に関する正確な知識を問うものです。ボイラーの安全な運転には、熱応力に関する理解が不可欠です。 ■【正解の理由】 選択肢4「熱応力は、主に材料の降伏点の上昇によって生じる。」が誤りです。熱応力は、ボイラーの部分に温度差があるときに、材料の伸びが拘束されることで発生する応力であり、材料の降伏点の上昇が直接的な原因ではありません。降伏点の上昇は材料の強度特性の変化であり、熱応力の発生メカニズムとは異なります。 ■【初心者がここで迷う理由】 熱応力は温度変化に伴う材料の挙動に関連するため、材料の機械的性質(引張強さ、降伏点など)の変化と混同しやすいことがあります。特に、温度変化が材料強度に影響を与えることは事実であるため、「降伏点の上昇」という記述が、一見すると熱応力と関連があるように感じられ、誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。 ■【本番での判断フロー】 1. まず、問題文が「熱応力に関する記述として、誤っているもの」を求めていることを確認します。 2. 提示された知識「熱応力とは、ボイラーの部分に温度差があるときに、伸びが拘束されることで生じる応力。炭素鋼では温度差4℃につき約1N/mm²。」を頭に置きます。 3. 各選択肢をこの知識と照らし合わせます。 * 選択肢1「熱応力は、ボイラーの部分に温度差があるときに生じる応力である。」→ 正しい記述です。 * 選択肢2「熱応力は、材料の伸びが拘束されることで発生する。」→ 正しい記述です。 * 選択肢3「炭素鋼の場合、温度差4℃につき約1N/mm²の熱応力が発生する。」→ 正しい記述です。 * 選択肢4「熱応力は、主に材料の降伏点の上昇によって生じる。」→ 熱応力の定義や発生メカニズムとは直接関係がなく、材料の機械的性質の変化を述べているため、これが誤りであると判断します。

問57

炭素鋼の炭素量と機械的性質に関する記述として、正しいものは次のうちどれか。

  1. 炭素量が多くなると、硬度及び強度は上昇し、伸びは減少する。
  2. 炭素量が多くなると、硬度及び強度は上昇し、伸びも上昇する。(正解)
  3. 炭素量が多くなると、硬度及び強度は減少し、伸びは上昇する。
  4. 炭素量が多くなると、硬度及び強度は減少し、伸びも減少する。
  5. 炭素量が多くなると、硬度は上昇し、強度は減少し、伸びは減少する。

解説

■【設問の意図】 炭素鋼の主要な合金元素である炭素の含有量が、材料の機械的性質(硬度、強度、伸び)にどのように影響するかを理解しているかを確認することが意図されています。これはボイラー材料の選定や特性評価において基礎的な知識となります。 ■【正解の理由】 炭素鋼において、炭素量が増加すると、鋼の結晶構造が変化し、硬さ(硬度)と引っ張りに対する抵抗力(強度)が増大します。これは、炭素原子が鉄の結晶格子間に侵入し、転位の移動を妨げるためです。一方で、材料の変形能力(伸び)は、炭素量が増えることで低下します。これは、材料が硬く強くなる反面、脆性が増すためです。したがって、「炭素量が多くなると、硬度及び強度は上昇し、伸びは減少する」という記述が正しいです。 ■【初心者がここで迷う理由】 初心者は、材料の性質が単一の傾向で変化すると考えがちで、硬度や強度の上昇に伴い、伸びも上昇すると誤解することがあります。また、炭素量の増減が硬度、強度、伸びのそれぞれにどのような影響を与えるか、正確な関係性を混同しやすい傾向があります。特に「伸び」が減少するという点が直感に反するように感じられるため、間違いやすいポイントです。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文で「炭素鋼の炭素量と機械的性質」の関係が問われていることを確認する。 2. 炭素量が増加した際の「硬度」「強度」「伸び」の基本的な変化を思い出す。 * 硬度:炭素量↑ → 硬度↑ * 強度:炭素量↑ → 強度↑ * 伸び:炭素量↑ → 伸び↓ 3. この基本原則に合致する選択肢を探す。 4. 「硬度及び強度は上昇し、伸びは減少する」という選択肢が正解であると判断する。

問58

ボイラーの溶接を行う部分の材料に関する記述として、正しいものは次のうちどれか。

  1. 炭素量を0.20%以下とすることが定められている。
  2. 炭素量を0.35%以下とすることが定められている。
  3. 炭素量を0.50%以下とすることが定められている。(正解)
  4. 炭素量を0.70%以下とすることが定められている。

解説

■【設問の意図】 ボイラーの溶接部の材料に求められる炭素量に関する法令知識を問うています。溶接部の硬化と割れ発生リスクを理解しているかを確認するものです。 ■【正解の理由】 ボイラーの溶接を行う部分の材料は、溶接時の熱影響により焼入れされて硬化し、割れが発生しやすくなるため、炭素量を0.35%以下とすることが法令で定められています。これは、溶接部の健全性を確保し、ボイラーの安全な運転を維持するために重要な基準です。 ■【初心者がここで迷う理由】 具体的な炭素量の数値が複数あり、正確な数値を覚えていないと迷いやすい点です。また、なぜ炭素量に制限があるのか、その背景にある溶接時の材料変化(硬化、割れ)を理解していないと、単なる暗記になりがちで忘れやすい傾向があります。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文から「ボイラーの溶接を行う部分の材料」と「炭素量」に関する知識が問われていることを把握します。 2. 溶接部は熱影響で硬化しやすく、割れのリスクがあるため、炭素量に制限があることを思い出します。 3. 法令で定められている炭素量の具体的な数値「0.35%以下」を想起します。 4. 選択肢の中から「炭素量を0.35%以下とすることが定められている」を選び、正解と判断します。

問59

低炭素鋼がボイラーの高温環境に長時間さらされた場合に生じる材質変化に関する記述として、適切なものは次のうちどれか。

  1. 炭素が結晶粒界に沿って析出し、延性が向上する。
  2. 組織が微細化し、強度が向上する。
  3. Fe3Cとして存在していた炭素が黒鉛粒子を形成して脆化する。
  4. 酸化被膜が形成され、耐食性が向上する。(正解)

解説

■【設問の意図】 低炭素鋼がボイラーの高温環境下で長期使用された際に発生する特有の材質劣化現象(黒鉛化)に関する知識を問うものです。 ■【正解の理由】 低炭素鋼がボイラーの高温環境(一般的に450~550℃程度)に長時間さらされると、セメンタイト(Fe3C)として存在していた炭素が分解し、黒鉛(グラファイト)粒子を形成します。この現象は「黒鉛化」と呼ばれ、材料の靭性や強度が低下し、脆化を引き起こします。これはボイラー材料の重要な劣化モードの一つです。 ■【初心者がここで迷う理由】 鋼材の熱処理や組織変化に関する知識は多岐にわたるため、特定の温度域での長期的な材質変化(特に黒鉛化)と、一般的な焼入れや焼戻し、応力除去焼鈍などの短期的な変化や他の劣化現象(クリープ、疲れなど)との区別がつきにくい場合があります。また、炭素が鋼の硬度や強度に与える影響は理解していても、特定の条件下での脆化につながる炭素の挙動を正確に把握していないと、誤った選択肢を選んでしまう可能性があります。 ■【本番での判断フロー】 1. 問題文の「低炭素鋼」「高温環境に長時間さらされた場合」というキーワードに注目します。これは一般的な熱処理ではなく、ボイラー運転中の長期的な劣化現象を指していると判断します。 2. 各選択肢を検討します。 * 選択肢1や2のような「延性向上」や「強度向上」は、劣化現象とは逆の方向の変化であり、この条件では通常発生しません。 * 選択肢4の「耐食性向上」も、この条件での主要な材質変化ではありません。 3. 選択肢3の「Fe3Cとして存在していた炭素が黒鉛粒子を形成して脆化する」という記述は、低炭素鋼の高温長期使用における重要な劣化現象である「黒鉛化」を正確に表しています。この現象は材料の脆化につながるため、これが適切な記述であると判断します。

問60

金属材料の降伏点と耐力に関する記述として、誤っているものは次のうちどれか。

  1. 炭素鋼の降伏点は、明瞭に現れる。
  2. 合金鋼や非鉄金属の降伏点は、明瞭ではないことが多い。
  3. 降伏点が明瞭でない場合、通常0.2%の永久ひずみを生じる応力を降伏応力とみなし、これを耐力という。
  4. 耐力は、材料の常温における規格降伏点を規格引張強さで割った値である。

解説

■【設問の意図】 この設問は、金属材料の機械的性質である降伏点と耐力(0.2%耐力)の定義と、それらが炭素鋼、合金鋼、非鉄金属でどのように異なるかを理解しているかを確認することを意図しています。特に、降伏比の定義との混同がないかを問うています。 ■【正解の理由】 選択肢4の記述「耐力は、材料の常温における規格降伏点を規格引張強さで割った値である。」は誤りです。この記述は「降伏比」の定義であり、「耐力」の定義ではありません。耐力は、降伏点が明確でない材料において、通常0.2%の永久ひずみを生じる応力として定義されます。 ■【初心者がここで迷う理由】 初心者は、「降伏点」「耐力」「降伏比」といった類似した用語の定義を混同しやすい傾向があります。特に、耐力と降伏比の定義は、どちらも材料の強度特性を示す値であるため、正確な区別が難しいと感じることがあります。また、炭素鋼と合金鋼・非鉄金属で降伏点の現れ方が異なる点も、知識が曖昧だと迷う原因となります。 ■【本番での判断フロー】 1. 設問が「誤っているもの」を問うていることを確認する。 2. 各選択肢を読み、それぞれの記述が「降伏点」または「耐力」の定義、あるいはそれらの特性と一致するかを判断する。 3. 選択肢1、2、3は、炭素鋼の降伏点が明瞭であること、合金鋼や非鉄金属で明瞭でないこと、そしてその場合の耐力の定義(0.2%永久ひずみ)を正確に述べているため、正しい記述と判断する。 4. 選択肢4は、「耐力」の定義として「規格降伏点を規格引張強さで割った値」と述べているが、これは「降伏比」の定義であることを思い出す。したがって、この記述は誤りであると判断し、正解とする。