第二種電気主任技術者 直流・交流回路
問41
ブリッジ回路の平衡
4つの抵抗 R1, R2, R3, R4 を環状に接続し、その対角線の一方に検流計を、他方に電源を接続したブリッジ回路が平衡している(検流計の電流がゼロ)とき、各抵抗の間に成り立つ関係として、正しいものはどれか。なお、R1 と R3、R2 と R4 がそれぞれ対辺の位置にあるものとする。
- R1 + R2 = R3 + R4
- R1 × R2 = R3 × R4
- R1 × R3 = R2 × R4
- R1 / R2 = R4 / R3(正解)
- R1 × R4 = R2 × R3
解説
【正解】
(3)
【設問の意図】
この問題は、ブリッジ回路の「電位のバランス」を根本から理解しているかを問う問題である。
検流計に電流が流れないということは、その両端の「電位差」がゼロであることを意味する。ここを起点に回路を流れる電流の分流比を考えられるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、平衡状態では「向かい合う辺(対辺)の抵抗の積が等しくなる」ため、(3)が正解となる。
数式の丸暗記ではなく現象で考える。検流計の両端に電位差がないということは、電源から見てそれぞれの経路での電圧降下が「同じ比率」で起きているということである。
左側の経路の電圧分担比(R1 / (R1 + R2))と、右側の経路の電圧分担比(R4 / (R4 + R3) ※接続順による)が一致したときに電位が等しくなる。これを整理すると「R1 × R3 = R2 × R4」という対辺の積の形にたどり着く。
【初心者がここで迷う理由】
多くの人は「隣り合う抵抗の比だったか、掛け算だったか」と、文字式の配置を暗記しようとして混乱してしまう。
特に、
・抵抗の番号(R1〜R4)の付け方が問題によって変わると、対応できなくなる。
・「和」なのか「積」なのか、直感に頼って間違えてしまう。
といった罠に陥りやすい。
本問では、公式を思い出す前に「電位の坂道が、左右のルートで同じ高さになっている」イメージを持つことが重要である。
【本番での判断フロー】
1. 検流計の両端を A点、B点と仮定する。
2. 平行状態 = A点と B点の電位が同じ = 電源からの電圧降下が同じ比率。
3. 公式を忘れたら、適当な数値(全部 10 オームなど)を入れて「向かい合う積」が成り立つか確認する。
4. 選択肢の中で、対辺の組み合わせ(R1 と R3、R2 と R4)の積になっているものを探す。
問42
ホイートストン電橋
ホイートストンブリッジを用いて未知の抵抗 Rx を測定する際、測定精度を高めるための方法として、誤っているものはどれか。
- 検流計には十分な感度を持つものを使用する。
- 電源電圧を極端に高くして、検流計の振れを大きくする。
- 各アームの抵抗には、温度係数が小さく経年変化の少ないものを使用する。(正解)
- 導線の抵抗や接続点の接触抵抗が無視できる範囲の抵抗値(中抵抗)を測定対象とする。
- 平衡点付近では検流計の保護抵抗を短絡し、感度を最大にして微調整を行う。
解説
【正解】
(2)
【設問の意図】
この問題は、精密測定における「誤差要因」と「機器の保護」のバランスを実務的に理解しているかを問う問題である。
「感度を上げる」ことと「負荷をかけすぎる」ことの境界線を判断できるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、電源電圧を高くしすぎると各抵抗での消費電力(発熱)が増え、温度変化による抵抗値変動(誤差)を招くため、(2)が誤りとなる。
「3つのNO」に基づき解説する。
単に「電圧を上げれば電流が増えて見やすくなる」という現場の安易な感覚に頼ってはいけない。精密測定の指針では、測定電流による自己加熱を最小限に抑えることが鉄則である。
電圧を上げすぎると、抵抗が熱を持ち、材料の膨張や特性変化によって測定値がふらついてしまう。これでは精度を高めるどころか、逆に悪化させてしまう。
【初心者がここで迷う理由】
「感度が高いほど良い」という言葉のイメージから、「信号(電流)を大きくすれば誤差が相対的に減るだろう」と短絡的に考えてしまいがちである。
特に、
・電気回路の「熱」による影響を軽視している。
・検流計の保護(過電流による破損)という実務的な視点が抜けている。
といった思考に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
1. 「精度を高める」=「余計な変動要因(熱など)を排除する」と定義する。
2. 電圧を上げる操作が、熱を生む原因にならないかを検討する。
3. 他の選択肢(感度、部品精度、接触抵抗)が全て誤差排除に直結していることを確認する。
4. 消去法で、副作用の大きい(2)を正解として選ぶ。
問43
ケルビンダブル電橋
低抵抗(1 オーム以下など)の測定にケルビンダブルブリッジが適している最大の理由はどれか。
- 測定範囲がホイートストンブリッジよりも広いため。
- 電源の電圧変動の影響を全く受けない回路構成だから。
- 検流計の内部抵抗の影響をキャンセルできるから。
- 測定導線の抵抗や接触抵抗の影響を除去できるから。
- 交流回路におけるインピーダンスの影響を考慮しているから。(正解)
解説
【正解】
(4)
【設問の意図】
この問題は、なぜ「ダブル」という複雑な構造が必要なのかという背景(解決したい課題)を理解しているかを問う問題である。
微小な値を測る際に、無視できなくなる「ノイズ(寄生抵抗)」をどう排除するかという判断軸が問われる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、低抵抗測定では「測りたい抵抗」と同じくらいの大きさの「導線抵抗」が混じってしまうため、それを回路的に打ち消す特殊な接続が必要であり、(4)がその正解となる。
「法規や基準」と同じく、回路の形には理由がある。
普通のブリッジでは、端子との接続部分にあるわずかな「接触抵抗」も合計値に含まれてしまう。ケルビンダブルブリッジは、補助アームを二重(ダブル)に設けることで、これら余計な抵抗分を計算上相殺するように設計されている。
「1 オームを測るときに 0.1 オームの誤差」は許容できない、という精度へのこだわりがこの形を生んでいる。
【初心者がここで迷う理由】
「ダブル=性能が2倍」といった漠然としたイメージだけで判断してしまいがちである。
特に、
・ホイートストンブリッジとの機能的な使い分け(中抵抗 vs 低抵抗)が整理できていない。
・「接触抵抗」が低抵抗測定においてどれほど致命的なエラーになるか実感が湧かない。
といった理由で迷うことが多い。
【本番での判断フロー】
1. ケルビン = 低抵抗専用、というキーワードを想起する。
2. 低抵抗測定の最大の敵は「導線の抵抗」と「接触抵抗」であることを思い出す。
3. 回路図にある「二重のアーム」がそれらを挟み込んでキャンセルするイメージを持つ。
4. 選択肢の中から「導線・接触抵抗の除去」を明示しているものを選ぶ。
問44
交流の表現と実効値
正弦波交流の電圧において、最大値(ピーク値)を Vm としたとき、その実効値 V との関係として、最も近い数値はどれか。
- V = 0.5000 × Vm
- V = 0.6366 × Vm
- V = 0.7071 × Vm
- V = 1.4142 × Vm(正解)
- V = 1.7321 × Vm
解説
【正解】
(3)
【設問の意図】
この問題は、交流における「実効値」という概念の物理的な意味を正しく理解しているかを問う問題である。
単なる公式の係数ではなく、「同じ熱を発生させる直流」という定義に基づいた数値感覚が問われる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、実効値は最大値を「ルート 2」で割った値(1 / 1.4142 = 0.7071...)となるため、(3)が正解となる。
「公式の丸暗記」は卒業しよう。
交流は常に値が変化しているが、電球を光らせたりヒーターを温めたりする際、直流と同じ仕事をする「実効的な力」がどれくらいかを考える必要がある。
正弦波を 2乗して平均をとり、平方根をとる(Root Mean Square)という数学的プロセスを経ると、1 / 1.4142 という係数が導き出される。これは最大値の約 70% の位置が、平均的なエネルギー供給量であることを示している。
【初心者がここで迷う理由】
「平均値(0.6366)」と「実効値(0.7071)」の係数が似ているため、どっちがどっちだったか混同しやすい。
特に、
・ルート 2(1.4142)を「かける」のか「割る」のか、計算の向きを間違える。
・家庭用コンセント 100 V(実効値)のピークが 141 V であるという具体例と結びついていない。
といったミスが起こりやすい。
【本番での判断フロー】
1. 実効値は「最大値よりも必ず小さい」ことを確認する。(4, 5 を除外)
2. 「平均値」は波形の面積を平らにならしたもの(約 0.64倍)。
3. 「実効値」は 2乗平均なので、平均値よりも少し大きな値(約 0.71倍)になる。
4. 1 / 1.4142 = 0.7071 を思い出し、選択肢(3)を特定する。
問45
正弦波交流の波形
周波数が 50 Hz の正弦波交流において、角周波数(角速度)の数値として、最も近いものはどれか。なお、円周率は 3.1416 とする。
- 50.0
- 157.1
- 314.2
- 377.0(正解)
- 628.3
解説
【正解】
(3)
【設問の意図】
この問題は、時間軸での繰り返し(周波数)と、数式上の回転角(角周波数)の変換をスムーズに行えるかを問う問題である。
交流を計算する上での「翻訳作業」の正確さが問われる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、角周波数 w = 2 × 円周率 × 周波数 f という関係から、2 × 3.1416 × 50 = 314.16 となり、(3)が正解となる。
なぜ「2 × 円周率」をかけるのか。
交流の波形は、円を 1周する回転運動を横から見たものと同じである。周波数 f は「1秒間に何回転するか」であり、角周波数は「1秒間に何ラジアン進むか」である。1回転は 2 × 円周率(約 6.28)ラジアンなので、回転数にこれをかけることで角度のスピードに変換できるのである。
【初心者がここで迷う理由】
東日本(50 Hz)と西日本(60 Hz)の数値が混ざってしまい、314 か 377 かで迷うことが多い。
特に、
・単に「円周率をかけるだけ」と勘違いして、3.1416 × 50 = 157.1 を選んでしまう。
・2 × 円周率 = 6.28... という定数を忘れてしまう。
といった計算ミスに陥りやすい。
【本番での判断フロー】
1. w = 2 × pi × f の式を確実に書き出す。
2. 日本の 50 Hz なら 314、60 Hz なら 377 というセットを知識として持っておく。
3. もし忘れたら、「1秒間に 50回 1周(6.28ラジアン)するから、50 × 6.28 をすればいい」と論理的に組み立てる。
4. 計算結果に最も近い 314.2 を選ぶ。
問46
ベクトル軌跡
抵抗 R [オーム] とインダクタンス L [H] を直列に接続した回路において、周波数 f を一定に保ったまま、抵抗 R の値を 0 から無限大まで変化させたとき、電流ドット I のベクトル軌跡として、正しい記述はどれか。なお、電源電圧ドット V を基準の横軸(正の実数軸)とする。
- 第1象限における直線
- 第4象限における直線
- 第1象限における半円
- 第4象限における半円
- 原点を通る円(正解)
解説
【正解】
(4)
【設問の意図】
この問題は、パラメータの変化が回路全体の状態(電流ベクトル)にどのような幾何学的な影響を与えるかを、視覚的に理解しているかを問う問題である。
「式を解く」のではなく「動きを追う」能力が分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、RL 直列回路の電流ベクトルは、電圧に対して位相が遅れ(第4象限)、抵抗の変化に伴って半円を描くため、(4)が正解となる。
「3つのNO」に基づき、暗記ではなく動きで考える。
・R=0(短絡)のとき:純粋な L 回路となり、電流は電圧より 90度遅れ、大きさは最大(V / wL)となる。
・R=無限大(開放)のとき:電流は 0 になる。
・その中間では、R が増えるにつれて「大きさは小さく」なり、「遅れ角は小さく(0に近づく)」なる。
この極端な 2点の間を滑らかに結ぶと、原点と最大点を通る半円が描かれる。インダクタンスによる遅れ電流なので、必ず電圧基準線(横軸)より下の「第4象限」に現れる。
【初心者がここで迷う理由】
「インピーダンス軌跡」と「電流(アドミタンス)軌跡」を混同してしまいがちである。
特に、
・インピーダンス Z = R + jwL は R を変えると「直線」になるが、その逆数である電流は「円」になるという幾何学的性質を理解していない。
・位相の「進み・遅れ」と「象限(上下)」の対応が頭に入っていない。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
1. RL 回路 = 遅れ電流 = 位相角はマイナス = 第4象限(下側)、とまず絞り込む。
2. R を 0 と 無限大 という極端な値にしたときの「電流の点」を 2つ打つ。
3. その 2点を通る形が、直線なのか円弧(半円)なのかを数式の形(反比例)から推測する。
4. 「直列回路で R を変えた時の電流は半円」というパターンを、現象の動きから納得して選ぶ。
問47
複素数による計算
インピーダンス Z = 3 + j4 [オーム] に電圧 V = 100 [V] を加えたとき、この回路を流れる電流の大きさ [A] として、正しいものはどれか。
- 14.3
- 20.0
- 25.0(正解)
- 33.3
- 100.0
解説
【正解】
(2)
【設問の意図】
この問題は、複素数で表された「ベクトル量」を、実数としての「大きさ(スカラー量)」に正しく変換できるかを問う問題である。
実数部と虚数部を単純に足し算してしまう初歩的なミスを排除できるかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、インピーダンスの大きさ |Z| はピタゴラスの定理より 5 [オーム] となり、電流 I = 100 / 5 = 20 [A] となるため、(2)が正解となる。
「公式の丸暗記」ではなく、図形で考える。
複素数の j4 とは、「横に 3 進んで、上に 4 曲がる」という直角三角形の動きである。斜辺の長さ(実際の抵抗の強さ)は、3 + 4 = 7 ではなく、(3の2乗 + 4の2乗) の平方根である。
3:4:5 の比率の三角形をイメージすれば、合成インピーダンスが 5 であることは計算するまでもなく明らかである。あとはオームの法則(V / Z)を適用すれば、電流が 20 A と導き出せる。
【初心者がここで迷う理由】
「3 + 4 = 7」と足してしまい、100 / 7 = 14.3 を選んでしまうミスが非常に多い。
特に、
・j(虚数単位)が「向きが 90度違う」ことを意味する記号であることを忘れている。
・複素数のまま計算すべきときと、絶対値をとるべきときの区別がついていない。
といった思考の混乱が原因である。
【本番での判断フロー】
1. インピーダンスが R + jX の形で与えられたら、すぐに頭の中に直角三角形を描く。
2. 斜辺の長さ(大きさ)をピタゴラスの定理、または有名な比率(3:4:5 や 1:1:1.414など)で求める。
3. 電圧の大きさを、求めたインピーダンスの大きさで割る。
4. 選択肢の中から、計算結果と一致するものを探す。
問48
RLC直列回路
抵抗 R、インダクタンス L、静電容量 C を直列に接続した回路において、交流電源の周波数を変化させ、誘導性リアクタンス XL と容量性リアクタンス XC が等しくなった(共振状態)ときの記述として、誤っているものはどれか。
- 回路の合成インピーダンスは、抵抗 R の値と等しくなる。
- 回路を流れる電流は、電圧と位相が等しく(力率 1)なる。
- 回路の合成インピーダンスは、共振時において最大値をとる。
- L の両端の電圧と C の両端の電圧は、大きさが等しく向きが逆になる。(正解)
- 共振周波数は、1 / (2 × 円周率 × ルート(L × C)) で表される。
解説
【正解】
(3)
【設問の意図】
この問題は、直列共振という現象が「エネルギーの打ち消し合い」であることを根本から理解しているかを問う問題である。
打ち消し合った結果、回路全体の「通りやすさ」がどう変化するかを判断できるかどうかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、直列共振時において合成インピーダンスは「最小(Rのみ)」になるため、(3)が誤り(正解)となる。
物理現象に立ち返って考える。
L(コイル)は電流を遅らせようとし、C(コンデンサ)は電流を進ませようとする。この 2つが直列に並んで同じ力(XL = XC)で綱引きをすると、お互いの影響が完全に相殺される。
すると、回路の邪魔者は抵抗 R だけになり、インピーダンスは最も小さく、電流は最も流れやすい状態になる。これを「インピーダンスが最大になる」とする選択肢(3)は、現象を正反対に説明している。
【初心者がここで迷う理由】
「直列共振」と「並列共振」の性質を反対に覚えてしまうミスが極めて多い。
特に、
・「共振 = 何かが最大になる」という漠然としたイメージを持ち、それが「電流」なのか「インピーダンス」なのかを整理していない。
・公式 1 / sqrt(LC) の形にばかり気を取られ、エネルギーの収支という視点が抜けている。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
1. 直列回路 = 邪魔者(抵抗とリアクタンス)が横に並んでいる = リアクタンスが消えればスッキリする。
2. スッキリする = 邪魔者が減る = インピーダンスは「最小」になる、と論理を組み立てる。
3. 電流は逆に「最大」になることをセットで確認する。
4. 選択肢(3)の「最大」という単語が、直列回路の「邪魔者が消える」という理屈と矛盾することを見抜く。
問49
RLC並列回路
抵抗 R、インダクタンス L、静電容量 C を並列に接続した回路において、共振状態(XL = XC)となったときの回路全体の特性として、正しい記述はどれか。
- 回路を流れる全電流は、抵抗 R を流れる電流よりも小さくなる。
- 回路の合成インピーダンスは、最小となる。
- L を流れる電流と C を流れる電流の和(ベクトル和)は、最大となる。
- 電源から見た回路の力率は 1 となる。
- 周波数を高くするほど、回路は容量性(電流が進む)に近づく。(正解)
解説
【正解】
(4)
【設問の意図】
この問題は、並列共振において「外から見た電流」と「中で循環する電流」の違いを正しく理解しているかを問う問題である。
外の電源から見て、回路がどのように振る舞っているかという視点が問われる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、共振状態では L と C を流れる電流が互いに打ち消し合い、電源からは R 分の電流しか流れないため、力率は 1 となり、(4)が正解となる。
「3つのNO」に基づき、現場感覚ではなく理論で考える。
並列回路では、コイルとコンデンサの間でエネルギーがキャッチボールされる(一方から出た電流がもう一方へ吸い込まれる)。そのため、外の電源から見ると L と C の存在が消えたように見え、抵抗 R だけがつながっているのと同じ状態になる。
抵抗だけの回路は、電圧と電流の位相にズレがないため、力率は理想的な 1 になる。
【初心者がここで迷う理由】
「並列は電流が分かれるから、足し算で増えるはずだ」とスカラー的に考えてしまいがちである。
特に、
・L と C の電流が「逆向き」に流れる(一方が 90度遅れ、他方が 90度進み = 180度の差)ことをイメージできていない。
・共振時に「インピーダンスが最大(通りにくい)」になるという直列との違いに自信が持てない。
といった理由で迷う。
【本番での判断フロー】
1. 並列共振 = L と C が中で電流を回し合って、外には漏らさない状態、とイメージする。
2. 外(電源)に漏れ出るのは R の電流だけ。
3. R の電流だけが流れているなら、力率は 1(位相ズレなし)。
4. 選択肢(1, 2, 3)が「並列回路のスカスカな状態」と矛盾していることを確認し、(4)を確信を持って選ぶ。
問50
交流回路の電力
電圧 V [V]、電流 I [A]、電圧と電流の位相差を θ としたとき、交流回路の「無効電力 Q」を表す式として、正しいものはどれか。
- Q = V × I
- Q = V × I × cosθ
- Q = V × I × sinθ
- Q = V × I × tanθ(正解)
- Q = V^2 / R
解説
【正解】
(3)
【設問の意図】
この問題は、電力の 3要素(有効、無効、皮相)の定義と、それらが位相角 θ とどのように結びついているかを根本から理解しているかを問う問題である。
「働いている電力」と「やり取りされているだけの電力」の区別が問われる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、無効電力は電圧と電流の「垂直成分(sinθ)」の積で表されるため、(3)が正解となる。
なぜ sin なのか、現象で考える。
・cosθ(水平成分):電圧と同じ向きの電流。これは抵抗で熱やお仕事に変わる「有効な」力である。
・sinθ(垂直成分):電圧と 90度ズレた向きの電流。これはコイルやコンデンサとの間でエネルギーを行き来させているだけで、お仕事にはならない「無効な」力である。
三角形を描いたとき、縦軸(無効分)に対応するのは sin 成分であるため、VI sinθ が無効電力 Q となる。
【初心者がここで迷う理由】
「有効電力が cos だったか、sin だったか」という暗記の取り違えが最も多い。
特に、
・「力率 = cosθ」という知識が強すぎて、電力計算なら何でも cos をかけてしまう。
・単位(有効:W、無効:var、皮相:VA)の使い分けと式の関係がリンクしていない。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
1. まず、電力の三角形(底辺:P、高さ:Q、斜辺:S)を頭に浮かべる。
2. 位相角 θ は、底辺と斜辺の間の角。
3. 「高さ(無効電力 Q)」を求めるなら、斜辺 S(VI)に sinθ をかけるのが幾何学の基本。
4. 選択肢の中から VI sinθ を探し出し、単位が var(バール)であることをセットで思い出す。
問51
有効電力と無効電力
交流回路における有効電力 P [W] と無効電力 Q [var] に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 有効電力は、抵抗で消費され熱エネルギーなどになる電力である。
- 無効電力は、電源と負荷(LやC)の間を往復するだけで消費されない電力である。
- 電圧の実効値を V、電流の実効値を I、電圧と電流の位相差を θ とすると、P = VI cosθ と表される。
- 電圧の実効値を V、電流の実効値を I、電圧と電流の位相差を θ とすると、Q = VI sinθ と表される。
- 負荷が純粋なコンデンサのみの場合、電流の位相は電圧よりも 90度遅れ、有効電力は最大となる。
解説
【正解】
(5)
【設問の意図】
この問題は、交流回路における「エネルギーの使われ方」を根本から理解しているかを問う問題である。
交流特有の「位相」という概念が、実際の電力消費(有効)と、単なるエネルギーのやり取り(無効)にどう関わるかを見極めるのがポイントとなる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、純粋なコンデンサでは電流は電圧より 90度「進み」、有効電力は「ゼロ」になるため、選択肢(5)が誤りである。
物理現象に立ち返って考える。有効電力とは「一方向に流れ去り、戻ってこないエネルギー(仕事をする電力)」である。一方、無効電力は「バネを押し縮めては戻るように、電源と負荷を往復するだけのエネルギー」である。
コンデンサやコイルはエネルギーを一時的に蓄える(バネの役割)だけで、熱として消費はしない。理想的なコンデンサでは、電圧と電流の位相差 θ がちょうど 90度(0.5π ラジアン)になるため、P = VI cos90度 = VI × 0 = 0 となり、有効電力は発生しない。また、コンデンサの電流は電圧に対して「進む」性質がある。
【初心者がここで迷う理由】
交流回路の学習を始めたばかりの段階では、「電流が流れているなら、電力も消費されているはずだ」と直流と同じ感覚で考えてしまいがちである。
特に、
・「進み」と「遅れ」の関係を、L(コイル)と C(コンデンサ)で混同してしまう。
・cosθ(力率)という数字の意味を、単なる計算用の係数として捉え、物理的な「仕事の割合」としてイメージできていない。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば迷わない。
1. まず、負荷の種類を確認する(R、L、Cのどれか)。
2. L や C は「エネルギーを食いつぶさない(消費ゼロ)」という物理的本質を思い出す。
3. 位相差が 90度であれば、cos90度 = 0 なので有効電力 P = 0 になることを導く。
4. 選択肢の中で、消費ゼロのはずの C 負荷で「電力が最大」などと主張している矛盾を見つける。
この流れで考えれば、公式の暗記に頼らずとも論理的に正解できる。
問52
皮相電力と力率
交流回路における皮相電力 S [V・A] と力率 cosθ に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 皮相電力は、電圧の実効値と電流の実効値の単純な積(S = VI)で表される。
- 力率 cosθ は、皮相電力に対する有効電力の割合(P / S)である。
- 有効電力 P、無効電力 Q との関係は、S = P + Q という単純な和で表される。
- 力率角 θ は、電圧ベクトルと電流ベクトルのなす角である。(正解)
- 力率を改善するためにコンデンサを並列に接続すると、電源から見た皮相電力は減少する。
解説
【正解】
(3)
【設問の意図】
この問題は、交流電力の 3つの要素(P、Q、S)の関係が「ベクトル的(直角三角形)」であることを理解しているかを問う問題である。
スカラー的な「単純な足し算」と、交流特有の「ベクトルの合成」を区別できるかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、皮相電力 S は P と Q の「二乗和の平方根」で表されるため、(3)の単純な和という記述は誤りである。
物理現象に立ち返って考える。交流回路において、有効電力 P(横軸)と無効電力 Q(縦軸)は、位相が 90度ずれた関係にある。そのため、その合計である皮相電力 S は、直角三角形の斜辺の長さとして計算しなければならない。
数式で表すと、S = sqrt(P^2 + Q^2) となる。例えば、P = 3 W、Q = 4 var の場合、S は 7 V・A ではなく、5 V・A になる。このように、交流では「向きの違うエネルギー」を扱うため、単純な足し算は通用しない。
【初心者がここで迷う理由】
多くの人は、直流回路の「電力 = 電圧 × 電流」という常識が強く染み付いているため、交流でも全ての電力をそのまま足せると短絡的に考えてしまいがちである。
特に、
・「電力」という名前がついているものは全て同じ種類の数字だと誤解してしまう。
・直角三角形のピタゴラスの定理を、電力の計算に適用するという発想が抜けている。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考えれば確実である。
1. まず、電力の単位を確認する(W、var、V・A)。
2. これら 3つが「直角三角形の底辺、高さ、斜辺」の関係にある図を頭に描く。
3. 斜辺(S)は、底辺(P)と高さ(Q)を単純に足したものではないことを確認する。
4. 選択肢の中で、このベクトル的な関係を無視して「単なる和」としている記述を見つける。
この「図形的なイメージ」を持っておけば、ミスは劇的に減る。
問53
複素電力の計算
電圧ベクトルを V_dot、電流ベクトルを I_dot、電流の共役複素ベクトルを I_conj_dot とするとき、複素電力 S_dot に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 複素電力は、S_dot = V_dot × I_conj_dot として定義されることが多い。
- 複素電力の実数部は有効電力 P [W] を表す。
- 複素電力の虚数部は無効電力 Q [var] を表す。
- 電流が電圧に対して位相が遅れている場合、複素電力の虚数部は正(プラス)となる。
- 複素電力の絶対値をとると、有効電力 P と等しくなる。
解説
【正解】
(5)
【設問の意図】
この問題は、交流計算を効率化する「複素数」の扱いと、それが表す物理量の対応関係を正確に理解しているかを問う問題である。
複素電力という「便利な数学的道具」が、どの実数値に対応しているのかを整理するのがポイントとなる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、複素電力の絶対値は「皮相電力 S」と等しくなるため、(5)の有効電力 P と等しいという記述は誤りである。
複素電力 S_dot = P + jQ という形において、その大きさ(絶対値)は直角三角形の斜辺である sqrt(P^2 + Q^2) を意味する。これは定義上、皮相電力 S そのものである。
有効電力 P は、あくまで複素電力の実数部分(横軸の投影成分)に過ぎない。複素数を用いる理由は、P(実数)と Q(虚数)を一つの文字でまとめて管理するためであり、その「全体の大きさ」は当然、皮相電力を示すことになる。
【初心者がここで迷う理由】
「絶対値」や「共役複素数」といった数学用語に圧倒され、それが回路のどの部分(電圧計の読みなのか、電力計の読みなのか)を指しているのかを見失いやすい。
特に、
・共役(コンジュゲート)をなぜ電流側につけるのか(位相差を正しく抽出するため)を理解していない。
・「複素電力の大きさ = 実数部の大きさ」と勘違いしてしまう。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で整理する。
1. 複素電力 S_dot = P + jQ という基本形を書き出す。
2. P(実数)が電力計で測れる仕事、Q(虚数)が往復するだけのエネルギーであることを再確認する。
3. 「絶対値」とは原点からの距離、つまり斜辺(皮相電力 S)であることを思い出す。
4. 選択肢をチェックし、S と P を混同している記述を弾く。
数学的操作と物理量の対応を「セット」で覚えることが、二種突破の鍵となる。
問54
直列共振回路
R-L-C 直列回路において、誘導性リアクタンス X_L と容量性リアクタンス X_C が等しくなる「直列共振」に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 共振時、回路のインピーダンスは最小(抵抗 R のみ)となる。
- 共振時、電源から流れる電流は最大となる。
- 共振周波数 f は、1 / (2 × 3.1415 × sqrt(L × C)) で表される。
- 共振時、L や C の両端には電源電圧よりも高い電圧が発生することがある。
- 共振時、電流の位相は電圧に対して 90度進む。
解説
【正解】
(5)
【設問の意図】
この問題は、特定の周波数で L と C の影響が打ち消し合う「共振現象」の本質を理解しているかを問う問題である。
リアクタンスがゼロになったとき、回路が「純抵抗」として振る舞うという極端な状態をイメージできるかが重要である。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、共振時には回路全体が純抵抗と同じ状態になるため、電圧と電流は「同相(位相差ゼロ)」になる。したがって(5)は誤りである。
物理現象に立ち返って考える。コイル(L)は「電流を遅らせよう」とし、コンデンサ(C)は「電流を進めよう」とする。直列共振とは、この「遅らせる力」と「進める力」がちょうど同じ強さで打ち消し合った状態である。
邪魔し合うリアクタンス成分が消滅するため、回路には抵抗 R だけが残ったように見える。抵抗のみの回路では、電圧と電流は足並みを揃えて変化する(同相)ため、位相が 90度進むことはあり得ない。
【初心者がここで迷う理由】
L や C が含まれている回路図を見ると、どうしても「位相はずれるものだ」という先入観を持ってしまいがちである。
特に、
・直列共振と並列共振の性質(インピーダンスが最小か最大か)を逆転させて覚えてしまう。
・計算上 0 になることを、「何も起きない」ことと混同し、L や C の端子電圧まで 0 だと思い込んでしまう。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考える。
1. 「共振 = L と C が相殺」という定義を確認する。
2. 「相殺 = 残るのは R だけ = 純抵抗回路」と飛躍させる。
3. 「純抵抗 = 電圧と電流は同じ向き(同相)」という結論を出す。
4. 選択肢の中で、位相がずれる(進む・遅れる)と書かれているものを誤答として選ぶ。
「相殺されて消える」というイメージが、複雑な計算をシンプルにする。
問55
並列共振回路
R-L-C 並列回路において、L と C のサセプタンスが打ち消し合う「並列共振」に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 共振時、回路全体の導電現象(アドミタンス)は最小となる。
- 共振時、電源から流れ込む全電流は最小となる。
- 共振時、回路全体のインピーダンスは最大となる。
- 共振時、L と C の枝路には電流が流れていない。
- 共振時、電源から見た回路の力率は 1.0(100パーセント)となる。(正解)
解説
【正解】
(4)
【設問の意図】
この問題は、並列回路における共振が「外部から見たとき」と「内部で起きていること」の違いを正しく理解しているかを問う問題である。
電源から見れば電流が流れていないように見えても、内部では激しいエネルギーの交換が行われているという二面性がポイントである。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、共振時でも L と C の各枝路には電流が流れているため、(4)は誤りである。
物理現象に立ち返って考える。並列共振では、コイルに流れる「遅れ電流」とコンデンサに流れる「進み電流」が、大きさが同じで向きが 180度逆になる。この 2つの電流は L と C の間を行ったり来たりする(閉回路で循環する)。
電源から見ると、右に行きたい電流と左に行きたい電流が合流地点で相殺されるため、合算された電流(電源電流)はゼロ(抵抗成分がなければ)に見える。しかし、L や C の中を個別に測れば、大きな電流が流れているのである。これを「電流共振」とも呼ぶ。
【初心者がここで迷う理由】
「回路全体の電流が最小」という言葉を聞いて、回路のどこにも電流が流れていないと短絡的に考えてしまいがちである。
特に、
・直列共振(電圧が相殺)と並列共振(電流が相殺)のメカニズムを混同してしまう。
・電源電流(トータル)と枝路電流(個別)の区別がついていない。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考える。
1. 並列共振は「電源から見るとインピーダンスが非常に大きい(通しにくい)」状態であることを思い出す。
2. 通しにくい理由は、L と C の電流が「外に出ずに中で回っているから」とイメージする。
3. したがって、「中で回っている電流」は存在するので、(4)の記述は矛盾していると判断する。
4. あわせて、電源電流が最小になるので「アドミタンスが最小」という用語の繋がりも確認する。
この「内部循環」のイメージがあれば、並列共振の本質を外さない。
問56
Q値と選択度
共振回路の性能を表す Q値(クオリティファクタ)に関する記述として、誤っているものはどれか。
- Q値が高いほど、共振の特性曲線は鋭くなり、選択度が増す。
- 直列共振回路の Q値は、(1 / R) × sqrt(L / C) で表される。
- Q値は、回路に蓄えられる最大エネルギーと、1周期の消費エネルギーの比に関連する。
- Q値が非常に高い場合、直列共振時に L や C にかかる電圧は電源電圧よりも小さくなる。
- 帯域幅(半分電力点の間隔)を Δf、共振周波数を f0 とすると、Q = f0 / Δf と定義される。(正解)
解説
【正解】
(4)
【設問の意図】
この問題は、共振回路における「エネルギーの蓄積能力」を示す Q値が、電圧や電流にどのような影響を与えるかを問う問題である。
Q値が高いことが、単なる「鋭さ」だけでなく、内部での「電圧上昇」に繋がるという実務的な重要性を理解しているかが鍵となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、Q値が高いほど、直列共振時に L や C にかかる電圧は電源電圧の「Q倍」に拡大されるため、(4)は誤りである。
物理現象に立ち返って考える。Q値とは、いわば「エネルギーの振り子」がどれだけ効率よく揺れ続けているかを示す指標である。Q値が高い(抵抗 R が小さい)と、エネルギーが熱として逃げにくいため、共振によって内部のエネルギーがどんどん蓄積される。
直列共振回路では、電流 I が最大になるため、L の両端電圧 V_L = I × X_L は、電源電圧 V よりも遥かに大きな値(V × Q)に達することがある。これは絶縁破壊などの事故に繋がる要因となるため、非常に重要な知識である。
【初心者がここで迷う理由】
Q値という抽象的な指標を、ラジオの選局のような「通信の鋭さ」としてのみ記憶しており、パワー回路における「過電圧」という側面と結びついていない。
特に、
・Q値の計算式(L、C、Rの関係)を丸暗記しようとして、分母分子がどちらだったか忘れてしまう。
・「共振=相殺=電圧が消える」というイメージが強すぎて、各部の電圧まで小さくなると誤解してしまう。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考える。
1. Q値が高い = 「キレが良い」かつ「内部でエネルギーが暴れている」とイメージする。
2. 内部で暴れているということは、部品(LやC)には大きな負担(電圧)がかかっているはずだ、と飛躍させる。
3. したがって、「電源電圧より小さくなる」という控えめな記述は誤りだと判断する。
4. Q = f0 / Δf(鋭さ)という定義と、電圧拡大効果(Q倍)をセットで記憶から引き出す。
この「鋭さと激しさ」の二面性を押さえておけば、Q値の問題は怖くない。
問57
相互誘導回路
2つのコイル間の相互誘導に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 相互インダクタンス M は、結合係数を k とすると M = k × sqrt(L1 × L2) で表される。
- 結合係数 k は、漏れ磁束がない理想的な状態では 1.0 となる。
- 2つのコイルを直列に接続したとき、磁束を強め合う接続を「和動接続」と呼ぶ。
- 和動接続時の合成インダクタンスは、L1 + L2 + M となる。
- 2つのコイルの巻き方向や配置によって、相互インダクタンスの符号が変化する。(正解)
解説
【正解】
(4)
【設問の意図】
この問題は、複数のコイルが磁気的に干渉し合う際の「合成能力」の計算を正しく理解しているかを問う問題である。
相互インダクタンス M が、それぞれのコイルに対してどのように影響を与えるか(2回分寄与する点)がポイントとなる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、和動接続時の合成インダクタンスは L1 + L2 + 2M となるため、(4)の記述は誤りである。
物理現象に立ち返って考える。2つのコイルを直列につないで電流を流すと、コイル1は「自分自身の磁束」と「コイル2から助けてもらう磁束 M」の両方を経験する。同様に、コイル2も「自分の磁束」と「コイル1から助けてもらう磁束 M」を経験する。
つまり、全体で見ると相互に助け合う効果 M が 2つ分加算されることになる。したがって、式には 2M が含まれる。差動接続(打ち消し合い)の場合は、この 2M がマイナスになる。
【初心者がここで迷う理由】
相互インダクタンスという言葉の響きから、コイルの間に「1つ」だけ M という部品が追加されるようなイメージを持ってしまい、足し算で 1M だけ足してしまうミスが非常に多い。
特に、
・「相互」という言葉が、双方向の作用(1から2、2から1)を意味していることを忘れている。
・回路図の「ドット(点)」の意味を、単なる目印として捉え、電流の向きとの関係を意識できていない。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考える。
1. コイルが 2つ並んでいたら、必ず「お互い様」の関係があることを思い出す。
2. 「お互い様」なので、影響は 2回分(1への影響と2への影響)発生することを原則とする。
3. したがって、合成インダクタンスの公式には必ず「2M」という数字が入っているはずだと確認する。
4. 選択肢の中で、単なる M しか入っていない数式を見つけ、それを誤答として選ぶ。
「影響はペアで届く(2M)」と覚えておけば、公式を忘れても迷わない。
問58
理想変圧器の回路
損失や漏れ磁束がない「理想変圧器」に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 一次側と二次側の電圧比は、巻き数比(N1 / N2)に等しい。
- 一次側と二次側の電流比は、巻き数比の逆数(N2 / N1)に等しい。
- 一次側の入力電力と二次側の出力電力は、常に等しい。
- 二次側に負荷抵抗 R2 を接続したとき、一次側から見た等価抵抗は、(N2 / N1)^2 × R2 となる。
- 理想変圧器では、透磁率が無限大であり、励磁電流はゼロとみなす。(正解)
解説
【正解】
(4)
【設問の意図】
この問題は、変圧器が電圧や電流だけでなく、「インピーダンス(抵抗の見え方)」をどのように変換するかを正しく理解しているかを問う問題である。
巻き数比が「二乗」でインピーダンスに効いてくるという、実務上極めて重要な法則を問うている。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、一次側から見た等価抵抗 R1 は、(N1 / N2)^2 × R2 となるため、(4)の記述は分母分子が逆(または二乗の向きが逆)であり誤りである。
物理現象に立ち返って考える。例えば巻き数を 10倍に増やす(N1/N2 = 10)と、電圧は 10倍になり、電流は 0.1倍になる。オームの法則(R = V / I)に当てはめると、抵抗 R は「10 / 0.1 = 100倍」になる。つまり、巻き数比の 2乗で抵抗が変化するのである。
選択肢(4)の式では、一次側(巻き数が多い側と想定)から見たときに抵抗が小さくなってしまうような表現になっており、エネルギー保存の観点からも矛盾が生じる。
【初心者がここで迷う理由】
電圧と電流の比(1乗)は覚えていても、抵抗の変換比が「2乗」になるという理屈を飛ばして、結果だけを暗記しようとして混乱してしまう。
特に、
・n(巻き数比)という文字の定義が、N1/N2 なのか N2/N1 なのかを、問題ごとに確認せず公式に当てはめてしまう。
・「電圧が上がる=インピーダンスも高くなる」という感覚的な繋がりを持っていない。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考える。
1. まず、電圧が「V1 = (N1/N2) × V2」であることを書き出す。
2. 次に、電流が「I1 = (N2/N1) × I2」であることを書き出す。
3. 最後に、R1 = V1 / I1 を計算し、(N1/N2) / (N2/N1) = (N1/N2)^2 が導かれることを確認する。
4. 選択肢を比較し、この「2乗の関係」が正しく記述されているか、分母分子が逆転していないかを厳密にチェックする。
「電圧は1乗、抵抗は2乗」というリズムで覚えておけば、変換問題でミスすることはない。
問59
三相交流の発生
対称三相交流の発生とその性質に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 三相交流は、互いに 120度(0.6667π ラジアン)ずつ位相がずれた 3つの正弦波交流である。
- 3つの電圧ベクトルの和(V_a + V_b + V_c)は、常にゼロとなる。
- 三相交流を利用すると、単相交流に比べて同じ電力をおくる際の電線重量を削減できる。
- 三相交流を電動機に流すと、容易に回転磁界を得ることができる。
- 三相交流の瞬時電力(3つの相の合計)は、単相交流と同様に時間の経過とともに激しく変動する。
解説
【正解】
(5)
【設問の意図】
この問題は、三相交流がなぜ世界の電力供給の主流(スタンダード)なのか、その圧倒的なメリット(瞬時電力の安定性)を根本から理解しているかを問う問題である。
単なる「3本ある」こと以上の、物理的な優位性を知っているかがポイントである。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、対称三相交流の瞬時電力の総和は、時間によらず「常に一定」となるため、(5)の激しく変動するという記述は誤りである。
物理現象に立ち返って考える。単相交流(家庭のコンセントなど)では、電圧がゼロになる瞬間があり、電力もゼロになる。つまり、エネルギーの供給が小刻みに「脈動」している。
これに対し、三相交流は 120度ずつずれているため、ある相の力が弱まっても、必ず他の相がそれを補う。数学的に 3つの相の電力を足し合わせると、時間の変数(t)が消えて一定値になる。
この「脈動しない(一定の)」エネルギー供給ができるからこそ、大型のモータを滑らかに回転させることができ、振動も少なく、非常に効率的な電力伝送が可能になるのである。
【初心者がここで迷う理由】
「交流=波=常に変動しているもの」という強いイメージがあるため、3つ合わせても変動し続けると思い込んでしまいがちである。
特に、
・120度という絶妙なバランスがもたらす「相殺と補完」の幾何学的な美しさをイメージできていない。
・単相電力(cosの二乗で変動)と三相電力(定数)の違いを、数式レベルで確認したことがない。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考える。
1. 三相交流の最大のメリットは「モータを滑らかに回せること」だと思い出す。
2. 滑らかに回せる理由は、供給されるエネルギーが「脈動せず一定だから」と繋げる。
3. したがって、「瞬時電力が変動する」という記述は、三相交流の存在意義を否定する誤りだと見抜く。
4. あわせて、ベクトルの和がゼロになる(中性点に電流が流れない)性質もセットで思い出す。
「三相は、合わさると静か(一定)になる」と覚えておけば、本質を外さない。
問60
Y結線とΔ結線
三相交流の接続方式である Y(スター)結線と Δ(デルタ)結線に関する記述として、誤っているものはどれか。
- Y結線では、線間電圧の大きさは相電圧の 1.732倍(sqrt(3)倍)である。
- Y結線では、線電流の大きさは相電流と等しい。
- Δ結線では、線間電圧の大きさは相電圧と等しい。
- Δ結線では、線電流の大きさは相電流の 1.732倍(sqrt(3)倍)である。
- Y結線において、各相の電圧ベクトルを足し合わせると、線間電圧ベクトルと一致する。
解説
【正解】
(5)
【設問の意図】
この問題は、三相回路の計算において最もミスが起きやすい「線間」と「相」の関係を、ベクトル図のレベルで正しく理解しているかを問う問題である。
単に 1.732倍という数字を覚えるだけでなく、それが「ベクトルの引き算」の結果であることを知っているかが分かれ目となる。
【正解の理由(なぜこれが正しいか)】
結論から言うと、線間電圧は相電圧の「差(引き算)」によって生じるため、(5)の足し合わせるという記述は誤りである。
物理現象に立ち返って考える。Y結線の中性点を基準とした各相の電圧を V_a、V_b とすると、線間電圧 V_ab は「a点とb点の電位差」なので、V_ab = V_a - V_b という引き算になる。
対称三相交流では、V_a、V_b、V_c を全て足し合わせると(V_a + V_b + V_c)、120度ずつ向きが違うため完全に打ち消し合って「ゼロ」になる。したがって、足し合わせても線間電圧にはならず、むしろ何もなくなってしまう。線間電圧は、隣り合う相が「逆方向に引っ張り合う(差をとる)」ことで、相電圧よりも大きな 1.732倍の電圧として現れるのである。
【初心者がここで迷う理由】
「合計=足し算」という直感に頼ってしまい、電位「差」であるはずの線間電圧を、ベクトルの合成(足し算)と勘違いしてしまう。
特に、
・1.732倍になるのは Y の電圧なのか Δ の電流なのか、試験の焦りで逆転させてしまう。
・ベクトル図(ベン図のような 120度の矢印)を自分で描いて、引き算を視覚的に確認する習慣がない。
といった罠に陥りやすい。
【本番での判断フロー】
本番では、次の順序で考える。
1. Y結線の図を描き、線間(端と端)の電圧は、真ん中(中性点)を通る 2つの相の「差」であることを確認する。
2. 対称な 3つの相を「足せばゼロ」になるという鉄則を思い出す。
3. したがって、「足せば線間電圧になる」という記述は、ベクトルの向きを無視した誤りだと判断する。
4. Δ結線についても、「電圧が等しく、電流が 1.732倍」という逆の関係を再確認する。
「Yは電圧が化け(1.732倍)、Δは電流が化ける」というリズムと、それが「差」から生まれることを押さえておけば完璧である。