建築積算士 第5回

問81

鉄骨造(S造)の基本原則に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 鉄骨造は、鉄筋コンクリート造に比べて材料の強度が非常に高いため、部材の断面を小さくし、建物の自重を大幅に軽くすることができる。
  2. 鉄骨造の構造形式には、柱と梁をガチッと一体化させた「ラーメン構造」や、ブレース(筋かい)を配置して横揺れに対抗する「ブレース構造」などがある。
  3. 鋼材は火災などの高温に極めて強いため、大規模な鉄骨造建築物であっても、柱や梁に耐火被覆(ロックウールなどの断熱材)を施す必要は一切ない。
  4. 厚さ6ミリメートル以上の鋼材を用いた構造を「重量鉄骨造」、厚さ6ミリメートル未満の鋼材を用いた構造を「軽量鉄骨造」と呼び、積算上の分類でも区別される。(正解)
  5. 鉄骨造の弱点として、鋼材が空気中の酸素や水分によってサビ(腐食)しやすいことが挙げられ、原則として工場や現場で錆止め塗装を施す必要がある。

解説

【設問 of 意図】 この問題は、鉄骨造(S造)を構成する「鋼材」の熱に対する物理的な弱点(耐火性)に関する「知識の丸暗記」ではなく、「なぜ鉄骨の柱に綿のような材料(耐火被覆)を吹き付けるのか」という安全防衛の本質を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「鋼材の耐火性能と耐火被覆の要否」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、鋼材は火災などの高温に非常に弱く、一定の温度を超えると強度が急激に低下するため、耐火被覆が絶対に不可欠である。したがって、この選択肢③の記述が不適当(正解)となる。 本来、建築構造の設計原則では、鉄は燃えないものの、火災時の熱(約500度から600度)にさらされると、元の強度の約0.5(半分)以下にフニャフニャに柔らかくなってしまい、建物の重さに耐えかねて一気に崩壊(倒壊)する危険がある。本問の記述では、「高温に極めて強いため、耐火被覆を施す必要は一切ない」とされているが、これでは火災時の人命避難の時間を稼ぐための建築基準法や、積算における耐火被覆工費の計上原則に完全に反することになる。 したがって、耐火被覆が不要とするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]鉄骨(鋼材)はコンクリートに比べて「強さの割に軽い」という最強のメリットがある。そのため、柱を細く、梁を薄くすることができ、建物全体の体重を劇的にスリム化できる。 ②[正しい]フレームの形である。柱と梁をガチガチに溶接やボルトで固めて自由な間取りを作る「ラーメン構造」と、対角線に突っ張り棒を入れて地震に耐える「ブレース構造(体育館などでよく見る斜めの鉄骨)」が基本の2大工法である。 ④[正しい]鉄骨の「格付け」のラインは厚み6mmである。ビルや大型店舗に使われる分厚い「重量鉄骨」と、アパートやプレハブ小屋に使われる薄い「軽量鉄骨」では、積算単価や工場の加工手間が全く違うため、仕様書を見てパキッと仕分ける。 ⑤[正しい]鉄骨の最大の天敵は「サビ(酸化)」である。サビて鉄が痩せると強度が落ちてしまうため、積算士は仕様書を見て、工場で塗る錆止めペンキ代や現場での中塗り・上塗り工費を正確に内訳書に載せる必要がある。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「鉄(アイアン)はフライパンや映画の装甲車のようにカチカチで火に強く、木造のように燃えて炭になるわけではないのだから、火災が起きてもビクともしない無敵の材料だろう」と、材料の見た目の頑丈さだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「燃えない(不燃)」ということと、「熱に強い(耐火)」ということの科学的な意味の違いが整理できていない ・現場の鉄骨の周りに巻かれているグレーのカバー(耐火被覆)を、ただの防音材や断熱材だと勘違いしている ・「必要は一切ない」という極端な全否定表現の嘘を見抜けずに読み飛ばしてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問の主語である「鉄骨造(鋼材)の熱に対する物理的弱点」を正確に整理する 2, 次に、「鉄は燃えないが、火災の熱でアメのようにフニャフニャに溶けて(軟化して)崩壊する」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「鋼材が熱に無敵であると言い張り、命を守る耐火被覆を『一切不要』とする危険な記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、耐火被覆が不要とする記述は、建築基準法の主要構造部のルールと真っ向から矛盾しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問82

鉄骨造(S造)の部材接合方法に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 鉄骨の接合方法には、現場や工場で鋼材を高熱で溶かして一体化させる「溶接接合」と、ボルトを用いて締め付ける「ボルト接合」が主に用いられる。
  2. 高力ボルト摩擦接合は、ボルト自体のせん断抵抗ではなく、強力な締め付け力によって生じる鋼材相互の「摩擦力」によって力を伝えるため、応力の伝達が極めてスムーズである。
  3. 高力ボルト摩擦接合の積算・施工においては、摩擦力を確実に確保するため、鋼材の接触面(摩擦面)の黒皮をブラスト等で取り除き、適切な赤サビ状態にする必要がある。
  4. 現場で行うアーク溶接は、工場の溶接に比べて天候(風や雨)などの外部環境の影響を全く受けず、誰が作業しても常に100%均一な施工品質が現場で確保できるため、最も推奨される。
  5. 柱と梁の接合部などで、高力ボルト接合と溶接接合を同じ箇所で併用する場合は、それぞれの接合方法の変形特性や施工の順番を考慮した設計・積算が必要となる。(正解)

解説

【設問 of 意図】 この問題は、鉄骨造の現場における「溶接接合」の難しさと環境の影響に関する「知識の丸暗記」ではなく、「現場溶接が抱える不確実性のリスク」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「現場溶接が天候の影響を受けないかどうか、また品質が常に均一かどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、現場で行う溶接は、風や雨などの天候(外部環境)の影響を強烈に受けやすく、品質管理が極めて難しいため、最も慎重な検査が必要な工法である。したがって、この選択肢④の記述が不適当(正解)となる。 本来、建築施工の原則では、溶接中に強い風が吹くと、溶けた鉄の中に空気が巻き込まれて泡(ピットやブローホールなどの溶接欠陥)だらけになり、スポンジのようにスカスカになって大地震の時にポッキリ折れてしまう。本問の記述では、「外部環境の影響を全く受けず、誰が作業しても常に100%均一な施工品質が確保できる」とされているが、これでは熟練の溶接工(有資格者)が風よけのテントを張って命がけで作業している現場のリアルを無視した記述となり、超音波探傷検査(UT)を義務づける技術指針の趣旨に完全に反することになる。 したがって、天候の影響を受けず均一品質とするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]鉄骨を繋ぐ2大ルートである。鉄同士をドロドロに溶かして「のり」のように接着する「溶接」と、穴を開けて強烈なネジで締め上げる「ボルト(高力ボルト)」をパーツに合わせて使い分ける。 ②[正しい]高力ボルト(ハイテンションボルト)の仕掛けである。普通のボルトのように「ネジの棒がちぎれる(せん断)」ことで耐えるのではなく、鉄板と鉄板をものすごい握力で圧着し、「絶対にズレないぞ」というザラザラした「摩擦力」で地震の力に抵抗する。 ③[正しい]積算士の図面チェックポイントである。ツルツルした鉄板(黒皮がついた状態)のままだと滑ってしまう。そのため、現場の職人は接合面をわざとヤスリ(グラインダーなど)で削ってザラザラにし、少し雨風に当てて「良い具合の赤サビ(摩擦面)」を作ってからボルトを締める。この手間も積算の工種に含まれる。 ⑤[正しい]「併用接合」のルールである。同じ場所を溶接とボルトの両方で留める場合、先にボルトを締めるか、先に溶接するかで、後から入る熱による歪み(ストレス)が変わってしまう。そのため、どちらが先に力を負担するかを計算して積算・施工する。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「溶接というのは電気の力でバチバチと超高温で鉄を溶かすのだから、雨が降ろうが風が吹こうが関係なく、鉄がドロドロに溶けて固まれば同じ強さになるのだろう」と、ガンダムやロボットの製造のようなハイテクなイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「工場での溶接(ロボットによる完璧な管理)」と「現場での溶接(足場の上で人間が手で行う作業)」の品質の差を想像できていない ・「全く受けず」「常に100%均一」という極端な全肯定表現の嘘を見抜けずに読み飛ばしてしまう ・現場溶接があった場合、積算上で「超音波で内部のキズを調べる検査費用」を別枠で計上しなければならない実務のつながりを整理していない といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問の主語である「現場でのアーク溶接作業の環境的制約」を正確に整理する 2, 次に、「現場の作業=雨や風、職人の腕の差によって品質がバラつく不確実なものである」という施工の原則を思い出す 3, 各選択肢が「現場溶接を完璧無欠の万能工法扱いして、天候の影響をゼロとする不自然な記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、誰がやっても100%均一品質になるという甘い記述は、厳格な検査(非破壊検査)を必要とする鉄骨実務において100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問83

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の構造特徴に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄筋コンクリート(RC)造の芯部に鉄骨(S)を内蔵した構造であり、両者の長所を組み合わせた極めて強固なハイブリッド構造である。
  2. SRC造は、RC造に比べて柱や梁の断面寸法を大幅に小さく(スリムに)することができるため、高層建築や大スパンの建物において、室内空間を広く確保するのに適している。
  3. SRC造の最大のメリットは、鉄骨がコンクリートに厚く包まれているため、鉄骨造(S造)のように単体で露出している場合よりも、耐火性や防錆性に極めて優れている点である。
  4. SRC造の施工・積算プロセスは、鉄骨の組み立て、鉄筋の配筋、型枠の組み立て、コンクリートの打設がすべて美しく独立しているため、RC造やS造よりも非常に単純で手間がかからない。
  5. SRC造は、大地震時に建物が激しく変形しても簡単にはポッキリ折れない高い「靭性(ねばり強さ)」を持っており、耐震安全性が非常に高い構造である。(正解)

解説

【設問 of 意図】 この問題は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の施工および積算の実務的な「複雑さ(手間)」に関する「知識の丸暗記」ではなく、「RCとSが合体することによる現場の戦い(輻輳)」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「SRC造のプロセスが単純で手間がかからないかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、SRC造は建築構造の中で最も施工が複雑で、型枠・鉄筋・鉄骨が場所を取り合って喧嘩(輻輳)するため、最も手間とコスト(積算の割増)がかかる工法である。したがって、この選択肢④の記述が不適当(正解)となる。 本来、SRC造の原則では、頑丈な鉄骨の柱(H形鋼など)の周りに、細い鉄筋を網の目のようにジャングルジム状に組み立てる。その際、「鉄骨の分厚いプレートが邪魔をして、鉄筋が奥まで通らない」という事態が至る所で発生するため、鉄骨に最初から丸い穴(スリーブ穴)を開けておいてそこに鉄筋を突き通す、といった極めて精密なパズル(施工管理)が必要になる。本問の記述では、「独立していて非常に単純で手間がかからない」とされているが、これでは日本の職人や積算士が一番苦労する「SRC特有の手間(工期の長さや労務費の高さ)」を全否定する記述となり、実務の指針に真っ向から反することになる。 したがって、単純で手間いらずとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]SR造は「最強の二世帯住宅」のようなものである。コンクリートの頑丈さと、鉄骨の強靭な骨組みがドッキングしているため、大きなビルの下層階など、一番強いパワーが必要な場所に採用される。 ②[正しい]もし純粋なコンクリート(RC造)だけで超高層ビルを建てようとすると、1階の柱が相撲取りの足のように太さ2メートル四方になってしまい、部屋の中が柱だらけで使えなくなる。中に鉄骨を入れる(SRC化する)ことで、柱を細く引き締め、部屋を広く(大スパンに)できる。 ③[正しい]鉄骨造(S造)は火事になると前述の通りフニャフニャになるが、SRC造は周りのコンクリートが「分厚い盾(耐火被覆の代わり)」になって火災の熱をガードするため、火事にもサビにも圧倒的に強い。 ⑤[正しい]大地震が来た時のSRC造の動きは「竹」のようである。コンクリートがミシミシとひび割れても、中の鉄骨がグニャーとしなって地震のパンチを受け流すため、ポッキリ折れて建物が突然ペシャンコになる(脆性破壊)のを防ぐ。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「RC造とS造という、すでに完成された2つの素晴らしいマニュアルをそのまま合体させるだけなのだから、プラモデルを組み立てるように計算通りに綺麗に組み上がり、実務としても迷うことがなくて楽なのだろう」と、図面のカッコよさだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「鉄骨と鉄筋の衝突(干渉)」という、現場で毎日起きるミリ単位のパズルの大変さを知らない ・「非常に単純で手間がかからない」という、仕事が効率的であるかのような優しい嘘の表現に丸め込まれてしまう ・SRC造の積算において、鉄筋の「加工割増」や「現場の組み立て手間(歩掛)」がRC造の何割増しにも高く設定されている本当の理由を整理しないまま読み飛ばしてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「SRC造の現場の組み立て実務の大変さ」を正確に整理する 2, 次に、「SRC=構造の中で最も手間がかかり、図面を読むのも積算するのも最もめんどくさい最高難度の工法である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「SRC造を『単純で手間いらず』扱いして、現場の職人の苦労をゼロとする不自然な記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、手間がかからないとする記述は、積算士の歩掛(手間賃)の計算思想と完全に矛盾しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問84

異なる構造種別を組み合わせた「混合構造(ハイブリッド構造)」に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 混合構造とは、建物の部位や階数に応じて、RC造、S造、木造などの異なる構造形式を適材適所で戦略的に組み合わせて設計・施工される構造である。
  2. 代表的な例として、不特定多数の人が出入りし火気を使う下層階(1階)を頑丈なRC造とし、上層階(2〜3階)を自重の軽い木造とする「異種構造の積層」がある。
  3. 混合構造の一種であるCFT(コンクリート充填鋼管)構造は、鉄骨の太い鋼管(パイプ)の内部にコンクリートをミッチリ充填したもので、柱の強度と変形性能を劇的に高めることができる。
  4. 混合構造では、異なる構造が合体する結合部において力の伝わり方(応力伝達)が急激に変化するため、接合部のディテールは非常にシンプルであり、積算・施工上の配慮は一切不要である。
  5. 近年の混合構造の普及の背景には、都市部における木造(国産材)の活用による環境負荷の低減や、建設コストの最適化、デザインの自由度の向上といった多様なニーズがある。(正解)

解説

【設問 of 意図】 この問題は、異なる構造をドッキングさせる「混合構造」の接合部の複雑さと応力集中に関する「知識の丸暗記」ではなく、「性質の違う材料が繋がる場所の危険性」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「接合部のディテール(詳細)がシンプルで、積算・施工上の配慮が不要かどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、混合構造の「接合部(ドッキング部分)」こそが建物の中で最も設計・積算が難しく、特別な補強金物や複雑な配筋が必要な最重要エリアである。したがって、この選択肢④の記述が不適当(正解)となる。 本来、建築構造の原則では、カチカチのRCの床と、しなやかな鉄骨の柱(または木造の梁)が繋がる境界線には、地震が来た時に「引きちぎられるような激しい力(応力の集中)」が発生する。本問の記述では、「接合部のディテールは非常にシンプルであり、積算・施工上の配慮は一切不要である」とされているが、これでは大地震の時に繋ぎ目からポロリと建物が上下に分解して崩壊してしまうことになり、接合部の金物工費を厳しくチェックする積算士の定規(実務指針)に完全に反することになる。 したがって、配慮が一切不要とするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]混合構造(ハイブリッド)の基本定義である。「頭(上層階)は軽く、足(下層階)は重く頑丈に」というように、それぞれの構造のいいとこ取りをして、一つの建物を完成させる。 ②[正しい]街中でよく見かける「木造マンション」の正体である。1階にコンビニや駐車場を入れるために火に強くて柱の間隔を広げられるRC造にし、その上に住居としてのエコな木造の部屋を乗せる、という組み合わせ(頭軽足重)がトレンドとなっている。 ③[正しい]CFT(Concrete Filled Tube)のメカニズムである。鉄のパイプ(鋼管)だけだと上からの重みでペシャンと外側に折れ曲がりやすい(局部座屈)。しかし、中にコンクリートを詰めておくと、内側からコンクリートが突っ張り棒になって鉄が折れるのを防ぎ、最強のハイスペックな柱が完成する。 ⑤[正しい]地球温暖化を防ぐために「もっと木を使おう(都市の木造化)」という国策がある。しかし、全部を木で得作るのは難しいため、柱だけを鉄骨やRCにして、梁や壁に木をふんだんに使うハイブリッド構造の積算が非常に増えている。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「混合構造という名前なのだから、それぞれの境界線はパキッと分かれていて、1階の天井のコンクリートの上に、ただ木造の土台をポンと置いてネジで留めるだけの簡単な大工仕事なのだろう」と、DIYのような簡単なイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「異種材料の結合」において、鉄とコンクリート、あるいは木材が噛み合うための特別なアンカーボルトや補強鉄筋(ガセットプレート等)の図面の複雑さを知らない ・「配慮は一切不要」という極端なサボりを許すような表現の罠を見落としてしまう ・接合部の積算漏れが、現場での見積もり変更(数百万〜数百万円の赤字トラブル)に直結するという見積実務の厳しさを整理していない 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「混合構造の接合部における力の流れと積算の重要性」を正確に整理する 2, 次に、「異なる材料の繋ぎ目=一番弱点になりやすく、最も複雑な補強パーツが集まる場所である」という大原則を思い出す 3, 各選択肢が「繋ぎ目を『シンプルで配慮不要』扱いして、構造上のリスクや積算の手間をゼロとする不自然な記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、一切の配慮が不要とする記述は、建物の安全性を崩壊させるため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問85

建築物の地震・揺れ対策である「耐震」「制震(制振)」「免震」に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 「耐震構造」は、柱や梁、耐震壁を太く頑丈に設計することで、大地震の激しい横揺れのパンチに対して力ずくでガチッと耐える、最も標準的な構造形式である。
  2. 「制震構造」は、建物内部にダンパー(揺れを吸収する特殊な装置)を仕込むことで、地震のエネルギーを熱などに変換して吸収し、建物の揺れを小さく抑える構造である。
  3. 「免震構造」は、建物と基礎の間に「積層ゴム」などの免震装置(アイソレータ)を挟むことで、地面の激しい揺れを建物に伝えないように遮断する構造である。
  4. 免震構造を採用した建物は、大地震時でも建物の揺れが非常にゆっくり(マイルド)になるため、室内の家具の転倒や、中の人間・精密機器を守る効果が最も高い。
  5. 免震構造は、建物の土台と地面を極太の鉄筋で完全に溶接し、地震が来ても基礎が1ミリメートルも動かないようにガチガチにロック(固定)する仕組みである。

解説

【設問 of 意図】 この問題は、地震対策の3大アプローチ(耐震・制震・免震)の定義と物理的なメカニズムに関する「知識の丸暗記」ではなく、「免震という言葉が持つ『免れる(逃げる)』という意味の根本」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「免震構造が建物を地面とガチガチに固定してロックする仕組みかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、免震構造は地面と建物の「縁を切り(固定せず)」、間に挟んだゴムの上で建物をゆっくりと滑らせる仕組みである。したがって、地面とガチガチに固定ロックするとするこの選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、免震(地震を免れる)の原則では、地面がどれほど激しくガタガタと左右に揺れても、上の建物はその場にフワッと浮いているかのように、ゆっくりと時間差で揺れることで、建物への破壊力を約0.2から0.3(2割から3割)に激減させる。本問の記述では、「地面と完全に溶接し、1mmも動かないようにガチガチにロックする」とされているが、これでは免震ではなく昔ながらの硬い「耐震」のさらに極端な誤った解説になってしまい、免震装置(積層ゴムやダンパー)を計上する積算の前提条件に完全に反することになる。 したがって、固定ロックする仕組みとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]日本の建物の「基本標準」である。壁の中にバツ印の鉄筋をたくさん入れたり、柱をコンクリートで太く補強して、「地震の力よりも強いパワーの器」を作ることで、建物の崩壊(ペシャンコになること)を防ぐ。 ②[正しい]制震(せいしん)は「車のサスペンション」のようなものである。ビルの骨組みの途中に、粘り気のあるオイルやゴムが入った注射器のようなピストン(ダンパー)を仕込み、ビルが揺れた時にそのピストンが伸縮して、揺れのエネルギーを「熱」に変えて吸い取る。高層ビルやタワーの強風・地震対策の定番である。 ③[正しい]免震(めんしん)の王道の仕組みである。建物の地下室の下に、ゴムと鉄板をパイのように何層も重ねた「積層ゴム」を敷く。これが地震の時にグニョグニョと左右に柔らかく変形することで、地面の凶暴な揺れをカットする。 ④[正しい]免震の一番の自慢である。耐震の建物は、骨組みは無事でも部屋の中は「震度7」の激しい縦横のシェイクを受け、冷蔵庫やテレビが凶器のように飛んでくる。免震は、高級豪華客船に乗っているかのような「ゆったりとした円運動の揺れ」に変わるため、中の家具が倒れず、病院の手術室やデータセンターのパソコン(資産)を無傷で守ることができる。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「『免震』というくらいだから、大地震がきても建物が微動だにせず、ピタッと1ミリも動かずに静止している状態こそが一番安全で理想的な姿なのだろう。だから、お上の頑丈な鉄筋で地面と一体化させてロックするのが正解なのだろう」と、安全=動かないことという固定観念だけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「動かないように抵抗する(耐震)」ことと、「あえて動くことで受け流す(免震)」という、力学のアプローチの真逆の反転が頭の中で整理できていない ・免震建物の周りには、建物が地震の時に50センチメートルほど自由に動き回るための隙間(免震エキスパンションジョイント)が積算の工種としてぐるりと1周掘られている実務の図面を見たことがない ・「完全に溶接し」「ガチガチにロック」という、いかにも頑丈そうな嘘のフレーズに騙されてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問の主語である「免震構造の根本的な揺れの受け流しメカニズム」を正確に整理する 2, 次に、「免震=地面と建物の縁を切り、ゴムの上で建物だけを自由にゆっくり滑らせる(動かす)技術である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「免震構造を『地面との完全固定ロック構造』として解説する、180度正反対の嘘の記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、地面とガチガチに固定溶接するという記述は、免震(地震から免れる)という漢字の意味そのものと真っ向から矛盾しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問86

建築物の「基礎構造」の種類とその特徴に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 基礎構造は、建物の自重や人間の重さ、地震の力を安全に地盤(地球の土)へと受け渡すための最重要の土台であり、大きく「直接基礎」と「杭基礎」に分類される。
  2. 「直接基礎」は、建物のすぐ下に良好な支持地盤(硬い砂利の層や頑丈な岩盤など)がある場合に、長い杭を使わずに基礎の底面だけで直接建物を支える形式である。
  3. 「杭基礎」は、地表近くの地盤が豆腐のように軟弱で建物を支えられない場合に、深い場所にある硬い地盤(支持層)まで長い杭を何本も突き刺して建物を支える形式である。
  4. 基礎の積算・施工においては、地盤の長期許容応力度(土がどれだけの重さに耐えられるか)を確認し、建物の体重(接地圧)がその許容値を下回るように設計・計算しなければならない。
  5. どんなに地盤が柔らかく地表がドロドロの軟弱地盤であっても、コスト削減のためにすべての杭や地盤改良工事を一切省略し、平らなコンクリートを薄く敷くだけで超高層ビルを建てるのが日本の基本原則である。

解説

【設問 of 意図】 この問題は、基礎構造の2大分類(直接基礎と杭基礎)の選定原則と地盤の重要性に関する「知識の丸暗記」ではなく、「地盤の強さに合わせて土台の工法を変える」という建築工学の絶対の防壁(安全のルール)を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「軟弱地盤に杭なしで超高層ビルを建てることが許されるかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、ドロドロの軟弱地盤に杭を打たずに超高層ビルを建てるなどということは、建築のルール上、絶対にあり得ない完全な違法・欠陥行為である。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、基礎積算・構造設計の原則では、建物の体重(固定荷重)をしっかりと支えられる硬い地面(支持層)に建物を乗せなければ、建物は自重で地球の中にズブズブと沈んでいく(不同沈下)。特に、何万トンもの体重がある「超高層ビル」を軟弱地盤に建てる時は、地下数十メートルの岩盤まで太いコンクリートの杭(場所打ち杭など)を何十本も届かせる杭基礎が必須コストとして積算される。本問の記述では、「コスト削減のために杭を一切省略し、薄いコンクリートを敷くだけで超高層ビルを建てるのが基本原則である」とされているが、これでは建物をわざと倒壊させて大惨事を引き起こすような狂気の暴論であり、建築基準法(第38条の地盤および基礎の規定)の趣旨に180度真っ向から反することになる。 したがって、杭を省略して薄いコンクリートだけで建てるとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]基礎は建物の「靴」である。どんなに上半身(柱や梁)をマッチョに作っても、靴(基礎)がボロボロだったり地面が緩ければ転んで(倒れて)しまう。大きく分けて「地盤に直接タッチする靴(直接基礎)」と「長いトゲのついたスパイクシューズ(杭基礎)」の2種類がある。 ②[正しい]直接基礎のハッピーな条件である。地面をちょっと掘ったら、そこがカンカンに硬いお宝地盤(ローム層や砂礫層など)だった場合、高くて重い杭を買う必要がないため、コンクリートの箱(フーチング)を作るだけで安く安全に建物を乗せることができる。 ③[正しい]杭基礎(くいきそ)が登場するシチュエーションである。昔の田んぼの跡地や海の近くの埋立地などは、上を歩くだけで足が沈むほど軟弱である。その時は、太くて長い「杭(鋼管やコンクリート)」を地下深くの「支持層(カチカチの岩など)」に届くまで突き刺し、建物を地球の骨で支える。 ④[正しい]積算士のデータチェックの基本である。土の強さ(長期許容応力度:例えば1平方メートルあたり100キロニュートンまで耐えられる、という限界値)を調べ、建物の重さがそのラインを絶対に超えない(オーバーしない)ように基礎の底面積を大きく広げる(計算する)。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「建築積算の世界は『コスト削減(ローコスト)』が一番の正義なのだから、お上の高価な杭の工事や地盤改良なんていう目に見えない地地下の工事は、できるだけケチって省略し、コンクリートを薄く節約して予算を浮かせるのが腕の良い編集・積算のあり方なのだろう」と、目先の費用の安さだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・建物の自重(コンクリートの塊の凄まじい重量)が地盤を押しつぶす物理現象を計算したことがない ・「日本の基本原則である」という、公式のルールを装った強い大嘘のフレーズに丸め込まれてしまう ・基礎工事の手抜きが、のちのマンションの傾きトラブル(企業の倒産や全頭建て替えの数十億円の損害)につながるという実務の致命的なリスクを整理しないまま読み飛ばしてしまう 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「地盤の硬さと基礎工法の選定の絶対ルール」を正確に整理する 2, 次に、「軟弱地盤の上の超高層ビル=深い岩盤まで杭を届かせる杭基礎が100%絶対不可欠である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「コスト削減を言い訳にして、杭を一切省略した薄っぺらい基礎で超高層ビルを建てるという、大事故を推奨する記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、杭を省略して良いとする記述は、建築基準法の構造安全規定の根幹と真っ向から衝突しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問87

「直接基礎」の形式選定とその特徴に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 直接基礎の形式には、一本ずつの柱の足元を四角いコンクリートの箱で個別に支える「独立基礎」、壁や柱が一列に並んだラインを支える「布基礎」、建物全体を一枚の巨大なコンクリートの板で覆う「べた基礎」がある。
  2. 「独立基礎」は、構造がシンプルでコンクリートや型枠の積算数量が最も少なくて済むため、地盤が非常に硬く、柱の間隔が広いRC造やS造のビルに多用される。
  3. 「布基礎」は、木造住宅の外壁や耐力壁のラインに沿って連続して設けられる逆T字型の細長い基礎であり、壁からの重みを線状に地盤へ伝える形式である。
  4. 「べた基礎」は、建物の床下一面を分厚い鉄筋コンクリートで覆うため、地盤の強さが多少不均一な軟弱地盤であっても、建物全体が均等に踏ん張り、片方だけが斜めに傾く「不同沈下」を防ぐ効果が最も高い。
  5. べた基礎は、土の掘削量(根切り土量)や鉄筋・コンクリートの積算数量が独立基礎に比べて圧倒的に少なくて済むため、どのような敷地であっても常に一番安く施工できる最もローコストな基礎形式である。

解説

【設問 of 意図】 この問題は、直接基礎の3つの型(独立・布・べた)の具体的な形状と「積算数量(ボリューム)の多寡・コストの関係」に関する「知識の丸暗記」ではなく、「コンクリートを敷き詰めることの費用の重さ」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「べた基礎が獨立基礎に比べて材料が少なくて済み、常に一番ローコストかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、べた基礎は床下一面の全体に鉄筋とコンクリートの巨大な板を敷き詰めるため、独立基礎に比べて土の掘削量もコンクリート量も鉄筋量も「圧倒的に多くなり、最もコスト(費用)が高くつく基礎形式」である。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、建築積算の原則では、材料の体積(㎥)や重量(t)が増えれば、それに比例して内訳書の金額(材料代+職人の手間賃)は高くなる。べた基礎は、地盤が少し弱いときに「家全体の底面積を最大にして、スキーの板を履いた時のように体重を雪(土)の上に分散させて沈まないようにする」ための贅沢で頑丈な工法である。柱の足元だけに小さなサイコロのコンクリートを置くだけの「独立基礎」のほうが、材料が圧倒的に少なくて済むため遥かにローコストである。本問の記述では、べた基礎のほうが數量が少なくて常に一番安いとされているため、積算の算数として完全に真逆の大嘘となる。 したがって、べた基礎が最も数量が少なくローコストとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]直接基礎の「3本の矢(種類)」である。柱の下だけの「点(独立)」、壁の下の「線(布)」、床下全体の「面(べた)」という形状のイメージを頭の中に立体的に描いて数量を拾い出す。 ②[正しい]独立基礎(どくりつきそ)は、一番エコ(材料節約)な基礎である。地盤が強ければ、柱のない真ん中の床下にはコンクリートの重い土台を作る必要がないため、ガチガチの岩盤の上のオフィスビルなどで大活躍する。 ③[正しい]布基礎(ぬのきそ)は、日本の伝統的な木造住宅の定番である。「布」という漢字は「細長く連続して広がる」という意味を持つ。お城の石垣のように家の外周に沿って逆T字のコンクリートの線を回し、上からの壁の重さを受け止める。 ④[正しい]べた基礎(べたきそ)の最大の武器である。地盤の中に「硬いところ」と「柔らかいところ」が混ざっていると、独立基礎では柔らかい柱だけがズブッと沈んで家がナナメに歪んでしまう(不同沈下)。べた基礎は面全体で1つの巨大なイカダのように浮くため、家が傾くのを防ぐ防衛力が最強である。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「最近の日本の一般的な一戸建て住宅の図面を見ると、ほぼ100%『べた基礎』が採用されている。世の中でこれだけ標準的に使われているのだから、これが一番手軽で大量生産されていて、金額も一番安上がりの手抜き用(ローコスト)の基礎なのだろう」と、採用率の高さのイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・一戸建ての「べた基礎」と、大型ビルの「独立基礎」のスケールの違いを同じ天秤で比較して混乱してしまう ・床下一面にコンクリートをドボドボと何十立方メートルも流し込むための生コン代や、網の目のようにダブルで組む鉄筋の「総重量の重さ(積算のボリューム)」を実感として計算したことがない ・「常に一番安く施工できる」という調子の良い全肯定の経済表現に丸め込まれてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「独立基礎とべた基礎のコンクリート・鉄筋の体積(數量)の違い」を正確に整理する 2, 次に、「積算の鉄則=面積や体積が大きければ大きいほど、お財布の材料代は高くなる。だから全面を覆うべた基礎は高い工法である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「床下全面にコンクリートの板を敷き詰めるべた基礎を、柱の下だけの独立基礎よりも材料が少なくて安いと言い張る、算数崩壊の記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、べた基礎が最も數量が少なく常に一番安いとする記述は、積算士のボリューム計算(㎥単価)の思想と真っ向から衝突しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問88

杭基礎に用いられる「既製コンクリート杭」に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 既製コンクリート杭は、品質管理された専門の工場であらかじめ製品として製造された杭であり、現場に大型トラック等で搬入して地中に設置する。
  2. 代表的な既製杭として、遠心力を用いてコンクリートを強固に締め固めた「PHC杭(高強度プレストレストコンクリート杭)」があり、高い割れにくさと信頼性を持つ。
  3. 既製杭の施工において、大きな重機のハンマーで杭の頭を叩き叩き叩き込む「打込み工法」は、現代の都市部では騒音や振動の公害問題から厳しく規制されており、スクリューで穴を掘って埋める「埋込み工法」が主流である。
  4. 既製杭の積算においては、杭の本数(本)だけでなく、杭の直径(径)や、地中に埋め込む1本あたりの長さ(総延長メートル)、および杭を繋ぐ継手の数を正確に数え上げる必要がある。
  5. 既製コンクリート杭は、現場の土の柔らかさに合わせて、職人が現場のプレハブ小屋の中で粘土を手でこねて焼き物のように1本ずつ手作りし、数日間天日干ししてから地中に埋め込むのが日本の標準仕様である。

解説

【設問 of 意図】 この問題は、既製コンクリート杭の製造プロセスと施工の実務に関する「知識の丸暗記」ではなく、「工場製品(プロダクト)としての圧倒的な工業的クオリティ」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「既製杭を現場のプレハブ小屋の中で職人が粘土のように手作りしているかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、既製コンクリート杭は、高度にハイテク化されたJIS認定工場で巨大なマシンを使って作られる超高強度の工業製品であり、現場で職人が手作りするようなものでは絶対にない。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、杭基礎の原則では、何千トンものビルの体重を支えるための杭には、一般の現場の手打ちコンクリートの数倍から数十倍の「硬さ(設計基準強度が80ニュートン以上など)」が求められる。これは、工場で鋼製の型枠をマシーンで超高速回転させて遠心力で中の空気を抜き、さらに高圧の蒸気釜(オートクレーブ)で一気に焼き上げることで初めて完成するハイテクの塊である。本問の記述では、「現場のプレハブ小屋で粘土を手でこねて手作りし、天日干しして使う」とされているが、これではおもちゃの土器を作っているようなおふざけの暴論であり、日本の最先端の建築技術や既製杭の積算仕様(工場製品代の計上)に180度真っ向から反することになる。 したがって、現場で手作り天日干しするとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]既製杭(きせいくい)の「既製」とは、お洋服のレディメイド(既製品)と同じである。現場で生コンを流すのではなく、すでに工場でカンカンに硬く固まった「コンクリートの電柱のような巨大な筒」を買い取って現場に持ち込む。 ②[正しい]PHC杭(Prestressed High-strength Concrete pile)は既製杭の「大エース」である。あらかじめ中の鉄線に強力な引っ張りゴムのような力(プレストレス)を仕込んでおくことで、土の横圧力によってポッキリ折れるのを防ぐ強靭な粘り気を持たせている。 ③[正しい]施工の歴史である。昔は「巨大なドロップハンマーで上からガシャーンガシャーンと杭を殴って地面に沈める(打込み工法)」のが主流だったが、周りの家から「うるさい!家が揺れる!」と大クレーム(公害)になるため、今は巨大なドリル(オーガー)で先に地面にサクッと穴を開け、そこにセメントのミルク(根固め液)を流して杭をそっと沈める「埋込み工法」が主役の座にある。 ④[正しい]積算士の杭の拾い出しルールである。杭は「長さが命」である。図面を見て「直径50cmのPHC杭が、長さ15メートルで30本必要だから、合計450メートル分の製品代と、現場の穴掘り代(プレボーリング工法費)がかかる」と計算する。また、15mの杭を2本繋げて30mにする場合は、繋ぎ目の「溶接継手や機械式継手の個数」も1箇所ずつ漏らさず数えて内訳書に載せる義務がある。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「建築の現場というのは何でもかんでも職人さんが汗を流して手作業でものづくりをしている場所なのだから、地下に埋めるコンクリートの棒だって、現場の余ったセメントを使ってその場で型に流して手作りで作るほうが、わざわざ遠くの工場からトラックで運ぶよりも運賃が浮いて安上がり(合理的)なのだろう」と、現場手作りの万能感だけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「工場製品としての杭」と「現場でコンクリートを打つ場所打ち杭」の2大工法の区別が頭の中で完全にゴチャ混ぜ(混乱)になっている ・コンクリートを「天日干し(ただ乾かすだけ)」にすると、中の水分が蒸発してスカスカの脆い砂の塊になってしまい、強度が出ないという化学的な養生の基本を知らない ・問題文の主語(既製コンクリート杭)の文字の意味を深く考えずに読み飛ばしてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問の主語である「既製コンクリート杭の製造工場における高度な品質管理」を正確に整理する 2, 次に、「既製=工場製の最高品質のプロダクトであり、現場での手作りや天日干しは100%大嘘である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「ハイテク工業製品である既製杭を、プレハブ小屋での職人の泥粘土手作り工作扱いしている、技術の常識外れの記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、現場で手作りして埋めるという記述は、既製(既に作られている)という言葉の定義そのものと真っ向から衝突しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問89

杭基礎に用いられる「場所打ちコンクリート杭工法」に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 場所打ちコンクリート杭とは、現場の地面に巨大なアースオーガー等で深い縦穴を掘り、その穴の中に鉄筋かごを吊り降ろして生コンクリートを流し込むことで、地中に直接太い基礎杭を形成する工法である。
  2. 代表的な工法として、回転するバケットで土を削り取り、ベントナイト液(安定液・泥水)で穴の壁が崩れるのを防ぎながら掘り進む「アースドリル工法」がある。
  3. 場所打ち杭は、工場で作る既製杭に比べて、直径2メートルを超えるような「超極太の杭」をその場で作ることができるため、非常に重い高層ビルや大規模な構造物を支えるのに適している。
  4. 場所打ち杭の積算においては、掘り出した土の体積(残土処分量)や、流し込む生コンクリートの体積(㎥)、地中で組み立てる巨大な鉄筋かごの重量(t)を工種ごとに細かく計算する必要がある。
  5. 場所打ち杭は、穴の中に生コンクリートを流し込む際、中の鉄筋かごをすべて地上に引き抜いて穴を空っぽにしてから、カラカラに乾いた砂漠のような状態で生コンクリートを打設しなければならない。

解説

【設問 of 意図】 この問題は、現場で杭を作る「場所打ちコンクリート杭工法」の具体的な施工手順と水中コンクリート打設のメカニズムに関する「知識の丸暗記」ではなく、「なぜコンクリートを穴の中に流し込むのか、鉄筋かごの役割は何か」という構造体づくりの本質を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「コンクリートを打つ時に鉄筋かごを引き抜くかどうか、また穴の中が乾いているかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、場所打ち杭の鉄筋かごは地中に埋め殺して(残して)コンクリートと合体させるものであり、引き抜いては絶対にならない。また、穴の中は泥水(ベントナイト液)で満たされた状態のままコンクリートを流し込む。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、場所打ち杭の原則では、地下何十メートルもの深さの縦穴を掘ると、周りの土の圧力(土圧)や地下水によって、穴の壁がドサッと音を立てて崩落してしまう。それを防ぐため、穴の中にわざと粘り気のある重い泥水(ベントナイト安定液)を並々と満たして、壁を内側から突っ張り棒のように押さえておく。そのドロドロの泥水の中に、クレーンで編み上げた巨大な「鉄筋かご」を沈め、最後に「トレミー管」という長いストローのような筒を底まで差し込んで、底の方から生コンクリートをドボドボと流し込む。生コンは泥水よりも重いため、泥水を上へ上へと押し上げながら、下から順番に穴を満たしていく(水中コンクリート打設)。本問の記述では、「鉄筋かごを引き抜き、カラカラに乾いた状態で打設する」とされているが、これでは鉄筋のないただの豆腐の棒になり、穴も途中で崩落してビルが倒壊するため、JASS 4(杭基礎工事)の技術指針に完全に反することになる。 したがって、鉄筋を引き抜き乾燥状態で打つとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]場所打ち杭(ばしおちくい)の「場所」とは、建設現場(その場所)という意味である。既製の杭が「鉛筆を地面に突き刺す」のに対し、場所打ち杭は「地面に鉛筆の太さの穴を開けて、そこに鉛筆の芯(鉄筋)を入れ、液体の木(生コン)を流して固める」という真逆のプロセスを取る。 ②[正しい]「アースドリル工法」は場所打ち杭の超定番である。お菓子の丸いスプーンのようなバケットをドリルで回転させて、土をすくい取っては地上に揚げて、地下30m〜50mまで掘り進む。その時に壁をガードする魔法の相棒が「ベントナイト泥水」である。 ③[正しい]既製杭はトラックの荷台に乗らなければならないため、直径1m程度が限界(それ以上太いと道路を走れない)である。場所打ち杭は現場で直接コンクリートを練って流すため、道路の制約がなく、直径2mや3mといった、怪獣の足のような「超極太の杭」を無限に作れるため、六本木ヒルズなどの超巨大ビルの土台の主役となる。 ④[正しい]積算士の詳細積算の腕の見せ所である。場所打ち杭は「土木工事」と「RC造工事」の合体技である。「掘った泥の処分費(残土㎥)」「流し込んだ生コン代(㎥)」を拾い出す。その際、コンクリートが地下の土に染み込んで目減りする分を見越して、内訳書には「約10%〜20%の数量の割増(口径割増・余盛)」をあらかじめ掛け算して多めに生コンの予算を積んでおくのが鉄則である。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「コンクリートの工事というのは、一般的な地上の柱や梁の時のように、型枠の箱の中がきれいに掃除されてカラカラに乾いているクリーンな状態の時に、上から生コンを流すのが大原則なのだから、地下の杭の穴だって、泥水を全部ポンプで汲み出して乾かしてからコンクリートを打つのが正しい建前なのだろう」と、地上のRC造の常識(JASS 5)のルールだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・地下水が四方八方から湧き出てくる地下の世界において「穴の中を乾燥させる」ことが物理的に不可能な現実を知らない ・「鉄筋かご」を、コンクリートが固まるまでの単なる仮設の型枠パーツ(後で回収するもの)だと勘違いしてしまう ・「地上に引き抜いて穴を空っぽにしてから」という、いかにも作業が几帳面で正しく見える嘘のフレーズに騙されてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問の主語である「場所打ち杭におけるベントナイト泥水内での水中コンクリート打設手順」を正確に整理する 2, 次に、「場所打ち杭=泥水の中に鉄筋を沈め、トレミー管を使って下から生コンを充填する(鉄筋は埋め殺す)」という大原則を思い出す 3, 各選択肢が「重要な構造鉄筋を地上に引き抜いてしまい、不可能な乾燥状態での打設を義務づけるという、構造崩壊の記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、鉄筋かごを引き抜いて空っぽにするという記述は、杭の強度をゼロにするため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問90

建築物の設計・積算の前提となる「地盤調査」の種類とその特徴に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 地盤調査は、敷地の土が建物の総重量にどれだけ耐えられるか(地耐力)や、杭が必要な深さ(支持層の位置)を科学的に調べるために不可欠なステップである。
  2. 「ボーリング調査(標準貫入試験)」は、地面に深い縦穴を掘り、質量63.5kgのハンマーを76cmの高さから自由落下させて、サンプラーが30cm貫入するのに必要な打撃回数を測定する試験である。
  3. 標準貫入試験で得られる打撃回数「N値」は、土の硬さや締まり具合を表すバロメーターであり、一般にN値が大きければ大きいほど、その地盤は豆腐のように柔らかくて危険な軟弱地盤であると判定される。
  4. 「スクリューウエイト貫入試験(旧SWS試験)」は、ロッドの先にスクリューを取り付け、おもりを載せて地面にねじ込み、その回転数や荷重から地盤の硬さを調べる、小規模な木造住宅向けの調査である。(正解)
  5. 地盤調査をサボって適切な基礎の積算・施工を行わないと、完成した建物が自身の重みで斜めに傾いて沈んでいく「不同沈下」という重大な構造欠陥を引き起こすリスクがある。

解説

【設問 of 意図】 この問題は、地盤調査の最高峰である「ボーリング調査(標準貫入試験)」における「N値」の定義と数値の解読ルールに関する「知識の丸暗記」ではなく、「数字が大きいことが、土の硬さに対してどういう物理的な意味を持つか」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「N値が大きければ大きいほど、地盤が柔らかい(危険)と判定されるかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、N値の数字が大きければ大きいほど、その地盤は「カンカンに硬くて引き締まった素晴らしいお宝地盤(良好な支持層)」であり、豆腐のような軟弱地盤はN値が0から2程度と非常に小さくなる。したがって、この選択肢③の記述が不適当(正解)となる。 本来、地盤工学・積算の原則では、建物の杭の先端を乗せるための「支持層」として認めるには、砂地盤ならN値が30以上、粘土質地盤ならN値が20以上といった、大きな数字の合格ライン(定規)が必要になる。重いハンマーを76cmの高さから落としても、地面が硬すぎて「30cm沈めるために50回も叩かなければならなかった(N値=50)」という状態こそが、最高に強固な岩盤の証拠である。本問の記述では、「N値が大きいほど豆腐のように柔らかくて危険である」と、数字の意味を180度完全に真逆に記述しているため、大間違いである。 したがって、数字が大きいほど柔らかいとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]地盤調査は、建築の「健康診断」である。土の中のカルテ(地質調査報告書・ボーリング柱状図)がないと、積算士は「杭の長さを何メートルにすれば良いのか」が闇鍋のように全く分からず、内訳書を作ることができない。 ②[正しい]標準貫入試験(ひょうじゅんかんにゅうしけん)の「公式のルール(数字)」である。この試験の重さの数字「63.5kg」と落とす高さ「76cm」は、積算士の一次試験(建築技術)の超超超頻出の暗号数字なので、セットで絶対に頭に叩き込む。 ④[正しい]スクリューウエイト貫入試験(旧:スウェーデン式サウンディング試験:SWS試験)は、戸建て住宅の味方である。ボーリング調査は費用が数十万円〜百万円近くかかって大がかりだが、SWS試験は細いキリを地面に突き刺しておもり(最大100kg)を乗せて手で回すだけの簡単な方法なので、数万円の安いコストで1日で終わり、一般の木造一戸建ての積算の定番となっている。 ⑤[正しい]不同沈下(ふどうちんか)は、建築の「不治の病」である。地盤の調査をケチったために、家の左側の土だけが柔らかくてズブズブと沈み、家がピサの斜塔のようにナナメに傾いてしまう。こうなると、ドアが開かなくなり、住んでいる人が三半規管をやられて目眩を起こすため、住むことができなくなる。後からジャッキアップして直すには、家を建てるのと同じくらい莫大な補修工費(大赤字)がかかる。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「N値の『N』は、なんとなくネガティブ(Negative)や、危険度を表すランクのアルファベットの頭文字なのだろう。だから、台風の警戒レベルと同じで、数字が大きくなって『N値が50』なんて言われたら、地球が悲鳴をあげているマックス危険なユルユルの地盤なのだろう」と、言葉の響きのイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・N値が「重いハンマーで殴った、単なる『打撃の回数(数取り)』である」という泥臭い実験の風景が分かっていない ・ボーリング柱状図(棒グラフのような図面)をめくった時に、硬い岩盤の場所ほどN値のグラフが右側に大きく飛び出している(数字が大きい)実務の資料を見たことがない ・「豆腐のように柔らかくて危険」という、インパクトのあるひっかけの比喩表現に丸め込まれてしまう 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「標準貫入試験におけるN値の数字の意味」を正確に整理する 2, 次に、「N値=硬い地面ほどハンマーを何回も叩く必要がある=数字が大きいほどカチカチで安全な良い地盤である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「N値が大きいことを理由に、地盤を『豆腐のように柔らかくて危険』扱いする、物理の原則と真逆の記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、N値が大きいほど軟弱地盤であるとする記述は、基礎設計を学ぶ建築積算士試験において100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問91

建築材料の分類と特性に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 建築材料は化学組成によって「有機材料」と「無機材料」に大別され、無機材料はさらに「金属材料」と「非金属材料」に分類される。
  2. 木材やプラスチックなどの有機材料は、一般に軽量で加工性に優れるが、火災時の耐火性や高温時の強度低下に注意が必要である。
  3. ガラスやセラミックスなどの非金属無機材料は、耐火性や耐食性に優れる反面、引張力や衝撃に対して脆く破壊しやすい(脆性破壊)という特性がある。
  4. 鉄やアルミニウムなどの金属材料は、強度や延性に優れ、一定の荷重を加えると元に戻らない永久変形(塑性変形)を起こす性質(展延性)を持つ。
  5. アルミニウムの熱膨張係数は、コンクリートや鉄鋼の熱膨張係数に比べて非常に小さいため、アルミサッシをコンクリート壁に固定する際は温度変化による膨張・収縮の差を完全に無視してよい。

解説

【設問の意図】 この問題は、建築材料の分類(有機・無機・金属・非金属)とその物理的特性、特に「熱膨張係数」に関する「知識の丸暗記」ではなく、異種材料が接する実務的な変化のメカニズムを正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「アルミニウムとコンクリート・鉄鋼の熱膨張係数の大小関係と、温度変化に伴う影響の有無」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、アルミニウムの熱膨張係数は、鉄鋼やコンクリートの約2倍(非常に大きい)ため、温度変化による膨張・収縮の差を完全に無視することは絶対にできない。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、建築材料・積算の原則では、材料に熱が加わったときの伸び縮み(熱膨張)の割合を考慮しなければならない。鉄とコンクリートは奇跡的に熱膨張係数がほぼ等しいが、アルミニウムは非常に動きやすい。本問の記述では、「熱膨張係数が非常に小さいため、温度変化による膨張・収縮の差を完全に無視してよい」とされているが、これではアルミサッシが夏の暑さで膨張してコンクリートの壁を圧迫し、窓が開かなくなったり周囲のシーリングが破断したりする実務のトラブルを無視した記述となり、サッシのクリアランス(隙間)の確保やシーリング数量を正確に計上する積算指針に完全に反することになる。 したがって、熱膨張係数が小さく無視できるとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]建築材料の最も根底にある化学的分類である。炭素を含む「有機材料(木や合成樹脂)」と、含まない「無機材料」に分かれ、無機材料は電気を通す「金属」と、通さないガラスなどの「非金属」に美しく整理される。 ②[正しい]木材やプラスチックは、軽くて大工さんが加工しやすい(有機のメリット)反面、火に弱く、高温にさらされると燃えるか、燃えなくても強度が著しく低下する(有機の弱点)ため、防火上の制限を受ける。 ③[正しい]ガラスやタイル、レンガなどの非金属無機材料は、火に強くて腐らない(無機のメリット)反面、引張られたりハンマーで叩かれたりすると、粘り気なく「パリン」と一瞬で粉々に割れてしまう(脆性破壊の弱点)特性がある。 ④[正しい]鉄筋や鉄骨などの金属は、引っ張りに強くて粘り強い(延性)。輪ゴムのように元に戻る(弾性)限界を超えて、さらに強い力を加えると、針金のように「曲がったまま元に戻らない永久変形(塑性変形)」を起こして踏ん張るため、建物が急に倒壊するのを防ぐ。 ⑤[誤り]解説の通り、アルミニウムの熱膨張係数は鉄やコンクリート(約0.00001)の約2倍(約0.000023)と非常に大きく、温度変化で激しく動く。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「アルミニウムは金属(メタル)の仲間なのだから、同じ金属である鉄鋼(鉄骨)と同じような性質を持っており、熱膨張係数も同じくらいで、頑丈だから窓枠に固定しても特に問題は起きないのだろう」と、金属という大きな枠のイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・鉄とコンクリートだけが「奇跡的に同じ伸び率である」という例外の重みを理解していない ・現場の窓枠(アルミサッシ)の周囲に、なぜわざわざ数ミリの隙間(クリアランス)を空けて、そこに伸縮性の高い「シーリング材(ゴム)」をミッチリ充填して積算・施工しているのかという理由がわかっていない ・「完全に無視してよい」という極端な安全軽視の表現の嘘を見抜けずに読み飛ばしてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「アルミニウムの熱膨張特性と実務の影響」を正確に整理する 2, 次に、「鉄とコンクリートは同じ伸び率。それ以外の金属(アルミや銅)は熱で激しく動くから、隙間の積算が必要である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「アルミニウムの熱変化をゼロ扱いし、コンクリートとの膨張差を『完全に無視してよい』とする、不自然な記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、アルミの熱膨張を無視して良いとする記述は、サッシ周囲のシーリング工費の計上原則と真っ向から矛盾しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問92

セメントの種類とその性質に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 普通ポルトランドセメントは、最も一般的であり、適度な強度発現性と水和熱を持ち、様々な建築工事に標準的に使用される。
  2. 早強ポルトランドセメントは、初期の強度発現が極めて早いため、冬期の寒冷時の施工や、型枠を早く取り外して工期を短縮したい工事に適している。
  3. 高炉セメントは、普通ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末を混合したものであり、長期的な強度発現に優れ、化学物質に対する耐食性や水密性が高い。
  4. セメントが水と化学反応を起こして硬化する現象を「水和反応」と呼び、その際に発生する「水和熱」は、大規模なマスコンクリートの施工において内部ひび割れの原因になりやすい。
  5. 早強ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントに比べて水和反応が緩やかであり、凝結・硬化時の水和熱の発生が非常に小さいため、一度に大量の生コンクリートを打設するダムや巨大な基礎構造に最も適している。

解説

【設問の意図】 この問題は、各セメントの化学的・物理的特性、特に「水和熱の大小」に関する「知識の丸暗記」ではなく、「熱がこもることによるひび割れリスク」という施工・品質管理の本質を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「早強ポルトランドセメントの水和熱特性と、大量打設(マスコンクリート)への適応性」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、早強ポルトランドセメントは水和反応が非常に激しく、水和熱の発生が極めて大きいため、大量の生コンクリートを一度に打設する工事には全く適さない。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、コンクリートの原則では、体積が巨大な構造物(ダムや大基礎)に一度に生コンを流すと、内部の熱が逃げずに100度近くまで跳ね上がり、外側との温度差でコンクリートが真っ二つにひび割れてしまう。そのため、熱の発生が穏やかな「高炉セメント」や「中熱ポルトランドセメント」を選ぶのが鉄則である。本問の記述では、早強セメントが熱が小さく大量打設に適しているとされているため、技術の常識と完全に真逆である。 したがって、水和熱が小さく大量打設に適するとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]セメントの「王道・デフォルト」である。日本の生コンの大部分はこの普通ポルトランドセメントであり、春夏秋の標準的なビルや住宅の積算・施工のベースとなる。 ②[正しい]早強(そうきょう)セメントは、文字通り「早く強さが出る」。冬の寒い時期にコンクリートが凍る前に固めたいときや、1日でも早く型枠をバラして上の階に進みたい(工期短縮)という現場の強いニーズに応えるために使われる。 ③[正しい]エコで頑丈な高炉(こうろ)セメントである。製鉄所で出るゴミ(スラグ)を混ぜることで、最初は固まるのが遅い(イニシャルは弱い)が、数ヶ月〜数年経つと普通セメントを超える強さになり、下水や海水にも強い強固なコンクリートになる。 ④[正しい]セメントは乾燥して固まるのではなく、「水と化学反応(水和反応)」を起こして結晶化する。その時に必ず「熱(水和熱)」を出すため、お腹に熱がこもる大きなコンクリート(マスコン)では、この熱のコントロールが積算・設計の最重要課題となる。 ⑤[誤り]解説の通り、早強セメントは熱の発生がマックスで高いため、巨大なコンクリートに使うと熱で自滅(ひび割れ)してしまう。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「『早強』という名前なのだから、きっと最新の科学技術で作られた一番優れたハイスペックな高級セメントなのだろう。だから、巨大なビルの一番大事な基礎や、国を代表するダムのような大工事には、この一番強そうな早強セメントをドバドバ使うのが最も贅沢で正しい姿なのだろう」と、名前の強そうなイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「早く固まる=それだけ激しく化学反応のエネルギー(熱)を放出している」という物理的現象の裏表の関係を理解していない ・マスコンクリートの施工において、わざわざ「生コンを冷やすための氷」を混ぜたり、パイプに水を流して冷却(パイプクーリング工法)して積算している実務の苦労を知らない ・「最も適している」という強い肯定の罠を見落としてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「早強ポルトランドセメントの硬化スピードと熱の関係」を正確に整理する 2, 次に、「早く固まる=熱が超高い=巨大なコンクリートに使うとひび割れで自滅するから使えない」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「早強セメントを熱が小さい扱いにして、巨大構造物(ダムや大基礎)に最適とする、技術の常識と真逆の記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、早強セメントが大量打設に適するという記述は、コンクリート工学のイロハに完全に違反しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問93

コンクリート用骨材および調合水に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 骨材は粒径によって分類され、一般に5ミリメートルふるいを質量で85%以上通過するものを「細骨材(砂)」、85%以上残るものを「粗骨材(砂利・砕石)」と呼ぶ。
  2. 粗骨材の最大寸法(かたまりの大きさ)は、部材の最小寸法の0.25(4分の1)以下、かつ鉄筋の最小間隔の0.75(4分の3)以下などの制限があり、積算の配合指定の基準となる。
  3. 骨材が内部の空隙に水を完全に吸い込んだ状態を「表面乾燥飽和状態(表乾状態)」と呼び、コンクリートの配合計算(調合)の基準となる骨材の質量や吸水率は、この状態をベースにする。
  4. コンクリートの練り混ぜに用いる調合水として、水道水(上水道水)以外の水(地下水や川の水など)を使用する場合は、JIS規格に定められた水質基準(塩分や有機物の制限)に適合しているか試験で確認する必要がある。
  5. 生コンクリート工場で発生する洗い水からセメント成分を沈殿させた後の「回収水(スラッジ水)」は、環境汚染を防ぐために生コンクリートの調合水として再利用することは法律で一切禁止されている。

解説

【設問の意図】 この問題は、生コンクリートの材料である骨材の定義や「回収水の再利用ルール」に関する「知識の丸暗記」ではなく、「建築資源の持続可能な循環(リサイクル)」という業界の環境防壁のリアルを正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「スラッジ水(回収水)の生コンへの再利用が全面的に禁止されているかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、生コン工場で出る回収水(スラッジ水)は、JIS規格(JIS A 5308)に定められた厳しい固形分濃度などの水質基準をクリアすれば、生コンクリートの「調合水」の一部として合法的に再利用することが認められている。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、建築積算・製造の原則では、工場を毎日洗うときに出るセメント混じりの水をすべて下水に捨てると環境破壊になるため、大きなプール(沈殿池)で砂や泥を沈め、その上澄み水などを生コンを練る水としてリサイクル(有効活用)する。本問の記述では、「環境汚染を防ぐために再利用することは法律で一切禁止されている」とされているが、これでは建設業界が全力で進めている資源循環の省エネガイドラインを全否定することになり、JIS規格の運用指針に真っ向から反することになる。 したがって、再利用が一切禁止されているとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]骨材(砂や砂利)の境界線の数字は「5ミリメートル」である。網の目が5mmのふるいにかけた時、下に落ちる細かくてザラザラしたものが砂(細骨材)、上に残るゴロゴロした石が砂利(粗骨材)と積算上定義される。 ②[正しい]石が大きすぎると、鉄筋と鉄筋の狭い隙間に石が引っかかってしまい、奥まで生コンが届かずに巣穴(ジャンカ・欠陥)ができてしまう。そのため、粗骨材の最大寸法は「部材の厚みの0.25(4分の1)以下」「鉄筋のすき間の0.75(4分の3)以下」という厳しいサイズ制限(足切り)があり、これが積算の「粗骨材20mm」や「25mm」という配合指定の根拠になる。 ③[正しい]配合計算の「絶対の基準状態」である。骨材はカラカラに乾いていると生コンの水を吸い吸いしてしまうし、ビショビショだと水が多すぎてしまう。「お腹の中(空隙)は水で満タンだけど、表面だけは乾いている」という絶妙な「表乾(ひょうかん)状態」を0(基準)として、毎日の生コンの配合がミリグラム単位で計算されている。 ④[正しい]水なら何でも良いわけではない。水道水は審査なしで使えるが、井戸水や川の水を使う時は、水の中に「塩分」や「泥、油」が混ざっていないかを確認する。もし塩分が多い水で生コンを作ると、前述の通り中の鉄筋が一瞬でサビて建物が死んでしまうため、厳しいJISテストをパスしなければならない。 ⑤[誤り]解説の通り、厳しい基準の範囲内であれば、スラッジ水は貴重な水資源として生コンを練る水にブレンドして使って良い。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「『スラッジ水(セメントの泥水)』なんていう濁った汚い水を、ビルの骨組みになる大事な生コンクリートに混ぜるなんて、そんな手抜きのような行為はお上が許すはずがない。コンクリートの品質を100%完璧にするためには、ピカピカの純粋な水道水だけを使うのが法律の正義なのだろう」と、クリーンなイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・建設業界における「資源の再利用(リサイクル)」の技術的な進歩やJISの許容範囲を知らない ・「法律で一切禁止されている」という強い禁止の脅し文句に丸め込まれてしまう ・スラッジ固形分がコンクリートの強度に与える影響の計算(補正)の実務を整理しないまま読み飛ばしてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「生コン工場における回収水(スラッジ水)の利用規則」を正確に整理する 2, 次に、「建築のJIS規格=エコと品質のバランス。厳しいルールに合格すれば回収水のリサイクルはOK(推奨)である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「資源循環の取り組みを全否定して、回収水の再利用を『一切禁止』とする、極端で硬直化した記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、回収水の使用を一切禁止とする記述は、コンクリートの製造実務(JIS A 5308)と真っ向から矛盾しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問94

コンクリートの配合(調合)設計に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. コンクリートの配合における「水セメント比(W/C)」とは、セメントの質量に対する水の質量の比率であり、この比率が小さいほどコンクリートの強度は高くなる。
  2. 「スランプ」とは、まだ固まらないコンクリートの流動性(柔らかさ)を表す指標であり、スランプコーンを引き抜いたときにコンクリートの頂部が下がった寸法(センチメートル)で測定する。
  3. 「空気量」とは、コンクリート内部に含まれる微細な気泡の体積比率であり、AE剤等によって適切な空気量(一般に約4%から5%)を確保することで、コンクリートの耐凍害性や施工性(ワーカビリティー)が向上する。
  4. 単位水量(生コンクリート1立方メートルあたりに含まれる水の量)は、コンクリートの品質安定や乾燥収縮によるひび割れを抑制するため、施工性を損なわない範囲でできるだけ多く(過剰に)設定することが推奨される。
  5. 配合設計において、各材料(水、セメント、細骨材、粗骨材)の総和は、コンクリートが隙間なく密に充填されるよう、気泡(空気量)も含めて正確に1立方メートル(1.000立方メートル)の容積となるように計算される。(正解)

解説

【設問の意図】 この問題は、コンクリートの配合(調合)計算における「単位水量」が品質に与える影響に関する「知識の丸暗記」ではなく、「なぜ水を増やしてはならないのか(乾燥収縮と強度の劣化)」という物理現象の本質を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「単位水量を多く設定すべきか、それとも少なく抑えるべきか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、コンクリートの品質を高めるためには、単位水量は施工性を損なわない範囲で「できるだけ少なく(最小限に)」設定しなければならない。したがって、この選択肢④の記述が不適当(正解)となる。 本来、コンクリートの配合原則では、生コンの中の「水」は、セメントと反応するためだけに必要であり、余分な水はコンクリートが固まった後に蒸発して消えてしまう。水が多すぎる(過剰な)配合にすると、蒸発した後に内部がスカスカのスポンジのようになり(強度の低下)、さらに水が抜けた分だけコンクリートが激しく縮んでバリバリに割れてしまう(乾燥収縮ひび割れの発生)。本問の記述では、「ひび割れを抑制するため、できるだけ多く設定することが推奨される」と、原因と結果を完全に真逆に解説しているため、大間違いである。 したがって、単位水量を多くすることを推奨するとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]コンクリートの強さを決める一番の数式が「水セメント比(W/C)」である。カルピスの原液(セメント)に対して、混ぜる水(W)の量を少なくして濃く作るほど、固まったときのコンクリートの圧縮強度はガチガチに高くなる。 ②[正しい]スランプの測り方である。高さ30cmの鉄のバケツ(スランプコーン)に生コンを詰め、バケツを真上にスッと引き抜いた時に、ドロドロの生コンが「自重で何センチ下に崩れ落ちたか(下がったか)」を測る。数字が15cmや18cmと大きいほど、柔らかくて現場で流しやすい(施工性が良い)生コンという意味になり、積算の指定項目になる。 ③[正しい]コンクリートの中の「クッションの泡(空気量)」である。寒冷地でコンクリートの中の水が凍ると、氷になって体積が膨張し、内側からコンクリートを破壊してしまう(凍結融解の被害)。あらかじめ「約0.04から0.05(4%から5%)」の顕微鏡レベルの細かな泡(AE気泡)を仕込んでおくと、水が凍った時の膨張圧を泡がギギュッと吸収して破裂を防いでくれる(耐凍害性の向上)。 ④[誤り]解説の通り、水は「生コンの諸悪の根源」になり得るため、標準仕様書(JASS 5)でも「1立方メートルあたり185kg以下」などと厳しい上限ラインが引かれており、限界まで減らすのがプロの積算・配合である。 ⑤[正しい]生コンの足し算の絶対ルールである。水+セメント+砂+石+空気の「すべての体積」を合計したときに、ピッタリ「1立方メートル(1.000㎥)」のサイコロの体積になるように、積算士や工場の計算マシーンは材料の比重を使って配合を組み立てる。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「現場でコンクリートをドボドボと流し込むとき、水が少なくてパサパサのコンクリートだと、型枠の隅々まで行き渡らずに工事が大変だし手抜きになりやすい。だから、水を景気よくたくさんジャブジャブ入れて、サラサラと流れやすくしてあげたほうが、隙間なく密に詰まって品質が良くなる(ひび割れない)のだろう」と、現場の流しやすさ(作業性)の都合だけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「流しやすい生コン(柔らかい)」=「水を増やすのではなく、セメントも同時に増やして濃さをキープするか、減水剤という薬(混和剤)の力でサラサラにしている」という実務のロジックを知らない ・「できるだけ多く設定することが推奨される」という、プロの親切なアドバイスを装った嘘の文言に丸め込まれてしまう ・水が乾いた後の「乾燥収縮(引き算の破壊力)」の物理現象を整理しないまま読み飛ばしてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「単位水量がコンクリートの品質・ひび割れに与える影響」を正確に整理する 2, 次に、「水=乾くとコンクリートを縮ませて割る犯人=単位水量は限界まで『少なく』するのが鉄則」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「水をたくさん増やすことを品質向上の手段として推奨するという、コンクリート工学の最大のタブーに触れた記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、単位水量を多くすることを推奨するという記述は、ビルの耐久性を崩壊させるため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問95

コンクリートの強度管理および構造体強度補正値に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 「設計基準強度(Fc)」とは、構造設計において建築物の安全性を計算する際の基準となる強度であり、一般に材齢28日(4週間)の標準養生供試体の圧縮強度で定義される。
  2. 「品質基準強度(Fq)」とは、耐久性(中性化の抑制など)を確保するために必要なコンクリートの強度であり、設計基準強度(Fc)と比較して大きい方の数値をベースに現場の強度管理を行う。
  3. コンクリートの強度は打設時の気温(コンクリートが固まるまでの温度)によって発現スピードが変わるため、冬期の寒冷時には、あらかじめ基本の強度に「構造体強度補正値(S値・温度補正値)」を足し算(加算)して配合を決定する。
  4. 現場で打設された構造体コンクリートの実際の強度を確認するため、現場と同じ環境で養生した供試体(テストピース)の圧縮強度試験を材齢28日または所定の材齢で行う。
  5. コンクリートはセメントの化学反応によって硬化するため、現場での打設直後に強い直射日光に当ててコンクリート内部の水分を限界まで急速に蒸発(乾燥)させることが、強度発現を高めるための正しい養生方法である。

解説

【設問の意図】 この問題は、コンクリートの強度発現のメカニズムと「打設後の養生(水分管理)の原則」に関する「知識の丸暗記」ではなく、「セオリーとしての湿潤環境の必要性」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「打設直後のコンクリートの水分を急速に乾燥させることが、強度を高めるために正しいかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、打設直後のコンクリートを急速に乾燥させることは、強度が出なくなるだけでなく、無数のひび割れを引き起こす最悪の破壊行為である。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、コンクリートの養生原則では、セメントが水と化学反応(水和反応)を長期間にわたってじわじわと続けるために、コンクリートの内部に「水分(お水)」をたっぷりとキープしておかなければならない。そのため、打設後は強い直射日光や風から守るためにシートを被せ、むしろホースで水をジャブジャブとかける「散水養生(湿潤養生)」を最低でも数日間続けることが法律(JASS 5)で義務付けられている。本問の記述では、「直射日光に当てて水分を急速に蒸発させることが正しい養生方法である」とされているが、これでは水和反応が途中でストップして、砂のように脆い壁になってしまうため、大間違いである。 したがって、急速乾燥を正しいとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]コンクリートの「戦闘力(Fc)」である。構造計算書の中で「このビルは24ニュートンのコンクリートで耐える」と決めた数字であり、20度のお湯のプール(標準養生)で「28日間」大切に育てたコンクリートのサイコロ(供試体)を油圧マシーンでプレスして潰れた時の力で測る。 ②[正しい]中性化から建物を守る「耐久性の壁(Fq)」である。計算上のFcが「18」と低くても、お国の大切な建物だから100年持たせたい(計画供用期間が長期)という時は、Fqの定規によって最低でも「30」の強さを使いなさい、とはじき出される。積算士は、FcとFqの「高い方の数字」を配合のベース(品質基準強度)として採用して生コンの値段を調べる。 ③[正しい]積算士の試験の超重要計算「温度補正(S値)」である。春や秋(10度〜20度)は補正なし(0)だが、冬(8度以下など)になるとセメントの反応が寒さで冬眠してしまい、28日経っても予定の強さに届かなくなる。そのため、あらかじめ生コン工場に対して「冬はセメントの量を多くして、基本のパワーに最初から『3ニュートン』や『6ニュートン』のゲタを履かせて(足し算して)濃く練っておいてくれ」と注文する。この割増予算(生コン単価アップ)を計算するのも積算士の仕事である。 ④[正しい]「現場の身代わり(現場水中養生・現場封緘養生)」である。実験室の快適なプールで育ったエリート(標準養生)とは別に、実際の現場の風や寒さにさらされた「雑草育ちの供試体」も同時に現場の横のバケツの中で育てておき、28日目に潰すことで、「リアルなビルの壁のコンクリートも、ちゃんと合格の強さに達しているな」と最終確認を行う。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「泥粘土でお皿や瓦を作るときは、形を作った後に太陽の光でカラカラに乾かして水分を飛ばすことで、硬くてカチカチの焼き物になるのが陶芸の基本である。コンクリートも同じようなセメントの泥なのだから、早く水分をカラカラに乾かして乾かして飛ばしたほうが、一刻も早くカチカチに硬化して強度が上がるのだろう」と、粘土細工やペイント(ペンキ)が乾くイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・コンクリートの硬化が「乾燥(水分が消えること)」ではなく、「水和反応(水とセメントが結合して結晶の骨組みを伸ばすこと)」という化学反応である本質を理解していない ・打設直後の真夏の炎天下の現場で、現場監督が必死になって床一面に水をまいて(散水して)コンクリートが乾かないように守っている実務の風景を見たことがない ・「強度発現を高めるための正しい養生方法である」という、もっともらしい太鼓判の文言に丸め込まれてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「コンクリートの硬化に必要な水分管理(養生)の原則」を正確に整理する 2, 次に、「コンクリート=水が命の化学反応。乾燥はひび割れと強度不足を引き起こす大敵であり、湿潤(水浸し)が正義」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「打設直後の生コンの水分を、直射日光で急速に蒸発させる無責任な乾燥を、正しい養生方法として肯定していないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、急速乾燥を正しいとする記述は、コンクリート構造の寿命をゼロにするため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問96

コンクリートに添加される「混和材料」に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 混和材料には、使用量が比較的少なく、その体積を配合計算時に無視できる「混和剤」と、使用量が比較的多く、その体積を配合計算時に考慮しなければならない「混和材」の2種類がある。
  2. 「AE減水剤」は、コンクリート内部に独立した微細な空気泡を導入すると同時に、水の表面張力を下げてセメント粒子を分散させることで、単位水量を大幅に減らしながら施工性を高める代表的な混和剤である。
  3. 混和材の一種である「高炉スラグ微粉末」をセメントに混合すると、初期の水和熱を抑え、長期的な強度や化学的耐食性を向上させることができる。
  4. 混和材の一種である「フライアッシュ(石炭火力発電所の灰)」を混合したコンクリートは、球状の微粒子によるベアリング効果によって流動性が良くなり、乾燥収縮を減らす効果がある。
  5. 「防錆剤」や「凝結遅延剤」などの混和剤は、コンクリートの体積の約0.5(5割)を超えるような大量のボリュームで生コンクリートに投入されるため、積算上は砂や砂利の代わりとしてメインの骨材項目に計上される。

解説

【設問の意図】 この問題は、コンクリートの添加剤である「混和材料」の2大分類(剤と材)の定義および「配合計算時の体積の扱い・計上ルール」に関する「知識の丸暗記」ではなく、「投入される量の圧倒的な違い」を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「混和剤がコンクリートの体積の半分(約0.5)を超えるような大容量で投入され、骨材の代わりになるかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、防錆剤や遅延剤などの「混和剤(くすり)」は、セメントの質量に対してわずか「数パーセント以下」というスプーン1杯〜数リットルレベルの極めて微量しか投入されないため、コンクリートの体積計算においては完全に無視(ゼロ扱い)される。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、建築積算・配合の原則では、漢字の「剤(調剤の剤・くすり)」と「材(材料の材・ボリューム)」を厳格に使い分ける。微量で効くのが「剤」、セメントの代わりに何十キロもドカンと入れて体積を置き換えるのが「材(高炉スラグやフライアッシュ)」である。本問の記述では、薬に過ぎない混和剤が「体積の約0.5(5割)を超える大量で投入され、砂や砂利の代わりとして計上される」とされているが、これでは生コンクリートではなくただの薬液の塊になってしまい、建築積算士の数量算出のセオリーに完全に反することになる。 したがって、大量投入され骨材の代わりになるとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]積算士の言葉の引き出しの基本である。セメントに対してパーセントの単位(ごく微量)で効かせる「混和剤(AE剤、減水剤、遅延剤など)」は、内訳書の体積の計算から除外する。一方、セメントの一部を置き換えて何割もの大きな体積を占める「混和材(フライアッシュ、シリカフュームなど)」は、生コンの総体積の中にしっかりと算入して計算する。 ②[正しい]現代の生コンの「隠れた主役(高性能AE減水剤など)」である。水を増やすと前述の通りひび割れるが、これ(剤)を数滴混ぜることで、セメントのダマをバラバラにほぐしてサラサラにし、水を劇的に減らしながら(減水効果)、前述の「クッションの泡」を同時に作ってくれる神様のような薬である。 ③[正しい]エコな材料「高炉スラグ微粉末(材)」である。セメントの一部をこれに変えることで、初期の化学反応がおっとり(緩やか)になり、水和熱を低く抑えられるため、マスコンクリートのひび割れ防衛に積算・指定される。 ④[正しい]「フライアッシュ(材)」のボールベアリング効果である。石炭を燃やした後の灰の顕微鏡写真を覗くと、ピカピカの「真ん丸なピンポン玉(球状微粒子)」の形をしている。これが生コンの中に混ざることで、砂や石の滑りを良くする「ベアリング(潤滑油)」の役割を果たし、水を増やさなくても型枠の中にスルスルと吸い込まれていくような極上の施工性(ワーカビリティー)を叩き出す。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「『防錆剤(サビを止める薬)』や『凝結遅延剤(生コンが固まるのをわざと遅らせる薬)』なんていう強そうな名前がついているのだから、現場のコンクリートを強力に守るために、プールの中にドラム缶でドボドボと大量に注ぎ込んで、砂利や砂と同じくらいの大きな塊(メインの材料)として工場で練られているのだろう」と、名前の重要度のイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「剤(パーセント未満の薬)」と「材(キログラム・体積の材料)」の漢字1文字の持つ、積算上のルールの決定的な違いが頭の中で整理できていない ・「体積の約0.5(5割)を超える大量」という、数字のハッタリの嘘の大きさに丸め込まれてしまう ・配合内訳書において、混和剤の費用が「生コン1立方メートルあたり数百円」というごく僅かな特約加算(化学薬品代)として処理されている実務の手続きを整理しないまま読み飛ばしてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問の主語である「混和材料における『剤』と『材』の投入量と体積の定義」を正確に整理する 2, 次に、「混和剤=パーセント以下の微量の薬=体積計算は0(無視)。5割も入れるわけがない」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「ただの薬(剤)をコンクリートの体積の半分を占めるメイン材料扱いして、骨材の代わりとするおかしな記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、混和剤が5割を超えて骨材の代わりになるという記述は、生コンクリートの配合の算数(1000リットルの合計計算)を根底から破壊しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問97

鉄筋コンクリート用棒鋼(鉄筋)の規格および形状に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 鉄筋コンクリートに用いられる鉄筋は、表面に突起(リブや節)がない「丸鋼(SR材)」と、表面に突起を設けてコンクリートとの付着力を高めた「異形棒鋼(SD材)」に大別され、現代の構造物では異形棒鋼が主流である。
  2. 異形棒鋼の規格名にある「SD295A」や「SD345」などの数字は、鉄筋の「降伏点」または「0.002(0.2%)耐力」の最低保証値(ニュートン毎平方ミリメートル)を表している。
  3. 鉄筋の表面には、その鉄筋の強度グレードや製造工場を現場で識別できるよう、圧延によって「マーク(点や数字、アルファベットの突起)」が刻印されており、配筋検査の重要なチェック項目となる。
  4. 鉄筋の太さを表す「呼称(D10、D13、D19、D25など)」は、鉄筋の直径に相当する寸法をミリメートル単位で表したものであり、積算士はそれぞれの太さごとの「1メートルあたりの標準質量(キログラム)」を掛け算して鉄筋重量(トン)を算出する。
  5. 鉄筋の強度区分において、SD295AとSD345を現場で見た目で混同しても、両者の機械的性質(引っ張りに対する強さ)や設計上の許容応力度は完全に同一であるため、現場で勝手に設計図面と異なる太さや強度の鉄筋を入れ替えて施工してよい。

解説

【設問の意図】 この問題は、鉄筋(異形棒鋼)の強度規格(SD295AやSD345)の機械的性質の違いと「現場での識別・品質管理の重要性」に関する「知識の丸暗記」ではなく、「強度の違う鉄筋を混ぜてはならない(構造計算の前提)」という安全の防壁を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「SD295AとSD345の強度が同一かどうか、また現場での勝手な入れ替えが許されるかどうか」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、SD295AとSD345は、鉄筋の強さ(降伏点や許容応力度)が全く異なる別物の材料であり、現場で勝手に設計と違う強度の鉄筋を入れ替えて施工することは絶対に許されない。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、構造計算の原則では、梁や柱にかかる強烈な引張力に対して、「SD345(345ニュートンの力まで耐える強い鉄筋)」を使う計算で図面が描かれている。それを現場の都合で勝手に「SD295A(295ニュートンでギブアップする弱い鉄筋)」に変えてしまうと、地震が来た時に鉄筋が予定より早くびよーんと伸びてしまい、建物が崩壊する。本問の記述では、「強度は完全に同一であり、現場で勝手に入れ替えて施工してよい」とされているが、これでは建物の骨組みを意図的に弱くする危険極まりない犯罪行為(欠陥工事)を肯定することになり、標準仕様書(JASS 5)や鉄筋積算の厳格な仕様別の拾い出し原則に真っ向から反することになる。 したがって、強度が同一で自由に入れ替え可能とするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]鉄筋の2大形状である。昔の大昔の建物に使われていたツルツルの「丸鋼(SR)」は、コンクリートからスッポ抜けてしまう弱点があった。そのため、現代のビルでは100%近く、表面にデコボコの「節(ふし)」や「リブ」をつけた「異形棒鋼(SD)」が指定され、コンクリートとガチッとスクラム(付着)して離れない構造を作っている。 ②[正しい]鉄筋の「戦闘力の数字」の定義である。SD345の「345」とは、「1平方ミリメートルあたり345ニュートン(約35キログラム)の力で引っ張るまでは、元に戻らない変形(降伏)を起こさないぞ」とお国にJIS規格で約束(最低保証)した数字である。数字が大きいほどマッチョで強い鉄筋という意味になり、積算単価(材料費)も太さや強度によって細かく分かれている。 ③[正しい]鉄筋の「タトゥー(圧延マーク)」である。鉄筋はただの錆びた鉄の棒に見えるため、現場に搬入された後に「どれが強い鉄筋か」が分からなくなると大問題になる。そのため、材料の表面に最初から、SD345なら「突起の点が1個」、SD390なら「点が2個」、あるいは「345」という数字そのものが鉄の浮き彫り文字で刻み込まれており(圧延マーク)、監理者はこれを見て合格を出す。 ④[正しい]積算士の鉄筋の拾い出しの真骨頂「重量換算」である。図面から「D13(直径約13mmの鉄筋)の長さが、合計で1500メートル必要だ」と長さを集計(拾い出し)する。しかし、材料屋への注文や見積書は「メートル」ではなく「重さ(トン)」で取引するため、JISで決まった換算率「D13なら1mあたり0.995kg」を掛け算して、「1500m×0.995kg=1492.5kg=1.49トン」と、トン単位の内訳書(数量調書)を仕上げる。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「同じ鉄の棒なのだから、直径(太さ)さえ同じ13ミリ(D13)であれば、中に含まれている鉄の成分や強さなんてどれも大体同じようなもので、現場で多少混ざって使われていても、コンクリートの中に埋まってしまえば誰も気づかないし、建物の強さにも影響はないだろう」と、見た目の太さ(幾何学的形状)だけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「太さ(D)」という外見の定規と、「強度(SD)」という目に見えない材料の質の定規の2つが、完全に独立した別個の仕様であることを理解していない ・「設計上の許容応力度は完全に同一である」という、もっともらしい嘘の専門用語に騙されてしまう ・鉄筋の強度を間違えて施工したマンションが、検査で不合格となり、数億円をかけてコンクリートを全部壊して解体・やり直しになったという実務のシビアなコンプライアンスの現実を知らない といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問の主語である「鉄筋の強度区分(SD295AとSD345)の明確な違い」を正確に整理する 2, 次に、「強度規格の数字=降伏点の違い=強さは全く違う!図面と違う材料の現場での勝手な入れ替えは100%死罪(厳禁)」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「強度の違う鉄筋を同一の材料扱いして、現場での勝手なすり替えや手抜き工事を許容する記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、現場で勝手に設計図面と異なる鉄筋を入れ替えて良いとする記述は、構造安全と建築士法の監理義務を全否定しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問98

鉄骨構造に用いられる構造用鋼材の規格と性能に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 「一般構造用圧延鋼材(SS材・例:SS400)」は、主にボルト接合や二次部材などに使われる一般的な鋼材であり、溶接を伴う建物の主要な柱や梁のフレームには「溶接構造用圧延鋼材(SM材)」や「建築構造用圧延鋼材(SN材)」が使われる。
  2. 「建築構造用圧延鋼材(SN材)」は、大地震時の建物の安全性を高めるため、降伏点の上限値や下限値が厳格にコントロールされ、かつ優れた溶接性と変形能力(靭性)を持つ、建築専用に開発された鋼材である。
  3. SN材の格付けには「A種」「B種」「C種」があり、溶接を行わない二次部材用のA種、主要な柱や梁の溶接構造用のB種、厚物で板厚方向の引張力が働く溶接接合部用のC種(ラメラテア対策)というように使い分けられ、積算上も区別される。
  4. 鋼材の規格名にある「SS400」や「SM490」などの数字は、その鋼材が耐えられる最低限の「引張強さ(ニュートン毎平方ミリメートル)」の数値を表している。
  5. 鋼材は工場製品であるため、温度変化による強度の変動が完全にゼロであり、火災等で周囲の温度が約500度から600度に達した場合でも、元の硬さや強度が1ミリグラムも低下しない完全無欠の材料である。

解説

【設問の意図】 この問題は、鉄骨造(S造)の主役である「鋼材(鉄骨のプレート)」の熱に対する物理的・致命的な弱点に関する「知識の丸暗記」ではなく、「なぜ鉄骨のビルに耐火被覆の積算が必要なのか」という安全設計の根本的な思想を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「火災時の高温(約500度から600度)における鋼材の強度の低下の有無」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、鋼材は高温に非常に弱く、約500度から600度の熱にさらされると、元の強度の約0.5(半分)以下にフニャフニャに柔らかくなってしまう。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、建築材料・構造の原則では、鉄は「燃えない(不燃材料)」が、「熱には極めて弱い」。火事の熱で柱が柔らかくなると、上の階の重みに耐えかねて、ビル全体が飴細工のようにグニャリと一瞬で座屈(倒壊)してしまう。本問の記述では、「強度の変動が完全にゼロであり、500度〜600度でも強度が1ミリグラムも低下しない完全無欠の材料である」とされているが、これでは火災から人間の命(避難時間)を守るための建築基準法の耐火偽装のような大嘘の解説であり、積算において「ロックウール等の耐火被覆工費」を必ず主要構造部に計上するルールに完全に反することになる。 したがって、高温でも強度が全く低下しないとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]鉄骨のメンバーの使い分けである。昔ながらの「SS400(一般構造用)」は、溶接をすると熱で割れやすいため、現代のビルでは溶接をしない小さな梁や、ボルトで留めるだけの場所に限定される。主要な溶接フレームには、溶接専用の「SM材」や、さらに進化した建築専用の「SN材」を積算・指定する。 ②[正しい]地震大国日本が生んだ最強の建築鉄骨「SN(Steel New建築構造用)材」である。大地震の巨大なパンチが来た時に、鉄骨が硬すぎてパキンと割れてしまう(脆性破壊)のを防ぐため、あらかじめ「これ以上の硬さ(上限値)」にしてはならない、という厳しいブレーキ(降伏点の上限制限)が世界で初めてJIS規格でかけられた、粘り気(靭性)マックスの素晴らしい鋼材である。 ③[正しい]積算士の仕様チェック「SNのABC(種別)」である。同じSN400でも、後ろにつくアルファベットで値段や用途がパキッと変わる。溶接不可の「A種」、溶接の王様「B種」、そして一番高価な「C種」は、分厚い鉄板の溶接時に、鉄板がパイの層のようにペリペリと横に剥がれてしまう恐れ(ラメラテアという致命的な溶接欠陥)を防ぐため、鉄の純度(硫黄の成分を極限まで減らす)を限界まで高めた超高級プレートである。積算士は図面を見て、柱のベースプレート等にC種があれば、高い単価(値入)を正確に適用する。 ④[正しい]鋼材の名前の数字の暗号である。SS400やSM490の数字は、引っ張ってちぎれる限界の「引張強さ(400ニュートンや490ニュートン)」を指している(※鉄筋のSD345の数字は「降伏点」を指すため、鉄骨の数字の定義との違いが一次試験の超頻出ひっかけポイントとなる)。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「鉄は車やフライパンのようにカチカチで、木造のように火をつけてもメラメラと燃えて灰のゴミになるわけではない。不燃材料の代表なのだから、火事になろうが1000度になろうが、形が変わらない限りはビルの重さを頑丈に支え続ける無敵の鉄筋マシーンなのだろう」と、燃えない=熱に強いという小学生のようなイメージだけで短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「物質が燃えて消失すること(燃焼)」と、「熱によって結晶の結合が緩んで柔らかくなること(軟化)」の科学的な違いが頭の中で整理できていない ・鉄骨の現場の最大の工種の一つである「耐火被覆(たいかひふく・鉄骨の周りに綿やマキを巻く工事)」が、何のために巨額の予算(積算費用)をかけて施工されているのかという意味が分かっていない ・「完全にゼロ」「1ミリグラムも低下しない」という、完璧すぎる嘘の断定表現を見抜けずに読み飛ばしてしまう 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問の主語である「鋼材(鉄骨)が持つ熱に対する致命的な物理的弱点」を正確に整理する 2, 次に、「鉄は燃えないが熱に激弱。500度で強さは半分にフニャフニャになるから、耐火被覆が絶対に必要である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「鋼材を熱に対して無敵の完全無欠扱いして、火災時でも強度が全く低下しないとする、物理の常識外れの記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、高温で強度が1ミリグラムも低下しないとする記述は、建築基準法の耐火構造のルールと真っ向から衝突しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問99

高強度鋼(高張力鋼材)の特性に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 「高強度鋼(例:SA440など)」は、通常のSS400などの鋼材に比べて引張強さや降伏点が高いため、超高層ビルや大スパン建築物の柱・梁の断面をさらに引き締め、スリム化・軽量化するのに貢献する。
  2. 建築構造用鋼材において、大地震時の塑性変形能力を確保(しなって耐える)するため、降伏点に対する引張強さの比率である「降伏比(降伏点÷引張強さ)」は、一般に約0.80(80%)以下などの上限値が制限されている。
  3. 高強度鋼は、材料自体の強度は高いものの、変形に対する抵抗力を表す「ヤング係数(縦弾性係数・約205000ニュートン毎平方ミリメートル)」の数値は、普通の安価なSS400などの鋼材と全く同一である。
  4. 高強度鋼を採用して柱や梁の断面を限界まで細くスリムに設計した場合、材料の強度は足りていても、建物全体の「たわみ」や「横座屈(ねじれ)」が起きやすくなるため、積算・設計の段階で変形(剛性)のチェックが不可欠である。
  5. 高強度鋼は、どれほど強度が上がっても溶接時の熱による影響(割れや硬化のリスク)が完全にゼロであるため、事前の予熱処理や高度な溶接技能者の手配などを一切行わず、雨ざらしの現場で適当に溶接してよい。

解説

【設問の意図】 この問題は、ハイテク材料である「高強度鋼(高張力鋼)」の溶接施工における極めてデリケートな注意点に関する「知識の丸暗記」ではなく、「強くて硬い金属ほど、加工や溶接が難しくなる(シビアになる)」という材料工学の実務的な本質を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「高強度鋼の現場溶接における熱影響リスクの有無と、予熱管理・手間の必要性」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、高強度鋼は強度が上がれば上がるほど、溶接の熱によって接合部の周りの組織がカチカチに硬くなってひび割れるリスク(低温割れなど)が劇的に高くなるため、極めて厳格な予熱管理や高度な有資格者の手配が必要になる。したがって、この選択肢⑤の記述が不適当(正解)となる。 本来、鉄骨積算・施工の原則では、高級で頑丈な鉄(SA440など)を現場で溶接する時は、溶接の火花を当てる前に、あらかじめガスバーナーで鉄板を「100度〜150度近くまでホカホカに温めておく(予熱処理)」という大変な手間をかけなければ、冷たい鉄板に急激に熱が加わった瞬間に、ガラスのようにパキンと溶接の根元から割れてしまう。本問の記述では、「熱によるリスクが完全にゼロであり、予熱もせず雨ざらしの現場で適当に溶接してよい」とされているが、これでは大地震の前に溶接部から勝手に壊れる欠陥ビルを作ることになり、積算における「鉄骨溶接の特殊工費補正(割増予算)」の計上原則に完全に反することになる。 したがって、リスクがゼロで適当に溶接してよいとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]高強度鋼(ハイテン材)の最大のメリットである。普通の鉄(SS400)の1.5倍以上の強さを持つため、超高層ビルの1階の柱の鉄板の厚みを薄くスリムに引き締めることができ、部屋が広くなって、建物全体の総重量(自重)も劇的に軽くできる。 ②[正しい]地震大国日本の鉄骨の鉄則「降伏比(こうふくひ)の制限」である。降伏比=「降伏点÷引張強さ」の割り算。これが「0.80(80%)」を超えるような硬すぎる鉄だと、地震が来た時に「しなる(塑性変形する)」余裕がなく、限界に達した瞬間にいきなりパキンとちぎれて(破断して)建物が崩壊する。そのため、日本のJIS規格では「必ず8割以下に抑えて、粘り気(のびしろ)を残しなさい」と厳しくブレーキをかけている。 ③[正しい]一次試験の「超超超キラーひっかけ問題」である。「強度が2倍になったのだから、鉄のバネの硬さ(変形のしにくさ=ヤング係数)も2倍になって頑丈に突っ張るのだろう」と思いがちだが、これは大間違い。鉄のヤング係数は、安物のナマクラ鉄から、宇宙船に使う最高級高強度鋼まで、すべて「約205000ニュートン毎平方ミリメートル」の同じ数字で一律に固定されている。つまり、強くしても「たわみやすさ(バネの柔らかさ)」は1ミリも変わらない、という鉄の絶対の物理現象である。 ④[正しい]ヤング係数が同じことによる「設計・積算の罠(剛性不足)」である。高強度鋼を使って柱を限界まで細くスリムにすると、強度は合格(ちぎれない)していても、ヤング係数が同じなので、ビルが風や地震で「へなへなと大きく横にたわんだり、柱がねじれて折れ曲がる(横座屈)」という現象が起きやすくなる。そのため、積算士や構造設計者は、ただ細くするだけでなく、座屈を防ぐための「補強プレート(スチフナーや補強リブ)」をたくさん図面に描き足して重量を計算する必要がある。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「値段が高い高強度鋼(プレミアムな鉄)なのだから、普通の安い鉄(SS400)が持っているサビや溶接の弱点、たわみやすさといった全ての欠点が、科学の力で100%完璧に解決された無敵の未来の材料なのだろう。だから現場の職人も、何の心配も工夫もせず、普通の鉄と同じように気楽にパチパチと溶接して完成できるのだろう」と、高級品=弱点ゼロという素人の思い込みだけで短絡的に判断してしまいがちである。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「高強度鋼の硬さと溶接におけるデリケートな技術的制約」を正確に整理する 2, 次に、「硬くて強い高級な鉄ほど、熱ショックに弱く溶接がめちゃくちゃ難しくなる。徹底的な予熱と職人の技術(コストアップ)が必要である」という原則を思い出す 3, 各選択肢が「高強度鋼の溶接リスクを完全ゼロ扱いし、雨ざらしの現場でのノー予熱の適当な手抜き溶接を肯定する記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、適当に溶接して良いとする記述は、鉄骨構造の接合部検査(JASS 6)のルールと真っ向から衝突しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。

問100

木材の物理的性質および強度特性に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

  1. 木材内部に含まれる水分の割合を「含水率」と呼び、木材の細胞壁が水分で満たされ、細胞の空隙には水がない状態を「繊維飽和点(含水率約30%)」といい、これ以下に乾燥していくと木材の収縮や強度上昇が始まる。
  2. 木材の乾燥による収縮率は方向によって激しく異なり、一般に木目の縦方向(繊維方向)の収縮が最も小さく、年輪の接線方向(板目の横方向)の収縮が最も大きいため、乾燥に伴う反りや割れの原因となる。
  3. 木材の「欠点(節、割れ、目まわり、腐れなど)」は、木材の構造的な強度を著しく低下させる要因となるため、構造用教材(集成材や製材)の等級区分において厳しく制限される。
  4. 木材の構造的な強度の大小関係を同じ木理(方向)で比較した場合、一般に、押しつぶす力に対する「圧縮強度」が最も弱く、繊維を引きちぎる力に対する「引張強度」や、木目をズラす力に対する「せん断強度」のほうが圧倒的に強い。
  5. 近年広く用いられている「構造用集成材」は、天然の木材から欠点(大きな節や割れ)をあらかじめ切り落とした(除去した)薄い木板(ラミナ)を、繊維方向を揃えて接着剤で何層も重ねて製造したもので、天然の生木よりも強度のバラつきが少なく安定している。(正解)

解説

【設問の意図】 この問題は、天然の構造材料である「木材」の各方向における強度の序列「強度の大小関係(異方性)」に関する「知識の丸暗記」ではなく、「木がどのような力に対して一番脆くて弱いのか(接合部の破断リスク)」という木構造の力学の本質を正しく理解しているかを問う問題である。条件文の中で注目すべきポイントは「圧縮・引張・せん断強度のどれが最も強く、どれが最も弱いかという序列の正誤」であり、ここを起点に論理的に思考を進められるかどうかが合否の分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが不適当か / 正しいか)】 結論から言うと、木材の同じ木目の方向(繊維方向)における強度の大小関係は、一般に「引張強度が最も強く、せん断強度が圧倒的に最も弱い」。したがって、この選択肢④の記述が不適当(正解)となる。 本来、木材の構造原則では、木はストローの束をボンドで固めたような縦長の組織をしているため、縦に引っ張る力には強烈に強い(引張大)が、木目に沿ってハサミで縦に切り裂くような力に対しては、ボンドが剥がれるように「わずか10分の1(約0.1)以下の力で簡単にズレて引きちぎれてしまう(せん断強度が極小)」。本問の記述では、「圧縮強度が最も弱く、せん断強度のほうが圧倒的に強い」と、強度の序列を完全にデタラメに真逆に解説しているため、大間違いである。 したがって、せん断強度のほうが強いとするこの選択肢の記述が誤りであり、正解となる。 【選択肢の徹底解説】 ①[正しい]木材の「お肌の曲がり角(繊維飽和点)」である。伐採したばかりの生木は水分が満タン(含水率100%以上)だが、乾燥させていって「約0.30(30%)」のライン(繊維飽和点)に達した瞬間から、木がキュッと小さく縮み始め、同時に水分が抜けて鉄のように身が引き締まるため、強度がグングンと登り調子に強くなる。積算上も、乾燥した「含水率20%以下」の乾燥材(KD材)のほうが品質が高く高級品として計上される。 ②[正しい]木の「変形のクセ(収縮の方向性)」である。木は縦方向(繊維方向)にはほとんど縮まない(ほぼ0)。しかし、年輪の丸みに沿った「接線方向(板目の横幅)」には激しく縮むため、乾燥させると大工さんの木材がグニャリと弓なりに反ったり、お餅のようにバリッと「割れ」が入る。 ③[正しい]天然の木の「キズ(欠点)」である。大きな「節(枝の跡)」や、腐朽菌によって腐った場所(腐れ)があると、そこから一瞬でパキッと折れてしまう。そのため、JISやJASの定規によって、節の大きさや数を数えて、Aランク、Bランクと「構造用木材としての等級(格付け)」を決めて積算する。 ⑤[正しい]エンジニアリングウッド「集成材(しゅうせいざい)」の強みである。天然の1本の丸太から切り出した柱(無垢材)は、中にどんな大きな隠れ節や虫食いがあるか分からず、強度にバラつき(当たり外れ)がある。集成材は、一度薄い板(ラミナ)にバラして、悪い節の場所だけをハサミでチョキンと切り落として捨てた後、良いところだけを強力な接着剤で合体させるため、天然の生木よりも遥かに計算が立ち、狂わなくて強い「工業製品の木」として現代の木造ビルの主役になっている。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験や学習が浅い場合、多くの人は「木材をノコギリやナタで割る時、縦の木目に沿って刃を入れると、大した力もいらずに『パカン!』と一瞬で綺麗に縦真っ二つに裂くことができる(薪割りの風景)。これは縦方向の『せん断強度(ズレる強さ)』が、コンクリートや圧縮に比べて、地球上の材料の中で最も弱いことの何よりの物理的な証拠(事実)なのだ」という、薪割りのリアルな感覚と、試験の専門用語(せん断・圧縮)の言葉の定義が結びついておらず、短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・木造の家が地震で倒壊する時、柱の真ん中が折れるのではなく、柱と梁の「繋ぎ目のボルトの穴の周りの木(接合部)」が縦に裂けてスポンと引き抜けてしまう(せん断破壊の怖さ)という実務の弱点を知らない ・「圧倒的に強い」という、いかにも材料の自慢話風の嘘の解説に丸め込まれてしまう ・木材の強度の序列「引張>曲げ>圧縮>>>せん断」という、積算士・建築士の試験の超超超定番の不等号の暗号を整理しないまま読み飛ばしてしまう といった思考の罠に陥りやすい。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序(思考のステップ)で考えれば迷わない。 1, まず、設問が求めている「木材の繊維方向における各強度の正しい序列」を正確に整理する 2, 次に、「木材=縦に裂く力(せん断)に対しては、薪割りのように世界一弱い材料である。せん断最弱!」という大原則を思い出す 3, 各選択肢が「木材の最大の弱点であるはずのせん断強度を、圧縮強度よりも圧倒的に強いとする、力学の常識外れの記述になっていないか」を検証する 4, 曖昧な選択肢があっても、木材のせん断強度が強いとする記述は、木構造接合部(補強金物)の計上原則と真っ向から衝突しているため100%大間違いであると確信を持って絞り込む この流れで考えれば、知識が不確かな問題に出会っても、論理的に正解へたどり着くことができる。