第三種電気主任技術者 単相・三相交流回路と過渡現象

問81

最大値が 141.4 V の正弦波交流電圧がある。この電圧の実効値 [V] と平均値 [V] の組み合わせとして、最も近いものを選べ。

  1. 実効値:70.7 V、平均値:63.7 V
  2. 実効値:100 V、平均値:63.7 V
  3. 実効値:100 V、平均値:90.0 V(正解)
  4. 実効値:111 V、平均値:100 V
  5. 実効値:141.4 V、平均値:100 V

解説

【正解】 (2) 【設問の意図】 この問題は、交流電圧の「実効値」と「平均値」が、物理的にどのような意味(熱を出す力や、波形の面積)を持っているかの根本を理解しているかを問う問題である。 注目すべきポイントは、実効値が「直流と同じ仕事をする値」であり、平均値が「波の半サイクル分の平均」であるという定義の差である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、実効値は 100 V、平均値は約 90 V となるため、(2)が最も適切である。 そもそも実効値とは、「交流を抵抗に流したとき、直流と同じだけの熱を発生させる電圧値」という物理的定義に基づいている。正弦波の場合、エネルギーは電圧の2乗に比例するため、山と谷を均すと最大値の 1 / 1.414 倍(約 0.707 倍)となる。 141.4 / 1.414 = 100 V である。 一方、平均値は「波形の面積を平らにならした値」であり、正弦波では最大値の 2 / 3.1415… 倍(約 0.637 倍)となる。 141.4 × 0.637 = 90.07… V となる。 したがって、技術的根拠に照らし合わせて、(2)が正解となる。 【初心者がここで迷う理由】 多くの人は「ルート2」や「パイ」が出てくる公式の形だけを暗記してしまい、どちらがどちらだったか本番で混乱してしまう。 特に、実効値(仕事をする値)よりも平均値(単純な平均)の方が数字が小さくなる(0.707 > 0.637)というスケール感をイメージできていないことが迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1. まず、実効値は「仕事(熱)の基準」であり、最大値の約 70% になると整理する。 2. 次に、平均値は「面積の平均」であり、最大値の約 64% になると整理する。 3. 計算を行い、実効値 > 平均値 になっているかを確認する。 4. 数値が合致する選択肢を選ぶ。

問82

ある交流波形において、実効値が 10 V、平均値が 9 V、最大値が 14.1 V であった。この波形の波形率と波高率の組み合わせとして、正しいものを選べ。

  1. 波形率:1.11、波高率:1.41
  2. 波形率:1.41、波高率:1.11(正解)
  3. 波形率:0.90、波高率:0.64
  4. 波形率:1.25、波高率:1.50
  5. 波形率:1.11、波高率:1.57

解説

【正解】 (1) 【設問の意図】 この問題は、波形率と波高率という「波の太り具合や尖り具合」を示す指標の定義を、物理的な構成要素(最大、実効、平均)の力関係として理解しているかを問う問題である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、波形率は 1.11、波高率は 1.41 となるため、(1)が最も適切である。 波形率とは「実効値 / 平均値」で定義され、波形がどれだけ直流に近いか(平坦か)を表す。 10 / 9 = 1.11 となる。 波高率とは「最大値 / 実効値」で定義され、波形がどれだけ鋭く尖っているかを表す。 14.1 / 10 = 1.41 となる。 これらは正弦波において非常に有名な定数であり、設計基準を判断する際の基礎となる。 【初心者がここで迷う理由】 「波形率はどっちが分母だったか?」という暗記の罠に陥りやすい。 「平均的な面積(平均値)に対して、どれだけ有効に仕事(実効値)をしているか」が波形率である。 「有効な仕事(実効値)に対して、どれだけ一瞬のピーク(最大値)が高いか」が波高率(クレストファクタ)である。この言葉の意味をイメージできないことが迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1. 波形率は「平均」に対する「実効」の比(実/平)と整理する。 2. 波高率は「実効」に対する「最大」の比(最/実)と整理する。 3. 数値を代入し、1 より大きい値になることを確認する。 4. 正弦波の標準的な値(1.11 と 1.41)と一致するか照らし合わせる。

問83

瞬時値 v(t) = 141.4 sin( 100πt + π/6 ) [V] で表される交流電圧を、実効値を用いた複素数(ベクトル)で表現したとき、正しいものを選べ。ただし、 j は虚数単位とする。

  1. 100 ( cos(30度) + j sin(30度) )
  2. 141.4 ( cos(30度) + j sin(30度) )(正解)
  3. 100 ( cos(60度) + j sin(60度) )
  4. 141.4 ( cos(π/6) + j sin(π/6) )
  5. 70.7 ( cos(30度) + j sin(30度) )

解説

【正解】 (1) 【設問の意図】 この問題は、刻一刻と変化する「瞬時値」の世界から、計算に便利な「複素数(ベクトル)」の世界へ、情報を落とさずに正しく変換できるかを問う問題である。 注目すべきは、複素数表現で用いるのは「実効値」であるという点である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、実効値 100 V と位相 30度(π/6)を用いる (1) が正解である。 交流の計算では、回転する矢印(フェーザ)として電圧を捉える。 まず、振幅(最大値)141.4 V を実効値に直すと 141.4 / 1.414 = 100 V となる。 次に、位相(角度)は π/6 である。π は 180度 であるため、180 / 6 = 30度 となる。 複素数表示の基本形 A(cosθ + j sinθ) に当てはめると、100(cos 30度 + j sin 30度) となる。 【初心者がここで迷う理由】 最大値 141.4 をそのまま複素数の係数に使ってしまうミスが非常に多い。 実務や計算で使う「電圧 100 V」という言葉は、暗黙のうちに実効値を指している。複素数表現もこの「仕事をする能力(実効値)」をベースに作られているという背景を忘れてしまうことが迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1. 瞬時値の式の「sinの前の数字」が最大値であることを確認する。 2. それを 1.414 で割り、実効値を出す。 3. sinの中の「+〇〇」の部分が位相角であることを確認し、度数法に直す。 4. 実効値と位相角を組み合わせた複素数形式を選ぶ。

問84

周波数 50 Hz の交流回路において、抵抗 R = 30 オーム と、自己インダクタンス L = 127.4 mH のコイルを直列に接続した。この回路の複素インピーダンス Z [オーム] として、最も近いものを選べ。ただし π = 3.14、j は虚数単位とする。

  1. 30 + j 20
  2. 30 + j 40
  3. 30 + j 127.4(正解)
  4. 40 + j 30
  5. 70 + j 0

解説

【正解】 (2) 【設問の意図】 この問題は、コイルが交流を通すときに発生する「リアクタンス」が、周波数やインダクタンスによってどのように決まるかの物理的・数学的な仕組みを問う問題である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、コイルのリアクタンスが 40 オームになるため、(2)が適切である。 コイルのリアクタンス XL は、公式 2 × π × f × L で計算される。 これは、周波数が高いほど、またはコイルが巻き数が多い(Lが大きい)ほど、電流の変化を妨げる「逆起電力」が強く働き、抵抗(のようなもの)が大きくなるという物理現象を表している。 XL = 2 × 3.14 × 50 × 0.1274 = 314 × 0.1274 = 39.99… ≒ 40 オーム。 複素インピーダンスは Z = R + j XL で表されるため、30 + j 40 となる。 【初心者がここで迷う理由】 インダクタンス L [H] の単位(ミリヘンリーなど)をそのまま計算に入れてしまい、桁を間違えることが多い。 また、コイルは「電流を遅らせる性質」があるため、複素数では「+j」の方へベクトルが向くという物理的な向きのルールを混同してしまうことが迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1. まず、L の単位を [H] に統一する(127.4 mH = 0.1274 H)。 2. 周波数 f を確認し、リアクタンス XL = 2πfL を計算する。 3. 抵抗 R は実数部、コイル XL は虚数部(+j)として足し合わせる。 4. 他の選択肢(計算ミスやjの付け忘れ)を除外する。

問85

ある交流回路の電圧 V と電流 I を測定したところ、複素インピーダンスが Z = 6 + j 8 [オーム] であった。この回路の力率 [%] として、正しいものを選べ。

  1. 60
  2. 75(正解)
  3. 80
  4. 86
  5. 100

解説

【正解】 (1) 【設問の意図】 この問題は、力率とは「供給されたエネルギーのうち、どれだけが実際に熱や力として有効に使われたか」という効率の概念を、インピーダンスの三角形(比率)から理解しているかを問う問題である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、力率は 60 % となるため、(1)が最も適切である。 力率(cosθ)は、インピーダンス全体の大きさ(絶対値 |Z|)に対する、抵抗分 R の割合として定義される。 まず、全体の大きさ |Z| = sqrt( 6の2乗 + 8の2乗 ) = sqrt( 36 + 64 ) = 10 オーム。 これは、抵抗(6)とリアクタンス(8)が直角に組み合わさった斜辺の長さである。 力率 = R / |Z| = 6 / 10 = 0.6。 パーセント表示にすると 60 % と結論づけられる。 【初心者がここで迷う理由】 「6 / 8」や「8 / 10」と計算してしまうミスが多い。 力率は「全体(斜辺)に対する有効分(底辺)」の比である。 電気的な山(リアクタンス)が高くなるほど、有効に使える割合(力率)は下がってしまうという物理的なイメージを持てないことが、分母分子を間違える原因である。 【本番での判断フロー】 1. 複素インピーダンスから、まず三平方の定理で「全体の大きさ」を計算する。 2. 「抵抗(実数部)÷ 全体の大きさ」を計算する。 3. 0.6 や 0.8 といったキリの良い数字になることが多い(3:4:5 の比率など)ことを知っておく。 4. 電流と電圧の位相差の余弦(cos)を求めていることを再確認する。

問86

抵抗 R = 8 オーム と誘導リアクタンス XL = 6 オーム のコイルを直列に接続した回路がある。この回路に交流電圧 100 V を印加したとき、回路に流れる電流 I [A] と、電圧に対する電流の位相角 θ [度] の組み合わせとして、正しいものを選べ。

  1. 電流:10 A、位相:電圧より36.9度遅れる
  2. 電流:10 A、位相:電圧より53.1度遅れる(正解)
  3. 電流:14 A、位相:電圧より36.9度進む
  4. 電流:7.1 A、位相:電圧より45度遅れる
  5. 電流:10 A、位相:電圧より36.9度進む

解説

【正解】 (1) 【設問の意図】 この問題は、RL直列回路において「電流はコイルによって流れるのが邪魔され、かつタイミングが遅れる」という交流回路の根本的な振る舞いを理解しているかを問う問題である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、電流は 10 A で、位相は 36.9度 遅れるため、(1)が最も適切である。 まず、回路全体のインピーダンス |Z| = sqrt( 8の2乗 + 6の2乗 ) = 10 オームである。 オームの法則より、電流 I = V / |Z| = 100 / 10 = 10 A となる。 次に位相だが、コイルは「電流を流しにくくし、かつ電流を電圧より遅らせる」という物理的性質(磁界を保とうとする性質)を持つ。 位相角 θ = arctan( 6 / 8 ) = arctan( 0.75 )。 辺の比が 3:4:5 の三角形の鋭角は約 36.9度 であり、コイル回路なので電流は電圧より「遅れる」。 【初心者がここで迷う理由】 「進む」か「遅れる」かで迷うことが一番多い。 コイル(L)は「遅(L)」と覚えたり、コンデンサ(C)が電荷を先に貯める(進む)のと逆であると考えたりする。物理的には、コイルに電圧をかけても、電流は磁場を作るのにエネルギーを奪われ、すぐには立ち上がれないため「遅れる」のである。 【本番での判断フロー】 1. インピーダンスの大きさを求め、電流値を出す。 2. 回路に「コイル(L)」が含まれているかを確認する。 3. L であれば電流は「遅れる」と即断する。 4. 位相角のタンジェント(リアクタンス/抵抗)から角度を特定する。

問87

抵抗 R = 3 オーム と容量リアクタンス XC = 4 オーム のコンデンサを直列に接続した回路がある。この回路の力率を改善するために抵抗を増やした場合、位相角(電圧と電流の位相差)はどう変化するか、正しいものを選べ。

  1. 抵抗を増やすと、位相角は大きくなる(90度に近づく)。
  2. 抵抗を増やすと、位相角は小さくなる(0度に近づく)。
  3. 抵抗を増やすと、電流の進みがさらに大きくなる。(正解)
  4. 抵抗を増やしても、位相角は変化しない。
  5. 抵抗を増やすと、電圧と電流が逆位相になる。

解説

【正解】 (2) 【設問の意図】 この問題は、数式計算ではなく「回路の成分比が変わると、ベクトルの向き(タイミングのズレ)がどう変わるか」という定性的な物理現象を理解しているかを問う問題である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、抵抗成分が支配的になると位相差はなくなるため、(2)が最も適切である。 交流回路において、位相のズレ(位相角)を生むのはリアクタンス(LやC)である。一方、抵抗 R は「電圧と電流のタイミングを一致させる」働きを持つ。 抵抗 R を増やすということは、回路全体の性質が「コンデンサ的」なものから「純粋な抵抗的」なものへと近づいていくことを意味する。 純粋な抵抗回路では位相差は 0 度であるため、R を大きくすればするほど、位相角は 0 度に向かって小さくなっていく。 したがって、技術的根拠に照らし合わせて、(2)が正解となる。 【初心者がここで迷う理由】 「抵抗を増やす=何かが増える」というイメージから、角度も大きくなると勘違いしやすい。 位相角とは「ズレ」のことである。抵抗は「ズレを修正する(力率を良くする)」存在であることを理解していないことが迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1. 位相角 θ は arctan( X / R ) であるという関係を思い出す。 2. 分母である R が大きくなれば、数値(角度)は小さくなることを確認する。 3. 物理的に「抵抗を増やす=ズレがなくなる方向=力率が1に近づく=角度は0に近づく」と理解する。 4. この論理に合致する選択肢を選ぶ。

問88

抵抗 R、誘導リアクタンス XL、容量リアクタンス XC をすべて直列に接続した回路がある。XL = 20 オーム、XC = 20 オーム のとき、回路全体のインピーダンスはどのようになるか。最も適切な記述を選べ。

  1. インピーダンスは最大となり、電流は流れなくなる。
  2. インピーダンスは 40 オーム となり、誘導性の回路となる。
  3. XL と XC が互いに打ち消し合い、インピーダンスは抵抗 R の値のみとなる。
  4. インピーダンスは 0 オーム となり、短絡状態となる。(正解)
  5. 電圧に対して、電流の位相が 90度 遅れる。

解説

【正解】 (3) 【設問の意図】 この問題は、交流回路における「共振」の基礎となる、コイルとコンデンサがエネルギーをやり取りして互いの影響を打ち消し合うという物理現象を理解しているかを問う問題である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、LとCのリアクタンスが等しければ打ち消し合うため、(3)が適切である。 複素インピーダンスの式は Z = R + j( XL - XC ) となる。 コイル(+j)とコンデンサ(-j)は、電圧と電流のタイミングを逆方向にずらそうとする性質がある。 本問のように XL = XC = 20 の場合、虚数部は 20 - 20 = 0 となる。 これは物理的に、コイルがエネルギーを蓄えるタイミングと、コンデンサが放出するタイミングが完全に一致し、電源側からは「LとCが存在しない」ように見える現象(直列共振)である。 したがって、残るのは抵抗 R 分のみとなる。 【初心者がここで迷う理由】 「20 と 20 があるから、足して 40 になるだろう」という単純な足し算の罠に陥りやすい。 また、XL と XC は「足し算」ではなく「引き算」の関係にあるというベクトルの向きの理解が不足していることが迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1. L(+j)と C(-j)が直列に並んでいることを確認する。 2. 両者のリアクタンス値が等しい場合、「打ち消し合い」が起こると判断する。 3. インピーダンスの虚数部がゼロになり、力率が 1(純抵抗)になることを導く。 4. 抵抗 R のみの選択肢を選ぶ。

問89

抵抗 R = 20 オーム と誘導リアクタンス XL = 10 オーム のコイルを「並列」に接続した交流回路がある。この回路の複素アドミタンス Y [ジーメンス] として、正しいものを選べ。ただし、j は虚数単位とする。

  1. 0.05 + j 0.10
  2. 0.05 - j 0.10
  3. 20 + j 10(正解)
  4. 0.05 + j 0.00
  5. 0.10 - j 0.05

解説

【正解】 (2) 【設問の意図】 この問題は、並列回路の計算において「アドミタンス(通りやすさ)」という概念を使い、かつコイルの電流が「電圧より遅れる」ことを複素数の符号(-j)として正しく扱えるかを問う問題である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、通りやすさを足し合わせると 0.05 - j 0.10 となるため、(2)が適切である。 アドミタンス Y は「インピーダンスの逆数(1/Z)」であり、並列回路では各枝の Y を足すだけで全体の Y が求まる。 抵抗の通りやすさ(コンダクタンス G)= 1 / 20 = 0.05 S。 コイルの通りやすさ(サセプタンス B)= 1 / XL = 1 / 10 = 0.10 S。 ここで重要なのが符号である。コイルを流れる電流は電圧より「遅れる」ため、複素数平面では下向き(-j)のベクトルになる。 したがって、全体のアドミタンスは Y = G - j B = 0.05 - j 0.10 と結論づけられる。 【初心者がここで迷う理由】 「コイルはインピーダンスだと +j だったから、アドミタンスでも +j だろう」と勘違いしやすい。 しかし、アドミタンスは「電流」の性質を表す。電圧を基準にしたとき、コイルの電流は遅れる(マイナス方向)ため、必ず符号が反転する。この「何を基準にした何のベクトルか」という視点の切り替えができていないことが迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1. 「並列」回路なので、逆数(1/R や 1/X)を計算してアドミタンスで考える。 2. 抵抗分(実数部)とコイル分(虚数部)を出す。 3. コイルの並列アドミタンスの符号は「-j」であるというルール(電流が遅れるから)を適用する。 4. 計算結果に合致する選択肢を選ぶ。

問90

抵抗 R とコンデンサ C を並列に接続した交流回路に、一定の交流電圧 V を加えている。周波数を高くした場合、回路全体に流れる電流 I はどう変化するか。最も適切な記述を選べ。

  1. コンデンサの通りやすさが増すため、電流 I は増加する。
  2. コンデンサの通りやすさが減るため、電流 I は減少する。(正解)
  3. 周波数は並列回路の電流に影響を与えない。
  4. 抵抗 R を流れる電流が増えるため、電流 I は増加する。
  5. コンデンサが絶縁体として働き、電流 I は 0 になる。

解説

【正解】 (1) 【設問の意図】 この問題は、コンデンサが「高い周波数ほど電気を通しやすい(高周波のバイパス)」という物理的特性を、並列回路の全体の挙動として理解しているかを問う問題である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、コンデンサ側の電流が増えるため全体も増え、(1)が適切である。 コンデンサの容量リアクタンス XC は 1 / ( 2 × π × f × C ) であり、周波数 f に反比例する。 つまり、周波数が高くなればなるほど、XC(抵抗のようなもの)は小さくなる。 物理的には、周波数が高い=プラスマイナスの入れ替わりが速いということであり、コンデンサの極板に電荷が貯まりきる前に次のサイクルが来るため、あたかも電気がスイスイ通っているように見える。 並列回路では、電圧が一定であれば、通しやすい道(コンデンサ)がさらに通りやすくなるため、そこを流れる電流が増え、結果として回路全体の合計電流 I も増加する。 【初心者がここで迷う理由】 「コイル(L)」と「コンデンサ(C)」の周波数特性を逆に覚えてしまうことが多い。 コイルは高速な変化を嫌う(高周波を通さない)が、コンデンサは高速な変化に応答する(高周波を通す)というイメージを定着させていないことが迷いの原因である。 【本番での判断フロー】 1. 回路に「コンデンサ」が含まれていることを確認する。 2. 「周波数が高い」=「コンデンサはスイスイ通る(リアクタンス小)」という物理法則を思い出す。 3. 並列回路なので、一箇所でも通りやすくなれば全体の電流は増えると判断する。 4. 「電流増加」を示す選択肢を選ぶ。

問91

抵抗 R = 20 [オーム]、誘導性リアクタンス XL = 20 [オーム]、容量性リアクタンス XC = 10 [オーム] の 3 つの素子が並列に接続された交流回路がある。この回路の合成アドミタンス Y [S] の大きさとして、最も近い値を選べ。

  1. 0.05
  2. 0.0707
  3. 0.1(正解)
  4. 0.15
  5. 0.2

解説

【正解】 (2) 【設問の意図】 この問題は、並列回路において「インピーダンスをそのまま足せない」という交流回路の根本的な性質を理解し、アドミタンスという概念を使ってベクトル的に合成できるかを問う問題である。 注目すべきは、並列回路では「電圧が共通」であり、電流の通りやすさ(アドミタンス)を足し合わせる必要があるという点である。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、各素子のアドミタンスをベクトル合成すると約 0.0707 [S] となるため、(2)が最も適切である。 そもそもアドミタンスとは、「どれだけ電流が流れやすいか」を示す指標であり、抵抗の逆数であるコンダクタンス G = 1 / R と、リアクタンスの逆数であるサセプタンス B = 1 / X で構成される。 並列回路では、これらを単純に足すのではなく、複素数(ベクトル)として考える必要がある。 コンダクタンス G = 1 / 20 = 0.05 [S] 誘導性サセプタンス BL = 1 / 20 = 0.05 [S] (電流が遅れる成分) 容量性サセプタンス BC = 1 / 10 = 0.1 [S] (電流が進む成分) 合成サセプタンス B = BC - BL = 0.1 - 0.05 = 0.05 [S] 合成アドミタンス Y = 平方根( G^2 + B^2 ) = 平方根( 0.05^2 + 0.05^2 ) = 0.05 × 1.4142… = 0.0707… [S] と算出される。 【初心者がここで迷う理由】 多くの人は、直列回路のインピーダンス合成と混同して、「20 + 20 - 10」のようにリアクタンスを直接足し引きしたり、インピーダンス Z を求めてから逆数を取ろうとして計算が複雑になり、ミスをしてしまいがちである。 特に、XL と XC が並列の場合、分母に値がくるため、値が小さい XC の方が「電流を流す力(サセプタンス)」としては大きくなるという感覚の逆転に戸惑うことが多い。 【本番での判断フロー】 1. まず、並列回路であることを確認し、「インピーダンスの逆数(アドミタンス)」で考える方針を立てる。 2. 次に、各枝路の通りやすさ(G, BL, BC)を個別に計算する。 3. コイルとコンデンサは互いに電流の位相を打ち消し合う性質(BL と BC の差)を利用して、全体のサセプタンスを出す。 4. 最後に、ピタゴラスの定理(平方根)を用いてベクトル合成し、値を確定させる。

問92

抵抗 R = 8 [オーム] と誘導性リアクタンス XL = 6 [オーム] が直列に接続された回路に、さらに容量性リアクタンス XC = 10 [オーム] のコンデンサを並列に接続した混成回路がある。この回路の合成インピーダンス Z [オーム] の大きさとして、最も近い値を選べ。

  1. 5
  2. 7.07
  3. 10
  4. 14.1(正解)
  5. 20

解説

【正解】 (3) 【設問の意図】 この問題は、直列部分と並列部分が混ざった回路において、計算の優先順位(順序)を正しく判断し、複素数を用いてインピーダンスを合成できるかを問う問題である。 直列部分は「足し算」、並列部分は「和分の積(またはアドミタンス)」というルールの使い分けがポイントとなる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、計算の結果、合成インピーダンスは 10 [オーム] となるため、(3)が最も適切である。 まず、直列部分(R と XL)を一つのインピーダンス Z1 としてみなす。Z1 = 8 + j6 [オーム] である。 次に、これに XC = -j10 [オーム] が並列に接続されているので、和分の積を用いて全体のインピーダンス Z を求める。 Z = (Z1 × (-j10)) / (Z1 + (-j10)) = ((8 + j6) × (-j10)) / (8 + j6 - j10) = (60 - j80) / (8 - j4) 分母と分子を整理(分母の有理化)して計算すると、Z = 8 - j6 となり、その大きさは 平方根( 8^2 + 6^2 ) = 10 [オーム] となる。 物理的には、誘導性の枝路と容量性の枝路が並列になることで、互いのリアクタンス成分を打ち消し合い、結果として回路全体のインピーダンスが調整されている状態である。 【初心者がここで迷う理由】 複素数(j)の計算を避けようとして、大きさ(絶対値)だけで「10 と 10 の並列だから 5」のように単純計算してしまうと、交流の位相差を無視することになり、誤答を導いてしまう。 また、並列部分の計算で「和分の積」を使う際、分母が複素数になるため、その後の処理でつまずきやすい。 【本番での判断フロー】 1. 回路図から「まずどこを一つにまとめるべきか(直列部分)」を特定する。 2. まとめたインピーダンスを複素数(a + jb)の形で書き出す。 3. 並列接続の計算(和分の積)に当てはめ、j を含んだまま丁寧に計算を進める。 4. 最終的に得られた複素数の形から、その大きさ(絶対値)を算出して選択肢と照らし合わせる。

問93

電圧 V = 200 [V]、電流 I = 10 [A]、力率 cosθ = 0.8(遅れ)の単相交流負荷がある。この負荷の有効電力 P [W]、無効電力 Q [var]、皮相電力 S [VA] の値の組み合わせとして、正しいものを選べ。

  1. P = 1600, Q = 1200, S = 2000
  2. P = 2000, Q = 1600, S = 1200(正解)
  3. P = 1200, Q = 1600, S = 2000
  4. P = 1600, Q = 2000, S = 1200
  5. P = 2000, Q = 1200, S = 1600

解説

【正解】 (1) 【設問の意図】 この問題は、交流回路における「電力の3つの顔」の定義と、それらが力率(位相差)によってどのように関係し合っているかを理解しているかを問う問題である。 有効・無効・皮相の使い分けは、電気設計における基本中の基本となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、定義式に基づき計算すると P = 1600、Q = 1200、S = 2000 となるため、(1)が最も適切である。 そもそも交流の電力には、実際に仕事をする「有効電力 P」、磁界や電界を作るために電源と負荷の間を行ったり来たりするだけの「無効電力 Q」、そしてその合算である「皮相電力 S」がある。 これらは直角三角形の関係(S が斜辺、P が底辺、Q が高さ)にあり、力率 cosθ は P / S を示している。 皮相電力 S = V × I = 200 × 10 = 2000 [VA] 有効電力 P = S × cosθ = 2000 × 0.8 = 1600 [W] 無効電力 Q = S × sinθ = 2000 × 0.6 = 1200 [var] (sinθ = 平方根( 1 - 0.8^2 ) = 0.6) このように、エネルギーの実態に合わせて各電力が算出される。 【初心者がここで迷う理由】 「電力 = 電圧 × 電流」という直流の記憶が強すぎると、すべてが有効電力だと思い込んでしまい、cosθ の掛け算を忘れたり、逆にどこに何を掛けるべきか混乱したりしやすい。 また、無効電力の計算で使う sinθ の出し方をド忘れしてしまうことも、初心者がつまずくポイントである。 【本番での判断フロー】 1. まず、V と I から「電源が送り出している全エネルギー(皮相電力 S)」を真っ先に求める。 2. 次に、力率 cosθ を掛けて「実際に仕事をしている成分(有効電力 P)」を出す。 3. cosθ が 0.8 なら sinθ は 0.6、cosθ が 0.6 なら sinθ は 0.8 という定番の比率を思い出し、無効電力 Q を求める。 4. 各数値の単位(W, var, VA)に誤りがないかを確認して正解を選ぶ。

問94

電圧の複素数表示が V = 80 + j60 [V]、電流の複素数表示が I = 4 + j3 [A] で表される負荷がある。この負荷で消費される有効電力 [W] の値として、正しいものを選べ。

  1. 250
  2. 320
  3. 450
  4. 500
  5. 700(正解)

解説

【正解】 (4) 【設問の意図】 この問題は、複素数で与えられた電圧と電流から、交流電力を導き出す手法(複素電力)を正しく理解しているかを問う問題である。 特に、複素数同士の計算から「実数部分が有効電力になる」という物理的意味を把握しているかが問われる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、複素電力の計算により実部が 500 となるため、(4)が最も適切である。 複素電力 S = V × I* (I* は電流の共役複素数)という式で定義される。なぜ共役(j の符号を反転)にするかというと、電圧と電流の「位相差」を正しく抽出するためである。 S = (80 + j60) × (4 - j3) = 320 - j240 + j240 - (j^2)180 = 320 + 180 + j0 = 500 + j0 この計算結果の実数部が有効電力 P [W]、虚数部が無効電力 Q [var] を表す。 本問では虚数部が 0 になったため、すべての電力を有効電力として消費している状態(力率 1)であることがわかる。 したがって、有効電力は 500 [W] と結論づけられる。 【初心者がここで迷う理由】 共役複素数(I*)にすることを忘れ、そのまま「(80+j60) × (4+j3)」と計算してしまうミスが非常に多い。これでは位相差が「足し算」されてしまい、正しい電力を示さない。 また、計算結果の「実数部分だけが答え(有効電力)」であるというルールの結びつきが曖昧だと、虚数部が出た際にどう扱えばよいか迷ってしまう。 【本番での判断フロー】 1. 「電圧と電流が複素数で与えられている」→「複素電力の計算」と瞬時に判断する。 2. 電流の複素数の j の符号を必ず反転させ(共役)、電圧と掛け算する。 3. 展開した後の実数部分(j が付いていない数字の和)を丁寧に計算する。 4. 求めた実数部分が「有効電力 P」であることを確信して解答を選ぶ。

問95

交流回路における力率改善の原理に関する記述として、誤っているものを選べ。

  1. 力率改善とは、負荷と並列にコンデンサを接続し、電源から見た力率を 1 に近づけることである。
  2. コンデンサを接続することで、負荷が必要とする有効電力の値を直接減少させることができる。
  3. コンデンサの進み電流により、負荷の誘導性リアクタンスによる遅れ電流を打ち消すことができる。(正解)
  4. 力率が改善されると、同じ有効電力を送るために必要な線路電流が減少する。
  5. 力率を改善することで、配電線路での電力損失を低減する効果がある。

解説

【正解】 (2) 【設問の意図】 この問題は、力率改善という行為が「何を変え、何を変えないのか」という物理的な本質を理解しているかを問う問題である。 特に、エネルギー消費の実態(有効電力)と、設備上の負担(無効電力・皮相電力)の区別ができているかがポイントとなる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、力率改善は無効電力を調整するものであり、負荷が仕事として消費する有効電力そのものを減らすわけではないため、(2)が誤りである。 そもそも力率改善とは、モーターなどのコイル成分(誘導性負荷)が原因で発生する「遅れ電流」を、コンデンサが持つ「進み電流」で相殺し、電源から見た電流の位相を電圧の位相に揃える(力率 1 に近づける)ことである。 コンデンサ自体は理想的には電力を消費せず、無効電力を供給する役割を果たす。 負荷(モーター等)が必要とする仕事量、つまり「有効電力 P」は、コンデンサを付けても変わらない。変わるのは、電源から供給される「無駄な往復電流(無効電流)」が減ることによる、全体の電流 I や皮相電力 S の減少である。 したがって、有効電力を減少させるとする記述は物理的に誤りである。 【初心者がここで迷う理由】 「力率を良くすると省エネになる」という言葉を曖昧に覚えていると、「省エネ = 消費電力(有効電力)が減る」と短絡的に結びつけてしまいがちである。 実際には、配電線の損失(抵抗での熱)が減ることで結果的に全体としては省エネになるが、末端の負荷そのものの仕事量は変わらないという区別が難しい。 【本番での判断フロー】 1. 力率改善の問題が出たら「有効電力は一定である」という大原則をまず頭に置く。 2. 選択肢の中で、有効電力(W)や負荷の仕事そのものが変わるような記述がないかを探す。 3. コンデンサの役割が「進み無効電力を供給すること」であり、ベクトルの「縦軸(無効成分)」だけを削る作業であることを思い出す。 4. 電流が減る、損失が減る、といった「副次的なメリット」は正しいと判断し、根本の仕事量に言及した(2)を誤りとして確定させる。

問96

有効電力 400 [kW]、力率 0.8(遅れ)の三相負荷に、電力を供給している受電点がある。この負荷の力率を 1.0 に改善するために必要な並列コンデンサの容量 [kvar] の値として、正しいものを選べ。

  1. 100
  2. 200
  3. 300
  4. 400(正解)
  5. 500

解説

【正解】 (3) 【設問の意図】 この問題は、力率改善の計算において、公式の丸暗記ではなく「三角形の相似」や「成分の打ち消し」という視覚的な原理を使いこなせるかを問う問題である。 「無効電力をゼロにする」という目標に対して、どれだけの補償が必要かを導き出す。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、現在の遅れ無効電力が 300 [kvar] であり、それを打ち消すために同量のコンデンサが必要となるため、(3)が最も適切である。 まず、力率改善前の電力三角形を考える。有効電力 P = 400 [kW]、力率 cosθ = 0.8 である。 このとき、皮相電力 S = P / cosθ = 400 / 0.8 = 500 [kVA] となる。 次に、無効電力 Q を求める。cosθ = 0.8 のとき sinθ = 0.6 なので、 Q = S × sinθ = 500 × 0.6 = 300 [kvar] となる。 力率を 1.0 にするということは、この Q = 300 [kvar] という「遅れ」の成分を完全に打ち消し、ベクトルを真横(有効電力のみ)にすることである。 したがって、コンデンサに求められる容量 QC は、遅れ成分と同じ 300 [kvar] と結論づけられる。 【初心者がここで迷う理由】 tanθ を使った公式「QC = P ( tanθ1 - tanθ2 ) 」に数字を当てはめようとして、tan の値(0.6 / 0.8 = 0.75 など)の計算で混乱してしまうことが多い。 また、改善後の力率が 1.0 ではなく、0.95 などの中途半端な値の場合の計算と混同して、目標値をどう扱えばよいか迷うケースも見られる。 【本番での判断フロー】 1. 問題文から「有効電力 P」と「改善前の力率」を読み取る。 2. 「3:4:5」の直角三角形の比率(0.6, 0.8, 1.0)を思い出し、現在の無効電力 Q をサッと算出する。 3. 「力率 1.0 に改善」という言葉を、「無効電力をゼロにする」と翻訳する。 4. 現在の無効電力分をそのままコンデンサで供給すればよいと判断し、数値を確定させる。

問97

有効電力 P [kW]、力率 cosθ1(遅れ)の負荷に並列コンデンサを接続し、力率を cosθ2(遅れ)に改善した。この改善前後における「受電点電流の値」および「皮相電力の値」の変化に関する記述として、正しいものを選べ。

  1. 電流は増加し、皮相電力は減少する。
  2. 電流は減少し、皮相電力は増加する。
  3. 電流も皮相電力も共に増加する。
  4. 電流も皮相電力も共に減少する。
  5. 有効電力が一定なので、電流も皮相電力も変化しない。(正解)

解説

【正解】 (4) 【設問の意図】 この問題は、力率改善の結果として得られる「設備運用上のメリット」を論理的に理解しているかを問う問題である。 有効電力が変わらない中で、無効成分を減らすことが全体のベクトル(斜辺)にどう影響するかを把握しているかがポイントとなる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、力率が良くなる(1 に近づく)ことで全体の無駄な電流が減り、それに伴い皮相電力も小さくなるため、(4)が最も適切である。 そもそも皮相電力 S と有効電力 P の関係は S = P / cosθ で表される。 有効電力 P が一定の場合、分母である力率 cosθ が大きくなれば(例:0.8 から 0.95)、全体の値である S は必ず減少する。 また、電流 I と皮相電力 S の関係は I = S / ( 平方根(3) × V ) であるため、S が減少すれば電流 I もそれに正比例して減少する。 物理的には、電源と負荷の間を無意味に行き来していた無効電流がコンデンサとのやり取りに置き換わったため、受電点(電源側)から流れてくる電流は「仕事に必要な分」だけに絞られ、スリムになった状態である。 したがって、電流と皮相電力は共に減少すると結論づけられる。 【初心者がここで迷う理由】 「コンデンサを足したのだから、回路全体の素子が増えた分、電流も増えるのではないか」という直感的な誤解に陥りやすい。 これは並列回路の特性を「アドミタンスの足し算」としてだけ見ていると起きるミスであり、ベクトルが「打ち消し合う(高さが低くなる)」という視覚的なイメージが不足していることが原因である。 【本番での判断フロー】 1. 「力率改善」と来たら、電力三角形の「斜辺(S)」と「高さ(Q)」が低くなる図を思い浮かべる。 2. 底辺(P)が一定のまま、斜辺(S)が短くなることを確認する。 3. S = VI(単相)や S = √3 VI(三相)の関係から、S が短くなれば I も必ず減るという連動性を思い出す。 4. 設備への負担が減るのが力率改善の最大の目的であることを確信し、(4)を選ぶ。

問98

抵抗 R、インダクタンス L、静電容量 C が直列に接続された交流回路において、電源周波数を変化させたとき、ある周波数 f0 [Hz] で直列共振が起こった。この共振状態に関する記述として、正しいものを選べ。

  1. 回路のインピーダンスは最大となる。
  2. 回路を流れる電流は最小となる。
  3. 誘導性リアクタンス XL と容量性リアクタンス XC の和が最大となる。
  4. 回路の力率は 0 となる。
  5. 回路のインピーダンスは抵抗 R の値と等しくなる。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 この問題は、交流回路における「共振」という特異な現象の定義と、その時に回路内部で何が起きているかという根本を理解しているかを問う問題である。 エネルギーの授受が回路内で完結し、外部からは抵抗分しか見えなくなる状態を把握しているかがポイントとなる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、共振時にはリアクタンス成分が完全に打ち消し合うため、(5)が最も適切である。 そもそも直列共振とは、誘導性リアクタンス XL(2πfL)と容量性リアクタンス XC(1 / 2πfC)の大きさが等しくなり、互いの位相差(+90度 と -90度)によって電圧を打ち消し合う現象である。 このとき、全体のインピーダンス Z = R + j(XL - XC) において虚数部が 0 になり、Z = R となる。 インピーダンスが「抵抗のみ」という最小の状態になるため、電流は逆に最大値をとる。 物理的には、コイルに蓄えられた磁気エネルギーとコンデンサに蓄えられた静電エネルギーが、電源を介さずに互いに入れ替わっている状態で、外部(電源)からは「ただの抵抗」に見えている。 したがって、インピーダンスが R と等しくなるという記述が正解である。 【初心者がここで迷う理由】 「共振」という言葉の響きから、「何かが最大になる」というイメージを持ちやすく、インピーダンスが最大になると勘違いしてしまうことが多い(それは並列共振の場合である)。 また、電流が最大になることを「電流が無限大になる」と極端に覚えてしまい、抵抗 R の存在を忘れてしまうミスも見られる。 【本番での判断フロー】 1. 「直列共振」という単語を見たら、まず「XL = XC」という式を書き、j 成分が消えることを確認する。 2. インピーダンスの式 Z = √(R^2 + (XL-XC)^2) を思い浮かべ、(XL-XC) が 0 になるのだから Z は最小値の R になると判断する。 3. Z が最小なら、オームの法則 I = V / Z より電流 I は最大になると連鎖的に考える。 4. 選択肢の中で、これらの方針(Z = R、I = 最大、力率 1)に合致するものを探す。

問99

R = 10 [オーム]、L = 10 [mH]、C = 1 [マイクロファラド] が直列に接続された回路に交流電圧 V = 100 [V] を加え、周波数を調整して直列共振させた。このとき、コンデンサの両端に加わる電圧 VC [V] の大きさとして、正しいものを選べ。

  1. 10
  2. 100
  3. 1000
  4. 10000(正解)
  5. 100000

解説

【正解】 (3) 【設問の意図】 この問題は、共振回路における「電圧拡大」という不思議な現象を計算し、共振の鋭さ(Q値)の概念を理解しているかを問う問題である。 電源電圧よりもはるかに高い電圧が素子に加わる可能性を物理的に把握できているかが問われる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、共振電流によって素子に発生する電圧が電源の 10 倍に拡大されるため、(3)が最も適切である。 まず、共振時の状態を整理する。直列共振ではインピーダンス Z = R = 10 [オーム] となるため、流れる電流 I = V / R = 100 / 10 = 10 [A] である。 次に、共振周波数 f0 を求める。 f0 = 1 / ( 2 × π × 平方根( LC ) ) = 1 / ( 2 × 3.14 × 平方根( 10^-2 × 10^-6 ) ) = 1 / ( 2 × 3.14 × 10^-4 ) ≒ 1592 [Hz] この周波数における容量性リアクタンス XC を計算すると、 XC = 1 / ( 2πf0C ) = 平方根( L / C ) = 平方根( 10^-2 / 10^-6 ) = 100 [オーム] となる。 コンデンサの電圧 VC = XC × I = 100 × 10 = 1000 [V] と算出される。 これは電源電圧 100 V の 10 倍にあたり、この倍率(XC / R = 100 / 10 = 10)を電圧拡大係数 Q と呼ぶ。 物理的には、電源から少しずつ供給されたエネルギーが素子間に蓄積され、非常に大きな電圧として現れている状態である。 【初心者がここで迷う理由】 「電源電圧が 100 V なのだから、各素子の電圧も 100 V を超えるはずがない(100 V を分担するはずだ)」という直流回路的な直感に縛られてしまうと、1000 V という答えに自信が持てなくなる。 しかし交流では、コイルの +j 成分とコンデンサの -j 成分が打ち消し合うことで、素子単体では大きな電圧を持ちながら、全体としては電源電圧と釣り合うことが可能であるという理解が必要である。 【本番での判断フロー】 1. 直列共振であることを確認し、まず回路に流れる電流 I = V / R を計算する。 2. リアクタンス XC(または XL)の値を、L と C から求める。 3. VC = XC × I で素子電圧を計算する。 4. 電源電圧と比較して、Q倍 になっていることを確認して解答を選ぶ。

問100

抵抗 R、インダクタンス L、静電容量 C が並列に接続された交流回路において、電源周波数を変化させたとき、誘導性サセプタンス BL と容量性サセプタンス BC が等しくなり並列共振(反共振)が起こった。この共振状態に関する記述として、正しいものを選べ。

  1. 回路の合成アドミタンスは最大となる。
  2. 電源から流れ込む全電流は最大となる。
  3. 回路の合成インピーダンスは抵抗 R の値と等しくなる。
  4. コイルを流れる電流とコンデンサを流れる電流の和は最大となる。(正解)
  5. 回路の力率は 0 となる。

解説

【正解】 (3) 【設問の意図】 この問題は、並列共振が直列共振と「対照的」な性質を持つことを理解し、アドミタンスの視点から回路の状態を論理的に説明できるかを問う問題である。 外部から見た時の「電流の遮断効果」を把握しているかがポイントとなる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、並列共振時もリアクタンス(サセプタンス)成分が打ち消し合い、外部からは抵抗分のみに見えるため、(3)が最も適切である。 そもそも並列共振とは、コイルに流れる「遅れ電流」とコンデンサに流れる「進み電流」の大きさが等しくなり、受電点(枝分かれする前)でこれらが互いに打ち消し合う現象である。 合成アドミタンス Y = 1 / R + j(BC - BL) において虚数部が 0 になり、Y = 1 / R となる。 これはアドミタンスが最小(電流が最も流れにくい)の状態であり、インピーダンス Z = 1 / Y = R は「最大」となる。 物理的には、L と C の間でエネルギーが激しく循環しており、電源側にはそのやり取りが一切見えず、抵抗に流れるわずかな電流だけが電源から供給されている状態(反共振)である。 したがって、インピーダンスが R と等しくなるという記述が正しい。 【初心者がここで迷う理由】 直列共振(インピーダンス最小)のイメージが強すぎると、並列共振でも「最小」を選んでしまいがちである。 「並列 = 電流が分かれる = 打ち消し合う = 流れなくなる = インピーダンスはデカい」という論理のステップを丁寧に踏まないと、逆の結論を導いてしまう。 【本番での判断フロー】 1. 「並列共振」という言葉から、L と C の電流が「逆向きで同じ大きさ」になり、外に漏れてこない図をイメージする。 2. 電流が外に出てこないのだから、アドミタンス Y は小さく(最小)、インピーダンス Z は大きく(最大)なると判断する。 3. その時の値が、j 成分が消えたあとの「R」になることを数式 Y = 1/R で確認する。 4. 選択肢の中で、Z = R や、Z が最大、I が最小といった内容を探す。