技術士第一次試験 建設部門 第4回
問61
金属材料の一般的な特性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 金属は一般に熱伝導率が低く、断熱材としての利用に適している。
- 金属の電気伝導性は、原子核が自由に移動することによって生じる。
- 金属光沢は、金属表面で自由電子が光を吸収・再放出することで生じる。
- 多くの金属は、温度が上昇すると電気抵抗が減少する特性を持つ。(正解)
- 金属の延性や展性は、金属結合における原子間の結合が非常に硬く、移動できないために生じる。
解説
【正解】
3
【出題の意図】
この問題は、金属材料が持つ独特の性質(光沢、伝導性、変形能)が、ミクロな視点での「自由電子」や「原子の配列」という物理現象に基づいていることを理解しているかを問う問題である。
金属を単なる「硬い塊」としてではなく、電子が自由に動ける構造体として捉えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、金属特有の輝きは、金属結晶内の自由電子が外部からの光に反応する物理現象であるため、この選択肢が正解となる。
金属の内部には自由に動ける「自由電子」が存在する。光(電磁波)が金属表面に当たると、この自由電子が激しく振動し、受け取った光をほぼそのまま外へ跳ね返す(再放出する)。これが、私たちが目にする「金属光沢」の正体である。
したがって、物理的な光の挙動と合致する選択肢③が正解となる。
・選択肢①:金属は熱を非常に伝えやすいため、断熱材には不向きである。
・選択肢②:電気を運ぶのは原子核ではなく、自由に動ける「電子」である。
・選択肢④:温度が上がると原子の熱振動が激しくなり、電子の移動を邪魔するため、電気抵抗は「増加」する。
・選択肢⑤:金属の原子は層状に並んでおり、結合を保ったまま「滑る」ことができる。この滑りやすさが延性・展性の正体である。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「金属は硬いから、原子もガチガチに固定されているだろう」
「電気抵抗は、なんとなく温度が高い方が流れやすい気がする(半導体などとの混同)」
と、イメージ先行で判断してしまいがちである。
特に、
・「自由電子」という言葉は知っていても、それが具体的に光や熱とどう関係するかを整理していない
・金属と他の材料(セラミックスや樹脂)の決定的な違いがどこにあるかを見落としてしまう
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「金属=自由電子の海」というイメージを大前提に置く。
2. 次に、自由電子が動くことで「熱や電気を運ぶ」「光を跳ね返す」という機能を論理的に結びつける。
3. 選択肢の中で、電子の動きを正しく説明しているものを探す。
4. 金属の強み(叩いても割れずに伸びる)が「原子の層が滑る」ことによるものだと再確認し、最終決定する。
この流れで考えれば、知識が曖昧でも、金属の本質的な構造から正解へたどり着ける。
問62
鉄鋼材料の性質に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 鋼に含まれる炭素量が多くなるほど、材料の硬さは低下する。
- 鋼の炭素量が増加すると、一般に引張強さは向上するが、伸び(延性)は低下する。
- 鋼の炭素量が0.02%以下のものを一般に「鋳鉄」と呼ぶ。(正解)
- 鋼を高温から急冷する「焼なまし」によって、材料の硬度を著しく高めることができる。
- 炭素鋼にクロムやニッケルを添加しても、耐食性は向上しない。
解説
【正解】
2
【出題の意図】
この問題は、建設分野で最も多用される「鉄」という材料において、炭素含有量が物理的性質(強さと脆さ)にどのような影響を及ぼすかという基本原則を理解しているかを問う問題である。
「炭素量」という変数が、材料の内部組織をどう変えるかを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、炭素は鉄の結晶構造に入り込み、変形を妨げる「楔(くさび)」の役割を果たすため、この選択肢が正解となる。
純粋な鉄は柔らかく伸びやすいが、そこに炭素が加わると、鉄原子の層が滑るのを防ぐようになる。その結果、材料は「強く、硬く」なるが、一方で粘り強さが失われ、ポキッと折れやすい(伸びにくい)性質に変化する。これは鉄鋼材料におけるトレードオフの基本原則である。
したがって、この物理的な傾向を正しく述べた選択肢②が正解となる。
・選択肢①:炭素が増えるほど、硬さは「向上」する。
・選択肢③:炭素量が約2%以上のものを鋳鉄、0.02%以下を純鉄、その間を「鋼」と呼ぶ。
・選択肢④:急冷して硬くする手法は「焼入れ」である。焼なましは、ゆっくり冷やして組織を安定(軟らかく)させる手法である。
・選択肢⑤:クロムなどを加えることで表面に強固な膜ができ、錆びにくくなる(これがステンレス鋼である)。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「炭素を入れれば入れるほど、無敵に強くなっていく」
「焼入れ、焼なましなどの用語を、熱処理のイメージだけで混同してしまう」
と、言葉の響きだけで判断してしまいがちである。
特に、
・「強さ(壊れにくさ)」と「硬さ(傷つきにくさ)」を混同してしまう
・材料を強くすると、代わりに失われるもの(延性)があるという視点が欠落してしまう
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「鉄に炭素=硬くなるが脆くなる」という天秤のイメージを思い出す。
2. 次に、強さと伸びが逆の動きをしている選択肢を探す。
3. 熱処理(焼入れ・焼戻し・焼なまし)の目的が「組織をどう変えるか」にあることを意識し、不自然な説明を弾く。
4. ステンレス鋼(合金)の基本知識を照らし合わせ、最終決定する。
この流れで考えれば、数値の暗記に頼らずとも、材料の変化の理屈で正解を導き出せる。
問63
非鉄金属材料の性質に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- アルミニウムの密度は鉄の約3倍であり、重量構造物に適している。
- 銅は電気抵抗が非常に大きいため、絶縁体として電線の被覆に用いられる。
- チタンは比強度が大きく、優れた耐食性を持つが、海水中では急速に腐食する。
- アルミニウムは空気中で緻密な酸化皮膜を形成し、内部の腐食を抑制する特性を持つ。
- 鉛は放射線を遮蔽する能力が極めて低いため、医療現場では使用されない。(正解)
解説
【正解】
4
【出題の意図】
この問題は、鉄以外の主要な金属(アルミニウム、銅、チタン等)が、それぞれの化学的特性によってどのような場面で選ばれるのかを理解しているかを問う問題である。
材料固有の「自己防衛機能(酸化膜)」や「密度」という物理的特徴を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、アルミニウムは非常に反応性が高い一方で、表面に「不動態」と呼ばれる保護膜を自ら作る性質があるため、この選択肢が正解となる。
アルミニウムは、空気に触れると瞬時に酸素と結びつき、表面に極めて薄くて丈夫な「酸化アルミニウム(アルミナ)」の膜を作る。この膜が「鎧(よろい)」のように働き、内部に酸素が浸透するのを防ぐため、錆びが進行しにくいという物理的なメリットがある。
したがって、アルミニウムの防食メカニズムを正しく説明した選択肢④が正解となる。
・選択肢①:アルミニウムの密度は鉄の約0.3333…倍(約3分の1)であり、非常に「軽い」のが特徴である。
・選択肢②:銅は銀に次いで電気を「通しやすい(抵抗が小さい)」ため、電線の「芯線(中身)」に用いられる。
・選択肢③:チタンは海水中でもほとんど腐食しない、極めて優れた耐食性を持つ。
・選択肢⑤:鉛は密度が高く、放射線を遮る能力が非常に「高い」ため、防護服などに使用される。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「アルミニウムは錆びない=反応しにくい金属である」
と、結果だけを見てプロセスの解釈を誤解しがちである。
特に、
・「反応しやすいが、膜を作るから強い」という二段構えのメカニズムを理解していない
・各金属の密度(鉄=約7.8、アルミ=約2.7)の大小関係を逆転させて覚えてしまう
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、電線や一円玉、飛行機の機体など、身近な非鉄金属の「用途」を思い浮かべる。
2. その用途から、「なぜそれを使うのか(軽いから、電気を通すから)」という機能を逆算する。
3. 選択肢の中で、その機能(物理的性質)を否定しているものを除外する。
4. アルミニウムが錆びにくい理由が「表面の膜」にあることを知識の軸として、最終決定する。
この流れで考えれば、個別の金属すべてに精通していなくても、論理的に正解へたどり着ける。
問64
セラミックス材料の一般的な性質に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- セラミックスは金属結合によって原子が結びついており、自由電子を豊富に持つ。
- セラミックスは熱や電気に対して優れた導電性を示すものが多い。
- セラミックスは一般に硬度が高く、耐熱性に優れるが、脆性(もろさ)を持つ。
- セラミックスは常温で容易に塑性変形を起こし、複雑な形状への加工が容易である。(正解)
- セラミックスは化学的に不安定であり、酸やアルカリによって容易に溶解する。
解説
【正解】
3
【出題の意図】
この問題は、金属材料とは対照的な性質を持つセラミックス(陶磁器、ガラス、セメント等)の、強固な「共有結合・イオン結合」がもたらす物理的特性を理解しているかを問う問題である。
熱や化学薬品に強い一方で、なぜ「衝撃に弱い」のかを原子レベルの結合様式から考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、セラミックスの原子同士は非常にガチガチに結びついているため、この選択肢が正解となる。
セラミックスは、金属のような「滑る」組織を持たない。原子同士が強く固定されているため、熱を加えても溶けにくく(耐熱性)、傷もつきにくい(高硬度)という強みがある。しかし、その強固さゆえに、力が加わった際に「滑って逃がす」ことができず、限界を超えると一気に「割れる(脆性破壊)」という物理的な宿命を持っている。
したがって、メリットとデメリットを正しく記述した選択肢③が正解となる。
・選択肢①:セラミックスは「共有結合」や「イオン結合」であり、電子は原子にしっかり捕まっている(自由電子はない)。
・選択肢②:自由電子がないため、電気や熱を「通しにくい(絶縁体・断熱材)」のが一般的である。
・選択肢④:金属のように伸びたり広がったり(塑性変形)しないため、常温での加工は非常に難しい。
・選択肢⑤:非常に安定した化学結合を持っており、酸やアルカリにも強い(耐食性が高い)。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「材料はどれも同じようなものだろう」
と、金属のイメージをセラミックスにも当てはめてしまいがちである。
特に、
・「硬い=強い=壊れにくい」という誤った等式で考えてしまい、「硬いけれど、もろい」という矛盾したような性質が理解しにくい
・自由電子の有無が、導電性や延性にどう関わるかのリンクが切れてしまう
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「セラミックス=茶碗やガラス」をイメージする。
2. それらの特徴(熱いお茶を入れても平気、落としたら割れる、電気は通さない)を思い出す。
3. 選択肢の中で、その日常的な物理現象と一致する説明を探す。
4. 金属との決定的な違い(電子が自由に動けるかどうか)を軸にして、科学的な整合性を確認し、最終決定する。
この流れで考えれば、物理現象に立ち返ることで、正しい選択肢を自信を持って選べる。
問65
プラスチック材料(高分子材料)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 熱可塑性樹脂は、加熱すると硬化し、一度固まると再加熱しても柔らかくならない。
- 熱硬化性樹脂は、加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まる性質を持つ。
- プラスチックは一般に弾性率が金属よりも大きく、構造材として変形しにくい。
- プラスチックは金属に比べて熱膨張係数が小さいため、精密な部品に適している。
- プラスチックは軽量であり、薬品に対する耐性が高いものが多いが、紫外線による劣化を受ける場合がある。
解説
【正解】
5
【出題の意図】
この問題は、プラスチックの最大の特徴である「熱に対する挙動の違い(可塑性vs硬化性)」と、高分子材料特有の化学的弱点(紫外線劣化等)を理解しているかを問う問題である。
金属やセラミックスにはない「分子の鎖」という構造がもたらす物理的性質を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、プラスチックは有機化合物であり、外部からのエネルギー(熱や化学薬品、光)に特有の反応を示すため、この選択肢が正解となる。
プラスチックの多くは、酸やアルカリに強く、水にも錆びない(耐食性・耐水性)という優れた物理的特性を持つ。一方で、太陽光に含まれる紫外線の強いエネルギーは、プラスチックを構成する「分子の鎖」を断ち切る力があるため、屋外で長時間使用するとボロボロになる(劣化する)という性質がある。
したがって、実用上のメリットとデメリットを正確に捉えた選択肢⑤が正解となる。
・選択肢①と②:記述が「逆」である。熱で溶けて再利用できるのが「可塑性」、一度固まると焦げるまで固いままなのが「硬化性」である。
・選択肢③:弾性率は金属の方が遥かに「大きく」、プラスチックは金属よりもずっと「変形しやすい(柔らかい)」。
・選択肢④:プラスチックの熱膨張係数は金属よりも「大きく」、温度変化で寸法が変わりやすいという制約がある。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「プラスチックはなんとなく便利で万能なもの」
と、曖昧なイメージで判断してしまいがちである。
特に、
・「可塑性(かそせい)」と「硬化性」という言葉の物理的な定義を混同してしまう
・材料が「強い」という言葉を、硬さ・重さ・弾性のどれを指しているのか混同したまま選んでしまう
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「プラスチック=熱で溶ける(ペットボトル等)」と「一度固まると戻らない(鍋の取っ手等)」の2種類があることを思い出す。
2. 選択肢①と②の「可塑性・硬化性」という言葉の定義が正しいかを厳密にチェックする。
3. 金属と比較したときの決定的な弱点(熱に弱い、紫外線でボロボロになる、柔らかい)を思い浮かべる。
4. 現場での「プラスチック製品の寿命」という物理現象と一致する選択肢を選び、最終決定する。
この流れで考えれば、用語の丸暗記に頼らず、材料の性質から正解を導き出せる。
問66
複合材料(FRP等)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- FRP(繊維強化プラスチック)は、プラスチックに金属粒子を均一に混ぜ合わせた材料である。
- 複合材料において、強度を負担するのは主に「母材(マトリックス)」である。
- 比強度(強度を密度で割った値)が、一般的な鋼材に比べて著しく低いことが特徴である。
- 補強繊維としてガラス繊維を用いたものをGFRP、炭素繊維を用いたものをCFRPと呼ぶ。
- FRPは完全に均質な材料(等方性材料)であり、どの方向から力を受けても強度は変わらない。(正解)
解説
【正解】
4
【出題の意図】
この問題は、異なる性質の材料を組み合わせることで単体以上の性能を引き出す「複合材料」の仕組みを理解しているかを問う問題である。
特に、軽くて強いという特徴が「繊維」と「樹脂」の役割分担によってどう実現されているかを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、複合材料は用いる素材の名前を冠して分類されるため、この選択肢が正解となる。
FRPは「Fiber Reinforced Plastics」の略であり、繊維で強化されたプラスチックという意味である。補強材に安価で丈夫な「Glass(ガラス)」を使えばGFRP、より高価で強靭な「Carbon(炭素)」を使えばCFRPとなる。これは材料工学における標準的な名称定義である。
したがって、この分類を正しく述べた選択肢④が正解となる。
・選択肢①:FRPは金属粒子ではなく、「繊維(長い糸状のもの)」を混ぜることで強度を高めている。
・選択肢②:強度(荷重)を主に負担するのは「繊維」である。母材(樹脂)は、繊維を固定し、力を各繊維に伝える役割を持つ。
・選択肢③:FRPの最大の特徴は、軽いのに強い(比強度が非常に高い)ことであり、記述と矛盾している。
・選択肢⑤:繊維が入っている方向には非常に強いが、横方向には弱いという「異方性」を持つのが一般的である。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「混ぜてしまえば、どこを測っても同じ性質(均質)になるだろう」
と、日常の料理のような感覚で材料を捉えてしまいがちである。
特に、
・「異方性(方向によって性質が違う)」という、複合材料ならではの複雑な物理的性質を無視してしまう
・比強度の意味(軽いのに強い=航空機や橋梁に適している)を正しくイメージできていない
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「FRP=プラスチックの中に強靭な糸(繊維)が入ったもの」という構造を強くイメージする。
2. 糸の役割(引っ張りに耐える)と、プラスチックの役割(形を保つ)を分けて考える。
3. 選択肢の中で、その役割分担や、繊維の素材名に基づく分類が正しいものを探す。
4. 「軽いのに強い(高比強度)」という、FRPが使われる最大の理由を軸にして、矛盾する記述を除外し、最終決定する。
この流れで考えれば、材料の仕組みに立ち返ることで、確実に正解へたどり着ける。
問67
材料の疲労と破壊に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 材料に降伏強度以下の繰り返し荷重が作用しても、永久に破壊されることはない。
- 疲労破壊は、材料の表面や内部に生じた微細な亀裂(き裂)が徐々に進展することで発生する。
- 材料の一部に穴や切り欠きがあっても、応力集中は発生しないため、疲労強度に影響はない。(正解)
- 脆性破壊は、破壊される直前まで材料が大きく伸びる(塑性変形する)ことが特徴である。
- 疲労限度(疲れ限度)とは、その応力以下であれば無限回繰り返しても破壊されない応力振幅のことであり、すべての金属に存在する。
解説
【正解】
2
【出題の意図】
この問題は、一回の大きな力では壊れなくても、何度も繰り返される力(振動や交通荷重)によって材料が徐々にダメージを蓄積する「疲労現象」の本質を理解しているかを問う問題である。
目に見えない微細な「き裂」の発生と成長という物理プロセスを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、疲労破壊は突然起きるのではなく、長い時間をかけてダメージが蓄積される現象であるため、この選択肢が正解となる。
構造物に繰り返し力が加わると、たとえその力が小さくても、材料の弱い部分にわずかな「き裂」ができる。それが繰り返しのたびにジワジワと広がり、残った部分が荷重を支えきれなくなった瞬間に、一気に破壊へと至る。これが疲労破壊の物理的なメカニズムである。
したがって、破壊のプロセスを正しく説明した選択肢②が正解となる。
・選択肢①:一回では壊れない「降伏強度以下」の力であっても、繰り返し受けることで疲労破壊は発生する。
・選択肢③:穴や段差などの「切り欠き」があると、そこに力が集中し(応力集中)、破壊の起点になりやすいため、強度は大きく低下する。
・選択肢④:大きく伸びてから壊れるのは「延性破壊」である。脆性破壊は、ほとんど伸びずに突然「パリン」と割れる破壊である。
・選択肢⑤:鉄鋼材料には疲労限度があるが、アルミニウムや銅などの非鉄金属には明確な疲労限度が存在しない(繰り返せばいつかは壊れる)のが一般的である。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「設計で決めた最大荷重を超えなければ、絶対に壊れることはない」
と、静的な(止まった状態での)強度だけで判断してしまいがちである。
特に、
・「繰り返し」という時間軸の要素が、材料の寿命にどう影響するかという視点が抜けてしまう
・すべての材料に共通の性質(疲労限度など)があると一般化して覚えてしまう
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「疲労=針金を何度も折り曲げると、あるときポキッと折れる現象」を具体例として思い出す。
2. 折れる前に「白っぽくなったり、小さなヒビが入ったりする」様子を物理的なイメージとして持つ。
3. 選択肢の中で、その「ヒビ(き裂)が育つ」というプロセスを述べているものを探す。
4. 「一回で壊れる力」と「何度も繰り返して壊れる力」は別物であるという大原則を軸にして、最終決定する。
この流れで考えれば、複雑な計算式を知らなくても、現象の本質から正解へたどり着ける。
問68
クリープ現象に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 材料に大きな衝撃荷重が加わった瞬間に、材料が破断する現象のことである。
- 材料を急速に冷却した際に、内部に熱応力が発生してひび割れる現象のことである。
- 材料に一定の荷重(応力)をかけ続けた際、時間の経過とともに歪み(変形)が増大していく現象のことである。
- 材料に繰り返し荷重を加えた際、強度が低下していく現象のことである。(正解)
- クリープ現象は、材料の融点(溶ける温度)付近でのみ発生し、常温では決して発生しない。
解説
【正解】
3
【出題の意図】
この問題は、荷重が変化しなくても、時間という変数が加わるだけで材料が変形し続ける「クリープ」という時間依存性の物理現象を理解しているかを問う問題である。
高温下でのボイラー管や、重みを受け続けるコンクリート部材など、長期的な視点での材料挙動を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、クリープは「止まっているように見えて、実は動き続けている」変形プロセスであるため、この選択肢が正解となる。
通常の弾性変形は、荷重をかけた瞬間に変形し、荷重を外すと元に戻る。しかし、クリープは材料に荷重をかけ続けると、原子がじわじわと移動(拡散や滑り)を続け、時間が経つほど変形が大きくなっていく現象である。これは「時間依存性変形」と呼ばれる物理学的な特徴である。
したがって、この定義を正しく述べた選択肢③が正解となる。
・選択肢①:これは衝撃破壊の説明である。
・選択肢②:これは熱衝撃(ヒートショック)による破壊の説明である。
・選択肢④:これは疲労破壊の説明である。
・選択肢⑤:クリープは高温で顕著になるが、コンクリートやプラスチック、あるいは融点の低い金属(鉛など)のように、常温でもクリープが発生する材料は多く存在する。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「荷重が変わらないなら、変形も止まっているはずだ」
と、静的な力学の知識だけで判断してしまいがちである。
特に、
・「疲労(繰り返しの力)」と「クリープ(一定の力)」の違いを混同してしまう
・熱の影響(高温で起きやすい)というイメージが強すぎて、常温でのクリープ現象(コンクリートのクリープ等)を見落としてしまう
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「クリープ=ソフトキャンディやゴムをずっと引っ張っていると、じわじわ伸びていく様子」をイメージする。
2. 「一定の力」をかけているのに「時間が経つと形が変わる」というキーワードを探す。
3. 似た現象である「疲労(繰り返し)」との言葉の違いを明確に峻別する。
4. 常温でも「コンクリートのたわみ」のようにクリープが起きる例があることを思い出し、最終決定する。
この流れで考えれば、言葉の定義を正確に捉え、正しい選択肢を迷わず選ぶことができる。
問69
腐食と防食技術に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 金属の腐食は、金属が電子を放出して陽イオンになる化学反応(酸化反応)によって進行する。
- 異種金属を接触させた場合、イオン化傾向が小さい方の金属が優先的に腐食される。(正解)
- コンクリート中の鉄筋が錆びるのは、コンクリートの強いアルカリ性によって鉄の表面の膜が破壊されるためである。
- 流電陽極方式(犠牲陽極方式)とは、守りたい金属よりも腐食しにくい金属を接続して保護する方法である。
- ステンレス鋼は、表面に金メッキを施すことで耐食性を維持している合金である。
解説
【正解】
1
【出題の意図】
この問題は、インフラの維持管理において最大の敵となる「サビ(腐食)」が、電子のやり取りという電気化学的な現象であることを理解しているかを問う問題である。
なぜ金属が溶け出すのかという根本原因(酸化)と、それを防ぐための「イオン化傾向」の利用を起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、腐食の本質は、安定しようとする金属原子が電子を手放して水などに溶け出すプロセスであるため、この選択肢が正解となる。
金属(例えば鉄)が水や酸素に触れると、鉄原子は「電子(e-)」を放り出し、「鉄イオン(Fe2+)」となって溶け出す。この現象が「酸化」であり、これが繰り返されることで金属が失われていく。これが腐食の物理学・化学的な正体である。
したがって、腐食の定義を最も正しく述べている選択肢①が正解となる。
・選択肢②:イオン化傾向が「大きい」方の金属が、先に電子を放出して身代わりとなり(腐食され)、小さい方は守られる。
・選択肢③:鉄筋は、コンクリートの「アルカリ性」によって作られる膜(不動態皮膜)で守られている。錆びるのは、中性化などによりそのアルカリ性が失われたときである。
・選択肢④:守りたい金属よりも「腐食しやすい(イオン化傾向が大きい)」金属を繋ぎ、そちらを先に腐食させることで保護する方法である。
・選択肢⑤:ステンレス鋼は、クロムなどの成分が内部まで均一に混ざっており、表面に自ら酸化膜を作る合金である。メッキではない。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「錆びはただの汚れや劣化現象である」
と、表面的な変化だけで捉えてしまいがちである。
特に、
・「イオン化傾向」の大小が、どちらが錆びやすいかを指すのか混乱してしまう
・防食の仕組み(犠牲陽極など)において、「どちらを犠牲にするのか」という論理が逆転してしまう
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「サビ=金属がイオンになって溶けること」という化学の基本を思い出す。
2. 「イオン化傾向が大きい=寂しがりやで、すぐ電子を捨てて溶け出したい性質」と言い換えてイメージする。
3. 選択肢②や④のように、二つの金属を比べる記述があれば、「どちらが先に溶け出すべきか(寂しがりやか)」をチェックする。
4. コンクリートと鉄筋の良好な関係(アルカリ性が鉄を守っている)という知識を軸に、矛盾する記述を排除し、最終決定する。
この流れで考えれば、専門用語の難しさに惑わされず、電気化学のルールに基づいて正解を選べる。
問70
元素の周期表と性質に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 周期表の同じ「族(縦の列)」に属する元素は、一般に化学的性質が大きく異なる。
- 原子番号は、その原子が持つ「中性子」の数によって決定される。
- 第18族の元素(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)は、他の元素と極めて反応しやすく不安定である。
- 同じ「周期(横の列)」に属する元素は、電子が配置される「電子殻」の数が等しい。
- 遷移金属元素は、すべて常温・常圧で気体として存在する性質を持つ。(正解)
解説
【正解】
4
【出題の意図】
この問題は、すべての物質の基本単位である「元素」のルール(周期表)が、原子内の電子配置という物理的構造に基づいていることを理解しているかを問う問題である。
表の並び順が、単なるリストではなく「電子の入れ物(電子殻)」の状態を反映していることを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、周期表の横並び(周期)は、電子が入る階層(部屋)の数を表しているため、この選択肢が正解となる。
原子の周りには電子が入るための「電子殻」という層がある。第1周期(水素、ヘリウム)は1層目、第2周期(リチウムからネオン)は2層目……といった具合に、同じ横の列の元素は、電子が詰まっている階層の数が同じである。これが周期表の「周期」という言葉の物理学的な意味である。
したがって、周期表の構造を正しく説明している選択肢④が正解となる。
・選択肢①:同じ「族(縦)」の元素は、一番外側の電子(価電子)の数が同じであるため、化学的性質が「よく似ている」。
・選択肢②:原子番号は「陽子」の数で決まる。
・選択肢③:第18族(希ガス)は電子が満タンに入っていて非常に安定しているため、他の元素と「ほとんど反応しない」。
・選択肢⑤:遷移金属(鉄、銅、金など)は、その名の通り「金属」であり、常温では(水銀を除き)すべて「固体」である。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合、多くの人は
「周期表はただの暗記リストであり、縦と横に深い意味はない」
と、無機質な表として捉えてしまいがちである。
特に、
・「族(縦)」と「周期(横)」のどちらが性質の似ているグループなのかを混同してしまう
・原子番号が陽子、中性子、電子のどの数に対応するのかを正確に区別できていない
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、「縦(族)は似た者同士(兄弟)」、「横(周期)はマンションの階数(電子殻の数)」というイメージを持つ。
2. 選択肢の中で、この構造的な意味を説明しているものを探す。
3. 希ガス(一番右端)が「満足して動かない(安定)」であることや、金属の常識(鉄が気体なわけがない)を照合する。
4. 原子番号の定義(陽子の数=背番号)を再確認し、最終決定する。
この流れで考えれば、化学の基礎知識を構造的に整理し、論理的に正解を導き出せる。
問71
原子どうしの結合(化学結合)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- イオン結合は、陽性の強い金属元素の原子と陰性の強い非金属元素の原子の間で、電子が移動して生じる。
- 共有結合は、金属原子から放出された自由電子を、多くの原子が共有することで生じる。(正解)
- 金属結合は、特定の原子間で電子対を共有することによって形成される非常に強い結合である。
- 水素結合は、ファンデルワールス力(分子間力)よりも結合力が弱く、気体の性質に影響を与えない。
- 共有結合によって形成されたダイヤモンドは、非常に硬く融点も低いという特徴を持つ。
解説
【正解】
1
【出題の意図】
この問題は、化学結合の種類(イオン結合、共有結合、金属結合など)に関する定義と、それぞれの結合がもたらす物質の性質を理解しているかを問う問題である。
電子がどのように移動または共有されるかという物理現象を起点に判断できるかが重要となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、陽イオンと陰イオンが静電気的な引力(クーロン力)で引き合うのがイオン結合の本質であるため、この選択肢が正解となる。
化学結合を理解する際は、「電子がどう動くか」を考えるのが基本である。金属のように電子を放出しやすい原子と、非金属のように電子を受け取りやすい原子が出会うと、電子の受け渡しが起こり、電気的に引き合うようになる。これがイオン結合のメカニズムである。
・選択肢②は金属結合の説明であるため誤り。
・選択肢③は共有結合の説明であるため誤り。
・選択肢④は、水素結合は分子間力の一種だが、通常のファンデルワールス力よりはるかに強く、水の沸点が高い理由になるなどの影響を与えるため誤り。
・選択肢⑤は、ダイヤモンドのような共有結合結晶は融点が非常に高いため誤り。
【初心者がここで迷う理由】
実務経験が浅い場合や暗記に頼っている場合、
「金属結合と共有結合の言葉の響きが似ていて混同してしまう」
「どの結合が強くて、どの結合が弱いのか、イメージだけで判断してしまう」
といった混乱が起きやすい。
【本番での判断フロー】
1. 電子の動きを見る(貸し借り=イオン、共有=共有、自由電子=金属)。
2. その結合の結果、物質が「電気を通すか」「溶けやすいか」などの性質をリンクさせる。
3. 明らかに定義が入れ替わっている選択肢を除外する。
問72
溶液の濃度と質量に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、NaOHの式量は40とする。
- 水1リットルにNaOHを40グラム溶かした溶液のモル濃度は、正確に1.0 mol/Lである。
- モル濃度とは、溶媒1キログラム中に溶けている溶質の物質量をモル単位で表したものである。
- 1.0 mol/LのNaOH水溶液を500ミリリットル作るには、20グラムのNaOHを水に溶かして全量を500ミリリットルにする。
- 質量パーセント濃度が10%のNaOH水溶液100グラムには、10グラムの溶媒が含まれている。(正解)
- 溶液の温度が上昇しても、溶液の体積が変わるため、質量パーセント濃度は大きく変化する。
解説
【正解】
3
【出題の意図】
この問題は、濃度の定義(モル濃度と質量パーセント濃度)を正しく理解し、実際の計算に適用できるかを問う問題である。
「溶液全体の体積」と「溶媒の量」の違いを整理して考えられるかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、1.0 mol/Lは「溶液1Lあたり1.0 mol(40g)」を意味するため、その半分の500mLなら「0.5 mol(20g)」を溶かして全量を500mLにすればよいため、正解となる。
・選択肢①は、「水1L」に溶かすと、全体の体積が1Lを超えるため、正確に1.0 mol/Lにはならない。定義はあくまで「溶液1L」である。
・選択肢②は、溶媒1kgあたりで考えるのは「質量モル濃度」であり、モル濃度は「溶液1L」あたりである。
・選択肢④は、10グラムの「溶質」が含まれているのであって、溶媒は90グラムである。
・選択肢⑤は、温度で体積は変わるが、質量は変わらないため、質量パーセント濃度は変化しない。
【初心者がここで迷う理由】
「水1Lに溶かせば、溶液も1Lになるだろう」という思い込みや、溶媒と溶質、溶液の区別が曖昧なために迷うことが多い。
【本番での判断フロー】
1. 単位(mol/L)に注目し、分母が「溶液の体積(L)」であることを確認する。
2. 質量パーセント濃度は「(溶質÷溶液)×100」であることを思い出す。
3. 温度変化で変わるもの(体積)と変わらないもの(質量・物質量)を整理する。
問73
酸化還元反応に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 酸化とは、物質が水素を受け取る、または電子を失う反応のことである。
- 還元とは、物質が酸素を失う、または電子を受け取る反応のことである。
- 酸化剤とは、相手の物質を酸化させる過程で、自身がさらに酸化される物質のことである。(正解)
- 反応前後で原子の酸化数が増加した場合、その原子は還元されたという。
- 金属の腐食は、金属原子が電子を受け取って還元されることで進行する現象である。
解説
【正解】
2
【出題の意図】
この問題は、酸化と還元の定義を、酸素・水素の受け渡しだけでなく、電子の移動や酸化数の変化として深く理解しているかを問う問題である。
建設部門においても鉄筋の腐食など密接に関わる現象である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、酸素を失うこと、および電子を受け取ることが還元の正しい定義であるため、この選択肢が正解となる。
・選択肢①は、水素を「失う」のが酸化であるため誤り。
・選択肢③は、酸化剤は相手を酸化させ、自身は「還元される」物質であるため誤り。
・選択肢④は、酸化数が増加するのは「酸化された」ことを意味するため誤り。
・選択肢⑤は、腐食は金属が電子を「失って」イオンになる、つまり「酸化」される現象である。
【初心者がここで迷う理由】
「酸化=酸素とくっつく」という初期のイメージが強すぎて、電子や水素の動きが逆になってしまうことが多い。また、酸化剤と還元の関係(相手と自分の挙動の違い)で混乱しがちである。
【本番での判断フロー】
1. 「酸化=電子を失う=酸化数アップ」という基本セットを軸にする。
2. その反対が「還元」であると定義する。
3. 腐食=鉄ボロボロ=酸化(錆び)という実務イメージとリンクさせる。
問74
酸と塩基に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- ブレンステッド・ローリーの定義によれば、酸とは他の物質に水素イオン(プロトン)を与える物質のことである。
- アレニウスの定義によれば、塩基とは水溶液中で水素イオンを放出する物質のことである。(正解)
- pHの値が1増加すると、水溶液中の水素イオン濃度は10倍になる。
- 強酸と強塩基が過不足なく反応して生成される塩の水溶液は、常に強い酸性を示す。
- 中和反応によって生成される水溶液の液性は、常にpH 7.0の中性となる。
解説
【正解】
1
【出題の意図】
この問題は、酸と塩基の定義(アレニウス、ブレンステッド・ローリー)の違いや、pHの対数的な性質を正しく理解しているかを問う問題である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、ブレンステッド・ローリーの定義はプロトンの授受に注目しており、プロトン供与体が酸であるため、この選択肢が正解となる。
・選択肢②は、アレニウスの塩基は「水酸化物イオン(OH-)」を放出する物質である。
・選択肢③は、pHが増加すると水素イオン濃度は「0.1倍(10分の1)」になる(pHはマイナスの対数であるため)。
・選択肢④は、強酸と強塩基からできる塩(NaClなど)の水溶液は中性を示す。
・選択肢⑤は、強酸と弱塩基の中和などの場合、塩の加水分解により液性は中性にならないことがある。
【初心者がここで迷う理由】
pHの数値の増減と濃度の増減(逆転関係)や、中和=中性という言葉の響きに引きずられてしまうことが多い。
【本番での判断フロー】
1. 酸=H+を出す、という共通点を思い出す。
2. pH 1の違いが「10倍」または「0.1倍」であることを再確認する。
3. 強いもの同士の反応結果は穏やか(中性)になる、というイメージを持つ。
問75
有機化合物に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- アルカンは、炭素原子間の結合がすべて単結合である飽和炭化水素である。
- アルコールは、分子内にヒドロキシ基(-OH)を持つ化合物である。
- ベンゼンは、6個の炭素原子が環状に並び、特有の安定な構造を持つ芳香族炭化水素である。
- カルボン酸は、分子内にホルミル基(-CHO)を持つ化合物の総称である。
- エステルは、カルボン酸とアルコールが脱水縮合して生成される化合物である。(正解)
解説
【正解】
4
【出題の意図】
この問題は、主要な有機化合物の分類と、その特徴を決める「官能基」の名前と構造を正しく理解しているかを問う問題である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、カルボン酸の官能基は「カルボキシ基(-COOH)」であり、ホルミル基はアルデヒドの官能基であるため、この選択肢が不適切(正解)となる。
・選択肢①、②、③、⑤は、それぞれの有機化合物の定義および官能基、生成過程について正しい記述をしている。
【初心者がここで迷う理由】
官能基の名前(ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基など)が似ていて、どれがどれだったか記憶が曖昧になりやすい。
【本番での判断フロー】
1. 官能基の名前と構造をセットで書き出す。
2. 酸(カルボン酸)には「酸」を想起させるカルボキシ基があるはず、とリンクさせる。
3. ホルミル基=アルデヒド、というペアを記憶の隅から引き出す。
問76
核酸(DNAとRNA)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- DNAを構成する糖はリボースであり、RNAを構成する糖はデオキシリボースである。
- DNAを構成する塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシルの4種類である。
- DNAは通常、2本のポリヌクレオチド鎖が二重らせん構造を形成している。
- RNAは自己複製を行い、遺伝情報の長期間の保存を主な役割とする。(正解)
- DNAの二重らせんにおいて、アデニンは常にシトシンと相補的に結合する。
解説
【正解】
3
【出題の意図】
この問題は、生命の設計図であるDNAとRNAの構造的な違い(糖、塩基、形状)を正しく理解しているかを問う問題である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、DNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4つの塩基を持ち、二重らせん構造をとるのが最大の特徴であるため、正解となる。
・選択肢①は、DNAがデオキシリボース、RNAがリボースであるため逆である。
・選択肢②は、ウラシル(U)はRNA特有の塩基であり、DNAではチミン(T)である。
・選択肢④は、遺伝情報の保存は主にDNAの役割であり、RNAは情報の伝達やタンパク質合成に関与する。
・選択肢⑤は、アデニンはチミン(A-T)と、グアニンはシトシン(G-C)と結合する。
【初心者がここで迷う理由】
DNAとRNAという似た言葉の中で、糖の名前や塩基の組み合わせ(A-TなのかA-Cなのか)を混同しやすい。
【本番での判断フロー】
1. DNA=D(デオキシリボース)、RNA=R(リボース)とイニシャルで覚える。
2. 塩基は「AT、GC」というペアを呪文のように思い出す。
3. 二重らせん=DNA、というビジュアルイメージを優先する。
問77
タンパク質の構造と性質に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- タンパク質は、多数のアミノ酸がエステル結合によって長くつながった高分子化合物である。
- タンパク質の一次構造とは、アミノ酸の配列順序のことである。
- タンパク質の二次構造には、アルファヘリックスやベータシートがあり、これらは主にイオン結合で維持されている。(正解)
- タンパク質は加熱やpHの変化によってもその立体構造は変化せず、性質は維持される。
- すべてのタンパク質は水に溶けやすく、熱に対して非常に安定である。
解説
【正解】
2
【出題の意図】
この問題は、生体を構成するタンパク質の階層的な構造(一次~四次)と、その結合様式、変性の性質を問う問題である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、アミノ酸がどのような順番で並んでいるかを示すのが一次構造の定義であるため、この選択肢が正解となる。
・選択肢①は、アミノ酸同士の結合は「ペプチド結合(アミド結合)」であるため誤り。
・選択肢③は、二次構造の維持には「水素結合」が重要な役割を果たす。
・選択肢④は、加熱等により構造が変わる「変性」が起こるため誤り。
・選択肢⑤は、髪の毛のケラチンのように水に溶けないものや、熱に弱いものが多いため誤り。
【初心者がここで迷う理由】
「一次、二次…」という言葉の定義が具体的になにを指すのか(配列なのか、ねじれなのか)を整理できていないことが多い。
【本番での判断フロー】
1. タンパク質=ペプチド結合、と即座に結びつける。
2. 構造の階層(1:並び、2:部分的な形、3:全体の折りたたみ)をイメージする。
3. 卵(タンパク質)を焼くと固まる=熱で性質が変わる(変性)、という日常現象を根拠にする。
問78
酵素に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 酵素は無機触媒の一種であり、主成分は脂質である。
- 酵素は特定の物質とのみ反応する性質を持っており、これを基質特異性という。
- 酵素反応の速度は、温度が上昇すればするほど無限に速くなる。(正解)
- 多くの酵素は、中性付近よりも強酸性や強塩基性の条件下で最も高い活性を示す。
- 酵素は反応過程で自身が消費されるため、一度の反応で失活する。
解説
【正解】
2
【出題の意図】
この問題は、生体内の反応を助ける「酵素」の主成分や、温度・pH・反応相手に対する鋭敏な性質を問う問題である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、酵素には決まった相手(基質)としか反応しないという非常に高い選択性があるため、この選択肢が正解となる。
・選択肢①は、酵素は「生体触媒」であり、主成分は「タンパク質」である。
・選択肢③は、高温では主成分のタンパク質が変性し、活性を失う(失活する)ため速度は低下する。
・選択肢④は、多くの酵素には「最適pH」があり、通常は体液に近い中性付近で最大となる(ペプシンなどの例外はある)。
・選択肢⑤は、触媒であるため反応前後で自身は変化せず、繰り返し利用される。
【初心者がここで迷う理由】
触媒としての性質(繰り返し使える)と、タンパク質としての性質(熱に弱い)が、頭の中で矛盾しているように感じてしまうことがある。
【本番での判断フロー】
1. 酵素=タンパク質、と定義する。
2. 鍵と鍵穴の関係(特異性)を思い出す。
3. 生き物の中(体温付近、中性付近)で一番よく働くはずだ、と推測する。
問79
微生物の産業利用や環境対策への活用に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- バイオリメディエーションとは、微生物の働きを利用して、汚染された土壌や地下水を浄化する技術のことである。
- 好気性微生物による処理は、酸素がない環境下で汚染物質を分解させる手法である。(正解)
- 微生物は高温・高圧の過酷な環境下でなければ、有機物を分解することができない。
- 活性汚泥法とは、物理的なろ過のみによって下水を浄化するシステムのことである。
- 微生物による発酵は、常に人間にとって有害な物質を生成する過程を指す。
解説
【正解】
1
【出題の意図】
この問題は、環境工学分野において微生物がどのように役立てられているか、その用語とメカニズムを正しく理解しているかを問う問題である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、生物(バイオ)による修復(レメディエーション)という言葉の通り、汚染除去に微生物を使う技術が正しく記述されているため、正解となる。
・選択肢②は、好気性は「酸素を必要とする」微生物である。
・選択肢③は、多くの微生物は常温・常圧の穏やかな環境で分解を行う。
・選択肢④は、活性汚泥法は微生物の塊(汚泥)に有機物を食べさせる生物的処理である。
・選択肢⑤は、発酵は酒や味噌の製造など、人間にとって有益な過程を指す。
【初心者がここで迷う理由】
カタカナの専門用語(バイオリメディエーション等)の定義や、「好気性・嫌気性」という言葉の区別で迷うことが多い。
【本番での判断フロー】
1. 漢字の意味(好気=空気を好む=酸素必要)から機能を推測する。
2. 微生物=生き物=自分たちと同じ環境で生きている、と考える。
3. 下水処理場(活性汚泥)は微生物の力で綺麗にしている、という実務知識とつなげる。
問80
バイオエネルギーに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビなどの植物資源を原料として、蒸留のみによって製造される。
- バイオガスは、有機性廃棄物を嫌気性微生物で分解することで得られ、主な成分はメタンである。
- バイオマス燃料を燃焼させた際に発生する二酸化炭素は、地球温暖化を促進するため、化石燃料と同等に評価される。(正解)
- カーボンニュートラルとは、バイオマスを燃焼させても大気中の二酸化炭素を一切排出しないことを意味する。
- バイオディーゼル燃料は、主にプラスチックゴミを加熱処理して抽出される液体燃料のことである。
解説
【正解】
2
【出題の意図】
この問題は、再生可能エネルギーの一つであるバイオマスの変換技術と、「カーボンニュートラル」という概念の正確な定義を問う問題である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、酸素のない状態で微生物が有機物を分解(メタン発酵)してガスを作るプロセスが正しいため、この選択肢が正解となる。
・選択肢①は、エタノール製造には「微生物による発酵」という生物的プロセスが不可欠である。
・選択肢③は、植物が成長過程で吸収したCO2を出すだけなので、長期的には大気中のCO2を増やさない(化石燃料とは異なる)とされる。
・選択肢④は、「排出しない」のではなく、吸収量と排出量が「差し引きゼロ」になるという考え方である。
・選択肢⑤は、バイオディーゼルは主に「廃食用油(植物油)」などを原料とする。
【初心者がここで迷う理由】
「カーボンニュートラル=二酸化炭素が出ない」という極端な解釈をしてしまったり、バイオ燃料の製造工程の細部で迷うことが多い。
【本番での判断フロー】
1. バイオ=生物由来、という原点に立ち返る(プラスチックは化石由来)。
2. カーボンニュートラルは「循環」のイメージ(吸って、出す)で捉える。
3. メタン発酵=ガス発生、というつながりを覚える。