第二種電気主任技術者 直流・交流回路

問61

相電圧と線間電圧 三相交流回路における相電圧と線間電圧の関係に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. Y結線(星形結線)では、線間電圧の大きさは相電圧の1.732倍(ルート3倍)である。
  2. Y結線では、線間電圧の位相は、対応する相電圧よりも30度進んでいる。
  3. デルタ結線(三角形結線)では、線間電圧と相電圧の大きさは等しい。
  4. デルタ結線では、線電流の大きさは相電流の1.732倍である。
  5. デルタ結線では、線電流の位相は、対応する相電流よりも30度進んでいる。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 この問題は、三相交流の基本構造であるY結線とデルタ結線において、電圧・電流の「大きさ」と「位相」の関係を正確に整理できているかを問う問題である。 単なる公式の暗記ではなく、ベクトル図を頭の中で描けるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、デルタ結線において線電流の位相は、相電流よりも30度「遅れる」ため、(5)が誤りである。 物理的な判断の順序として、まず結線の形から「何が共通で、何が合成されるか」を整理する。 デルタ結線では、隣り合う2つの相電流が合流して線電流となる。キルヒホッフの法則に基づきベクトル図を書くと、線電流は2つの相電流の差(Ia = Iab - Ica)として表される。このベクトル合成の結果、線電流の大きさは1.732倍となり、位相は相電流を基準にすると30度「後ろ(時計回り)」に位置することになる。 したがって、位相が「進んでいる」とする記述は、ベクトルの合成方向を逆転させており不適切である。 【初心者がここで迷う理由】 多くの人は「1.732(ルート3)」という数値だけに注目し、位相の「進み・遅れ」を混同しやすい。 特に、 ・Y結線の電圧関係(30度進む)を、そのままデルタ結線の電流関係にも当てはめてしまう。 ・ベクトルの引き算(Iab - Ica)を足し算と勘違いし、向きを逆に考えてしまう。 といった思考の癖が原因である。 【本番での判断フロー】 1. まず、対象が「Y」か「デルタ」か、問われているのが「電圧」か「電流」かを確認する。 2. Y結線なら「電流は共通、電圧が合成される(1.732倍、30度進む)」。 3. デルタ結線なら「電圧は共通、電流が合成される(1.732倍、30度遅れる)」。 4. この「電圧は進む、電流は遅れる」という基準をセットで覚えておけば、迷わずに済む。

問62

対称三相交流回路 平衡三相負荷に、対称三相交流電源を接続した対称三相交流回路に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 各相の電流の大きさは等しく、位相は互いに120度ずつずれている。
  2. Y結線の中性点を接地していない場合でも、中性点間の電位差はゼロとなる。
  3. 三相の線電流のベクトル和は常にゼロとなる。
  4. 平衡負荷であれば、単相負荷を三つ組み合わせたものとして、一相分を取り出して計算できる。
  5. 各相の瞬時電力の和(三相瞬時電力)は、時間の経過とともに電源周波数の2倍で変動する。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 この問題は、三相交流の最大のメリットである「電力の平滑性」を物理現象として理解しているかを問う問題である。 単相と三相の決定的な違いに注目できるかどうかがポイントとなる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、対称三相交流回路の三相瞬時電力は「常に一定(変動しない)」であるため、(5)が誤りである。 単相交流の場合、電圧と電流がゼロになる瞬間があるため、電力も周期的に変動する。しかし三相交流では、各相の電力が120度ずつずれて重なり合う。数学的に各相の瞬時電力を足し合わせると、時間の変数であるサインやコサインの項が互いに打ち消し合い、一定値(3 × 有効電力)となる。 この「電力が一定である」という性質があるからこそ、大型の三相電動機は振動が少なくスムーズに回転できる。したがって、「周波数の2倍で変動する」という記述は、単相の性質を三相に誤用したものである。 【初心者がここで迷う理由】 単相交流の電力計算(cosの2乗が含まれるため、2倍の周波数成分が出る)の知識が強く残っていると、三相でも同様に変動すると短絡的に考えてしまいがちである。 ・公式の文字式を追うだけで、三相を合成した際の「相殺効果」をイメージできていない。 ・「三相はバランスしている」という言葉の意味を、電流だけでなく電力の合計値にまで広げて捉えられていない。 【本番での判断フロー】 1. 問題が「単相」か「三相」か、さらに「瞬時値の和」を問うているかを確認する。 2. 三相が「対称(平衡)」であれば、あらゆる合計値(電流、電圧、電力)は釣り合いが取れていると判断する。 3. 電流の和がゼロになるのと同様に、電力の「変動成分」も和をとるとゼロになり、残るのは一定の直流成分のみであることを導き出す。

問63

三相電力の計算 線間電圧 V [V]、線電流 I [A]、負荷の力率 cos(phi) の平衡三相回路における電力に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 三相有効電力 P は、1.732 × V × I × cos(phi) [W] で表される。
  2. 三相無効電力 Q は、1.732 × V × I × sin(phi) [var] で表される。
  3. 三相皮相電力 S は、1.732 × V × I [V・A] で表される。
  4. 負荷がY結線の場合、三相有効電力は 3 × (相電圧) × (相電流) × cos(phi) とも表せる。
  5. 線電流を2倍にし、線間電圧を0.5倍(半分)にすると、負荷の力率に関わらず皮相電力は2倍になる。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 三相電力の基本公式と、各パラメータ(電圧・電流・電力)の比例関係を正しく操作できるかを問う問題である。 公式を文字で覚えるだけでなく、変化に対する「感度」を理解しているかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、電流が2倍、電圧が0.5倍になれば、それらを掛け合わせた皮相電力は「1倍(不変)」となるため、(5)が誤りである。 三相皮相電力の公式は S = 1.732 × V × I である。ここで V を 0.5倍、I を 2倍にすると、式全体としては 1.732 × (0.5V) × (2I) = 1.732 × V × I となり、値は変化しない。 電力設備において、電圧を下げて電流を増やす(あるいはその逆)という操作は変圧器などで日常的に行われるが、ロスを無視すれば「電力(エネルギーの総量)」は保存される。この物理的な感覚があれば、「2倍になる」という記述に違和感を持てるはずである。 【初心者がここで迷う理由】 「三相だから1.732(ルート3)をどう扱うか」という部分に意識が集中しすぎて、単純な乗算の増減を見落としてしまうことがある。 ・「電流が2倍なら、電力も2倍だろう」という片方のパラメータの変化だけに引きずられる。 ・公式の 1.732 が変化に影響を与える(あるいは定数である)ことの区別がついていない。 【本番での判断フロー】 1. まず、変化させる前の基本式(S = 1.732 V I)を書く。 2. 与えられた変化(V→0.5倍、I→2倍)をそのまま代入する。 3. 係数(0.5 × 2 = 1.0)を計算し、元の値と比べる。 4. 数学的に導き出した結果と、選択肢の主張を照合する。このとき「電力はVとIの積に比例する」という基本原則を起点にすれば迷わない。

問64

二電力計法 二つの単相電力計(W1、W2)を用いて平衡三相電力 P を測定する「二電力計法」に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 三相有効電力 P は、二つの電力計の指示値の和(W1 + W2)で求められる。
  2. 負荷の力率が 1.0(100%)のとき、W1 と W2 の指示値は等しくなる。
  3. 負荷の力率が 0.5(50%)のとき、一方の電力計の指示値はゼロになる。
  4. 負荷の力率が 0.5 未満になると、一方の電力計の指示値が負(マイナス)の値を示すことがある。
  5. 三相無効電力 Q は、二つの電力計の指示値の差(W1 - W2)に等しい。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 この問題は、実務でも多用される「二電力計法」において、電力計が「何を見ているのか」というベクトルの位相差の影響を理解しているかを問う問題である。 和が有効電力になることは有名だが、差が何を意味するのかを正確に把握しているかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、三相無効電力 Q は 1.732 × (W1 - W2) であり、単なる「差」だけでは足りないため、(5)が誤りである。 二電力計法では、電力計は「線間電圧」と「線電流」を測定している。そのため、計器内部の電圧と電流の位相差には、負荷自体の力率角(phi)に加えて、三相交流特有の30度のずれが含まれる。 計算過程(ベクトル合成)をたどると、有効電力 P は (W1 + W2) でシンプルに求まるが、無効電力 Q を導き出すには 1.732 × (W1 - W2) という係数が必要になる。 実務において「差がゼロなら力率1だ」と判断する順序は正しいが、無効電力の「量」を求める際にはルート3(1.732)を忘れてはならない。 【初心者がここで迷う理由】 「W1 + W2 が有効電力なら、W1 - W2 は無効電力だろう」という、対称性に基づいた安易な推測をしてしまいがちである。 ・公式の導出過程(三角関数の加法定理など)を飛ばして、結果の形だけをうろ覚えにしている。 ・力率角 phi が 60度(cos(phi)=0.5)のときに一方がゼロになるという有名な「点」の知識に惑わされ、式全体の係数に目が向かない。 【本番での判断フロー】 1. 二電力計法の結果として「和=有効電力」をまず確定させる。 2. 次に、無効電力の式を思い出す際、「無効電力は常に有効電力よりもルート3(1.732)が絡むことが多い」という三相交流の癖を意識する。 3. W1 - W2 の単位が [W] であるのに対し、無効電力は [var] であるため、物理的な定義として何らかの変換(係数)が必要であると論理的に推論する。

問65

V結線の電力 3台の単相変圧器によるデルタ結線から、1台が故障して2台によるV結線で運用する場合に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. V結線の最大出力は、元のデルタ結線の最大出力の約 0.577倍(1 / 1.732)になる。
  2. V結線の最大出力は、単相変圧器2台の合計容量(2 × 定格容量)よりも小さい。
  3. V結線において、各変圧器の利用率は 0.866(1.732 / 2)となる。
  4. 負荷の力率が 1.0 であっても、各変圧器の内部では電圧と電流に30度の位相差が生じる。
  5. V結線で三相電力を送る際、線電流は変圧器の相電流よりも大きくなる。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 変圧器の非常用結線である「V結線」における出力制限と、利用率の低下という物理的制約を理解しているかを問う問題である。 結線が変わることで「電流の通り道」がどう変化したかに注目できるかがポイントである。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、V結線では「線電流」と「変圧器の相電流」は等しくなるため、(5)が誤りである。 デルタ結線では、線路へ出る際に電流が二手に分かれるため、線電流 = 1.732 × 相電流 という関係があった。しかし、V結線はデルタの一辺が欠けた形であり、電流の通り道は直列(一本道)になる。 したがって、変圧器の巻線を流れる電流がそのまま線電流として出ていくことになる。このため、変圧器の定格電流以上の線電流を取り出すことができず、結果として2台分の容量(2.0)を使い切れず、1.732倍分しか出力できないという「利用率 0.866」の問題が発生する。 【初心者がここで迷う理由】 「デルタ結線の一部だから」というイメージが強く、デルタの公式(1.732倍の関係)をそのままV結線にも適用できると思い込んでしまう。 ・図を描かずに、三相交流=いつでも 1.732 というパターン思考に陥っている。 ・「相電流」と「線電流」の定義が、直列回路においてどうなるかを整理できていない。 【本番での判断フロー】 1. V結線の回路図を頭に描き、電流の通り道を指でなぞる。 2. 電線(線路)と変圧器の巻線が一本につながっていることを確認し、「電流は同じである」と判断する。 3. 電流が同じであるにもかかわらず、三相電力の公式には 1.732 がつくため、変圧器の負担(V×I)に対して出力が 1.732 / 2 = 0.866 倍に目減りするという論理の筋道(利用率)を確認する。

問66

非対称三相交流 三相負荷が不平衡である場合の非対称三相交流回路に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 各相のインピーダンスが異なると、線電流の大きさや位相が不揃いになる。
  2. Y結線で中性線がない場合、負荷の不平衡によって中性点電位が移動(シフト)する。
  3. 中性点電位が移動すると、各負荷に加わる相電圧は電源電圧(等価的な相電圧)と等しくなくなる。
  4. 不平衡回路においても、各線の瞬時電流の和は(帰路がない限り)常にゼロである。
  5. 不平衡負荷による電圧降下の影響を計算する際、常に一相分の等価回路だけで計算を完結できる。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 三相交流の「対称性(バランス)」が崩れたときに、従来の簡便な解法(一相分計算)が使えなくなるという限界を正しく認識しているかを問う問題である。 現象の複雑さを甘く見積もっていないかを確認する。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、不平衡回路では各相が相互に影響し合うため、一相分だけの計算で完結させることはできず、(5)が誤りである。 対称(平衡)であれば、どこを切り取っても同じ現象が 120度ずれて起きているだけなので一相分で十分である。しかし、不平衡になると「中性点電位の移動」など、全相のバランスによって決まる変数が登場する。 この場合、ミルマンの定理などを用いて中性点電位を求め直すか、あるいは後述の「対称座標法」を用いて、成分を分解して計算しなければならない。一相分で計算できるという前提は「バランスしていること」が絶対条件である。 【初心者がここで迷う理由】 電験三種までの学習で「三相はとにかく一相分で考える」というテクニックが習慣化しており、その前提条件(平衡であること)を意識しなくなっている。 ・「不平衡」という言葉が、単に数値が違うだけだと軽く捉えてしまい、回路全体の電位バランスが変わることに思い至らない。 【本番での判断フロー】 1. 問題文に「不平衡」「非対称」という言葉があるかを見落とさない。 2. 「一相分で計算できる」という選択肢を見たら、それは「対称性」という非常に高い壁に守られた特例であることを思い出す。 3. 不平衡であれば、各相がバラバラに振る舞うため、全相を考慮した立式(キルヒホッフやミルマン)が必要であると判断する。

問67

対称座標法の基礎 不平衡三相回路の解析に用いられる「対称座標法」の基本原理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 任意の不平衡三相ベクトルは、零相、正相、逆相の三つの対称な成分に分解できる。
  2. 正相成分は、電源と同じ相回転(a→b→c)を持つ対称三相成分である。
  3. 逆相成分は、電源とは逆の相回転(a→c→b)を持つ対称三相成分である。
  4. 零相成分は、三つのベクトルの大きさが等しく、互いに位相が120度ずれている成分である。
  5. ベクトルオペレータ a は、大きさが 1.0 で、位相を 120度(2π/3 rad)進める操作を表す。(正解)

解説

【正解】 (4) 【設問の意図】 電験二種の計算における強力な武器である「対称座標法」の定義を、物理的なイメージ(回転の向き)とともに理解しているかを問う問題である。 零相成分の特殊な性質を正確に把握しているかがポイントとなる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、零相成分は三つのベクトルが「全く同じ(位相差ゼロ)」であるため、(4)が誤りである。 対称座標法は、複雑な不平衡を「扱いやすい三つの部品」に分ける手法である。 「正相」は普通の回転、「逆相」は逆回転。そして「零相」は回転(位相差)を持たず、三相すべてが同じ向きに揃って「同調」して動く成分である。 もし位相が 120度ずれていれば、それは既に「対称三相」であり、零相ではなく正相や逆相の性質を持ってしまう。零相(Zero sequence)という名の通り、相間の差(ずれ)がゼロであることが本質である。 【初心者がここで迷う理由】 「対称成分」という言葉から、すべてが 120度ずれた綺麗な三相交流の形をしていると思い込んでしまう。 ・零相成分が、地絡事故などの際に「三相一括で同じ方向に流れる電流」であるという実務的なイメージと結びついていない。 ・a + a^2 + 1 = 0 という公式と、零相の定義を混同している。 【本番での判断フロー】 1. 対称座標法の三成分(零・正・逆)を並べる。 2. 「正=順回転」「逆=逆回転」「零=回転なし(揃っている)」という物理イメージを固定する。 3. 零相について「位相差がある」とする記述を見つけたら、それは零相の「同調性」という定義に反すると判断する。

問68

零相・正相・逆相 三相回路の各事故現象と対称座標法の成分に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 三相短絡事故のように平衡が保たれている場合、零相成分と逆相成分は発生しない。
  2. 1線地絡事故が発生すると、零相、正相、逆相のすべての成分が発生する。
  3. 逆相電流は、回転機(発電機や電動機)に対して、正相とは逆方向の回転磁界を作る。
  4. 零相電流が流れるためには、中性点接地など、電流が大地を通って戻るための帰路が必要である。
  5. 変圧器のデルタ結線回路内には、外部からの零相電流がそのまま流れ込むことができる。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 対称座標法を単なる数学ツールとしてではなく、実際の系統事故や設備(変圧器)の振る舞いと結びつけて理解しているかを問う問題である。 デルタ結線の「循環」という物理的特徴に注目できるかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、デルタ結線は零相電流を「内部で循環」させるが、外部(線路)へは流さないため、(5)が誤りである。 零相電流は三相すべて同じ向きに流れる。デルタ結線の中にこの電流が入ろうとすると、一周ぐるりと回るループ(閉回路)があるため、零相電流はその中をぐるぐる回る(循環する)だけで、外の線路へ出ていく(あるいは外から入り込む)ことはできない。 この性質があるため、変圧器のデルタ結線は、系統の地絡事故によって生じる零相成分を「遮断(トラップ)」する役割を果たす。したがって、「そのまま流れ込むことができる」とする記述は、デルタ結線の閉回路特性を無視したものである。 【初心者がここで迷う理由】 「デルタ結線は電流が流れる」という漠然としたイメージだけで、どの成分が通り、どの成分が止まるのかというインピーダンスの性質まで整理できていない。 ・零相電流が「並列」に三本並んで流れる様子をイメージできておらず、デルタの角でそれらが衝突し合う(循環する)ことに気づかない。 【本番での判断フロー】 1. 零相電流のイメージを「三本が揃って同じ向きに進む矢印」として描く。 2. その矢印がデルタ(三角形)の頂点に来たとき、行き止まりにならずに三角形の中を一周回るルートになることを確認する。 3. 「デルタの内側に閉じ込められる=外には漏れない」という論理で、零相電流の流出入が制限されることを導く。

問69

非正弦波交流 ひずみ波(非正弦波)交流に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 非正弦波交流は、直流成分、基本波成分、および高調波成分の和として表せる。
  2. ひずみ波の電圧・電流の実効値は、各成分の実効値の 2乗の和の平方根(ルート)で求められる。
  3. ひずみ波の波形率(実効値 / 平均値)が 1.11 であれば、その波形は必ず正弦波である。
  4. 第3高調波の周波数は、基本波の周波数の 3倍である。(正解)
  5. 含有率とは、基本波成分に対する各高調波成分の大きさの比をいう。

解説

【正解】 (3) 【設問の意図】 波形の「ひずみ」を定量的に評価する指標(実効値、波形率など)の定義と、その限界を理解しているかを問う問題である。 「数値が同じ=形が同じ」という安易な思い込みを排除する。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、波形率が 1.11 であっても「必ず正弦波である」とは限らないため、(3)が誤りである。 正弦波の波形率は確かに 1.11 であるが、これはあくまで「実効値と平均値の比率」という一つの断面を見ているに過ぎない。世の中には、正弦波ではない複雑なひずみ波であっても、たまたま計算上の比率が 1.11 になる波形が無数に存在する。 物理現象を評価する際、一つの指標(スペック)が一致したからといって、全体の性質が同一であると断定するのは、エンジニアとしての判断順序として誤りである。 【初心者がここで迷う理由】 「正弦波の波形率は 1.11」という知識を、逆方向の「1.11 なら正弦波」という命題としても正しいと勘違いしてしまう。 ・ひずみ率が 0(ゼロ)でない限り正弦波ではない、という「純粋性」の定義と混同している。 【本番での判断フロー】 1. 「必ず」「のみ」「常に」といった強い限定表現に注意する。 2. 実効値や平均値は「積分(合計)」の結果であることを思い出し、中身の形(関数の形)までは保証されないことを論理的に納得する。 3. 複数の成分(高調波)が混ざっている状態でも、実効値の「2乗の和の平方根」というエネルギーベースの足し算は常に成立することを確認する。

問70

高調波の電力計算 ひずみ波交流における電力の計算に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 有効電力は、同じ周波数成分(基本波同士、第3高調波同士など)の電力の和で求められる。
  2. 基本波の電圧と、第3高調波の電流の組み合わせからは、有効電力は発生しない。
  3. ひずみ波の皮相電力は、ひずみ波電圧の実効値と、ひずみ波電流の実効値の積で求められる。
  4. ひずみ率が増加すると、有効電力が一定であっても、皮相電力は増加し力率が低下する。
  5. 電圧に高調波が含まれていなければ、電流にどれだけ高調波が含まれていても、無効電力は増加しない。

解説

【正解】 (5) 【設問の意図】 高調波が混在する回路において、電力が「どの成分の組み合わせで発生するか」という直交性の概念を問う問題である。 有効電力だけでなく、皮相電力や力率への悪影響を理解しているかがポイントである。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、電流に高調波が含まれれば、たとえ有効電力に寄与しなくても皮相電力が増加するため、結果として「無効電力(または歪電力)」を含む電力の総合的なバランスが変化し、力率は低下するため、(5)が誤りである。 電力が発生するためには、電圧と電流が「同じ周波数」で協力し合う必要がある。周波数が違う成分同士(例:電圧は基本波、電流は第3高調波)は、1周期で見るとエネルギーのやり取りがプラスマイナスゼロになり、有効電力を作れない。 しかし、電流の実効値にはこれらの高調波成分もしっかりカウントされる。すると、有効電力(仕事)は増えないのに、電線を流れる電流の総量(皮相電力)だけが大きくなるため、効率(力率)が悪化する。この「仕事に関与しない余計な電流」の存在は、広い意味での無効な成分の増加を意味する。 【初心者がここで迷う理由】 「P = V I cos(phi)」という単純な力率のイメージだけで考えてしまい、高調波による「波形のズレ」がもたらす電力品質の低下をイメージできていない。 ・無効電力 Q と、高調波による歪電力 D の区別がついておらず、すべてを基本波の phi(角度のズレ)だけで説明しようとしてしまう。 【本番での判断フロー】 1. 電力が「同じ周波数のペア」でのみ発生することを大前提とする。 2. 電圧にない周波数が電流に含まれている場合、それは「仕事(P)をせずに電流(I)だけを増やす邪魔者」であると定義する。 3. I が増えれば 皮相電力 S = V I も増える。 4. P が変わらず S が増えれば、力率 P/S は必ず下がる。この負の連鎖を理解していれば、誤りを見抜ける。

問71

過渡現象の基礎 直流電源に接続された回路において、スイッチを切り換えた直後(t=0)の状態に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. インダクタンスLを流れる電流は、スイッチを切り換える直前の値を維持する。
  2. 静電容量Cの両端電圧は、スイッチを切り換える直前の値を維持する。
  3. インダクタンスLは、スイッチを切り換えた直後は電流源(または開放)として振る舞う。
  4. 静電容量Cは、スイッチを切り換えた直後は電圧源(または短絡)として振る舞う。
  5. 回路内の全電流は、エネルギー蓄積要素の有無に関わらず、スイッチの開閉によって瞬時に新しい定常値に到達する。

解説

【正解】 5 【設問の意図】 この問題は、過渡現象が発生する物理的な根本原因である「エネルギーの連続性」を理解しているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、LやCといったエネルギー蓄積要素の存在であり、それらが「状態の急変」をどのように拒むのかをイメージできるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、エネルギー蓄積要素(LやC)がある回路では、電流や電圧が新しい定常値に達するまでには必ず時間がかかるため、(5)が誤り(正解)となる。 物理現象に立ち返って考える。 過渡現象とは、ある安定した状態(定常状態)から別の定常状態へ移り変わる際の「繋ぎ」の現象である。 インダクタンスLは磁気エネルギー(電流)を、静電容量Cは静電エネルギー(電圧)を蓄える性質を持つ。物理学においてエネルギーが「瞬時に(時間ゼロで)」変化するには無限大の電力が必要になるため、現実の回路ではエネルギーの担い手であるLの電流やCの電圧は、必ず連続的に(滑らかに)変化し、瞬時に跳ね上がることはできない。 したがって、スイッチを入れた瞬間にすべての値が定常値になるという記述は、物理法則に反する。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は「スイッチを入れたら電気が流れる」という単純なイメージに引きずられ、時間の経過(時間軸の概念)を無視して解こうとしてしまう。 特に、 ・抵抗だけの回路(過渡現象がない)と、LやCを含む回路の区別がついていない。 ・「Lは電流を維持しようとする」「Cは電圧を維持しようとする」という慣性の法則のような働きを実感できていない。 といった罠に陥りやすい。 本問では、判断の前に「今、この回路の中にエネルギーを蓄えて放さない頑固なパーツ(LやC)があるか」を確認する手順を飛ばしてしまうことが、ミスの原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、回路図にLやCが含まれているかを確認する。 2, スイッチ操作の「直前」と「直後」で、Lの電流とCの電圧が同じ値になっているかをチェックする。 3, 「Lの電流は急に止まれない、Cの電圧は急に変われない」という連続性の原則を思い出す。 4, 選択肢の中から、これらの連続性を無視して「瞬時に変化する」と主張している記述を探し出す。

問72

時定数の意味 RC直列回路やRL直列回路における「時定数」に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 時定数は、過渡現象がどの程度の速さで変化するかを表す指標である。
  2. RC直列回路の時定数は R × C で表され、単位は [s] である。
  3. RL直列回路の時定数は L / R で表され、単位は [s] である。
  4. スイッチを閉じてから時定数の時間が経過したとき、電流や電圧の変化量は最終変化分の約0.632倍(63.2%)に達する。
  5. 時定数が大きいほど、回路の状態は速やかに新しい定常状態に到達する。

解説

【正解】 5 【設問の意図】 この問題は、過渡現象の「時間的なスケール」を決める時定数の物理的な意味を正しく理解しているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、時定数の「大きさ」と「変化の速さ」の関係であり、数式上の指数関数の挙動をイメージできるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、時定数が大きいほど変化は「ゆっくり」になり、定常状態に達するまで時間がかかるため、(5)が誤り(正解)となる。 公式に立ち返って考える。 過渡現象の式は一般に「exp(-t / 時定数)」という項を含む。 時定数(τ)が分母にあるため、τが大きいほど指数の肩の値がなかなか大きくならず、グラフの減衰(または立ち上がり)は緩やかになる。 物理的に言えば、RC回路なら「バケツ(C)が大きく、管(R)が細い」ほど、水がいっぱいになる(充電される)のに時間がかかる、という現象が時定数の大きさに相当する。 したがって、時定数が大きいほど速やかに到達するという記述は、物理的な因果関係が逆である。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は「時定数=時間に関係する定数」という点までは覚えていても、それが「速さ」なのか「遅さ(かかりやすさ)」なのかを混同してしまいがちである。 特に、 ・「大きい方がパワーがあって速そうだ」という言葉の響きだけで判断してしまう。 ・指数関数のグラフ(右下がり、または右上がり)の傾きと時定数の関係が結びついていない。 といった罠に陥りやすい。 本問では、判断の前に「時定数とは『あとどれくらいかかるか』という時間の目安である」という本質を捉える手順を飛ばしてしまうことが、ミスの原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、時定数の定義式(RC または L/R)を確認する。 2, 次に、指数関数 exp(-t / τ) の τ に大きな値を入れたとき、関数の値がどう変化するかを想像する。 3, τが大きい = 分母が大きい = 指数の変化が鈍い = 「のんびりした変化」であると結論づける。 4, 選択肢の中で、時定数の大きさと変化のスピードを比例関係(大きいほど速い)としているものを見抜く。

問73

RL直列回路の過渡 電圧E [V] の直流電源、抵抗R [Ω]、インダクタンスL [H] のRL直列回路において、t=0 でスイッチを閉じた。回路を流れる電流 i(t) の挙動として、正しいものはどれか。

  1. スイッチを入れた瞬間(t=0)、電流は E / R [A] に達する。
  2. 電流 i(t) は、時間が経過するにつれて指数関数的に減少し、最終的に 0 になる。
  3. 時間が十分に経過した定常状態(t=無限大)では、Lの両端電圧は E [V] となる。
  4. 時定数 L / R の時間が経過したとき、電流は最終値 E / R の約 63.2% に達している。
  5. インダクタンスLを大きくすると、電流の立ち上がりは急峻になる。(正解)

解説

【正解】 4 【設問の意図】 この問題は、RL回路の典型的なステップ応答において、各瞬間の「電流」と「電圧」の物理的な役割を理解しているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、Lが持つ「電流の変化を妨げる(逆起電力を生じる)」という性質であり、ここを起点にグラフの形をイメージできるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、RL回路では電流が E/R に向かって立ち上がっていく過程で、1時定数後に約63.2%に達するため、(4)が正しい。 物理現象に立ち返って考える。 スイッチを入れた瞬間、電流はゼロから流れようとするが、Lはその変化を嫌って大きな「逆向きの電圧(逆起電力)」を発生させる。そのため、電流は一気に流れず、ゼロからゆっくりと立ち上がる。 時間が経つと、電流の変化が穏やかになり、Lの逆起電力も消えていく。最終的にLは単なる「ただの電線(短絡)」と見なせるようになり、電流はオームの法則通りの E/R で安定する。 この「ゼロから定常値へ向かう」途中の指標が時定数であり、(4)の記述はその定義通りである。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は「Lはコイルだから何か抵抗のようなものだろう」と曖昧に捉え、交流回路のリアクタンス(恒常的な邪魔もの)と過渡現象(一時的な抵抗)を混同してしまいがちである。 特に、 ・スイッチ直後と十分経過後で、Lが「開放」なのか「短絡」なのかが逆転してしまう。 ・電流の式 i(t) = (E/R)(1 - exp(-Rt/L)) の「1マイナス」があるかないかで迷ってしまう。 といった思考に陥りやすい。 本問では、式の暗記よりも先に「最初は通さない(抵抗無限)、最後はスルー(抵抗ゼロ)」というLのわがままな性格を思い出すことが重要である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、t=0 でLの電流は連続しているか(直前が0なら直後も0か)を確認する。 2, 次に、t=無限大 でLが「ただの線」になり、電圧降下がなくなることを確認する。 3, 電流は「0からE/Rへ増える」グラフであることを描く。 4, 増えていくグラフにおいて、1時定数経過後は「全体の約6割まで到達している」という知識を当てはめる。

問74

RC直列回路の過渡 電圧E [V] の直流電源、抵抗R [Ω]、静電容量C [F] のRC直列回路において、t=0 でスイッチを閉じた。コンデンサの電圧 v(t) と回路電流 i(t) に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. スイッチを入れた瞬間(t=0)、コンデンサの電圧 v(t) は E [V] となる。
  2. スイッチを入れた瞬間(t=0)、回路電流 i(t) は 0 [A] である。
  3. 時間が十分に経過した定常状態(t=無限大)では、回路電流 i(t) は E / R [A] となる。
  4. 時定数 RC の時間が経過したとき、コンデンサの電圧は最終値 E [V] の約 63.2% に達している。
  5. 抵抗Rを大きくすると、コンデンサの充電はより速く完了する。(正解)

解説

【正解】 4 【設問の意図】 この問題は、RC回路の充電過程において、Cが「電圧を蓄えていく」物理的なプロセスを理解しているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、Cが「最初は空っぽで、最後は通せんぼする」という振る舞いの変化であり、ここを起点に考えられるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、Cの電圧は時間とともに 0 から E へ立ち上がり、1時定数後に約63.2%に達するため、(4)が正しい。 現象に立ち返って考える。 スイッチを入れた瞬間、Cは空っぽ(電圧ゼロ)であり、電荷をいくらでも受け入れようとするため、まるで「ただの線(短絡)」のように振る舞う。そのため、最初だけは大きな電流 (E/R) が流れる。 電荷が溜まってくると、Cの両端に電圧が発生し、電源のEと押し合いを始める。電圧がEに達したとき、もう電荷は流れ込めなくなり、電流は止まる(開放状態)。 この「空っぽから満タン(E)へ向かう」変化のスピードが時定数 RC で決まる。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人はRL回路(電流の立ち上がり)とRC回路(電圧の立ち上がり)を混同し、どちらが瞬時に変化してどちらがゆっくりなのかを間違えてしまいがちである。 特に、 ・「コンデンサは直流を通さない」という定常状態の知識に縛られ、スイッチを入れた瞬間の大電流を見落とす。 ・時定数 RC の掛け算の意味を、逆に割り算だと勘違いしてしまう。 といった罠に陥りやすい。 本問では、判断の前に「コンデンサは最初は電圧ゼロの導線、最後は壁」という物理的な変化をイメージする手順を飛ばしてしまうことが、ミスの原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、t=0 でCの電圧は連続(直前が0なら直後も0)しているかを確認する。 2, 次に、t=無限大 で充電が完了し、電流が 0、Cの電圧が電源と同じ E になることを確認する。 3, 電圧 v(t) は「0からEへ増える」、電流 i(t) は「E/Rから0へ減る」グラフを描く。 4, 増えていく側の v(t) が 1時定数後に約63.2%まで立ち上がることを確認する。

問75

RLC直列の過渡応答 直流電源E、抵抗R、インダクタンスL、静電容量Cを直列に接続した回路の過渡現象において、回路電流に関する特徴方程式の解と応答の分類に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 回路の挙動を記述する微分方程式は、2階線形微分方程式となる。
  2. 特徴方程式の解が2つの異なる実数根を持つとき、応答は「過制動」と呼ばれる。
  3. 特徴方程式の解が重根を持つとき、応答は「臨界制動」と呼ばれる。
  4. 特徴方程式の解が共役な複素数根を持つとき、応答は周期的に振動し、その振幅は一定に保たれる。
  5. 回路内の抵抗Rが 0 [Ω] の場合、エネルギーの損失がないため、電流は減衰せずに不変の振幅で振動し続ける。(正解)

解説

【正解】 4 【設問の意図】 この問題は、RLC回路という「バネと重り」に相当する物理系において、エネルギーがどのように消費(減衰)されるか、その数学的な分類を理解しているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、抵抗Rによるエネルギー消費の有無であり、これによって「振動が消えるか残るか」を判断できるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、通常のRLC回路(R>0)で複素数根を持つ場合は「減衰振動」となり、振幅は徐々に小さくなるため、(4)が誤り(正解)となる。 物理現象に立ち返って考える。 LとCの間ではエネルギーが行ったり来たり(振動)しようとするが、そこに抵抗Rが存在すると、電流が流れるたびにジュール熱としてエネルギーが外へ逃げてしまう。 複素数根を持つ「不足制動(振動的)」な状態であっても、Rが少しでもある限り、振り子が空気抵抗で止まるように、電気的な振動の振幅も指数関数的に小さくなっていく。 「振幅が一定に保たれる」のは、R=0 という理想的な(現実には稀な)無損失回路の場合のみである。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は「複素数根 = 振動する」という丸暗記の知識で止まってしまい、そこに「減衰」が含まれていることを見落としがちである。 特に、 ・複素数解の実部(減衰を支配する成分)と虚部(振動周波数を支配する成分)の役割を整理できていない。 ・過制動、臨界制動、不足制動という用語の数学的な条件式を覚えることに必死になり、物理的なイメージ(止まり方)を忘れている。 といった罠に陥りやすい。 本問では、判断の前に「この回路にはエネルギーを食いつぶす抵抗Rがあるか、ないか」を確認する手順を飛ばしてしまうことが、ミスの原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、RLC直列回路の特性(2階系)を認識する。 2, Rの値を確認し、エネルギーを消費する要素があるかどうかをチェックする。 3, 複素数根の場合、「揺れながら止まる(減衰振動)」のか「ずっと揺れ続ける(不減衰)」のかを判断する。 4, 通常の(R>0の)回路において、振幅が不変であると主張している不自然な記述を見抜く。

問76

振動的減衰 RLC直列回路において、直流電源を投入したときに電流が振動的に減衰するための条件として、正しいものはどれか。なお、回路の抵抗をR、インダクタンスをL、静電容量をCとする。

  1. R^2 > 4L / C
  2. R^2 = 4L / C
  3. R^2 < 4L / C
  4. R = 0 の場合のみ振動する。(正解)
  5. L と C の値が等しいとき。

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、回路が「振動するか、しないか」の境界線を決めるパラメータの条件式を正しく導けるか、あるいはその物理的な意味を理解しているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、抵抗Rによる「制動(ブレーキ)」の強さであり、これがLとCによる「揺れ」の力を上回るかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、抵抗Rが十分に小さく R^2 < 4L / C を満たすときに回路は振動するため、(3)が正しい。 数式と物理の繋がりで考える。 この条件は、2次の方程式(特徴方程式)の判別式 D = R^2 - 4L/C が負(D < 0)になり、解が複素数になる条件そのものである。 物理的にイメージすると、抵抗Rは「ブレーキ」、LとCは「バネと重り」である。ブレーキ(R)が弱ければ、振り子は中心を通り過ぎて何度も行き来(振動)する。逆にブレーキが強すぎれば、振り子は中心に向かってゆっくりと沈み込むだけで、一度も反対側へは行かない(非振動)。 したがって、ブレーキが弱い(Rが小さい)状態を示す不等式 (3) が振動の条件となる。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は公式の「4L/C」の形は覚えていても、不等号の向きが「>」だったか「<」だったかを、理屈なしに丸暗記しようとしてど忘れしてしまう。 特に、 ・「抵抗があるから振動する」と勘違いしてしまう(実際には抵抗は振動を止める側)。 ・Lが大きいほど、またはCが小さいほど、振動しやすくなるという定性的な関係が整理できていない。 といった罠に陥りやすい。 本問では、判断の前に「R(ブレーキ)をゼロに近づけたらどうなるか」という極限を考える手順を飛ばしてしまうことが、符号のミスを招く原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、振動の有無は「ブレーキの強さ(R)」で決まることを思い出す。 2, Rを極端に大きくしたとき(R=無限大)と、ゼロにしたとき(R=0)でどちらが揺れそうかを考える。 3, R=0(極小)のときに揺れるはずなので、Rが「小さい」方の不等号(R^2 < ...)を選ぶ。 4, 特徴方程式の判別式(b^2 - 4ac)の形と照らし合わせ、係数のミスがないか最終確認する。

問77

臨界制動と過制動 RLC直列回路における「臨界制動」に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 回路に抵抗が含まれず、エネルギーが保存され続ける状態である。
  2. 回路が最も速やかに定常状態に収束し、かつ振動を起こさない境界の状態である。
  3. 抵抗が非常に大きく、電流が定常値に達するまでに最も時間がかかる状態である。(正解)
  4. 複素数根を持ち、電流が正負に交互に振れながら減衰していく状態である。
  5. 時定数が 0 になり、瞬時に過渡現象が終了する状態である。

解説

【正解】 2 【設問の意図】 この問題は、過渡現象の収束の仕方を分類する「臨界制動」という用語の、実用上の重要な意義を理解しているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、収束の「速さ」と「揺れの有無」の両立であり、ここが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、臨界制動は振動が発生しない範囲で「最も速く定常値に近づく」特別な状態であるため、(2)が最も適切である。 物理現象に立ち返って考える。 ・過制動(ブレーキ強すぎ):安全だが、ゆっくりすぎてなかなか目標に届かない。 ・不足制動(ブレーキ弱すぎ):速いが、目標を通り過ぎて揺れてしまう(オーバーシュート)。 ・臨界制動(ちょうど良い):揺れる寸前の最強ブレーキで、最短時間でピタッと目標に止まる。 この「最短で止まる」という性質から、計測器の指針や、車のサスペンション、あるいは自動制御の設計において非常に重視される理想的な状態である。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は「臨界 = 何か危ないことが起きる(発散する)」といった言葉のイメージに引きずられ、収束が遅くなる状態だと誤解してしまいがちである。 特に、 ・「臨界」という言葉を、単なる「最大」や「極端」という意味で捉えてしまう。 ・過制動の方がブレーキが強いのだから、収束も速いだろうと勘違いする(実際には引きずって遅くなる)。 といった思考に陥りやすい。 本問では、判断の前に「重いドアのクローザーが、バタンと鳴らずに最もスッと閉まる状態はどれか」という日常の制動イメージを重ねる手順を飛ばしてしまうことが、言葉の定義ミスを招く原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、制動の3パターン(過、臨界、不足)を思い出す。 2, 「臨界」とは「ちょうど境目」という意味であることを確認する。 3, 「揺れない(非振動)」グループの中で、最も抵抗が小さくキビキビ動ける状態がどれかを考える。 4, 実務上のメリットである「最短時間で収束」というキーワードが含まれる選択肢を選ぶ。

問78

並列回路の過渡現象 抵抗RとインダクタンスLが並列に接続された回路に、時刻 t=0 で直流電流源 I [A] を接続した。Lを流れる電流 iL(t) の挙動に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. スイッチを入れた瞬間(t=0)、Lには I [A] の電流が流れる。
  2. スイッチを入れた瞬間(t=0)、Lは開放状態(断線)と同じように振る舞う。
  3. 時間が十分に経過した定常状態(t=無限大)では、電流はすべて抵抗Rの方を流れる。
  4. Lの電流 iL(t) は、0 から I に向かって指数関数的に立ち上がる。
  5. 時定数は L / R ではなく、R × L で表される。(正解)

解説

【正解】 4 【設問の意図】 この問題は、直列回路で学んだ過渡現象の知識を、並列回路という「逆の構成(双対性)」においても正しく適用できるかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、Lが「電流の変化を嫌う」という本質的な性質は接続方法に依存しない、という点であり、ここが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、Lは最初は電流を流さず(0 A)、時間をかけて電流源の全電流 I を引き受けていくため、(4)が正しい。 物理現象に立ち返って考える。 t=0 の瞬間、Lは「電流の変化を拒む」ため、電流は 0 A を維持しようとする。その結果、電流源の I [A] はすべて抵抗Rの方へ流れていく。このときLは「開放(断線)」の状態と同じである。 時間が経つと、Lは「ただの電線(短絡)」へと変化していく。並列回路において、一方が「抵抗のある道(R)」、もう一方が「抵抗ゼロの道(L)」になれば、電流はすべて抵抗のないLの方へ流れようとする。 最終的に、電流源の I [A] はすべてLを通り、抵抗Rには電流が流れなくなる。この「0からIへ立ち上がる」挙動は、(4)の説明通りである。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は「RL直列回路ではLのせいで電圧がどうこう…」という特定の構成の記憶に縛られ、並列になったときに電流がどう分配されるかを想像できなくなってしまう。 特に、 ・「Lは電流を通しにくい」というイメージから、定常状態でLに電流が流れることに違和感を持ってしまう。 ・電源が「電圧源」なのか「電流源」なのかによる違いを読み飛ばしてしまう。 といった罠に陥りやすい。 本問では、判断の前に「Lは最初は頑固な壁、最後はスルーパスの近道」という時間による役割の変化を、並列の別れ道に当てはめて考える手順を飛ばしてしまうことが、ミスの原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、Lの本質(最初は流さない、最後は短絡)を再確認する。 2, 次に、並列回路においてLが「短絡(0Ω)」になったら、隣の抵抗Rに電流は流れるかを考える。 3, 全電流がLに吸い込まれていく「0からIへの増加」というストーリーを描く。 4, 選択肢の中から、この物理的な時間経過と合致する記述を選び出す。

問79

交流電源の投入 RL直列回路に交流電圧 e(t) = Em sin(ωt + θ) を投入したときの過渡現象に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 過渡現象として現れる「直流分電流」は、L / R の時定数で減衰する。
  2. 電源を投入する位相角 θ によって、過渡現象の現れ方は大きく異なる。
  3. 回路のインピーダンス角を φ としたとき、θ - φ = 0 の瞬間にスイッチを入れると、過渡現象(直流分)は発生しない。
  4. θ - φ = ±90度(π/2 rad)の瞬間にスイッチを入れると、理論上、過渡電流の最大値は定常電流の最大値の約2倍に達することがある。
  5. 交流電源の場合、定常状態でもエネルギーが変化し続けるため、LやCが存在しても過渡現象は発生しない。

解説

【正解】 5 【設問の意図】 この問題は、直流よりも複雑な「交流の過渡現象」において、投入のタイミングが回路に与える衝撃(非対称短絡電流など)を理解しているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、スイッチを入れる「瞬間の電圧値」と「本来流れるべき定常電流値」のギャップであり、ここが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、交流回路であってもLやCがあれば、投入の瞬間に大きな過渡現象が発生するため、(5)が誤り(正解)となる。 物理現象に立ち返って考える。 過渡現象の本質は「現在の状態」から「本来あるべき姿(定常状態)」への無理な擦り合わせである。 交流回路では、定常状態の電流も刻々と変化している。もしスイッチを入れた瞬間の「Lの電流(通常はゼロ)」が、その時刻に「本来流れているはずの定常電流」と一致していなければ、その差を埋めるために「直流分」と呼ばれる過渡電流が重畳される。 特に大きなインダクタンスを持つ負荷や変圧器では、この過渡現象によって定常時の2倍近い過大電流(突入電流)が流れることがあり、遮断器の選定など実務上非常に重要な現象である。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は「交流=常に変化している」という点に惑わされ、過渡現象(一時的な変化)と定常状態(周期的な変化)の区別がつかなくなってしまう。 特に、 ・「交流回路では常にLやCが影響しているのだから、過渡現象なんて言葉は不要だ」と誤解してしまう。 ・「直流分」という言葉がなぜ交流回路に出てくるのかを、数式(一般解=余関数+特解)の構造として理解できていない。 といった罠に陥りやすい。 本問では、判断の前に「スイッチを入れたその瞬間、Lは本来何アンペア流れているべき時だったのか」というタイミングの問題を考える手順を飛ばしてしまうことが、ミスの原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、交流であっても「Lの電流は不連続に変化できない」という鉄則を思い出す。 2, 次に、投入瞬間の定常電流値が 0 でない限り、必ず過渡的なズレが生じることを理解する。 3, ズレを補正するための成分(直流分)が、回路の時定数で消えていく様子をイメージする。 4, 選択肢の中で、交流であることを理由に過渡現象を否定している非科学的な記述を指摘する。

問80

スイッチの開閉現象 回路内の複数のスイッチを開閉させる複雑な過渡現象を解く際の「判断の順序」として、誤っているものはどれか。

  1. まず、スイッチ操作の直前(t=-0)における、すべてのLの電流とCの電圧を求める。
  2. 次に、Lを電流源、Cを電圧源(値は直前のもの)に置き換えた「t=+0 の等価回路」を描く。
  3. 抵抗の値を変更するスイッチ操作の場合、エネルギー蓄積要素がないため過渡現象は考慮しなくてよい。
  4. 十分時間が経過した定常状態(t=無限大)の回路を描き、Lを短絡、Cを開放として最終値を求める。(正解)
  5. 初期値と最終値が分かれば、それらを時定数に基づいた指数関数で結ぶことで、過渡応答の概形を決定できる。

解説

【正解】 3 【設問の意図】 この問題は、複雑な回路の過渡現象をミスなく解くための「定石(アルゴリズム)」を整理できているかを問う問題である。 条件の中で注目すべきポイントは、スイッチ操作によって「何が変化したか」であり、たとえ抵抗の変化であっても回路全体のバランスが崩れれば過渡現象が始まる、という点を見抜けるかどうかが分かれ目となる。 【正解の理由(なぜこれが正しいか)】 結論から言うと、抵抗値が変わるだけでも、回路内のLやCが「維持すべき目標値」が変化するため、過渡現象は発生する。したがって(3)が誤り(正解)となる。 現象に立ち返って考える。 過渡現象は「電源の投入」だけでなく、「負荷の急変」によっても引き起こされる。 例えば、並列に入っている抵抗の一つを切り離すと、回路全体の合成抵抗が変わり、時定数も、最終的にLに流れるべき電流値も変化する。Lは「新しい定常値」に向けて、それまでの電流を維持しようとしながら、ゆっくりと変化を開始する。 つまり、LやCが存在する回路であれば、どの部分のスイッチをいじっても(それが抵抗の切り換えであっても)、系全体のエネルギーバランスが崩れる限り、過渡現象は必ず付いて回る。 【初心者がここで迷う理由】 学習段階の浅い場合、多くの人は「電源を入れる=過渡現象」という1対1のパターン暗記に縛られ、それ以外の操作を軽視してしまいがちである。 特に、 ・過渡現象の原因が「入力の変化」ではなく「回路定数の変化」にある場合を見落とす。 ・回路が複雑になると、どこに注目して初期値を決めるべきかパニックになってしまう。 といった思考の混乱に陥りやすい。 本問では、判断の前に「回路のどこかを変えたことで、LやCが持っているエネルギーの『あるべき姿(目標)』が変わったか」を問う手順を飛ばしてしまうことが、ミスの原因である。 【本番での判断フロー】 本番では、次の順序で考えれば迷わない。 1, まず、回路全体の「操作前」と「操作後」の状態を比較する。 2, 操作後に、LやCが到達すべき新しい定常値(電流・電圧)が変わっているかを確認する。 3, 値が変わっているなら、そこへ至るまでの「繋ぎの時間(過渡現象)」が必ず存在すると判断する。 4, 選択肢の中で、特定の素子操作だけを例外扱いして過渡現象を否定している記述を消去する。