技術士第一次試験 建設部門 第5回

問81

地球温暖化問題とその対策に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 地球温暖化は、太陽から届く紫外線のエネルギーが、オゾン層によって吸収されることで発生する現象である。
  2. 産業革命前と比較した世界の平均気温の上昇幅を、1.5度に抑える努力を追求することは「京都議定書」で合意された。
  3. 地球温暖化対策において、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを「ゼロエミッション」と呼ぶ。
  4. IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、科学的な見地から気候変動の状況を評価し、報告書を作成する組織である。
  5. 温室効果ガスの中で最も温暖化への寄与度が高いガスはメタンであり、二酸化炭素の約25倍の影響力を持つ。(正解)

解説

【正解】 4 【出題の意図】 この問題は、地球温暖化に関する国際的な枠組みや科学的知見を正確に把握しているかを問う問題である。 単なる用語の暗記ではなく、「誰が、どのような根拠に基づいて、何を決めているのか」という論理構成を理解しているかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、IPCCは世界中の科学者の知見を集約し、各国の政策決定の根拠となる報告書を提供する国際機関であるため、この選択肢が正解となる。 地球温暖化の議論においては、主観や感情ではなく、ピアレビュー(査読)を経た科学的データに基づいて対策を議論することが大前提となる。IPCCはその中立的な評価を行う役割を担っている。 したがって、国際的な役割定義に合致する選択肢④が正解となる。 ・選択肢①は、温暖化のメカニズム(赤外線の再放射)とオゾン層保護を混同している。 ・選択肢②は、1.5度目標は「パリ協定」の内容であり、古い議定書と矛盾している。 ・選択肢③は、排出量と吸収量の均衡は「カーボンニュートラル」の説明であるため誤り。 ・選択肢⑤は、個別の温室効果係数(GWP)はメタンが高いが、排出量全体での「寄与度」は二酸化炭素が最も大きいため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、環境用語のイメージが似通っているため、 「排出ゼロならゼロエミッションだろう」 「メタンの方が強力だと聞いたことがある」 と、断片的な知識だけで判断してしまいがちである。 特に、 ・国際協定(京都、パリ)の名称と内容を整理していない ・温室効果ガスの「強さ」と「排出量による影響度」を混同する といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、用語のニュアンスではなく、明確な「国際的合意や科学的定義」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、温室効果の物理現象(太陽光は透過、地面からの熱を吸収)を正しくイメージする。 2. 次に、最新の国際目標(1.5度)と最新の協定名(パリ協定)がリンクしているか確認する。 3. 機関(IPCC)の役割が「科学的評価」であるという基本軸を思い出す。 4. 選択肢の中で、用語の定義(カーボンニュートラル等)と説明が合致しているかを確認する。 この流れで考えれば、知識が混濁していても、論理的に正答を導き出せる。

問82

温室効果ガス(GHG)とその特性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 二酸化炭素(CO2)は、地球大気中に占める割合が非常に高いため、温室効果係数(GWP)が最大のガスである。
  2. 地球温暖化係数(GWP)とは、二酸化炭素を1.0とした場合に、他のガスがどれだけ温暖化を促進するかを示す指標である。
  3. フロン類はオゾン層を破壊する性質を持つが、温室効果は全く持たないため、地球温暖化とは無関係である。(正解)
  4. 一酸化二窒素は主に工場の煙突から排出され、その温室効果は二酸化炭素の約0.5倍程度と非常に低い。
  5. メタンは水田や家畜、廃棄物埋立地から発生するが、大気中の滞留時間が長いため二酸化炭素よりも長期の影響が大きい。

解説

【正解】 2 【出題の意図】 この問題は、各温室効果ガスの性質を、比較対象となる基準(二酸化炭素)との関係性で正しく理解しているかを問う問題である。 単に「どのガスが悪いか」ではなく、「どのように影響度を測るか」という技術的指標を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、地球温暖化係数(GWP)の定義は、二酸化炭素を基準とした相対値であるため、この選択肢が正解となる。 環境評価においては、特性の異なる複数のガスを統一的に扱う必要がある。そのため、最も排出量が多く基本的なガスであるCO2を「1.0」と定義し、他のガスの「温室効果の強さ」を比較する基準を作ることが大前提となる。 したがって、評価指標の定義に合致する選択肢②が正解となる。 ・選択肢①は、二酸化炭素は基準(1.0)であり、係数自体はメタンやフロンの方が圧倒的に大きいため誤り。 ・選択肢③は、フロン類は非常に強力な温室効果(CO2の数千倍以上)を持つため、無関係とする記述は誤り。 ・選択肢④は、一酸化二窒素の温室効果は約298倍(CO2比)であり、0.5倍とする数値は全くの誤り。 ・選択肢⑤は、メタンは二酸化炭素よりも大気中の滞留時間は「短い」ため、説明が矛盾している。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「CO2が一番悪い=係数も一番大きい」 「フロンはオゾン層の問題であり、温暖化は別問題だろう」 と、事象を切り分けて短絡的に考えてしまいがちである。 特に、 ・「絶対的な排出量」と「1分子あたりの温室効果の強さ」を区別できていない ・GWPという指標が「二酸化炭素との比率」であることを理解していない といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、感覚的なイメージではなく、明確な「環境計量上の定義」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、すべての環境指標には「基準(ものさし)」があることを思い出す。 2. 温室効果の基準は常に「二酸化炭素(1.0)」であるという大前提を軸にする。 3. 他のガスの「強さ」を数値で比較する際、CO2を1とする定義を探す。 4. 数値の大小(メタンは約25倍、フロンは数千倍)の概略を思い出し、矛盾する肢を消去する。 この流れで考えれば、知識が細部まで正確でなくても、論理的に正解を導き出せる。

問83

オゾン層の破壊とその保護に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. オゾン層は、地表付近の対流圏に多く存在し、太陽からの赤外線を吸収して地球を保温している。
  2. フロン類に含まれる窒素原子がオゾン分子と反応し、連鎖的にオゾン層を破壊する。
  3. オゾン層が破壊されると、地表に届く紫外線B(UV-B)が増加し、皮膚がんや白内障のリスクが高まる。
  4. オゾン層の保護を目的とした国際的な枠組みは「ワシントン条約」である。(正解)
  5. 現在、フロン類の回収・破壊は完了しており、オゾン層は産業革命以前の状態まで完全に回復している。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、オゾン層破壊のメカニズムとその社会的・健康的影響を正確に理解しているかを問う問題である。 現象の発生場所(成層圏)や原因物質(塩素等)、健康被害の内容を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、オゾン層の役割は有害な紫外線の遮断であり、その喪失は直接的な健康被害をもたらすため、この選択肢が正解となる。 自然界のバランスにおいては、上空約20キロメートル付近のオゾン層が、DNAを損傷させるエネルギーを持つ紫外線(特にUV-B)を吸収することが大前提となる。このバリアが損なわれると、生体への悪影響が避けられない。 したがって、物理的・生物学的影響に合致する選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、存在する場所(正解は成層圏)と、遮断する光の種類(正解は紫外線)が誤り。 ・選択肢②は、破壊の主因はフロンに含まれる「塩素」原子であり、窒素とする記述は誤り。 ・選択肢④は、オゾン層保護は「モントリオール議定書」であり、絶滅危惧種に関するワシントン条約は誤り。 ・選択肢⑤は、フロンの回収は道半ばであり、オゾン層の完全回復にはまだ数十年を要するため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「空にあるものだから対流圏だろう」 「環境問題の条約はどれも同じように聞こえる」 と、用語の定義を曖昧なまま選んでしまいがちである。 特に、 ・「地球温暖化(赤外線・二酸化炭素)」と「オゾン層破壊(紫外線・フロン)」を混同している ・条約の対象(種、気候、大気層)を整理できていない といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、漠然とした「環境問題」という括りではなく、個別の「物理化学的現象」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、「オゾン層=有害紫外線のバリア」という大前提を思い出す。 2. 次に、バリアがなくなると人間がどうなるか(日焼け、がん、目)という健康軸で考える。 3. 化学反応の主役が「塩素」であるという基本知識を確認する。 4. 条約の名前が対象(オゾン=モントリオール)と一致しているかを確認する。 この流れで考えれば、知識が曖昧でも、論理の組み合わせで正答にたどり着ける。

問84

酸性雨の発生メカニズムとその影響に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 酸性雨の主な原因物質は、化石燃料の燃焼などで発生する硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)である。
  2. 雨水のpH(水素イオン指数)が7.0を下回る現象を、一般的に酸性雨と呼ぶ。(正解)
  3. 酸性雨は発生源の周辺地域にのみ影響を及ぼし、国境を越えて長距離移動することはない。
  4. 酸性雨による土壌の酸性化は、農作物の成長を促進する効果がある。
  5. コンクリート構造物は酸に対して非常に強いため、酸性雨による劣化の心配はない。

解説

【正解】 1 【出題の意図】 この問題は、大気汚染物質が雨水に取り込まれる化学的プロセスを理解しているかを問う問題である。 単に「雨が酸っぱい」というイメージではなく、排出源となる物質名と、それが社会全体(国境を越えた影響)にどう波及するかを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、化石燃料由来の排ガスが硫酸や硝酸に変化し雨を酸性化させるため、この選択肢が正解となる。 産業活動においては、石炭や石油の燃焼に伴い、空気中の窒素や燃料中の硫黄が酸化される物理現象を避けることができない。これらが大気中の水分と反応して強い酸性を示すことが大前提となる。 したがって、原因物質を正確に示した選択肢①が正解となる。 ・選択肢②は、通常の雨でも大気中のCO2が溶け込みpH5.6程度を示すため、一般に酸性雨は「pH5.6以下」を指し、7.0(中性)とする記述は誤り。 ・選択肢③は、上空の風に乗って数百〜数千キロ移動する「長距離越境汚染」が大きな問題であるため、周辺のみとする記述は誤り。 ・選択肢④は、土壌の酸性化はアルミニウムの溶出などを招き、植物の根を傷め成長を阻害するため誤り。 ・選択肢⑤は、コンクリートは強アルカリ性であり、酸に触れると中性化が進み強度が低下するため、劣化の心配がないとする記述は完全に誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「酸性=pH7以下という化学の定義そのままではないか」 「コンクリートは頑丈だから酸など関係ないだろう」 と、一般常識を試験の専門基準にそのまま当てはめてしまいがちである。 特に、 ・「中性(7.0)」と「自然な雨のpH(5.6)」の差を理解していない ・材料の化学的性質(アルカリ性構造物への酸の影響)を考慮していない といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、言葉の響きではなく、明確な「環境科学的定義と材料特性」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、酸性雨の原因=工場の煙(SOx, NOx)という基本知識を固定する。 2. 次に、雨はもともと少し酸性(pH5.6)であることを思い出す。 3. インフラへの影響(中性化)を建設部門の常識としてリンクさせる。 4. 国境を越えるという「広域性」がこの問題の特徴であることを確認する。 この流れで考えれば、引っ掛けの数値(7.0など)に惑わされず、正答を選び出せる。

問85

生物多様性の保全に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 生物多様性とは、特定の希少な絶滅危惧種を保護することのみを目的とした概念である。
  2. 生物多様性は、「生態系の多様性」「種の多様性」「遺伝子の多様性」の3つのレベルで捉えられる。
  3. 外来生物を導入して地域の個体数を増やすことは、生物多様性を高めるための有効な手段である。(正解)
  4. 生物多様性国家戦略は、国際的な「ラムサール条約」に基づいて策定が義務付けられている。
  5. 一度失われた生物多様性は、最新のバイオテクノロジーを用いれば短期間で完全に再生が可能である。

解説

【正解】 2 【出題の意図】 この問題は、生物多様性という広範な概念を、学術的な階層構造に沿って正しく理解しているかを問う問題である。 単なる「生き物を大事にする」という精神論ではなく、どのレベル(空間、種、DNA)で保全を考えるべきかを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、生物多様性はマクロからミクロまで重層的に定義されているため、この選択肢が正解となる。 自然保護においては、目に見える「個体」だけでなく、それらが育つ「環境(生態系)」や、個体ごとの「違い(遺伝子)」という複数の物理的側面を考慮することが大前提となる。 したがって、生物多様性の基本定義に合致する選択肢②が正解となる。 ・選択肢①は、希少種だけでなく共通種も含めた「全体の豊かさ」が対象であるため、「のみ」という限定は誤り。 ・選択肢③は、外来生物は在来種の生息を脅かし、多様性を破壊する最大の要因の一つであるため、有効な手段とする記述は誤り。 ・選択肢④は、「生物多様性条約」に基づくものであり、湿地を対象としたラムサール条約とする説明は誤り。 ・選択肢⑤は、一度絶滅した種や破壊された生態系は不可逆的であり、技術で短期間に再生できるとする記述は完全に誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「多様性=種類がたくさんあればいい=外来種でも増えればいい」 「バイオ技術なら何でもできるだろう」 と、言葉の字面や科学万能主義的な感覚で判断してしまいがちである。 特に、 ・「外来種問題」がなぜ多様性を下げるのか(地域固有性の喪失)を理解していない ・保全の階層性(3つのレベル)という定義を暗記していない といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、現場の感覚ではなく、明確な「生物学的な保全基準」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、「生物多様性=3つのレベル」という定義を思い出す。 2. 次に、外来種は「多様性の敵」であるという基本ルールを確認する。 3. 「一度壊れたら戻らない(不可逆性)」という環境問題の共通認識を持つ。 4. 条約名と対象(多様性=多様性条約、湿地=ラムサール、種=ワシントン)が正しいかを確認する。 この流れで考えれば、もっともらしい誤答に惑わされず、正解へたどり着ける。

問86

環境影響評価法(環境アセスメント)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 環境影響評価法は、民間企業による開発行為のみを対象としており、公共事業は対象外である。
  2. 環境影響評価の手順において、住民の意見を聴取する機会を設けることは禁止されている。
  3. 回避、低減、代償という「ミティゲーションの順位」に従って対策を検討することが基本である。
  4. 環境アセスメントは、工事が完了した後に、その環境への影響を測定して報告する制度である。(正解)
  5. 評価の結果、環境への影響が極めて大きいと判断された場合でも、事業の中止を命じる権限は誰にもない。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、建設事業を進める上での「環境配慮の優先順位」と、制度の基本的な性格を理解しているかを問う問題である。 単に対策を行うのではなく、「まず何をすべきか」という論理的な順序(ミティゲーション)を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、環境破壊を「まず避ける(回避)」、次に「減らす(低減)」、最後の手法として「穴埋めする(代償)」という順位は環境保全の鉄則であるため、この選択肢が正解となる。 大規模プロジェクトにおいては、後から木を植える(代償)よりも、最初から貴重な森を避けるルートにする(回避)ほうが、環境への物理的負荷が圧倒的に少ない。この優先順位を考慮することが大前提となる。 したがって、対策手法の優先順位に合致する選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、公共事業も当然に対象(むしろ主要な対象)であるため、民間のみとする記述は誤り。 ・選択肢②は、住民意見の聴取はアセスの重要なプロセス(公告・縦覧)であり、禁止どころか義務であるため誤り。 ・選択肢④は、事業の「実施前」に予測・評価を行う制度であり、事後報告とする説明は誤り。 ・選択肢⑤は、認可権者(大臣等)が環境保全上適切でないと判断すれば、事実上の事業中止や計画修正を求める仕組みがあるため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「対策をすれば順序はどうでもいいだろう」 「アセスメントは難しい調査の報告書のことだから、事後の測定だろう」 と、実務の流れを誤解して判断してしまいがちである。 特に、 ・「アセス=事前の合意形成」という制度の根本的な目的を理解していない ・代償(埋め合わせ)が最終手段であるという倫理性(回避優先)を飛ばしてしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、形式的な手続きではなく、明確な「環境配慮の指針」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、「アセスメント=事前予測」という時間軸を固定する。 2. 次に、住民参加が民主的な手続きとして不可欠であることを思い出す。 3. ミティゲーション(回避>低減>代償)という「絶対に壊さないことが最優先」という筋道を軸にする。 4. 公共・民間の区別なく、大規模事業にはすべて網がかかるという原則を確認する。 この流れで考えれば、制度の細部を忘れていても、正答を論理的に導き出せる。

問87

ライフサイクルアセスメント(LCA)の手法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. LCAとは、製品の原材料調達から、製造、流通、使用、そして廃棄・リサイクルに至る一生を通じた環境負荷を評価する手法である。
  2. LCAの評価対象は二酸化炭素の排出量のみに限定されており、水質汚濁や廃棄物量は含めない。(正解)
  3. 製品の使用段階で発生する環境負荷のみを評価するのがLCAの基本原則である。
  4. 評価対象となる製品が長寿命であればあるほど、LCAの合計負荷は必ず増加する傾向にある。
  5. LCAは、特定の企業の製造コストを削減するために開発された原価計算の一手法である。

解説

【正解】 1 【出題の意図】 この問題は、製品や構造物が環境に与える影響を「一生分」という長い時間軸で捉える視点を持っているかを問う問題である。 局所的な評価ではなく、ゆりかごから墓場まで(Cradle to Grave)の物理的プロセスを網羅的に捉えられるかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、全ての工程(ライフサイクル)を評価の網にかけることがLCAの根本的な定義であるため、この選択肢が正解となる。 建設部門においては、現場で使う電気だけでなく、資材を作る時のエネルギーや、将来壊す時の手間など、トータルの現象を考慮することが大前提となる。 したがって、LCAの包括的な定義に合致する選択肢①が正解となる。 ・選択肢②は、温暖化だけでなく、資源枯渇、酸性化、毒性など、多様な環境影響を総合的に評価するため誤り。 ・選択肢③は、製造や廃棄も含めた全体評価がLCAの意義であり、「使用段階のみ」とする記述は矛盾している。 ・選択肢④は、長寿命化すれば「1年あたりの負荷」が下がり、トータルでも更新頻度が減って負荷が下がるケースが多いため、必ず増加するとは言えない。 ・選択肢⑤は、環境負荷の評価手法であり、コスト削減のための原価計算とする説明はカテゴリーが異なるため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「ライフサイクルというからには、生きて(動いて)いる間のことだろう」 「環境といえば二酸化炭素だけ気にしておけば正解だろう」 と、視野を狭くして判断してしまいがちである。 特に、 ・「資材の製造時」の負荷が非常に大きいという建設業の特性を忘れている ・LCAが「多角的(CO2以外も含む)」かつ「長期的」な視点であることを理解していない といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、現場の作業効率ではなく、明確な「環境マネジメント基準」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、「LCA=一生分」という大前提を思い出し、範囲を限定している肢を外す。 2. 次に、原材料〜製造〜使用〜廃棄という全ステップが網羅されている記述を探す。 3. 項目がCO2限定でないこと(多角的な環境影響)を確認する。 4. 長寿命化が一般的に「環境に良い(負荷を下げる)」という方向性と矛盾がないかを確認する。 この流れで考えれば、知識の網羅性が高く、正答を選び出すことができる。

問88

「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 建設リサイクル法は、すべての建設工事において、工事現場から発生するすべての廃棄物をリサイクルすることを義務付けている。
  2. 特定建設資材には、コンクリート、建設発生土、廃プラスチック、金属くずの4品目が指定されている。
  3. 対象となる「特定建設資材」を用いた一定規模以上の解体・新築工事では、現場での分別解体等が義務付けられている。
  4. 工事の受注者は、分別解体の計画について、工事着手の3日前までに、発注者に報告しなければならない。(正解)
  5. 建設リサイクル法は、不法投棄を防止することを唯一の目的として制定された法律である。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、建設現場における資源循環の具体的な法規定を正しく理解しているかを問う問題である。 法律の適用範囲(規模、資材の種類)と、義務付けられている行為(分別解体)のセットを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、指定された4つの資材を含む一定規模以上の工事に対し、現場での仕分けを強制するのが本法の核心であるため、この選択肢が正解となる。 建設現場においては、混合廃棄物になるとリサイクルが物理的に困難になる現象を考慮し、発生場所で木やコンクリートを混ぜずに壊すことが大前提となる。 したがって、分別の義務化という法律の趣旨に合致する選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、対象となる「規模」や「資材」の規定を無視し、すべての工事としているため誤り。 ・選択肢②は、4品目は「コンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材(鉄筋コンクリ)、アスファルト・混合物、木材」であり、発生土や金属くずは含まれないため誤り。 ・選択肢④は、届出は「工事着手の7日前」までに「都道府県知事」へ行う(発注者が行う場合もあるが、報告の主旨が異なる)ため、3日前とする記述は誤り。 ・選択肢⑤は、資源の有効利用や廃棄物抑制が主目的であり、唯一の目的とする限定は誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「ゴミは全部リサイクルするのが当たり前だろう」 「建設現場から出るのだから、土や鉄も法律に入っているはずだ」 と、一般的なリサイクルのイメージで判断してしまいがちである。 特に、 ・特定4品目(コンクリ、木、アスファルト)という具体的な名称を覚えていない ・「7日前までに届出」という事務手続きの数字を混同している といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、漠然としたリサイクル意識ではなく、明確な「建設法規の基準」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、「建設リサイクル法=分別解体の義務」という大前提を思い出す。 2. 次に、4品目(コンクリ、鉄筋コンクリ、木、アスファルト)の顔ぶれを確認する(土やプラスチックを外す)。 3. 届出期限(7日前)と、対象規模(解体80平米以上等)の基準を軸にする。 4. 法律の性格(すべてのゴミではなく、特定資材を重点的に)を確認する。 この流れで考えれば、知識が完璧でなくても、法規の筋道を通して正答を選び出せる。

問89

循環型社会形成推進基本法に定められた、廃棄物処理・リサイクルの優先順位として、最も適切なものはどれか。

  1. 1,再生利用 → 2,熱回収 → 3,適正処分 → 4,発生抑制 → 5,再使用
  2. 1,発生抑制 → 2,再使用 → 3,再生利用 → 4,熱回収 → 5,適正処分
  3. 1,適正処分 → 2,発生抑制 → 3,再使用 → 4,再生利用 → 5,熱回収(正解)
  4. 1,発生抑制 → 2,再生利用 → 3,再使用 → 4,熱回収 → 5,適正処分
  5. 1,再使用 → 2,再生利用 → 3,発生抑制 → 4,適正処分 → 5,熱回収

解説

【正解】 2 【出題の意図】 この問題は、資源循環において「最も環境負荷が低い手段は何か」という本質的な優先順位を理解しているかを問う問題である。 後片付け(リサイクル)よりも、まずゴミを出さないこと(リデュース)を最上位に置くという論理的思考を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、ゴミを出さない(Reduce)>そのまま使う(Reuse)>資源に戻す(Recycle)という順に環境負荷が低いため、この選択肢が正解となる。 社会システムにおいては、リサイクルには再加工のエネルギーが必要となる物理現象を考慮し、何も加工せずそのまま使うことや、そもそも作らないことが最も高効率であるということが大前提となる。 したがって、法定の優先順位(3R+熱回収+処分)に合致する選択肢②が正解となる。 ・選択肢①、③、④、⑤は、いずれも「発生抑制(Reduce)」を最優先としていなかったり、再使用と再生利用の順序が逆転していたりするため、資源効率の原則から外れており誤りである。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「リサイクル(再生利用)という言葉が一番有名だから、それが一番いいのだろう」 「とりあえず処分が大事だから、処分を1位にしよう」 と、知名度や最終的な結末だけで判断してしまいがちである。 特に、 ・「そのまま使う(再使用)」と「形を変えて使う(再生利用)」では、前者のほうがエネルギー消費が少ないという物理的視点を飛ばしてしまう ・3Rという用語の順番をあいまいに覚えている といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、個人の好みではなく、明確な「法律が定める環境負荷低減の順位」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、「ゴミを出さないこと(Reduce)」が最強の対策であることを思い出す。 2. 次に、モノを壊さずにそのまま使う(Reuse)ほうが、溶かして固める(Recycle)より楽であることを軸にする。 3. 最後に、どうしようもないものを燃やしてエネルギーにする(熱回収)、それでも残ったものを埋める(適正処分)という流れをイメージする。 4. この「エネルギー消費が少ない順」という筋道に合致する選択肢を選ぶ。 この流れで考えれば、暗記だけに頼らず、環境負荷の理屈で正解を確信できる。

問90

再生可能エネルギーとその特性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 太陽光発電は、夜間や曇天時でも安定した発電が可能であり、ベースロード電源として適している。
  2. 風力発電は、風速が2倍になると得られるエネルギーも2倍になるという比例関係にある。
  3. バイオマス発電は、燃焼時に二酸化炭素を排出するが、成長過程で同量を吸収するためカーボンニュートラルとされる。
  4. 地熱発電は、天候に左右されず安定した発電が可能だが、日本国内にはほとんど資源が存在しない。(正解)
  5. 中小水力発電は、大規模なダム建設が必要となるため、環境アセスメントの実施が常に義務付けられている。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、各再生可能エネルギーの物理的・環境的なメリットとデメリットを正しく理解しているかを問う問題である。 単に「クリーンだ」というイメージではなく、エネルギー源の起源や物理特性(変動性、資源量、環境負荷)を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、植物由来の燃料を燃やしても大気中の炭素循環の中での移動に過ぎない(カーボンニュートラル)という物理現象があるため、この選択肢が正解となる。 地球の炭素循環においては、化石燃料のように地中に封じ込められていた炭素を出すのとは異なり、現在の大気中にある炭素を循環させているということが大前提となる。 したがって、バイオマスの環境特性を正しく述べた選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、太陽光は日照に左右される変動電源(出力不安定)であり、安定的なベースロード電源とする記述は誤り。 ・選択肢②は、風力エネルギーは「風速の3乗」に比例する物理法則があるため、2倍で2倍とする記述は誤り。 ・選択肢④は、日本は世界第3位の地熱資源国であり、資源が存在しないとする説明は完全に誤り。 ・選択肢⑤は、中小水力は一般に「流れ込み式」などであり、大規模ダムを必要としないのが特徴であるため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、 「燃やせばCO2が出るのだから、バイオマスは良くないはずだ」 「風が強くなれば強くなる分だけ電気が増えるのは当たり前だろう」 と、表面的なイメージや単純な比例関係で判断してしまいがちである。 特に、 ・「カーボンニュートラル」という時間軸での炭素循環の考え方を理解していない ・風速の「3乗」や日本の地熱資源量といった、技術的な定数・事実を把握していない といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、期待やイメージではなく、明確な「エネルギー工学的な特性」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1. まず、変動電源(太陽光・風力)と安定電源(地熱・バイオ・水力)を分類する。 2. 次に、バイオマスの「出しても吸っている」という収支の概念を軸にする。 3. 日本の地理的特徴(火山国=地熱あり、山岳地帯=水力あり)を常識としてリンクさせる。 4. 風力の「3乗」の法則は試験で狙われやすいため、単純な比例ではないことを確認する。 この流れで考えれば、各エネルギーの特性を混同することなく、正確に正答を選び出せる。

問91

太陽光発電の原理と特徴に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 太陽電池は、半導体のPN接合部に光が当たることで発生する「光起電力効果」を利用して交流電力を発生させる。
  2. 太陽光発電の発電量は、日射量に比例するが、パネル表面の温度が上昇すると発電効率は向上する特性がある。
  3. 太陽電池モジュールから出力される電力は直流であるため、一般の電力網に供給するにはパワーコンディショナが必要である。
  4. 太陽光発電は、光エネルギーを熱エネルギーに変換してから、タービンを回して発電するシステムである。(正解)
  5. シリコン系太陽電池のエネルギー変換効率は、理論上100パーセントに達することが可能である。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、太陽光発電に関する表面的なイメージではなく、エネルギー変換の物理的プロセスを理解しているかを問う問題である。 「出力される電気の性質」と「環境条件による変化」という実務上不可欠なポイントを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、太陽電池が発電する電気は「直流」であり、これを家庭や電線で使う「交流」に変換する装置が必要不可欠であるため、この選択肢が正解となる。 太陽電池は物理現象として電子を一定方向に動かす(直流)性質を持つ。日本の電力網は交流で運用されているため、周波数を合わせたり電圧を調整したりするパワーコンディショナ(インバータ機能含む)の設置が大前提となる。 したがって、システムの構成原理に合致する選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、「交流」ではなく「直流」が発生するため矛盾している。 ・選択肢②は、半導体の性質上、温度が上がると電圧が下がり、効率は「低下」するため誤り。 ・選択肢④は、熱を経由せず光から直接電気を作る「光電変換」であるため誤り。 ・選択肢⑤は、理論的な限界(ショックレー・クワイサー限界)があり、0.33前後(約33パーセント)が上限とされるため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「太陽の『光』と『熱』を混同して、暑いほうが発電するだろう」 「コンセントは交流だから、発電も交流だろう」 と、日常の感覚で判断してしまいがちである。 特に、 ・夏の暑い日ほど発電効率が良いと思い込んでしまう ・直流と交流の変換が必要な理由(インフラの仕組み)を整理していない といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、気象条件と電気工学の基本に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、太陽電池は「半導体」であり、乾電池と同じ「直流」を作るものだと思い出す。 2. 次に、温度が上がると電気抵抗が変わるため、精密機器(パネル)は「熱に弱い」という物理原則を適用する。 3. 直流を交流に変える「変換装置(パワコン)」の存在をシステム図としてイメージする。 4. 熱やタービンを介さない「直接変換」であることを確認し、最終決定する。

問92

風力発電の理論と特性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 風力発電機が風から取り出せるエネルギーは、理論上、風速の2乗に比例して増加する。
  2. ベッツの法則によれば、風車が風から取り出せるエネルギーの理論的な最大値は、元の風のエネルギーの約0.593倍である。
  3. 風力発電は、風速が強ければ強いほど際限なく発電量を増やせるため、強風地域ほど有利である。(正解)
  4. 水平軸風車(プロペラ型)は、風向きに合わせて方向を変える必要がないため、構造が非常に単純である。
  5. 風力発電の出力は、受風面積に反比例するため、ブレードを短くするほど発電効率が高まる。

解説

【正解】 2 【出題の意図】 この問題は、風力発電のポテンシャル計算における物理的な限界(ベッツの法則)と、流体力学的な基本原則を理解しているかを問う問題である。 「エネルギーはどこから来るのか」という物理現象を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、風を完全に静止させることはできないため、風車が取り出せるエネルギーには理論的な上限(約59.3パーセント)があるため、この選択肢が正解となる。 風車を通り抜ける風の速度がゼロになると、後ろに風が流れず停滞してしまう。そのため、流体としてエネルギーを効率よく回収するには最適な速度比があり、その限界が「ベッツの法則」として定義されている。 したがって、理論限界を正しく述べている選択肢②が正解となる。 ・選択肢①は、運動エネルギーは速度の2乗だが、単位時間の通過量は速度に比例するため、出力は風速の「3乗」に比例し矛盾している。 ・選択肢③は、強すぎると破損するため、一定以上の風速では「カットアウト」して停止させる必要があるため誤り。 ・選択肢④は、効率を高めるために風向きを追う「ヨー制御」が必要であり、構造は複雑であるため誤り。 ・選択肢⑤は、受風面積(ブレードの回転面積)に「正比例」するため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「速度の2乗(運動エネルギーの式)だから2乗に比例するだろう」 「風が強いほど良いはずだから、制限はないだろう」 と、公式の一部分だけを切り取って判断してしまいがちである。 特に、 ・風速が1.2倍になれば出力も1.2倍程度だ、という過小評価 ・流体が「通り抜ける」必要があるという物理的な制約を忘れてしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、流体力学の基本的な積(面積×速度×速度の2乗)の考え方が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、エネルギーの源は「風の運動量」であることを整理する。 2. 風速が倍になれば、当たる強さが4倍になり、通る量も2倍になるから「合計8倍(3乗)」だと導く。 3. 風を全部止めることは不可能(真空になる)だから、半分強くらいが限界だろうという「ベッツの法則」を思い出す。 4. 機械としての安全守るために「ブレーキ(停止)」が必要なほど強風は危険であるという実務を想定し、最終決定する。

問93

水力発電の方式と水車に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. ペルトン水車は、低い落差で大量の水が利用できる河川の下流域に適した「反動水車」の一種である。
  2. フランシス水車は、ノズルから噴射される水の勢いを利用して回転する「衝動水車」の代表例である。
  3. カプラン水車は、プロペラのような形状のランナを持ち、低落差で大流量の地点での発電に適している。
  4. 揚水発電は、夜間の余剰電力を使って水を下池から上池へ汲み上げ、昼間に発電するが、総合的なエネルギー効率は100パーセントを超える。(正解)
  5. 水力発電の出力は、有効落差と流量に比例するが、重力加速度には影響されない。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、水力発電における「位置エネルギー」がどのように「回転エネルギー」に変換されるか、その水車の使い分け(ヘッドと流量の関係)を理解しているかを問う問題である。 落差が高いか、流量が多いかという条件に応じて最適な形状が決まる物理原則を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、カプラン水車は低落差・大流量という物理条件に最適化された形状(プロペラ型)であるため、この選択肢が正解となる。 水車の選定は、水の「勢い(速度)」を使うか「圧力」を使うかで決まる。カプラン水車は、広い流路を確保できるため、落差が小さくても水の量でパワーを稼ぐ地点(ダム式など)に導入されるのが大前提となる。 したがって、水車の特性と適地に合致する選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、ペルトン水車は「高落差」に適した「衝動水車」であるため矛盾している。 ・選択肢②は、フランシス水車は水の圧力で回る「反動水車」であるため誤り。 ・選択肢④は、ポンプアップや発電時の損失があるため、総合効率は0.7前後(約70パーセント)にとどまり、100パーセントを超えることは物理的にあり得ないため誤り。 ・選択肢⑤は、出力(P=9.8QH)の式に「9.8(重力加速度)」が含まれる通り、重力がなければ発電できないため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「水車なんてどれも回れば同じだろう」 「名前が横文字で覚えにくいから適当に選ぼう」 と、分類を整理しないまま判断してしまいがちである。 特に、 ・「噴水のような勢い(衝動)」か「水に浸かって回る(反動)」かの区別がつかない ・効率が良い=損をしない、というイメージから100パーセントに近い値を選んでしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、ポテンシャル(位置エネルギー)の定義に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、エネルギーの基本式「P=9.8QH(重力×流量×落差)」を思い出す。 2. 次に、高いところから「落とす」のがペルトン、水流に「浸ける」のがフランシス、大量に「流す」のがカプランだと整理する。 3. 揚水発電は「電気を貯めるダム(蓄電池代わり)」であり、必ず変換ロスが発生するという物理原則を確認する。 4. 流量が多い下流域では、大きな羽(プロペラ)が必要だというイメージを適用し、最終決定する。

問94

バイオマス発電とその特性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. バイオマス発電は、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出するため、地球温暖化対策としては太陽光発電よりも劣っている。
  2. カーボンニュートラルとは、植物が成長過程で吸収したCO2と、燃焼時に排出するCO2が同量であり、大気中のCO2を増加させないという考え方である。
  3. バイオマス燃料には木材などの有機物のみが該当し、下水汚泥や家畜排せつ物は含まれない。(正解)
  4. バイオマス発電は、天候に左右されず安定した出力を維持できる「変動性再エネ」に分類される。
  5. 木質バイオマス発電においては、燃料の収集・運搬にかかるエネルギー消費は無視できるほど小さい。

解説

【正解】 2 【出題の意図】 この問題は、バイオマス発電を支える環境理念である「炭素循環」を正しく理解しているかを問う問題である。 単に燃やすという「現象」だけでなく、その燃料がどこから来てどこへ還るかという「循環」を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、バイオマスは「生物由来の炭素」であり、化石燃料と違って地上の炭素バランスを変化させないという原則があるため、この選択肢が正解となる。 植物が光合成で取り込んだCO2を、燃焼によって再び戻すだけなので、大気中のトータル量は増えない(ニュートラル)。これが、建設部門でも重視される持続可能な社会基盤整備の根幹となる考え方である。 したがって、カーボンニュートラルの定義に合致する選択肢②が正解となる。 ・選択肢①は、排出はするが「循環」しているため、化石燃料を使うより温暖化対策として有効であり、評価が矛盾している。 ・選択肢③は、動植物由来の有機資源はすべて含まれるため、汚泥なども対象となり誤り。 ・選択肢④は、燃料があれば安定発電できるため、太陽光などの変動性とは異なり「ベースロード電源」的な運用が可能であるため誤り。 ・選択肢⑤は、燃料の密度が低いため運搬効率が悪く、そのエネルギー消費(LCA評価)は重要な課題であるため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「燃やせば煙(CO2)が出るのだから、環境に悪いに決まっている」 と、視覚的なイメージだけで判断してしまいがちである。 特に、 ・石炭と木材の「炭素の出どころ」の違いを意識していない ・「バイオ」という言葉の響きから、クリーンなイメージだけが先行してしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、地球規模の炭素循環(サイクル)に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、バイオマスは「昨日まで生きていたもの」であり、石炭は「何億年も眠っていたもの」だと分ける。 2. 地上のCO2を吸って育ったものを燃やすのは、単なる「戻し作業」であることを理解する。 3. 燃料を運ぶトラックの排ガスまで含めた「ライフサイクル全体」の視点を持つ。 4. 供給が調整可能(安定電源)であるという実用上のメリットを確認し、最終決定する。

問95

燃料電池の仕組みと特徴に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 燃料電池は、水素と酸素を燃焼させた際に発生する熱エネルギーを、タービンによって回転エネルギーに変換する。
  2. 燃料電池の発電過程で排出される物質は、主に二酸化炭素(CO2)と窒素酸化物(NOx)である。
  3. 燃料電池は、水の電気分解の逆反応を利用して、水素が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーとして取り出す。
  4. 家庭用燃料電池(エネファーム)は、発電時の熱を捨て、電気のみを利用することで高いエネルギー効率を実現している。(正解)
  5. 燃料電池の発電効率は、火力発電のようなカルノーサイクルの理論的制約を強く受けるため、40パーセントを超えることはできない。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、燃料電池が「電池」と呼ばれる所以である「化学反応からの直接変換」を理解しているかを問う問題である。 熱を経由するかしないかという物理的な変換ステップを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、燃料電池は燃焼(酸化反応)を電気的に制御して行うものであり、水の電気分解の反対の工程を辿るため、この選択肢が正解となる。 通常の発電(火力など)は「化学→熱→運動→電気」と多くのステップを踏むが、燃料電池は「化学→電気」とショートカットする。このため、熱への逃げが少なく、高い理論効率を得ることが大前提となる。 したがって、発電原理を正しく述べている選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、燃やしてタービンを回すわけではないため矛盾している。 ・選択肢②は、反応の結果出るのは基本的には「水(H2O)」のみであり、クリーンであるため誤り。 ・選択肢④は、熱も給湯などに活用する「コージェネレーション」によって総合効率を高めるのがエネファームの特徴であるため誤り。 ・選択肢⑤は、熱機関ではないためカルノーサイクルの制約(熱力学的限界)を受けず、高い発電効率が可能であるため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「『燃料』を供給するのだから、火力発電と同じように燃やしているのだろう」 と、名前の響きから短絡的に判断してしまいがちである。 特に、 ・「燃焼」と「化学反応(酸化)」を同じ熱プロセスだと思い込んでしまう ・乾電池と同じ「化学デバイス」であるという本質を飛ばしてしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、エネルギー変換のプロセスを物理的に区別する論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、燃料電池は「水の電気分解(H2Oに電気を流すとH2とO2が出る)」をひっくり返したものだと定義する。 2. 電気を流す代わりに「水素(H2)と酸素(O2)」を入れれば、「電気と水(H2O)」が出ることを導く。 3. タービンがない(静止機器である)ことから、騒音が少なく、熱損失も抑えられるメリットをイメージする。 4. 火力の限界(熱を介するゆえのロス)を突破できる新技術であることを確認し、最終決定する。

問96

コージェネレーションシステムに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. コージェネレーションとは、単一のエネルギー源から電気のみを極めて高い効率で発生させるシステムのことである。
  2. 発電時に発生する排熱を回収して給湯や暖房に利用することで、エネルギーの総合有効利用率を向上させることができる。
  3. コージェネレーションは大規模な集中電源に適しており、一般家庭や小規模施設への導入には向かない。(正解)
  4. システム全体の効率を高めるためには、回収した熱を利用せずに大気中へ速やかに放出する必要がある。
  5. コージェネレーションを導入しても、送電損失が発生するため、一次エネルギーの消費削減には寄与しない。

解説

【正解】 2 【出題の意図】 この問題は、コージェネレーションの「一石二鳥(電気と熱)」という多目的利用の仕組みを理解しているかを問う問題である。 エネルギーを捨てずに使い切るという「全体効率」の視点を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、発電に伴う「不可避な熱」をゴミ(ロス)として捨てず、資源として再利用するメカニズムがあるため、この選択肢が正解となる。 通常の発電所では、発生した熱の半分以上が冷却水とともに海へ捨てられている。コージェネレーションは消費地に近い場所で発電し、その熱をそのまま使うため、トータルの効率を0.7から0.8(70パーセントから80パーセント)程度まで引き上げることが大前提となる。 したがって、システムの存在意義に合致する選択肢②が正解となる。 ・選択肢①は、電気「のみ」ではなく熱も含むため矛盾している。 ・選択肢③は、エネファーム(家庭用)や業務用など、分散型電源として普及しているため誤り。 ・選択肢④は、熱を捨てることは「損失」そのものであり、効率を低下させるため誤り。 ・選択肢⑤は、消費地で発電するため送電損失が「少なく」、燃料の節約に大きく寄与するため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「発電所は山奥にある大きな施設だ」 「熱は機械を壊す悪いものだ」 と、既存のインフライメージや現場のトラブル経験だけで判断してしまいがちである。 特に、 ・「排熱」を有効活用できるリソースとして捉える視点が欠けている ・「分散型電源(使う場所で創る)」という近年の潮流を整理していない といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、エネルギー管理の基本である「熱電併給」の合理性に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、「Co(共に)」「Generation(創る)」という言葉から、2つのエネルギー(電気・熱)を創ることを連想する。 2. 発電機のエンジンが熱くなる現象を思い出し、その熱でお風呂を沸かせば無駄がないと考える。 3. 遠くから電気を送ると線が熱くなって「送電ロス」が出るが、現地で創ればそれがないというメリットを整理する。 4. 「エネルギーの使い切り(総合効率)」が環境対策のキーワードであることを確認し、最終決定する。

問97

建築物やインフラの省エネルギー技術に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、年間の一次エネルギー消費量を、再生可能エネルギーを除いてゼロにする建築物のことである。
  2. 建築物の断熱性能を高めると、冬の暖房負荷は軽減されるが、夏の冷房負荷は逆に増大する特性がある。
  3. インフラの長寿命化に向けたメンテナンスの実施は、材料の新規投入を抑制できるため、ライフサイクル全体の省エネに寄与する。
  4. LED照明は白熱電球と比較して寿命は長いが、発光効率(lm/W)はほぼ同等である。(正解)
  5. ヒートポンプ技術は、電気を直接熱に変える抵抗加熱方式よりも、エネルギー消費効率(COP)が低い。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、省エネルギーを単なる「節電」ではなく、ライフサイクルや熱力学的効率という広い技術的視点で捉えているかを問う問題である。 材料資源の投入エネルギー(エンボディド・エネルギー)と運用効率を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、構造物を長く使うことは、作り直す際にかかる膨大な製造・施工エネルギーを削減できるため、この選択肢が正解となる。 建設部門における省エネは、運用時の電気代だけでなく、コンクリートや鋼材を作る際に排出された膨大なエネルギーを無駄にしない(長寿命化する)ことが大前提となる。これが「脱炭素社会」に向けた建設技術者の重要な責務である。 したがって、ライフサイクル評価(LCA)の原則に合致する選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、再エネを「活用して」正味(ネット)でゼロにするため矛盾している。 ・選択肢②は、断熱は外気の影響を遮るため、夏も冬も負荷を「軽減」させるため誤り。 ・選択肢④は、LEDの方が数倍効率が高いため誤り。 ・選択肢⑤は、ヒートポンプは外気の熱を「移動させる」だけで、投入した電気の数倍の熱を得られる(COPが高い)ため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「省エネ=電気製品の買い替え」 と、家庭レベルの狭いイメージだけで判断してしまいがちである。 特に、 ・「モノを長く使うこと」がエネルギー削減に直結するという技術的視点を飛ばしてしまう ・断熱=保温(冬用)というイメージから、夏の遮熱効果を無視してしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、建設・維持管理・運用の全フェーズを俯瞰する論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、省エネには「使う電気を減らす(運用)」と「作る資源を減らす(製造)」の2面があることを整理する。 2. インフラの維持管理(メンテナンス)は、社会全体の「作り直しエネルギー」を抑える究極の省エネ手法だと定義する。 3. ZEBの「ネット(正味)」とは、プラスとマイナス(再エネ)を相殺することだと理解する。 4. ヒートポンプは「熱の運び屋」であり、電気で直接熱を作るより圧倒的に効率が良いという物理法則を確認し、最終決定する。

問98

スマートグリッドの概念と機能に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. スマートグリッドとは、大規模な火力発電所からの電力を、従来通り一方的に消費者に送るための高効率な送電網のことである。
  2. 需要家側の電力消費を制御する「デマンドレスポンス」は、供給力の不足が予想される際でも一切利用されない。
  3. IT(情報技術)を活用して、電力の供給側と需要側が双方向で情報をやり取りし、最適に制御する電力網である。
  4. スマートグリッドを導入すると、太陽光発電などの出力変動が大きい再生可能エネルギーの接続は困難になる。(正解)
  5. スマートメーターの役割は、単に電力使用量を計測して検針員の手間を省くことだけに限定される。

解説

【正解】 3 【出題の意図】 この問題は、スマートグリッドを単なる「デジタル検針」ではなく、再エネ社会を実現するための「需給バランスの自動調整システム」として理解しているかを問う問題である。 情報の双方向性がもたらす「電力の安定化」を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、電力網にITを組み込み、供給量に合わせて需要(使う量)も調整する「賢い(スマート)」制御を行うため、この選択肢が正解となる。 従来の電力網は、供給側が需要に合わせて無理をして発電していた。スマートグリッドは、ネットワーク全体で情報を共有し、余っている電力を蓄電池へ回したり、ピーク時に節電を促したりすることで、インフラ全体を効率化することが大前提となる。 したがって、システムの本質に合致する選択肢③が正解となる。 ・選択肢①は、一方的ではなく「双方向」であるため矛盾している。 ・選択肢②は、需給が厳しい時に需要を減らす「デマンドレスポンス」は中核機能であるため誤り。 ・選択肢④は、むしろ変動を吸収して接続を「容易」にするための技術であるため誤り。 ・選択肢⑤は、リアルタイムのデータ通信により制御の「末端ユニット」として機能するため、限定的という表現は誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「電気代を計る機械がデジタルになっただけだろう」 と、目に見えるデバイス(メーター)の変化だけで判断してしまいがちである。 特に、 ・電気を「送る」だけではなく「対話する」という概念に馴染みがない ・「再エネを増やすために、なぜITが必要なのか」という技術的背景を飛ばしてしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、次世代インフラとしての「自律分散型ネットワーク」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、スマート(賢い)とは「情報を活用して無駄をなくす」ことだと定義する。 2. インターネットと同じように、電気の世界も「双方向」でやり取りすることが、安定供給の鍵だと考える。 3. 再エネは気まぐれ(変動)なので、ITで細かく見守り、蓄電池や需要家と連携して支えるイメージを持つ。 4. 単なる効率化ではなく、社会全体の「需給バランスの最適化」がゴールであることを確認し、最終決定する。

問99

世界の技術史における重要な出来事と人物に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 18世紀後半、ジェームズ・ワットは蒸気機関を劇的に改良し、鉱山の排水だけでなく工場や交通の動力として利用可能にした。
  2. ヨハネス・グーテンベルクが活版印刷技術を実用化したのは、産業革命が始まった18世紀末のことである。(正解)
  3. ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功したのは、蒸気機関車が発明されるよりも前の出来事である。
  4. ガリレオ・ガリレイは、産業革命期において自動織機を開発し、大量生産の礎を築いた。
  5. 電話機を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルは、レオナルド・ダ・ヴィンチと同じルネサンス期の人物である。

解説

【正解】 1 【出題の意図】 この問題は、技術の発展が社会をどう変えたかという「技術の連鎖」を時系列で理解しているかを問う問題である。 動力が「人力・畜力」から「機械力」へ移り変わった大転換点を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、ワットの改良が産業革命を支える万能の動力を提供し、近代文明の扉を開いたという歴史的事実があるため、この選択肢が正解となる。 それまでの蒸気機関(ニューコメン式)は往復運動が主で効率も悪かったが、ワットが回転運動への変換や分離凝縮器を考案したことで、汎用性が飛躍的に高まった。これが後の鉄道や船舶、工場の機械化に直結することが大前提となる。 したがって、歴史的貢献を正しく述べている選択肢①が正解となる。 ・選択肢②は、活版印刷は15世紀中頃(ルネサンス期)であり、産業革命より300年以上前であるため矛盾している。 ・選択肢③は、ライト兄弟は20世紀初頭(1903年)であり、蒸気機関車(19世紀初頭)より100年後であるため誤り。 ・選択肢④は、ガリレオは16-17世紀の科学者であり、産業革命とは無関係(自動織機はカートライトなど)であるため誤り。 ・選択肢⑤は、ベルは19世紀の人物であり、15世紀のダ・ヴィンチとは時代が全く異なるため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「歴史なんて実務に関係ない」 「有名な名前をなんとなく時代順に並べているだけだろう」 と、適当に判断してしまいがちである。 特に、 ・「何世紀」という区切りと、代表的な技術発明の前後関係が整理できていない ・「科学者」と「発明家」を混同して、活動時期を間違えてしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、文明を変えた「技術のライフサイクル」を俯瞰する論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、現代社会の基礎を作った「産業革命(18世紀末~)」を年表の中心に置く。 2. 産業革命=蒸気機関=ワット、という最強のセットを軸にする。 3. 印刷(15世紀)→ 蒸気機関(18世紀)→ 電信・電話(19世紀)→ 飛行機・車(20世紀)という大まかな流れを適用する。 4. 自分が使っている技術のルーツが、どの画期的な発明から始まったかを確認し、最終決定する。

問100

産業革命とその技術的影響に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 産業革命は、イギリスで始まり、主に「農作業の自動化」から「手工業への回帰」をもたらした現象である。
  2. 蒸気機関の普及により、工場は河川などの水力の近くに建設しなければならないという立地制約から解放された。
  3. 産業革命期に普及した「工場制手工業(マニュファクチュア)」とは、高度な自律走行ロボットによる生産のことである。(正解)
  4. 産業革命により、労働環境は劇的に改善され、当初から週休3日制や高度な安全管理が法制化されていた。
  5. 産業革命の技術は、国内に限定され、国外への技術流出は19世紀末まで一切行われなかった。

解説

【正解】 2 【出題の意図】 この問題は、産業革命がもたらした「技術による地理的・時間的制約の打破」を正しく理解しているかを問う問題である。 自然エネルギー(水力)への依存から、可搬性の高い燃料(石炭)への転換を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、蒸気機関という「どこでも動かせる動力」の出現が、都市化や工場の自由な配置を可能にしたため、この選択肢が正解となる。 それまでの動力は水車が中心で、水辺以外には大きな工場を建てられなかった。蒸気機関の導入により、石炭を運べばどこでも大規模生産が可能となり、これが人口の都市集中と建設需要の爆発に繋がったことが大前提となる。 したがって、産業革命の技術的インパクトに合致する選択肢②が正解となる。 ・選択肢①は、手工業からの「脱却(機械化・大量生産)」であるため矛盾している。 ・選択肢③は、マニュファクチュアは「人の手による分業」であり、ロボットは現代の技術であるため誤り。 ・選択肢④は、当初は劣悪な環境が問題となり、後に労働法などが整備された経緯があるため誤り。 ・選択肢⑤は、急速にフランスやドイツ、アメリカへと広まった(波及した)ため誤り。 【初心者がここで迷う理由】 実務経験が浅い場合、多くの人は 「昔の話だから、今のハイテク技術の用語を当てはめても良いだろう」 と、時代背景を無視した判断をしてしまいがちである。 特に、 ・「産業」という言葉から、現代のスマート工場のようなイメージを連想してしまう ・技術が社会構造(立地や労働環境)をどう変えたかという因果関係を飛ばしてしまう といった思考に陥りやすい。 しかし本問では、技術が社会に与える「物理的な影響(制約の解消)」に基づいた論理的な判断が求められている。 【本番での判断フロー】 1. まず、産業革命とは「筋肉と水車」を「石炭と蒸気」に置き換えたことだと定義する。 2. 水がなくても、石炭があれば山の中でも街の中でも工場が動かせるというメリットを整理する。 3. 効率が上がった反面、急激な変化に法規制(安全・労働)が追いつかなかった負の側面も思い出す。 4. 技術が「場所の自由」を生み、それが都市計画や交通インフラの発展(建設部門のルーツ)に繋がったことを確認し、最終決定する。